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みんなのまーちゃん さんのレビュー一覧 

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     2020/08/17

    シャーガーの現代最高のトリスタン、ニコルズのイゾルデもなかなか
    シャーガーは2013年に演奏会形式のトリスタンとイゾルデで来日したことがあるそうだが、残念ながら私は聞いていない。だがこの映像と2018年のベルリン州立歌劇場のトリスタンとイゾルデの映像を見る限り、現代最高のトリスタンはグールドでもザイフェルトでもディーン・スミスでもなくシャーガーだと断言できる。これだけ力強い声を出しているのに無理して歌っている感じがまったくなく、むしろひょうひょうと楽に歌っている雰囲気すらあるのが素晴らしい。デビュー当初のウィントガッセンの歌に近い。まだ若いのでこれから円熟すれば往年のコロやホフマンに匹敵するヘンデン・テノールとして歴史に名を残すだろう。ムーティのザルツブルグの魔笛の演出で有名なピエール・オーディの抽象的な演出も2幕舞台などは好みが分かれるかもしれないが私は悪くないと思う。ステンメ主演レーンホフ演出のBlu-ray、コロとジョーンズ主演ゲッツ・フリードリヒ演出のBlu-rayと並んでお勧めできるBlu-rayだと思う。ニコルズのイゾルデや脇役も悪くない。この曲が好きな全てのワグネリアンにお勧めしたい。

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     2020/04/14

    斬新過ぎる衝撃のエンディング。歌は高水準。読み替え演出がok の方はぜひチャレンジして頂きたい。

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     2019/10/02

     DVDの収録時間は1枚で最大2時間〜2時間半ぐらいだが、ブルーレイはHD画質で4時間以上入る。ベートーベンのピアノ協奏曲はDVDなら2枚組になるがブルーレイなら1枚で全曲収まる。1番から5番まで続けて観られるのはとても嬉しい。そのせいかこの曲のDVDはアシュケナージとハイティンクのBBCの放送用映像(モノラル)しかなかったと記憶しているが、ブルーレイでは私の知る範囲でもこの2011年のブッフビンダー指揮ウィーンフィル盤に加えて、2007年のバレンボイム指揮ベルリンシュターツカペレ盤、1988年のペライアとハイティンク盤(これはSD画質)の3種類がすでに手に入る。
     いずれも好演だが、イチ押しは一番新しいブッフビンダー盤だ。ブッフビンダーは2013年のウィーンフィルの来日公演でも全曲演奏会を開いているのでお聞きになった方も多いだろう。1946年チェコ生まれでウィーンでピアノを学んび、ウィーンの伝統を引き継ぐ数少ない巨匠としてオーストリアでは高い人気を誇るが、日本での評価が評価が高まったのは2013年の来日公演からだと思う。ウィーンフィルがベートーベンのピアノ協奏曲の全曲演奏会を日本で開いたのもこれが初めてだと思う。
     玉を転がすような美しい音で、優雅で押しつけがましくないがいうべきことは言う演奏で、ウィーンフィルとの相性も良い。こんなにウィーンらしいベートーベンはグルダかクリーン以来だろう。興味深いのは弾き振りの仕方で、ブッフビンダーはピアノをステージの通常の位置に置いて(天板を客席に向かって開いて)弾き振りをする。当然オケに対しては横を向いて指揮することになる。天板が視界を邪魔するので第二バイオリンなどオケの上手側にはキューは出しにくいだろう。多少指揮しにくくてもピアノの音を犠牲にしないのがブッフビンダー流だ。
     バレンボイムやアシュケナージ、あるいは内田光子など弾き振りをする多くのピアニストは、天板を外したピアノをオケ側に向けて置いて、客席に背を向けて弾き振りをする。ピアノの響きを多少犠牲にしても指揮しやすい位置で弾き振りをするわけだ。どちらがいいということではなく弾き振りに対する考え方の違いだ。ブッフビンダーの場合は大きなアクションは出しにくいが、気心の知れたオケと小さいアクションでコミュニケーションする様子が見られるのもこの映像の楽しさだろう。来日公演を聞いた人も聞きに行けなかった人もぜひ見て欲しい映像だ。ボーナス映像でヨアヒム・カイザーによる29分ものインタビューがついているが日本語字幕がないのが残念。

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     2019/10/01

    指輪と並ぶクプファーの代表作。2幕以外は素晴らしい演出。 これはバレンボイムが同じくクプファー演出の指輪をバイロイトで指揮していた時期にホームグラウンドのベルリン国立歌劇場で上演した公演の映像。エルミング、マイヤー、トムリンソン、カンネンなど多くの出演者がバイロイトの指輪と共通する「チーム・バレンボイム」の演奏だ。90年代頃からワーグナー歌手が顕著に小粒化したのは否めず、エルミングやトムリンソンもコロやゾーティンには及ばないが、ワーグナーらしい一定の質はキープしているのはさすがだ。マイヤー、トムリンソン、シュトルックマン、カンネンは1997年のベルリン国立歌劇場の来日公演でもパルジファル(演奏会形式)を歌った。この来日公演は脇役の花の乙女のアイゼンフェルトやマッティーバ、騎士のビンズツスとヴォルフ、小姓のメンツェルやシュミット、アルトのラングまでこの映像と同じだったそうだ(パルジファルのエルミングは急病でキャンセルした)。
     バレンボイム自身も1987年にバイロイトでパルジファルを指揮し、1990年にはベルリンフィルとの録音も行っている(ここでもカンネン、マイヤーが共通で、トムリンソンはティトレルを歌っている)。作品を知り尽くしているだけに安定感のある演奏だ。
     演出のクプファーは旧東ドイツ時代のライプツィヒで演出を学び、1978年のバイロイトでのさまよえるオランダ人で西側にも一躍有名になった。80年代から旧東ドイツ時代のベルリン国立歌劇場やベルリン・コミーシュ・オーパーで演出をしており、ベルリン国立歌劇場の1987年の来日公演のサロメやベルリン・コミーシュ・オーパーの1991年のボエームとフィガロの結婚、1994年のカルメン、1998年のホフマン物語とこうもりもクプファーの演出だ。私は演出目当てでオペラを観に行くということをしていなかったのでこれらの公演を見ていないが、クプファーはワーグナー以外にも様々な作品を演出しているのだ。
     クプファー演出のバイロイトの指輪はレーザー光線が特徴的だが、このパルジファルは暗めの青白い照明とLEDで白く発光する舞台装置を多用した抽象的な演出だ。歌手の人は近くにこんなものがあって眩しくて歌いにくい(指揮者が見にくい)のではないかと余計な心配もしてしまうが、クプファーは「ひかりもの」が好きなようだ。まるでひんやりとした感じの演出で、私はこういう解釈もありだと思う。ただ2幕の花の乙女を舞台に散乱するブラウン管テレビの映像にしてしまったのはいただけない。だいたい今どきブラウン管なんてないし。
     LD時代から出ていた有名な映像だったが3枚組DVD(輸入盤だが日本語字幕入り)になったのは2012年だ。2012年ならブルーレイで1枚に収めて欲しかったところだが、HD収録されたバイロイトの指輪と異なりこちらはSD収録だったためかブルーレイにはなっていない。SD収録だが画質はまずまず良好だ。ベルリン国立歌劇場のパルジファルは2015年にチェルニャコフの奇妙な新演出(ブルーレイになっている)に変わってしまったのでクプファー演出がDVD化されたことを喜びたい。
     なお、クプファーは2014年に新国立劇場でもパルジファルを演出している。写真で見る限り舞台装置の形はだいぶ違ったようだが、LEDで白く発光する舞台装置の上で白い衣装で歌うというコンセプト自体は変わっていないようだ。ただ2幕の花の乙女の演出は大幅に変わったようだ。

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     2019/09/29

    ブッフビンダーの滋味溢れるブラームス。メータ盤よりこのアーノンクール盤がお勧め。 1946年チェコ生まれでウィーンでピアノを学んだブッフビンダーは80年代にはショパンも何枚か録音しており、またヨハン・シュトラウスの作品をヴィルトーゾ風に編曲したショーピース集なども微笑ましいが、2000年頃からはレパートリーを独墺系の王道であるバッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーベン、シューベルト、シューマン、ブラームスにほぼ絞っているようだ。今ではウィーンの伝統を引き継ぐ数少ない巨匠としてオーストリアでは高い人気を誇るが、日本での評価が評価が高まったのは2013年のウィーンフィルの来日公演におけるベートーベンのピアノ協奏曲全曲演奏会からだと思う。
     協奏曲の録音はアーノンクールやメータなどウィーンゆかりの指揮者との共演が多く、このブラームスの協奏曲もアーノンクールとの98-99年盤、メータ指揮のイスラエルフィル盤(2009年)、メータ指揮ウィーンフィル盤(2015年)の3種の録音があり十八番だと言える。いずれも良い演奏だが、メータ指揮の2種の演奏はテンポが若干速くなっており(特に第1番)、個人的にはこのアーノンクール盤がお勧めだ。遅めのテンポで音の構造や音楽の緩急を解析しながら前に進むようなアーノンクールの指揮がユニーク。この曲の新しい魅力を発見させてくれる。ブッフビンダーのソロは音楽に何も付け加えずにオケに全幅の信頼を寄せて自由に伸びやかに歌っている。これだけの滋味に溢れたブラームスはカーゾン以来だと言って良いと思う。交響曲全集とセットで990円なら買わないと損。

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     2019/09/26

    ヴォルフガング・ワーグナー最後のマイスタージンガー。 この映像は1999年にUnitelがバイロイトで撮影した最後の作品で、2007年になってDVD化された。輸入盤で日本語字幕はないがリージョンフリーで再生は問題ない。1980年制作のシェローとブーレーズの指輪以降、「バイロイト・ライブ」と呼ばれたUnitelの一連の映像は、実際は音楽祭開幕直前のゲネプロ(通し稽古)を1日1幕ずつビデオ収録したもので実際は観客はいない(1978年のタンホイザーのみフィルム収録)。この方法は歌手の負担が少なく、カメラやマイクの配置に制約がないなどのメリットがあった。当然拍手やカーテンコールはない。全ての映像が前奏曲から幕が空いていて指揮者やオケは一度も映らないという演出で、この撮り方は映像に集中するには良い手法だったと思う。しかしコストがかかるのか、歌手の日程を押さえるのが難しくなったのか、2000年代以降に放送局がバイロイトの映像を収録するようになってからは実際の上演を普通にライブ収録する形になった。拍手やカーテンコールも映っている。
     またこの映像は、1998年のパルジファルの映像と並んでヴォルフガング・ワーグナーの最後の演出の記録でもある。ヴォルフガング・ワーグナー演出のマイスタージンガーは1968〜70、73〜75年の第一次演出、1981〜84、86〜88年の第二次演出に続いてこれが3度目となる。1983年収録は映像がLDやDVDで出ていたのでご覧になった方も多いだろう。1996年に初演されたこの第三次演出も特段の「読み替え」を行わず、基本的にはト書きに忠実な演出という点では変わらないが、クプファーやレーンホフの影響か少し暗めの舞台や青色のライティングなど、古典的だった第二次演出よりは少し現代的な演出になっている。その点も1998年のパルジファルの映像と共通だ。
     その一方で、2008年になって初めてCD化された1968年の第一次演出の初演の際のCD(ベーム指揮)に載っている数点の写真を見ると、第二次演出がエヴァーディングの演出にも似た明るい雰囲気を持っているのに対して、第三次演出の3幕などはむしろ第一次演出に近いような気もする。何点かの写真からは雰囲気しか分からないが。
     いずれにしても、1982〜88年のゲッツ・フリードリヒ演出のパルジファルを唯一の例外として、ヴォルフガング・ワーグナーがマイスタージンガーとパルジファルの演出を他人に任せなかったという事実はこの2つの作品に対するヴォルフガングの特別の愛着を示している。
     歌もホルやヘレといったベテランの低声陣が良い。エヴァがバイロイトデビューだったマギーも合っている。最近はジークムントやトリスタンまで歌っているザイフェルトも元々はリリックなのでワルターやローエングリンぐらいが丁度良いと私は思う。バレンボイムの指揮も安定感がある。ぜひブルーレイで国内盤を出して欲しい映像だ。

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     2019/09/22

    パルジファルの史上初のスタジオ録音がブルーレイ・オーディオで聞ける喜び! ショルティによる史上初のパルジファルのスタジオ全曲録音は同じくショルティの史上初の指輪全曲スタジオ録音と並ぶ偉業だと思う。指輪をプロデュースしたカルショーはすでにデッカを離れていたためレイバーンのプロデュースでウィルキンソンとパリーが録音を担当した。このためか、指輪のようにことさらに録音効果を強調せず、パルジファルにふさわしい落ち着いた雰囲気をもたらしている。カルショーの指輪は鉄鍛冶の音やフィナーレで城が崩れ落ちる効果音など様々な趣向を凝らしている。音による物語を分かりやすくしようとしている狙いは理解するが、今にして聞くと不自然に大げさすぎて耳障りで聞きにくいのも事実だ。このパルジファルではそのようなことはなく、ブルーレイ・オーディオの高音質と長時間収録を生かして音楽に浸ることができる。
     歌も総じて優れているが、欲を言えばフリックはあと5年早く録音していたらさらに良かっただろう。ホッターも全盛期を過ぎている。ディースカウも実際には60年代にすでにワーグナーの舞台からは卒業しており70年代以降はヨッフムのマイスタージンガーやクライバーのトリスタンを含めてワーグナーはほとんど録音でしか歌っていないはずだ。コロは逆にあと5年遅ければさらに素晴らしかっただろう。とはいえこれは史上初のパルジファルの録音だったのだ。これだけの大作をこれだけのキャストを集めてスタジオで録音したこと自体がすごいことだと言わなければならない。
     ショルティの指揮もやや健康的で明るいがまずまずだ。ショルティはどちらかというと指輪やサロメなどでの前のめりに力んだ指揮ぶりが印象にあったが、パルジファルではクナッパーツブッシュやカラヤンのような霊感はあまり感じさせないにせよ作品に沿った指揮ぶりで好演だ。この演奏とカラヤン盤の演奏は3幕が約78分なので、3幕をCD1枚に入れれば2幕も1枚に入り1幕が2枚に分かれるだけで済むはずだ。だが残念ながらそういう面切りでマスタリングされたことは一度もなく、2002年発売の24ビット/96khzリマスター盤もこのブルーレイ・オーディオについている4枚のCDも2幕も3幕も途中で切れてディスクを交換する面切りになっているのは大変残念。それだけにブルーレイ・オーディオで全幕を通して聞けるのは有り難い。CDは要らないのでその分安くして欲しい。クナッパーツブッシュ盤(1951年の旧盤のほう)とカラヤン盤も早くリマスタリングしてブルーレイ・オーディオで出して欲しい。

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     2019/09/19

     このDVDも1997年のアンドレア・シェニエのMETの映像と同様にパヴァロッティが2007年に亡くなった後に発売されたが、こちらは1978年のシーズン開幕を飾った映像だ。パヴァロッティは1977年頃からこのカヴァラドッシやトゥーランドットのカラフ、次いでアイーダのラダメスと重たい役に次々に取り組むようになった。パヴァロッティは1980年代まではスカラ座を中心にウィーンなど欧州での活動が多かった印象があるが、METでもすでに人気者で1幕で登場した時点で拍手が湧く。私はデル・モナコの来日時の映像もそうだったことを思い出した。期待通りの見事な歌だ。
     この映像で発見だったのはヴァーレットのトスカが素晴らしいことだ。ヴァーレットは1931年生まれで元々はメゾだったが1970年代の全盛期はソプラノも歌った。私はマクベス夫人やデリラなど癖のある役の印象が強かったのだが、ここでは見事なトスカを聴かせており、パヴァロッティを上回る盛大な拍手を浴びている。METのトスカはドミンゴとベーレンスの1985年のゼフィレッリ演出の映像がLD時代から有名だが、ベーレンスの違和感のあるトスカより全然良いと私は思う。ヴァーレットは2010年に亡くなっているのでこのDVDはヴァーレットの追悼盤でもある。スカルピアはマックニール。1985年の映像でも同役を歌っておりMETのスカルピアと言えばこの人。憎々しい雰囲気がふさわしい。
     こちらの映像はティト・ゴッビの演出家としてのMETデビューだ。少し暗めの演出でゼフィレッリ演出のようなきらびやかさはなく、取り立てて変わったこともしていないが、ヴィスコンティ演出のトスカでカラスと共演した名バリトンの演出なだけに安定感がある。1978年のテレビ放送用の収録なので画質音質はそれなりだが乱れる箇所はなく安定している。ぜひ2020年のパヴァロッティ生誕85周年に国内盤も出して欲しい。

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     2019/09/15

    ポネル監督とパヴァロッティの代表作。ブルーレイ化で画質向上。
     ジャン・ピエール・ポネル監督とパヴァロッティの代表作でLD時代からあまりにも有名な映画。輸入盤だが日本語字幕入りなのがうれしい。パヴァロッティが2007年に亡くなった時にNHKが追悼番組として放送したのもこの映像だ。パヴァロッティの初来日も1971年のNHKイタリア歌劇団のリゴレットだった。
     晩年のパヴァロッティはアリーナコンサートやオリンピック開会式でトゥーランドットの「誰も寝てはならぬ」を良く歌ったのでカラフが持ち役だと思っている若い方も多いだろう。しかしパヴァロッティが実際の舞台でカラフを歌ったのは(確か)1990年代に入ってからで、パヴァロッティを代表するレパートリーを2つだけ選ぶとすればリゴレット(マントヴァ公爵)と愛の妙薬(ネモリーノ)だろう。晩年のパヴァロッティはだいぶ太ったがこの映画では声も見事だが見た目もスタイリッシュだ。全盛期のグルベローヴァのジルダも適役で、これで主役のリゴレットがカプッチルリだったらもう何も言うことはないのだが、ないものねだりか。
     その後パヴァロッティが日本でオペラの舞台に立ったのは1975年のボエームと1993年の愛の妙薬だけだった。いずれもメットの来日公演だ。1993年の愛の妙薬は私も聴いた。パヴァロッティは1977年に単身で来日しコンサートを開いたが、この時の招聘元の不手際で客の入りが悪かったためパヴァロッティは日本を避けていたと言われる。1989年に東京ドームでアリーナコンサートを開くまで12年間も来日しなかった。オペラの舞台でマイクなしの生パヴァロッティを聴けた自分は幸運だ。
     ポネルの演出は豪華で色彩感があり、かつ普遍的なもの。永遠のスタンダードと言えそうだ。ブルーレイでも画面比率は4:3のままでこれがオリジナルのようだ。ポネル監督のUNITELの映画は他にセヴィリャの理髪師、フィガロの結婚、コジ・ファン・トゥッテ、モンテヴェルディの3部作、カルミナブラーナ、蝶々夫人がある。蝶々夫人はブルーレイの輸入盤があるがそれ以外も早くブルーレイ化してほしい。他に舞台のビデオ収録ではバイロイトのトリスタンとザルツブルグでの魔笛、メットでのイドメネオとフィガロの結婚の映像がDVDで出ていた。メットではアルジェのイタリア女のテレビ放送もあったのでいずれMET on Demandで観られるかもしれない。

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     2019/09/13

    恐らくパヴァロッティの残っている最後の舞台映像。 1997年のMETの映像だが、このDVDが出たのはパヴァロッティが2007年に亡くなった後の2011年で、国内盤は結局出なかった。この輸入盤はリージョンフリーで再生は問題ないが日本語字幕はない。DGが出している1996年のドミンゴとフレー二のフェドーラのDVDもそうだが、この時期ならHD収録でも良さそうなのに残念ながらSD画質だ。画質・音質はDVDとしては決して悪くないが、舞台を映すというよりは歌手のアップ中心のカメラ割りで、今にしてみると80年代風の撮り方だ。METは2006-7年のシーズンからライブビューイングでHD映像を世界に配信しているが、METの映像収録は元々は米国内向けのテレビ放送が主な目的だったのでHD化は日本や欧州より遅れていたのだ。フレー二や3大テノールの舞台映像がHD画質で残っていないようなのは残念だ。ドミンゴとショルティのザルツブルグでの仮面舞踏会はオリジナルはNHKのハイビジョン収録だが、DVDで出ているのはHDソースを元にブライアン・ラージがSD画質で編集し直したソースだ。
     さてこの演奏は、晩年少し声が重たくなったパヴァロッティが(確か)舞台で初めて歌ったアンドレア・シェニエだ。スタジオ録音では1984年盤が知られるが、声の成熟を待って満を持した舞台と言えるだろう。晩年だいぶ太ったパヴァロッティだが、十分凛々しい。グレギーナとポンスも適役で、このドミンゴとカプッチルリのウィーンのDVDと並んでこの作品の代表的な演奏と言って良いと思う。2020年の生誕75周年記念でぜひ国内盤を出してはどうだろうか? ただレヴァインがポンスのアリアの後で棒を止めて拍手を浴びているのはMETらしいが、催促しているみたいで私はこういうのは好きではない。
     1990年代以降のパヴァロッティは横浜アリーナや東京ドームなどでマイク付きのスタジアムコンサートが多くなり、オペラの舞台に立つことは少なくなった。しかしMETの舞台には愛の妙薬、トゥーランドット、仮面舞踏会、アイーダ、トスカと2004年までコンスタントに出演し、2004年3月のオペラの引退舞台もMETのトスカだった。この1997年のアンドレア・シェニエの映像は恐らくパヴァロッティの最後の舞台映像だと思われる。1995年のトスカも米国ではDVD化されていたのでぜひ国内盤も出してほしい。

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     2019/09/11

    バルツァ・カレーラス以来の名コンビ。国内盤が出て良かった。 このMETの新演出の初日舞台は当初ゲオルギュー・アラーニャ(元)夫婦の出演予定だったが、この二人が離婚することになって、アラーニャ出演日のカルメンは同時期にモーツァルトのコジ・ファン・トゥッテに出演予定だったガランチャに交替、ゲオルギューはカウフマンがホセを歌う2公演のみに出演した。ガランチャがメットでカルメンを歌うのはこれが初めてだが、この公演の数ヶ月前にローマ(?)でアラーニャとカルメンを歌っていたそうでこの組み合わせは成功している。このトラブルは結果オーライだと言えそうだ。
     ガランチャはモーツァルトやヴィヴァルディの印象が強かったが、近年は少しずつ役柄を広げている。歌い方にゲオルギューのような癖がなく音楽的で、しかし奔放な役作りで十分にカルメンらしい。HD画質のビジュアルが映えるカルメンだ。アラーニャの歌はイタリア物だとドミンゴのような力強さの不足を私はいつも感じてしまうのだが、フランス物はアラーニャにとってお国物で堂に入った歌いぶりだ。ちなみに花のアリアの最後はファルセットで歌っている。彼の役作りにはこの方が合っていると思う。バルツァ・カレーラス以来の名コンビと言って良いのではないのだろうか。MET初出演だったセガンの指揮も好演。これでエスカミーリョがさらに男っぽかったら文句ないのだが。
     メット初演出のエアの色彩的な演出は自然で違和感がない。最近は珍しくなった回り舞台で、私はポネル演出のセヴィリヤの理髪師の舞台を思い出した。ただ最近のMETのライブビューイングでもおなじみの幕間の歌手インタビューは鑑賞の妨げだと思う。本番の最中にインタビューされることを好まない歌手も多いだろうに。エンタテインメント化し過ぎだ。歌手のインタビューや舞台裏の映像は別途特典映像としてきちんと編集し最後につけてほしい(フレー二のMETのフェドーラの映像にフレー二が幕間で表彰されるシーンが映っているが、「まだ次の幕があるので」と言って挨拶もそこそこに袖に戻ったことを思い出した)。逆に終演後のカーテンコールの歌手の表情はエンドロールのクレジットをかぶせずにしっかり見せて欲しかった。
     現時点ではBDで最良のカルメンだろう。世界のBD市場からは完全に取り残されてしまった日本だが、この映像はユニバーサルミュージックジャパンが国内盤を出してくれたことを喜びたい。

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     2019/09/11

    DVDより画質音質が改善。舞台が良く見える。歌手は小粒だが粒ぞろい。 Unitelが1991〜2年にバイロイトで制作したクプファー演出の指輪は当時から有名な映像だった。だが国内盤としては1980年のシェロー演出のバイロイト盤、1989年のレーンホフ演出のミュンヘン盤、1990年のシェンク演出のメット盤に続く4つ目の映像だったこともあり少々地味な存在だったように記憶している。多くのワーグナー好きはこの時点でLDや衛星放送ですでに2、3組の指輪を持っておりさらにもう1セット通して観るのは難しかったのではないだろうか。正直なところ私も、レーザー光線が飛び交う指輪ということしか印象に残っていなかった。
     それに、1990年代に入りホフマンやジョーンズ、コロやベーレンスといったスター歌手がバイロイトに出演しなくなり歌手が小粒化し始めたこともこの指輪が地味に見えた理由だと思う。ジョーンズがバイロイトに出演したのは1980年のシェローの指輪が最後、コロは1983年のポネル演出のトリスタン(ビデオ収録のみ)が最後(1985年のタンホイザーには出演予定だったがリハでキャンセル)、ベーレンスは1985年のホール演出の指輪が最後、ホフマンは1987年のトリスタン(ポネル演出の再演)が最後になったと記憶している。
     しかしオリジナルのハイビジョンマスターから新にブルーレイ化された鮮明な映像でクプファーの指輪を見直すと、どうしてどうしてなかなか悪くない。ゲッツ・フリードリヒもそうだが、クプファーの暗くて抽象的な演出は当時の画質では良く見えなかった。クプファーのバイロイトデビューになったオランダ人ほどのインパクトはないが、21世紀以降のバイロイトでは当たり前になった現代社会への「読み替え」演出よりはよほど良い。歌手も大物はいないがワーグナーらしいスタイルを身につけておりバイロイトがワーグナーの聖地だった頃の懐かしい記録だと言える。これでさらにウォータンかジークフリートかブリュンヒルデが強力だったら5点を付けられたと思う。
     Unitelが制作していた80年代〜90年代の「バイロイト・ライブ」の映像は実際は観客なしのゲネプロ(通し稽古)を音楽祭開幕前に1日1幕ずつビデオ録画したものでライブではない。最近のバイロイトの映像のように拍手やカーテンコール、聴衆ノイズなどは一切ない。80年代のビデオ映像も何とかしてHDアップコンバートしてBD化できないものだろうか? オケや指揮者も一切映らないのは残念でもあるが、これはこれでワーグナーの世界に浸るには良いやり方だったとも思う。その後欧州で制作されるワーグナーの映像は前奏曲から舞台を映しオケや指揮者は映さないUnitel方式を踏襲するのが普通になった。
     このディスクは日本語字幕が入っていないのは残念だが、指輪全曲が6000円程度で入手できるのはCDやDVDと比べて格安なので指輪の映像をすでに何か持っている人も2セット目としてぜひ手にしてほしい。長時間の楽劇を途切れなく通して観られるのはBDのメリットで、これはワーグナーを理解する上では重要なことだと思う。折りたたみ式の紙パッケージに入ったワーナー盤と通常のプラケースに入ったKulturのライセンス盤と2種類の商品があるようだが、小写真集がついているワーナー盤の方がおすすめ。

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     2019/09/11

    神聖というよりは退廃的な演出に注目、歌手も健闘、画質音質良好。 レーンホフが演出したワーグナーの映像は同じくバーデン・バーデンのローエングリンもBD化されており、他にグラインドボーンでのトリスタン、ベルリンドイツオペラのタンホイザーのBDやDVDもある。現在廃盤中だがミュンヘンでNHKがハイビジョン収録したサヴァリッシュの指輪をLDやDVDまたは衛星放送でご覧になった方も多いだろう。現代屈指のワーグナー演出家ということになりそうだ。このパルジファルは好評だったようでイングリッシュナショナル・オペラでも2011年2月に再演された。まるで核戦争の後のような荒廃した舞台設定で、ティトゥレルとクリングゾルの衣装は奇抜だ。レーンホフのトリスタンの演出や、ヴォルフガング・ワーグナー演出のバイロイトのパルジファル(2種の演出が映像化されている)、あるいはクプファー演出のパルジファル(ベルリン国立歌劇場や新国立劇場で上演された)のような抽象的な演出とは少し違う。ある種の現代社会へのアンチテーゼ的な要素が感じられる。それをどう受け取るかは観る側次第だ。私は面白い舞台だと思うが、ちょっと退廃的で神聖な雰囲気はやや希薄だ。前奏曲から舞台を映さずにオケと指揮者を映しているのもMETでは普通だが欧州でのワーグナーの映像では珍しい。3日間のライブ映像とされるが拍手は入っていない。
     歌手は有名なワーグナー歌いを揃えている。でも主役のヴェントリスはまだ弱い。聴いていてコロやホフマンのパルジファルが脳内再生されてしまう(笑)。ルックスはパルジファルそのものなので映像向きか。バイロイトでは長年ティトレルを歌った大御所のサルミネンがここでは大役のグルネマンツを歌っている。決して悪くはないのだが、グルネマンツはバイロイト盤のゾーティンや往年のウェーバーのようなもう少しノーブルなバスの声が合っていると私は思う。サルミネンの少しドスの効いた声(往年のグラインドルに近い)を聴くと私は指輪のフンディングかハーゲンが脳内再生されてしまう。マイヤーのクンドリーはオルトルートやヴェーヌスと並んではまり役。ハンプソンのアンフォルタスも適役。ナガノの指揮はやや速めのテンポですっきりとまとめたもの。ローエングリンはこれで良かったけど、パルジファルはもう少しじっくり聴きたいと私は思う。でもこのぐらいスマートな方が聞き疲れしないという方もいらっしゃるかもしれない。
     画質・音質は良い。以前出ていた3枚組DVD(日本コロンビアから国内盤も出ていた)との比較はしていないが、BDの高画質は生きていると思う。2枚目におまけで75分のドキュメンタリーがついているが、このBDには日本語字幕がついていないのが残念だ。全体としてこの作品のベストチョイスとは言いにくいが注目に値する映像だ。

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     2019/09/08

    ブルーレイ・オーディオのメリットを感じさせる1枚。
     100年以上の人類の膨大な録音遺産が市場として生き延びるの方法は、有料・無料のネット配信か、パッケージであればブルーレイ・オーディオしかないと思う。SACDは収録時間が短すぎる。DVDやBDでオペラやマーラーの長大な交響曲が映像付きで通しで観られるのに、1曲聞くのにディスクを途中で交換することなど今さらあり得ない。SACDは何khzまで高音が入っているのか音源のスペックがディスクのパッケージで分からないのも大きな欠点だ。テレビとオーディオを分けるピュア・オーディオの信奉者の方には申し訳ないが、SACDはアナログレコード同様にニッチのハイエンド市場しか獲得できないと思う。
     今回DGが主力コンテンツであるカラヤンやクライバー、ベーム、バーンスタインのブルーレイ・オーディオを投入したことが一つのターニングポイントになるだろう。カラヤンのベートーベン、ブルックナー、チャイコフスキー全集、クライバーのDG全集、ベームのモーツァルト全集、バーンスタインのベートーベン全集、あるいはデッカのショルティのオペラ、ちょっと前に出たカラヤンのR.シュトラウス集、いずれも良い企画だ。
     特にこのブルックナーの全集はブルーレイ・オーディオの長時間性を存分に生かしている。それに以前出ていたCD全集の音が固かったのでリマスタリングにも注目して聞いてみた。今回のCDの方は聞いていないがブルーレイ・オーディオを聞く限りは24ビット96khzのマスタリング(元々16ビット44.1khzデジタル録音の1〜3番は24ビット192khzへのアップコンバート)は成功していると思う。特に8番はこの全集の中で最も良い演奏だと思うが、アナログ時代に聞いていた響きに近づいたように思う。
     音の傾向は以前DGが盛んにやっていたOIBP(オリジナル・イメージ・ビット・プロセッシング)によるリマスタリングとは異なるようで、アナログテープの音をあまりいじらないで再現することの方に重きが置かれているようだ。アナログ録音の4〜9番ではほんのわずかなテープヒスもそのまま残っている。
     DGはOIBPではマルチトラックのマスターが保存されているデジタル初期(80〜85年頃)の録音はマルチトラックのマスターに遡ってリミックスし直し、マイク間の距離を時間補正していた。これは位相を正確にして正しい音場を再現するもので、これにより残響の聞こえ方と低音の伸びが良くなったが、発売当初のCDとは音質がかなり変った。カラヤンとグリーグ・シューマンのコンチェルトを録音したツィメルマンはこの音質変更に異議を唱えたほどだ。ツィメルマンとDGは決裂はしていないが、恐らくその後のツィメルマンの新録音は「発売後のリミックスやリマスタリングなどの音質変更はしない」という契約になっているのではないかと予想している。
     このブルックナーの1〜3番は結局OIBP化されなかったので、今回のリマスタリングでどう変わったか注目したが、音を聞く限りOIBPのようにマルチトラックのマスターまで遡ってリミックスするのではなく、2チャンネルにトラックダウンしたマスターテープをそのままアップコンバートしているようだ。デジタル初期のやや楽器に近めの音場と固めの音もそのまま再現されているように聞こえるからだ。アップコンバートで高音の抜けが良くなったと思うが、私の装置が96khzまで再生できているか分からないので192khzと96khzの違いまでは聞き取れない。
     演奏そのものについて言うと、私はブルックナーに関してはチェリビダッケやヴァント、あるいは80年代以降のハイティンクの演奏の方を好むようになっているので、カラヤンの機能的で現代的なブルックナーは最近はあまり聞かなくなった。それでも8番は好きな演奏だし5番と9番がそれに続くといったところか。4番と7番はハース版を使ったEMIの旧盤の方が良い出来だと思う。(なので1点マイナス)
     いずれにしても今回のシリーズを機にブルーレイ・オーディオの市場が活性化することを期待したい。シューマンとメンデルスゾーン、ブラームス(60年代のほう)の全集やパルジファル、あるいはガーディナーがDGに録音したバッハ、モーツァルト、ベートーベンのブルーレイ・オーディオ化も期待したい。

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     2019/09/08

    現代最高のステンメのイゾルデ。オケに寄った音量バランスは残念。
     ステンメは1963年生まれのスウェーデンのソプラノ。イゾルデはステンメが2003年にグラインドボーンで歌い大成功を収めた十八番。このBDは2007年の再演時に収録された映像だ。2004年にはEMIのCDでも共演のドミンゴの影が薄くなる堂々とした歌を聴かせ、2005年にはバイロイトでもイゾルデを歌い(指揮は大植英次)世界的に有名になった。ステンメは当初はリリックソプラノだったがバイロイトデビューは1994年のラインの黄金(フライア)と早く、ドラマティックな役への憧れは若い頃からあったのかもしれない。
     評判に違わない素晴らしいイゾルデだ。往年のヴァルナイやメードルとは比較できないにしても、近年のイゾルデとしてはベーレンス以来だと言って良いと思う。ただ惜しむべきは、この映像の録音はオケの音を大きく入れていて、歌手の声を楽しむには音量を上げなければいけない点だ(バーンスタインのCDのような感じだ)。パーベのマルケ、スコウフスのクルヴェナールも好演。ギャンビルというテノールのトリスタンはまあまあだが、イゾルデが良いだけに少々見劣りがする。
     ステンメの声はその後さらに重くなり、2008年にはついにウィーンでブリュンヒルデを歌う(その後マリンスキー劇場やスカラ座、ミュンヘンでも)。今では世界最高のワーグナーソプラノと評されているようだが、録音や映像で聞く限り彼女のブリュンヒルデは少しヴィブラートが粗っぽいような気もする(無理している感じ?)。2016年にウィーンの来日公演でブリュンヒルデを歌ったが私はパスしてしまった。生ではどうだったのだろう?
     ステンメのイゾルデは2012年のヤノフスキ盤も聞いたがやっぱりイゾルデが合っている。METでも2016年に歌ったライブビューイングの映像があるので見てみたい。近年METではシェロー演出のエレクトラやゼフィレッリ演出のトゥーランドットまで歌っている(これもライブビューイング映像あり)。
     さてレーンホフの演出は例によって暗くて抽象的だが、近年良くある現代への読み替えはないので安心して見られる。レーンホフのワーグナーはバーデンバーデンでのローエングリンとパルジファル、ミュンヘンでの指輪の映像もDVDやBDになっている。同時代のクプファー演出のワーグナーの映像はバイロイトのオランダ人と指輪以外はベルリンでのパルジファルがあるぐらいのようだ。世評の高かったゲッツ・フリードリヒは2000年に亡くなってしまったという事情があるにせよ、バイロイトのローエングリンとタンホイザー、ベルリンでのトリスタンとマイスタージンガーの映像はあるが、指輪とパルジファルの映像が残っていないようなのは残念。レーンホフの映像が多いのは偶然なのか、テレビ映えのする演出なのだろうか? もっともミュンヘンの指輪は長らく廃盤なのでぜひオリジナルテープからリマスターしてBD化してほしい。
     このBDはNHKが制作に加わっているが日本語字幕はない。1時間のドキュメンタリーがおまけでついているせいか、BD2枚組になっている。トリスタン全曲だけをBD1枚に収めて欲しかった。先に書いたオケ偏重の音量バランスに若干の不満があるが画質・音質は良好。若干の不満はあるが現代最高のイゾルデが観られるので5点とした。

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