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SS さんのレビュー一覧 

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     2016/09/14

    とりわけ15番=シューベルト最後のカルテットでは、晩年のかれのヴォキャブラリのほとんどが総動員される。その規模たるやハ長調の大交響曲や弦楽五重奏にも匹敵すると言ってもよいだろう。したがって、すぐれた四重奏団の試金石になる。普段はヴィーン・コンツェルトハウスで聴くが、アルバン・ベルク四重奏団の新しいライブ録音が見事であった。スケルツオのトリオでの精緻な美しさと、ものすごいスピード感がかえって情緒あふれる旋律を強く印象つける効果があることを初めて知った。しかも古式に倣いポルタメントをかなり利かせているのも異例であるが、その魅力には抗しがたい。これにはかなり高度なテクニックが必要であろう。私は、世評が?かったアルバン・ベルク四重奏団のモーツアルトやベートーヴェンを、あまり好きになれなかったが、この演奏で見直した次第である。

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     2016/06/03

    スヴャトスラフ・リヒテルが最もよい演奏を聴かせてくれたのは、やはり何といっても1970年代であろう。楽譜の読みの深さ、幻想的な味わいと明快な輪郭、すぐれた技巧と迫力あるピアニズム等々、いずれもかれのベストコンディションを示している。今回、14枚のCDで出たが、うち、シューマンの「交響的練習曲」と「色とりどりの小品」、ベートーヴェンの27番とブラームスのOp.118から、についてはLP時代に私の愛聴盤であったとりわけリヒテルのシューマンは、かれの若い時分から得意であったが、ここに円熟の極みを聴くことができる。リヒテルの天賦の才は、ほとんどシューマンに捧げられたかにみえる。真正のロマンティシズムが、これほど雄弁に、しかも余裕をもって弾かれるのを、かれ以外では一寸聴いたことがない。

     「平均律」第一、第二は、これまたLPから大事にしてきた演奏である。CDになってからは、オリジナルマスターをドイツBMGソノプレス・スタジオで、アンドレアス・ト―クラーが、24bit/96kHzリマスターしたものを聴いてきた。抜群の録音としてよみがえったのだが、強弱の対比がものすごく、少しオーバーアクション気味ではなかったか。今回の14枚については、オリジナル・アナログ・マスターを、タカハシユキオ氏が24bit/96kHzリマスターしたとあるが、音質改善は十分で、「平均律」では強弱が抑制されて、より好ましい状態であるといえるだろう。LPの時は、ザルツブルグのクレスハイム宮の残響が、音像を崩さんばかりであったが、リマスタリングで粒立ちのよい音像になったことは大きな改善点だった。
     スケールというよりキャパシティが途轍もなく大きいシューベルト晩年のソナタ二曲では、リヒテルが生み出す、さらに大掛かりな、構成力に満ちた建築のように、さらにダイナミックこの上ない演奏が再生されるのだ。

     ブリューノ・モンサンジョンの「リヒテル」(2000)で初めて公開された「音楽をめぐる手帳」で、リヒテルの自分自身の録音や、楽しみのために名演奏家の録音を聴いた時の率直な感想が書き綴られている。批判精神に満ちていて、とりわけ自らの録音についての批評はきびしいものがある。
     前述のシューマン、ベートーヴェン、ブラームスについて「手帳」ではこう書かれている。
    「ずいぶんと働いた。その結果が3枚の新譜となった・・・。
    今回の録音は完全にプロの仕事という感じだ。おかげで音楽家や一緒に仕事をした録音技術者たちからもよい仕事だと認めてもらえた。スタジオ録音にもかかわらず、本物の雰囲気と生き生きとした躍動感が出ている。成功だと言ってよいだろう。
    仕事をした録音チームの面々を感謝の気持ちと共に思い出す。<後略>」

     シューベルトのハ短調と変ロ長調のソナタの演奏は、リヒテルらしい壮麗なもので、しかもリマスタリングで曲想の立体感やシャープな立ち上がりが得られ、オリンピアレーベルとは雲泥の差というべきであろう。リヒテルは「手帳」でこう言っている。
    「この二つのシューベルトの遺作のソナタの録音は、欠点よりも美点が勝っている。特に変ロ長調の方の第一楽章は、私見では、最後まで適正なテンポを持続させている。」

     なお、この「手帳」には、コンチェルトの録音に自己批判が集中している。たとえば、カルロス・クライバ―とのドヴォルザークのコンチェルト、マゼールとのブラームス第2コンチェルト、さらに、ベートーヴェンの「三重協奏曲」におけるカラヤンの欺瞞の告発など興味深い。一方で、ロヴロ・フォン・マタチッチとのグリークの協奏曲の録音は、私の「正真正銘の成功例のひとつ」とした。全く同感である。

     今回のオイロディスクのセットで、ラフマニノフの「13のプレリュード」が圧倒的であった。ピアニズムの本質を完全に把握している、つまりかれ自身がヴィルトゥオーゾであったラフマニノフならではのこの難曲をどう料理するかはピアニスト次第だ。スケールの大きさと、ロマンティックな中身の充実がリヒテルならではで、しかも音質も改善されていっそう聴き映えのする演奏となった。60年頃の録音に較べると円熟の極みであることもわかる。しかし、ラフマニノフは24の前奏曲というバッハに連なるコンポジションを目指したが、柴田南雄によれば、「ドイツ音楽と異なり、フレージングやアーティキュレーションは一般に散文的で、アウフタクトにあっても和声的に律動的に強制されていない」ので、ロシアのピアニストでないと難しいのであろう。
    さらにラフマニノフの「音の絵」とチャイコフスキーは、なかなか聴くチャンスがないが、80年代の滋味あふれる演奏であった。ベートーヴェンとショパンにまで触れられなかったが、悪かろうはずはない。
     よってこの14枚のCDは、リヒテルの真価を知るにはうってつけのセットであることに間違いない。

    19人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 17人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2015/10/02

    グールドの全CDは、20bit・SBM盤で聴いてきたが、音質改善の余地は感じていて、新シリーズの期待が大きかった。バッハの鍵盤作品では、まず、揺るぎない安定性、つまり、正確で、メリハリのあるタッチ(アヴァンギャルドでマニエリスティックなグールドの演奏の基幹部分)の再現が要求される。それが従前では十分でなかったようだ。さて、バッハでは、多義的な解釈が許容されるので、ストレートなグールドの行き方はことごとく成功している。まるでかれがバッハの修辞法を知り尽くして演奏に臨んだかのようだ。ベートーヴェンのヴァリエーション、バガテルにも同様なことが言える。
    ソニーはハイレゾオーデイオ開発に注力し、そのノウハウのリマスタリングによる音質向上への寄与が推察され、DSDリマスタリング適用に大きな期待がかかる。
    何枚かを早速プレーヤーにかけてみた。「イタリア協奏曲」、「パルテイータ」第1番、2番は、元来、安定した録音であるが、リマスタリングにより、粒立ちのよさと良い意味での軽さを感じた。最初期、1955年の「ゴールドベルク」も同様で、聴きやすくなった。ノイズで重くなった録音で遭遇する疲労感を感じさせない。コンチェルトでもピアノの粒立ちのよさは認められる。さらに、初期のグールドの詩情が最大限込められた(吉田秀和氏が「手垢のつかないロマン主義の小妖精」と言った)、ブラームスの「間奏曲」集は、幾分色あせた秋の情景を感じさせるものだったが、今回、わずかであるが、淡彩画のような美しく明るい色彩感が加わった、これは素晴らしい。
    ただし、冴えなかった「インヴェンションォニア」だけは、根本的な改善には至っておらず、鈍いタッチが残る。これは残念であった。後半、音量を大きめに聴くと粒立ちの改善は確かに聴き取れる。これに次いで、締まりのよくなかった「平均律」第一巻は見事に改善され、グールドらしいタッチとなっていた。名盤ひしめく中で、この演奏の価値は、このリマスタリングによって、いや増したというべきであろう。それから、曲によっては賛否両論があるモーツアルトは、どれもアヴァンギャルドで面白く聴けた。それほどのグールドだからシェーンベルクの演奏も堂に入っていることは言うまでもない。
    そのような今回の改善効果を一言で譬えれば、ノイズなどで汚れたピアノの一音、一音を、清水で洗ったかのようで、損なわれた透明感もしくは、鈍化したエッジが適度に復元されるが如くである。このさじ加減は難しいところで、度が過ぎると「整形美人」になってしまう。グールドのノンレガート奏法、クラヴィコードのような、乾いた、切れのよい、時には引っかかるようなタッチは、透明度が高く、多声部の聴き分けも容易になったようだ。大方に強く推奨したい。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2015/03/16

    ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、初期、中期、晩年のかれの動向やら精神のあり方が直接感じられる室内楽の金字塔である。四重奏団たるもの、これらへのチャレンジに絶対的な注力を怠らないのは当然のことである。
    カペー、ブッシュ、バリリ、ブダペスト(3種)、ジュリアード(2種)、アマデウス、スメタナ(2種)、アルバン・ベルク、そして東京(2種)という具合に、入手できた録音は全部聴いている。いずれも定評があり、語り尽くされた感があるが、カペーの幽玄さ、ブッシュのドイツ精神の正統、バリリのヴィーン風音色の美、ブダペストの楽譜に忠実、といったところに落ち着いてしまう。一方で、最近の四重奏団では満足できる演奏を聴かせてくれることが難しくなっているのは残念である。アルバン・ベルクなど、どこが良いのかわからないくらいである。

    東京カルテットは、早くから高い実力が言われており、遅まきながら入手した2005〜8年録音のSACDでの全集は、立派な演奏(とりわけ初期作品は)であることは認めるが、どこか疲労感のようなものが漂っていて、残念ながら期待していたほどではなかった。
    そんな筈ではないと、ソニーに90年代初めに録音した全集−これはバジェット盤であるが、24bitのリマスタリングがされている−を入手して聴いてみた。これは目からウロコが落ちるがごとく、初期から晩年まで全曲が説得力のある演奏であることがわかった。とくに中期作品の密度が高い、と同時にこのキレの良さはどうであろう。ラズモフスキー第3は驚くべき快演であって、それでいて情緒面も十分である。それから、録音のせいなのか、四つの楽器のバランスが実に良いのである。とくにチェロが朗々と響き、安定感が抜群であり、ベートーヴェンが編み出した新機軸である、骨組みがしっかりした印象を与えている。テクニックの使い方、合目的性がはっきりしていることが成功の秘訣であろう。
    それから、この全集の嬉しい点がもうひとつ、かつてSP時代のブダペストにだけあったヴィオラ二本の弦楽五重奏曲(ハ長調、Op.29)が含まれていることである。初期ブダペストの演奏では、四重奏曲ほど練れておらず、微温的とでもいうべき段階に留まっていた。東京カルテットでは構成力が倍増して、神経の通った、しかもよく歌う素晴らしい演奏となった。これほどの曲であったとは・・・、ひとつベートーヴェンに名曲が増えたことは、私にとって劃期的な事件だと言いたい。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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