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2016/06/12
アラウもモーツァルトも好きで,それなりに分かっているつもりでした・・が,アラウの弾いたモーツァルトのピアノソナタで感じた驚きは予想外のものでした。モーツァルトのピアノソナタで賛否両論かしましい最右翼はグールドの演奏だと思います。私は彼のモーツァルトも好きでよく聞いています。グールドが自分はモーツァルトをそれ程評価していないという意味の言葉を残していますが,私はその言葉を真には受けていません。彼のモーツァルトから感じるのは,既成のモーツァルト演奏に対する拒絶意識とそれから解放したモーツァルトがどれほど面白いものなのかという点です。聞く私たちを試みる試金石のような演奏ですが,グールドにとってはバッハ,ベートーヴェン,シェーンヴェルクその他の作曲家で行っているアプローチと違うことを行っている意識は持っていなかったはずです。アラウのモーツァルトもアラウを評価する人たちの間でも意見が分かれるようですが,アラウはグールドよろしくモーツァルトを弾いているように思えてなりません。モーツァルトとの相性云々で簡単に判断してはいけない世界で,アラウはモーツァルトを表現しているのです。さて,聞き手の我々がアラウの本心,本音をどこまで聞き取れるか・・アラウは素晴らしい謎かけをしてくれているように感じます。