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hiro さんのレビュー一覧 

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     2019/04/15

    夜の底でひっそりと宝石が煌めくかのように、透き通った歌声を聴かせてくれるAreni Agbabianは、カリフォルニア生まれの女性歌手。
    祖先をアルメニアに持つそうで、その縁からか2009年以降、アルメニア出身のピアニスト・Tigran Hamasyanのクインテットに参加し、世界各地をツアーするとともに、アルバム「Shadow Theater(2013年)」などに参加してきました。
    この「Bloom」は、彼女のECMデビュー作。
    Nik Bartsch’s Mobileの「Continuum(2016年)」に参加したNicolas Stockerのパーカッションのみをバックに、秘めやかな儀式のようにピアノを奏で、清らかなヴォイスを響かせています。
    全17曲中、Areniのオリジナルが9曲、Nicolasの作品が2曲、AreniとNicolasの共作(たぶんインプロヴィゼーション)が1曲、トラディショナルなどが3曲、そしてなんとECMのオーナーであるManfred Eicherの作品が2曲という構成。
    即興のような2分にも満たない小品が6曲(内、Eicherの作品は共に30秒程度)も含まれており、スタジオ内でAreniとNicolasが感性の火花を散らしながら、楽曲を作り上げていったと思われます。特に、Nicolasの作品である16曲目「Colored」は、アルバムが終わってしまったかと思うほど沈黙に近い状態が続くパーカッションのみの曲で、アルバム全体に緊張感が絶えることはありません。
    2曲目「Petal One」、5曲目「Petal Two」、14曲目「Full Bloom」は同じ曲で、切ないメロディが繰り返されると、「花弁」「満開」のタイトル通り、花の香りで満たされた美しい情景が目に浮かんでくるかのよう。
    全17曲、約51分。録音は、2016年10月、スイス・ルガーノにて。
    エンジニアは、Yonathan Avishai「Joys and Solitudes(2019年)」などのECM諸作品や、Alessandro Galatiなどのアルバムで知られる名手・Stefano Amerio。
    プロデューサーは、もちろんManfred Eicherです。
    各楽曲が共鳴し合い、儚い夢のような世界を形作っていくアルバム。そして、その美しい世界は、現われてはまたどこかへ消えていきます。

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     2019/02/08

    Ralph Alessi(1963年〜)は、サンフランシスコ出身のトランペッター。
    これまでに、数々のリーダーアルバムをリリースし、ピアニスト・Uri Caineやベーシスト・Drew Gressなどと活動を重ねてきました。
    ECMからは、「Baida(2013年)」「Quiver(2016年)」をリリースすると共に、最近では、Florian Weberの「Lucent Waters(2018年)」にも参加しています。
    この「Imaginary Friends」は、AlessiのECM 3枚目のリーダーアルバム。
    メンバーは、Ralph Alessi(トランペット)、Ravi Coltrane(テナーサックス他)、Andy Milne(ピアノ)、Drew Gress(ベース)、Mark Ferber(ドラムス)で、2010年以降活動を続けているクインテット編成によるもの。
    Ravi ColtraneがJohn Coltraneの子息であることは、良く知られていることですが、彼はAlessiの学友なのだそうです。
    全9曲、約61分。曲は全てAlessiのオリジナル。
    穏やかなテンポの曲が多く、聴き進むうちに、懐かしい情景が目の前に浮かび上がってくるような心持ちになりました。
    落ち着いたムードの中で、Alessiのトランペットが響き渡る1曲目「Iram Issela」。そのトランペットの音には艶があります。Coltraneの力強いサックスが加わると、ドラムスのFerberも明確なリズムを刻み始め、曲は徐々に盛り上がっていきます。美しい空と山々の連なりが頭の中に現れてくるイメージ。
    2曲目「Oxide」は、Milneが密やかにピアノを奏で、トランペット、サックスが絡み合うようにメロディを紡いでいきます。特に大きな変化もなく、穏やかなムードが保たれます。
    リズムセクションが一定のリズムを提供し、テーマに続いてColtrane がモーダルなサックスソロを披露する3曲目「Improper Authorities」。ソロはMilneのピアノに引き継がれ、Alessiのトランペットが淡々と曲を締めくくっていきます。
    4曲目「Pittance」では、トランペットが空を駆ける風のように鳴り渡り、ピアノが美しい響きを添えています。
    ドラムソロから始まる5曲目「Fun Room」。軽快なリズムに乗って、トランペットが多彩なフレーズを繰り出し、低位置で鳴り響くベース、粒立ちの良いピアノ、そしてスムースなサックスと共に、カラフルな空間を形成していきます。
    6曲目「Imaginary Friends」では、アルコ奏法のベースが不思議なムードを醸し出し、トランペット、サックスが自由にメロディを奏でていきます。特定のリズムもないのに統制がとれているのは、Manfred Eicherのプロデュース力によるものでしょうか?
    頬を撫でていく風のように奏でられるAlessiのトランペット。7曲目「Around The Corner」は、4分ほどですが、その心地よい響きにしばらく身を任せたくなります。
    ダイナミックなアンサンブルが登場する8曲目「Melee」は、このアルバムでは最も長い10分を超える曲。Alessiのトランペットが鮮やかに鳴り響いた後、一旦バックの演奏は止み、Milneが自由で美しいピアノソロを奏でます。そして、再び全員の演奏が始まり、Coltraneがソプラニーノに持ち替えて艶やかなソロを披露。変化に富んだ曲調で、ライブではかなり盛り上がると思います。
    ラスト9曲目「Good Boy」は、エピローグと言えそうな曲。ピアノとトランペットによる美しい響きが空間に解き放たれ、そのまま遠い風景に重なっていきます。
    録音は、2018年5月、フランスのペルヌ=レ=フォンテーヌにて。プロデュースはもちろんManfred Eicherです。

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     2018/12/22

    Enrico Pieranunzi(1949年〜)は、イタリアを代表するピアニスト。
    これまでに数多くのアルバムをリリースしてきましたが、特に美しさが際立つソロピアノは多くのファンの心をつかんできました。
    また、ジャズばかりでなく、クラシックにも挑戦する探究心は、Keith Jarrettと共通するものがあります。
    この「Wine & Waltzes Live At Bastianich Winery」は、ワイナリーという珍しい場所で行われたソロライブの記録。
    ライナーノーツには、ワイン樽をバックにピアノを奏でるPieranunziの姿が掲載されています。
    場所が場所だけに、1曲目のタイトルは、「Wine & Waltzes」。そして、その「ワルツ」がタイトルに付いた曲が、8曲中5曲も演奏されています。
    豊潤なワインには、ワルツがお似合いということでしょうか? Pieranunziの演奏にも豊潤な香りが漂っています。
    Pieranunziから観客への挨拶代りの曲「Wine & Waltzes」は、軽快で簡潔な演奏が楽しめます。ミュージカルの挿入歌のようですが、もちろんPieranunziのオリジナルで、彼の作曲能力の高さが証明された曲と言えそう。一杯のワインで、ほんのり頬を染めたうら若き女性と会話を交わしているような、ウキウキした気分にさせられます。
    2曲目「Blue Waltz」は、クラシカルで品のある曲調。Pieranunziのピアノ演奏は説得力があり、その甘い雰囲気に心が満たされていきます。
    しっとりと演奏される3曲目「Twoliness」は、耽美的なムードも漂います。ワインの香りに包まれ、Pieranunziは徐々に自分の世界に沈潜していったのでしょう。
    4曲目「Waltz Today」は、曲がりくねった森の小道をあてどなく彷徨うようなイメージ。森の奥に住む妖精を探し求めているのでしょうか? ピアノの音が美しく煌めきます。
    5曲目「Fellini’s Waltz」のFelliniとは、イタリアの映画監督、フェデリコ・フェリーニのことだと思います。どことなく華やかな演奏は、「映像の魔術師」と呼ばれたフェリーニの映画の一場面に似合いそうです。
    じっくりと奏でられる6曲目「B.Y.O.H.」は、ゴスペル調でKeith Jarrettに通じるものを感じました。ただ、Pieranunziの演奏の方が、より耳に心地良いような気がします。
    7曲目「Waltz Tomorrow」での高音部の美しさは、Pieranunziの独壇場でしょう。両手が自在に鍵盤を行き来し、華麗な世界が展開されています。
    優しげなメロディが心に沁み渡るラストの「Flowering Stones」は、アルバムでは最も長い曲。見知らぬ土地に足を踏み入れた旅人が、あたりの風景を記憶に留めようと、ゆっくりと足を進めていく情景が目の前に広がってきました。
    この会場に居合わせた幸運な観客達は、ワインの香りとPieranunziの美しいピアノ演奏に酔いしれたことでしょう。
    全8曲、約47分。録音は、2017年6月6日、イタリアにて。曲は全てPieranunziのオリジナルです。

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     2018/09/12

    Marcin Wasilewski(1975年〜)は、ポーランドのピアニスト。
    1990年代初期からSimple Acoustic Trioのグループ名で活動を開始。「Komeda(1995年)」「Habanera(2000年)」など優れたアルバムをリリースし、日本でもその名を知られるようになりました。
    その後、ECMレーベルから自己名義で「January(2008年)」「Spark Of Life(2014年)」などのアルバムをリリース。ますます自身の音楽世界を研ぎ澄ましています。
    この「Live」は、2016年8月12日、アントワープにおけるライブ音源。
    4曲目「Night Train To You」以外は、Joakim Milder(サックス)がゲスト参加した「Spark Of Life」収録曲で、ここではトリオ編成で演奏されています。
    メンバーは、Wasilewski(ピアノ)、Slawomir Kurkiewicz(ベース)、Michal Miskiewicz(ドラムス)であり、3人はSimple Acoustic Trio時代からの長い付き合い。文字通り阿吽の呼吸で演奏を繰り広げています。
    ライブならではの躍動感あふれる3人のプレイに、この日、会場に詰めかけた観客の高揚感は尋常ではなかったと思います。
    尚、ライナーノーツには、同じポーランドのトランペッター・Tomasz Stanko (1942 年〜2018年)への3人からの感謝の意が記載されており、Stankoがポーランド・ジャズ界の大きな柱であったことを改めて思い知りました。
    1曲目は、「Spark Of Life」「Sudovian Dance」のメドレー。穏やかなムードから始まり、徐々にリズムが湧きあがってくる中、Wasilewskiのピアノが会場内に美しく響き渡ります。その華麗なテクニックは、いきなり観客の心をつかんだはず。
    出だしはちょっとダークな雰囲気が漂う2曲目「Message In A Bottle」は、ご存じThe Police(Sting)の曲。ロックの名曲らしくピアノ、ベース、ドラムスの各ソロも駆け抜けるように演奏されており、現代のピアノ・トリオらしい力強さが漲ってます。
    ひっそりと、そして煌めくようなピアノが心地良い3曲目「Three Reflections」。3人のプレイは徐々に勢いを増し、大きな川の流れが海に注ぎ込むようなダイナミックな演奏へと発展していきます。
    4曲目「Night Train To You」では、激しいほどのリズムを伴い、迫力のある演奏が繰り広げられます。Wasilewskiのピアノに煽られるように派手にドラムスを叩くMiskiewicz。メロディがすっくと立ち上がり、良い意味での「濃さ」を感じる曲です。そして、Marcin Wasilewski Trio特有の上品さが失われてないのは流石。
    一転して、心癒される田園風景が目の前に広がるような5曲目「Austin」。Wasilewskiがゆったりと紡ぎ出す、美しく親しみやすいメロディに、観客達はうっとりと聴き惚れたことでしょう。拍手の大きさでそれは分かります。
    カッコいいフレーズを送り出すベース、細やかなリズムを叩き出すドラムスに先導された6曲目「Actual Proof」は、 Herbie Hancockの曲。彼のアルバム「Thrust(1974年)」に収録されていました。Wasilewskiのピアノは粒立ちがくっきりしてます。シャープでスピーディーな展開で、畳み掛けるような3人の演奏に、こちらも思わず身体が動き出しそう。
    全6曲、約64分。2曲目、6曲目以外はWasilewskiのオリジナル。
    非常に中身の濃いライブであり、このトリオのロマンチシズムとダイナミズムが存分に味わえる傑作だと思います。

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     2018/01/12

    ピアノトリオに魅せられて、色々とアルバムを漁っていた頃に、Trio Acousticの「Giant Steps」を手にしました。 アップテンポでガンガン押しまくる(時に無骨とも感じる)演奏に、ある種の爽快感を覚えた記憶があります。
    但し、リリカルなピアニストを好むようになり、入手が難しいこともあって、ハンガリーを代表するピアノトリオと言われるTrio Acousticの名は忘れかけていました。
    その後、久々に入手したのが、「Dedicated To You」でした。 メンバーは、「Giant Steps」と同じ、Zoltan Olah(p)、Peter Olah(b)、Gyorgy Jeszenszky(ds)。録音は2010年。曲は全てZoltan Olahのオリジナルです。 尚、ピアノ、ベースはご兄弟とのこと。
    同郷のハンガリー生まれの大作曲家Bartokに捧げた曲が3曲も演奏されているのも、このアルバムの特徴と言えます。
    「Giant Steps」の印象と同じく、情感に訴えかけるというより、テクニカルに押してくるような演奏。 特にその感を強くするのは、スピーディにテーマを提示し、そのまま力強く曲を組み立てていく冒頭の「Young Dark Woman」であり、正にアコースティックなベースの響きが正面から迫ってくる2曲目の「In The Suburb」でも隙のない演奏が展開されます。 スローテンポで美しいメロディをクールに演奏する3曲目の「Dedicated To You」には、緩衝材の趣が。
    暗い雰囲気を演出するピアノが、ベースのリフに先導されて空間を埋めるように音を紡ぎ出してゆく4曲目の「Hommage Of Bartok Part1」では、緻密なドラムソロも終盤で披露され、3人のテクニックが確かなことが証明されます。 高速4ビートの6曲目「Hommage Of Bartok Part3」は、スリル感が味わえますし、続く「Kalo」も、スインギーながらピアノが隙間なく音を埋めていき、ベースもゴンゴン響きます。
    リリカルなピアニストを好んで聴く方にとっては★3.5の評価かもですが、テクニカルな演奏を好まれる方でしたら、★ひとつの加点は間違いない作品だと思います。

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     2017/10/05

    ECMレーベル、ソロピアノと聞けば、Keith Jarrettの名が頭に浮かぶ方は多いと思います。
    確かに「Solo Concerts:Bremen and Lausanne (1973年)」、「The Koln Concert(1975年)」など、Keithのソロは、ECMを代表する作品として、今なお語り継がれています。
    Stefano Battagliaは、Keithのこれまでの偉業をひとつの目標にして、この「Pelagos」の制作に取り組んだような気がします。
    Battagliaは、1965年、ミラノ生まれのピアニスト。主にイタリアのレーベルから数多くのアルバムをリリースしてきましたが、2005年の「Raccolto」を皮切りに、ジャズの範疇にとらわれない斬新な作品をECMから発表し続けています。
    「Pelagos」でも、グランドピアノのみならず、プリペアードピアノを用いた打楽器的奏法に挑戦しており、単なるエピゴーネンでないことを主張しているかのよう。

    CD1は、落ち着いた、そしてちょっとダークな雰囲気の「Destino」からスタート。Battaglia独自の色合いが冒頭から滲み出ています。
    美しい朝焼けが目に浮かぶような2曲目「Pelagos」。録音技術の素晴らしさも特筆すべき点。
    3曲目「Migralia」では、ピアノの響きに、清冽な渓流のイメージが重なります。
    メロディアスで、しっとりとした雰囲気の4曲目「Lamma Bada Yatathanna」。
    5曲目「Processional」では、通常の奏法に加えて、ピアノの弦を叩く奏法が独特の雰囲気を醸し出しています。
    一転してリズミカルに演奏される6曲目「Halap」は、どことなくエキゾチック。
    5曲目同様、ピアノの弦を叩く7曲目「Dogon」には、暗いムードが漂います。
    淡々と奏でられる8曲目「Life」。Battagliaは、タイトル通り、これまでの人生を振り返っているのでしょうか?美しい余韻が、心に染みこんできます。

    CD2の1曲目「Lampedusa」では、繊細なフレーズがひっそりと奏でられます。音数は少ないながら、緊張感が漂うのは、Battagliaの集中力によるものか?
    2曲目「Hora Mundi」の前半は、火花が四方八方に飛び散るような、煌びやかなイメージ。中盤からBattagliaはプリペアードピアノに向かい、思うがままに指を滑らせ、自由度の高い演奏を披露。
    3曲目「Lamma Bada Yatathanna (var.) 」は、CD1、4曲目の別ヴァージョン。Battagliaは、明快なメロディを説得力あるプレイで更に美しく飾り付けています。
    思索的な演奏に、ふとKeithのイメージが重なる4曲目「Exilium」。但し、後半、ピアノの弦をリズミカルに叩く音が聴こえてくると、ここがBattagliaの世界であることに気付かされます。
    5曲目「Migration Mantra」は、場面が一転し、晴れやかなイメージが湧き上がってきます。この曲にも異国情緒が漂っており、それはBattagliaの特徴であると共に、ひとつの武器であるような気もします。美しい旋律が11分を超え、奏でられており、アルバムのベストトラックと言えそう。
    前曲の緊張感から解放され、ほっと一息つく6曲目「Horgos e Roszke」。
    7曲目「Ufratu」も、穏やかで美しいメロディに満たされています。
    「陰と陽」がこのアルバムのテーマなのでしょうか?プリペアードピアノの低音部が強調された8曲目「Heron」には、Battagliaが描く、もうひとつの色彩が感じられます。
    キラキラとしたピアノの音色が心に忍び寄る9曲目「Brenner Toccata」。特に高音部が美しく、Battagliaの抒情性が存分に発揮されています。アルバムの掉尾を飾るにふさわしい曲。

    CD1が全8曲、約61分。CD2が全9曲、約72分。アラブのトラディショナル「Lamma Bada Yatathanna」以外は、全てBattagliaのオリジナル。
    録音は、2016年5月、イタリアにて。プロデューサーはもちろん、Manfred Eicherです。
    美しさと翳りが絶妙にちりばめられた、ソロピアノの傑作。

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     2017/09/04

    Tim Berne(1954年〜)は、アメリカの先鋭的なサキソフォニスト。これまで、Bill Frisell、John Zorn、David Torn、Craig Tabornなど錚々たるミュージシャン達と共演を重ね、数多くのアルバムを発表してきました。
    この「Incidentals」は、「Snakeoil(2012年)」「Shadow Man(2013年)」「You’ve Been Watching Me(2015年)」に続くECMからは4枚目のアルバム。
    Tim Berne’s Snakeoil名義で、録音は、2014年12月、ニューヨークにて。ECMにしては珍しくManfred Eicherではなく、ギタリスト・David Tornがプロデュースを担当。
    メンバーは、Berne(アルトサックス)、Oscar Noriega(クラリネット他)、Ryan Ferreira(ギター)、Matt Mitchell(ピアノ)、Ches Smith(ドラムス、ヴィブラフォン他)の5人編成で、Tornも2曲の一部で録音に加わっています。曲は全てBerneのオリジナル(Prelude Oneのみ、Mitchellとの共作)。ジャケットのフォトもBerne自身によるもの。
    「Snakeoil(2012年)」には、不思議な静けさが漂っていて、Eicherの統制力を強く感じましたが、本作は、Berne達のより自由なプレイを聴き取ることができると思います。
    他のECM作品よりも長めの静寂の中から音が立ち昇ってくる1曲目「Hora Feliz」。出だしは現代音楽風で、不思議な感覚にとらわれます。テーマの提示から、サックス、クラリネットのソロへと続き、演奏は徐々に熱を帯び始めます。5人による複雑なアンサンブルは、都会の夜によく似合うと思いました。(10分26秒)
    2曲目「Stingray Shuffle」は、統制のとれたアンサンブルから始まります。曲が進むにつれて、演奏は自由度を増し、ノイジーな音の群れが宙を漂っていきます。(7分35秒)
    幾何学的であり、かつリズミカルなピアノ・ソロからスタートする3曲目「Sideshow」。サックス、ドラムスとメンバーが順に加わるとスピーディーな展開となり、全員が一丸となって突き進んでいきます。中盤は、テンポを落し、5人が互いを探り合うかのようなインプロヴィゼーションを繰り広げ、再びアンサンブルへと集約。エレクトロニクスも駆使したドラマチックな展開は、都会の一日を音で表現しているかのよう。(26分01秒)
    4曲目「Incidentals Contact」は、変幻自在の曲調で、Berneは、激しいブロウで闇を切り裂いていきます。5人の演奏は激しさを増し、緊張感の持続にゾクゾクしました。(10分47秒)
    一転して、穏やかなテーマが奏でられる5曲目「Prelude One / Sequel Too」。但し、どこか不安げなムードも漂います。Berneのサックス・ソロは熱量を増し、他のメンバーを鼓舞していく。Smithのティンパニが終盤を盛り上げ、アルバムは幕を閉じます。
    人ごみにもまれ、喧騒に疲れた現代人の心にダイレクトに届くであろう全5曲、約64分。
    ヒリヒリとした緊張感が途絶えることはありません。ただ、このサウンドは、人を疲弊させるのではなく、むしろ力を与えてくれるものだと感じました。

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     2017/08/24

    Gary Peacock(1935年〜)は、ジャズ史にその名を刻まれるベーシスト。
    Paul Bley、Bill Evans、Keith Jarrett、菊地雅章など錚々たるミュージシャン達と共演を重ねてきたヴァーチュオーソーであり、高い精神性の持ち主であることは多くのジャズファンの知るところだと思います。
    ECMからのリーダー作「Now This(2015年)」に続くこの「Tangents」は、2016年5月、スイス・ルガーノでの録音。80歳を超えたPeacockによる、正にいぶし銀の魅力溢れるアルバムであり、スピリチュアルな気配さえ感じ取ることができる傑作です。
    メンバーは、「Now This」同様、Peacock(ベース)、 Marc Copland(ピアノ)、Joey Baron(ドラムス)。
    Copland(1948年〜)は、Peacockとトリオやデュオでの共演歴があり、今回も息の合ったプレイを聴かせてくれます。
    そして、Baron(1955年〜)は、大先輩を仰ぐような、控えめながらも的確なサポートにより、このトリオの要の役割を果たしています。
    全11曲、約53分。比較的短い曲もあり、絵画に例えれば、重厚な油絵というより、何枚もの精緻な素描を目にするイメージを抱きました。
    テーマがクッキリと際立ち、いかにもPeacockらしい、瞑想するかのような雰囲気が漂う「Contact」からアルバムはスタート。
    ちょっとPaul Bleyを思わせるピアノの響きから始まる2曲目「December Greenwings」。深みのある演奏で、中間部での、Peacockのよく歌うベースを飾り立てるCoplandのピアノが鮮やか。
    Peacockがリードし、この3人にしては珍しく、4ビートでスピード感溢れる展開を聴かせてくれる3曲目「Tempei Tempo」。
    4曲目「Cauldron」は、自由度の高い演奏で、Coplandが奏でるピアノの音がキラキラと輝くかのよう。
    しんみりとした曲調で、切々と語るピアノと、力強いベースの絡みが素晴らしい5曲目「Spartacus」。
    6曲目「Empty Forest」は、3人によるインプロヴィゼーション。Coplandは自由に歩を進め、Peacockが追いかけていくイメージで、ピアノがとりわけ美しく響き渡ります。
    7曲目「Blue In Green」は、もちろんMiles Davisの「Kind of Blue」に収録された名曲。しっとりとしたムードで奏でられるピアノを背景に、ベースが流暢に語り出します。Baronは、2人のプレイを見守るようにほど良いアクセントを加えていく。5分にも満たないところが残念で、この美しさに飾られた演奏を、もっと聴きたい気がしました。
    8曲目「Rumblin’」は、軽快な曲調で、年齢を感じさせないPeacockのランニング・ベースに刺激を受けたのか、Coplandも溌剌とプレイ。
    どっしりとしたベースを引き立てるようにピアノが奏でられていく9曲目「Talkin’ Blues」。ピアノは徐々に前面に現れ、そこにドラムスも加わって、バランスの良いトリオ演奏が繰り広げられます。
    10曲目「In And Out」は、3分弱のベースとドラムスによるデュオ。
    ラスト「Tangents」は、1曲目同様、Peacockの精神世界が反映されたような曲調で、Coplandの深みのあるピアノの響きが、このトリオの真髄を味あわせてくれます。そして、Peacockの力強いベースに、次作への期待が膨らみました。
    全体に地味な印象を受ける作品かもしれませんが、二度三度と聴くうちに、ジャケット通りの枯れた味わいと、深みのある世界に心を揺さぶられる方が多いと思います。

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     2017/08/03

    この素晴らしいコンピレーション・アルバムの曲目を記させて頂きます。()内は、オリジナルアルバムのタイトルです。
    Disc1「Beach Side」
    1.「Wave」(Antonio Carlos Jobim「Wave」)
    2.「The Girl From Ipanema」(Stan Getz・Joao Gilberto「Getz / Gilberto」)
    3.「Samba Do Aviao」(Os Cariocas「A Bossa Dos Cariocas」)
    4.「Agua De Beber」(Astrud Gilberto「The Astrud Gilberto Album」)
    5.「Desafinado」(Antonio Carlos Jobim「The Composer of Desafinado , Plays」)
    6.「Este Seu Olhar / So Em Teus Bracos」(Lucio Alves・Sylvia Telles「Bossa Session」)
    7.「So Tinha De Ser Com Voce」(Dorival Caymmi・Antonio Carlos Jobim「Caymmi Visita Tom」)
    8.「Vivo Sonhando」(Stan Getz・Joao Gilberto「Getz / Gilberto」)
    9.「Surfboard」(Orchestra「Garota De Ipanema、Original Soundtrack」)
    10.「A Felicidade」(Sylvia Telles「Amor De Gente Moca」)
    11.「Lamento」(Antonio Carlos Jobim「Wave」)
    12.「So Danco Samba」(Wanda De Sah「Softly!」)
    13.「Samba De Uma Nota So」(Os Cariocas「A Bossa Dos Cariocas」)
    14.「Triste」(Antonio Carlos Jobim「Wave」)
    15.「O Amor Em Paz (Once I Loved)」(Toninho Horta「Once I Loved」)
    16.「Piano Na Mangueira」(MPB4・Quarteto Em Cy「Bate- Boca As Musicas de Tom Jobim e Chico Buarque」)
    17.「Chega De Saudade」(Antonio Carlos Jobim「The Composer of Desafinado , Plays」)

    Disc2「Forest Side」
    1.「Chovendo Na Roseira」(Elis Regina・Antonio Carlos Jobim「Elis & Tom」)
    2.「Passarim」(Antonio Carlos Jobim「Passarim」)
    3.「Insensatez」(Antonio Carlos Jobim「The Composer of Desafinado , Plays」)
    4.「Luiza」(Antonio Carlos Jobim「Passarim」)
    5.「Olha Maria」(Chico Buarque「Construcao」)
    6.「Cronica Da Casa Assassinada」(Tom Jobim「Matita Pere」)
    7.「Choro(Garoto)」(Goro Ito・Jacques Morelenbaum「RENDEZ-VOUS IN TOKYO」)
    8.「O Grande Amor」(Goro Ito with Jaques Morelenbaum・Ryuichi Sakamoto「Getz / Gilberto +50」)
    9.「Eu Te Amo」(Telma Costa・Chico Buarque「Vida」)
    10.「Dindi」(Sylvia Telles「Amor Em Hi-Fi」)
    11.「Correnteza」(Boca Livre「Personalidade」)
    12.「Sabia」」(MPB4・Quarteto Em Cy「Bate- Boca As Musicas de Tom Jobim e Chico Buarque」)
    13.「Aguas De Marco」(Elis Regina・Antonio Carlos Jobim「Elis & Tom」)
    冒頭を飾る「Wave」が全てを物語るように、Antonio Carlos Jobimの癒しの世界には、何ものにも代えがたいものがあります。
    2枚組のうち、Disc1は、ボサノヴァの定番曲で占められています。Jobimの、いやボサノヴァのファンならお馴染みの曲ばかりと思いますが、我国ではそれほどポピュラーとは言えないToninho HortaやMPB4、Quarteto Em Cy達の歌声を聴けるのは貴重。
    Disc2は、渋い雰囲気の曲が収められています。ボサノヴァというより、ブラジル発「大人の音楽」とでも呼びたいような・・。
    そして、中原仁による選曲の素晴らしさは、Disc2「Forest Side」にこそあると思います。
    Jobim自らが歌う曲の魅力を再認識させてくれるのも「Forest Side」の特徴。Jobimの歌は決して上手いとは言えないまでも、深みがあり、音楽、そして自然を愛する者にしか表現できない優しさが込められている。
    また、伊藤ゴローの卓越したギターテクニックが光る「Choro (Garoto)」「O Grande Amor」は、ボサノヴァに新たな息吹をもたらしており、このコンピレーションの白眉となっています。
    Disc1がJobimの手になるインストゥルメンタルの代表曲「Wave」で始まり「Chega De Saudade」で終わる構成、Disc2がJobimとElis Reginaのデュエットによる名曲「Chovendo Na Roseira」で始まり「Aguas De Marco」で終わる構成というのも心憎い。
    Disc1が全17曲、約50分。Disc2が全13曲、約52分。
    始めてボサノヴァに触れる方はもちろん、コアなファンにも楽しんで頂けるコンピレーションだと思います。

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     2016/11/12

    ニルス・ペッター・モルヴェル(1960年〜)は、ノルウェーのトランペッター。
    エレクトロニクスの多用により、それまでのECMのイメージを覆した「Khmer (1997年)」、そして「Solid Ether(2000年)」で我々を驚かせたことを、つい昨日のことのように思い出します。
    レーベル移行後も、フューチャー・ジャズと称された斬新な作品を発表し続け、ジャズ、フュージョンのみならず、ロックファンにもその名を知られる存在となりましたが、最近は、時代が彼に追いついたのか、かつての先進性は鳴りを潜めた感があります。
    しかし、この「Buoyancy(2016年)」を聴いて、現在のモルヴェルは、決して過去の成功体験にとらわれず、深みのある作品を時間をかけて作り込んでいる、という印象を受けました。
    緩いテンポで始まる1曲目「Ras Mohammed」には、「Solid Ether」当時のヒリヒリ感はありませんが、ペダルスティール・ギターに導かれた、まったりとしたサウンドは、知らず知らずのうちに身体に沁み込んでいきます。
    以降の曲も、モルヴェル独特のクールネスに彩られており、何度も聴き直したくなりました。
    特に7曲目「Amed」は、9分以上にも及ぶ熱演で、モルヴェル・ワールドが炸裂。ダイナミックなドラムスにも圧倒されます。
    そして、アルバムを聴くほどに好感度が高まる理由は、モルヴェルの不断の努力によるものだと確信しました。

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     2016/11/01

    80歳を迎えたスティーヴ・ライヒ(1936年〜)を祝福するアルバムが次々とリリースされていますが、このブラッド・ラブマン指揮によるアンサンブル・シグナルの「ダブル・セクステット / レディオ・リライト」もその1枚。
    アンサンブル・シグナルはライヒの代表作「18人の音楽家のための音楽」もリリースしており、その透徹した演奏は新たなマスターピースの誕生を予感させました。
    「ダブル・セクステット」は、2011年3月11日・12日の録音。文字通り、2組の6人編成、すなわち、ヴァイオリン2、チェロ2、フルート2、クラリネット2、ピアノ2、ヴィブラフォン2の計12名により演奏されています。
    本来は、あらかじめ6人で演奏したテープを会場で流し、そこに音を重ねるようにして、6人が演奏する曲だそうですが、アンサンブル・シグナルは、12人編成で一気に演奏しています。
    非常に力強く、緊迫感さえ伴って演奏される「T. Fast」。そこには現代が横たわっているようで、人々がどこかへ追い詰められていくような情景も浮かび上がってきます。
    一転して、たおやかな「U. Slow」。つかの間の平穏でしょうか?これから訪れるであろう変化の時に備えるようにも聴こえます。
    再びアップテンポで隙のない演奏が続く「V. Fast」。何かに急かされるように進み、歯切れの良いエンディングを迎えます。
    鮮やかな色彩感に溢れた演奏は見事。
    「レディオ・リライト」は、2016年1月24日の録音。ライヒが、先鋭的なロックバンド、レディオヘッドの楽曲にインスパイアされて書いた作品であることは、双方のファンによく知られていると思います。
    ちなみに、レディオヘッドのギタリスト、ジョニー・グリーンウッドがポーランドの音楽祭で、ライヒの「エレクトリック・カウンターポイント」を演奏したことが、この曲の誕生につながったのだそうです。
    さて、「レディオ・リライト」は、フルート、クラリネット、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、エレクトリックベース、ピアノ2、ヴィブラフォン2の計11名により演奏されています。
    「T. Fast」は、こちらに向かってグイグイと迫ってくるかのような曲。ロックの力強さが表現されているのでしょうか?
    「U. Slow」は、穏やかな世界へと転じていきます。ゆったりと流れるサウンドはどこか東洋的。
    「V. Fast」には、さほどの速さは感じられません。ミディアムテンポで力強さを秘めたメロディが奏でられ、ミニマル・ミュージックというより、クラシカルなムードが香り立ちます。
    「W. Slow」では、再びスローに移行していきますが、ある種の緊張感が曲を支配しているように感じられます。
    「X. Fast」は、前曲の緊張感を引き継いでドラマチックに展開していく中で、クライマックスが訪れます。
    ライヒは、アフリカ音楽やガムランを研究した当時と同様に、ロックをも自家薬籠中の物にしてしまったのでしょう。
    それにしても、70代後半という年齢でロックバンドに興味を持つとは・・・。いつまでも探究心を失わない天才、ライヒに改めて敬意を表したいと思います。
    全8曲、約40分の澄み切った世界に浸りながら。

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     2016/09/16

    頬を優しく通り過ぎていく風のようなサウンド、と言えば良いのでしょうか?
    この「Streams」、全体に起伏が緩やかで、さりげなく始まり、さりげなく終わっていく、という印象。
    ヤコブ・ブローは、1978年生まれのデンマークのギタリスト。本作は、「Gefion(2015年)」に続くトリオ編成でのアルバムで、これもECMからのリリース。
    ベースは、前作同様、トーマス・モーガン。そして、ドラムスは、ヨン・クリステンセンからジョーイ・バロンに変わりました。
    前作は、ふとビル・フリゼールを思ったりしましたが、今回は、より自分らしさを前面に押し出しているようです。
    その自分らしさとは、フリゼール風の浮遊感はそのままに、ブローなりの「歌」をギターで表現していることだと思います。
    それは、2曲目「Heroines」や、5曲目「Shell Pink」に顕著。ギター・ソロで再演される6曲目「Heroines(solo)」で、その印象は更に強まります。
    かつて共演したことのあるポール・モチアンに捧げた3曲目「PM Dream」は、インプロヴィゼーション主体でこの方向も魅力。
    全ての曲に優しさが内包されており、3人が自己主張せず、互いの音を尊重しながら淡々とサウンドを形成していく感じ。
    ECMのレーベル・コンセプトである「沈黙の次に美しい音」を、3人が丁寧に現実のものにし、空間に解き放っています。
    7曲中6曲が、ブローのオリジナルで、「PM Dream」のみ3人の共作。録音は、2015年11月。プロデュースは、もちろんマンフレート・アイヒャーです。

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     2016/07/28

    ECMレーベルは、洗練されたジャズのみならず、クラシック、現代音楽の秀作を数多く我々のもとに届けてくれました。そしてもうひとつ忘れてならないのは、民族音楽系の優れたミュージシャンを紹介してくれるレーベルでもあること。
    フィンランドの民族(撥弦)楽器カンテレを巧みに弾きこなし、美しい歌声を聴かせてくれるノルウェーのSinikka Langeland(1961年〜)。彼女の清冽な音楽を、遠く離れたこの日本で楽しむことができるのも、ECMあってこそ。
    さて、ノルウェー出身ということもあり、Sinikkaはこれまで、Anders Jormin、Arve Henriksen、Trygve SeimなどECMファンにはお馴染みのミュージシャンとアルバムを制作してきました。
    この「The Magical Forest」では、気心の知れたメンバーと共に、美しいコーラスで知られる女性3人組・Trio Mediaevalをゲストに招き、彼女ならではの穏やかで清々しいサウンドを創造しています。
    歌詞もしっかりとライナーノーツに記載されており、今回は特に歌へのこだわりを強く感じました。
    北欧の空気は、ここで聴かれるサウンドのように澄み切っているのでしょうか?
    そして、いたるところに広がる森には、今も妖精が棲み付いているのでしょうか?
    SinikkaとTrio Mediaevalの、森を吹き抜ける風のような歌声を聴いていると、そんな思いに駆られます。
    メンバーは、Sinikka Langeland(ヴォーカル・カンテレ)、Trio Mediaeval(コーラス)、Arve Henriksen(トランペット)、Trygve Seim(サックス)、Anders Jormin(ベース)、Markku Ounaskari(パーカッション)。録音は、2015年2月、オスロのRainbow Studio にて。
    全9曲ともSinikkaのオリジナル(うち2曲は原典があるようです)。
    このヴォーカルが強調された味わい深いサウンドは、演奏に参加しているスウェーデンの卓越したベーシスト・Anders Jorminの世界に符合するものがあり、彼の傑作「Trees of Light(2015年)」をふと連想しました。
    また、かつては尺八の音色のようだと評されたArve Henriksenのトランペットは、Trygve Seimのサックスと共に女性4人の歌声に華やかな彩りを添えており、ジャズと民族音楽の融合を高次元で達成しているように思えます。

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     2016/06/29

    Glauco Venier(1962年〜)は、イタリアのピアニスト。ECMファンには、ヴォーカリスト Norma Winstoneの伴奏で知られていると思います。
    この「Miniatures」は、サブタイトル「Music for piano and percussion」の通り、Venierが一人でピアノとパーカッション(ゴング、ベルなど)を演奏したアルバム。
    ブックレットには、右手を鍵盤に置き、左手で金属片を叩いているフォトも掲載されていますが、1人多重録音による曲が多いようです。
    全15曲・約55分で、いわゆる小品の集まり。しかし、音色の透明度が高く、何気なく聴いているうちに、徐々にVenierが構築する世界に惹き込まれていきます。
    そして、ECM作品だからといって、構えて臨む必要はなく、非常に聴きやすいサウンドに仕上がっており、聴きようによっては、Keith Jarrettの抒情的な部分を、綺麗に掬い上げたかのように感じるのは、プロデューサー Manfred Eicherの力によるものか?
    録音は、2013年12月、スイス・ルガーノにて。
    多忙な毎日が続く中で、思いがけず、ふと訪れた短い休息のような音楽とでも表現したい傑作。

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     2016/06/25

    天才的ともいわれたベーシスト、Miroslav Vitous(1947年〜)は、Weather Reportの創設メンバーのひとりであり、1971年のファーストから、「Live in Tokyo」を含む5枚のアルバムに参加。
    バンド脱退後も、WRへの想いは強かったようで、2009年には「Remembering Weather Report」というそのものズバリのアルバムをECMからリリースしています。
    そしてこの「Music Of Weather Report」。70歳を目前にして、ここまでWRに切り込む作品を制作するとは、思いもよりませんでした。
    自己の音楽活動の総決算という意味合いもあるのでしょうか?
    全体を通して、やはり初期のWRにあった「Vitous的なもの」を拡大再生産しているように感じました。ビートよりもムーディなサウンド作りに注力している部分に、それを強く感じます。
    そして、当時は犬猿の仲と言われたJoe Zawinul(1932年〜2007年)の「Birdland」を正面切って取り上げているのには驚かされました。この「Birdland Variations」には、同じくZawinul 作の「In A Silent Way」を思わせるフレーズも登場し、VitousによるZawinulへのオマージュと解釈してもいいと思います。
    録音は、Vitous のセルフ・プロデュースにより、2010年から2011年にかけて行われています。
    メンバーは、Miroslav Vitous (double bass.key)、Gary Campbell (ss.ts)、Roberto Bonisolo (ss.ts)、Aydin Esen (key)、Gerald Cleaver (ds)、Nasheet Waits (ds)。ツインサックス、ツインドラムスという意欲的な編成。6人が高度な演奏技術を駆使して、自由にイメージを膨らませ、サウンドを構築しています。
    目の前に幻想的な風景が広がるようで、久々に往年のECMを思わせる作品に出合うことが出来ました。

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