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てつ さんのレビュー一覧 

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/05/29

    ハイドンの弦楽四重奏曲は、この演奏があれば私にとって「現在のところ」他はいらない。曲、演奏、録音の三拍子揃った典型がここにある。「ひばり」の冒頭を聞けば全てわかる。俗に言う「決定盤」の最高峰がこのディスク。聞いていない方は是非ご堪能いただければ、と願っております。

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/05/22

    1番、2番と同じ路線を期待すると少々肩透かしを喰らう演奏。3番は重心が低くドッシリ構えたオールドスタイル。もちろん巨匠の到達点なのだろうが、もう少し「重くないブラームス」を想像していたのでちょっとビックリした。クナッパーツブッシュを想起したくらいだ。この路線、決して悪くない。この曲の冒頭はシューベルトの弦楽五重奏曲の冒頭の引用という説があるが、巨匠はおそらくそれを知っているから、二小節目に大きくクレッシェンドして、主題に入る。第二主題もゆったり。その反行形の弦楽部分も歌う。この曲、ブラームス自身が小さい交響曲と呼んだといわれているが、巨匠はハンス・リヒター言う通り「ブラームスの英雄」的要素がある、と踏んでいるに相違ない。2楽章もしっかり響かせるし、3楽章は「こってり」である。このシリーズ共通であるコントラバスのピッツィカートが強調されている。4楽章も堂々とした音楽。終結部は安らぎではなく、決然としたPPで終わる。名演と思う。4番も同じ路線。堂々とした演奏。ゲヴァントハウスもこういう音が出せるなら、この路線で行って欲しいと思う。ネルソンスの時とは全く違う音がする。加えて、両翼配置でこれだけドッシリした演奏は過去になかった。ブラームスの意図した掛け合いがハッキリ聞けたのも収穫。このシリーズ、1番2番はインテンポ、3番4番は遅めのスタイルと前半後半で色を変えてきた。この懐の深さが、巨匠ならではなのだろう。また素晴らしい全集が増えた。これは後世に残したい。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/04/22

    このディスクに限らないが、内田光子を聞くと、ピアニストというのはどれほど厳しい仕事なのだろうと思う。ディアベリ変奏曲、難曲中の難曲である。あんな変哲な主題から始まり、途中でモーツァルトのアリアを借用してウサを晴らし、技巧をつくし、最後に穏やかなメヌエットで締めくくる、1時間もかかる大曲。私なら「暗譜すら無理」である。でも、内田光子はケタが違う。冒頭主題から「違う」のである。こう言うやり方があったのか、と納得する。第一変奏も「あーそう来たか」と嬉しくなる。こう言う発見と集中が、最後まで続く。なんでベートーヴェンが最後にメヌエット置いたのか、内田の演奏を聞くと心から納得できる。 

    この難曲、ハンマークラヴィーアと同じくピアニストにとってのエベレストだから、挑むピアニストは多い。しかしこの内田光子ほど、完全に登頂したディスクはない、と、私は思う。昨年の実演も聞いたが、こうやってディスクに残ることを喜びたい。掛け値なしに内田光子は世界最高のピアニストであることを実感できる。
    彼女のインタビューを読むと、準備に物凄い時間を費やしているのがわかる。ピアニストと言うのは本当に精根尽くして名曲に対峙するのだと、心から感嘆する。

    ジャケ写も良い「MITUKO UCHIDA」と大きくクレジットされているのが私にとっては心から嬉しい。ユニバーサルはもっとこの巨匠の録音を後世に残すべきである。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/03/31

    弱冠26歳にしてパリ管の首席?マジかよ、と訝っていたが、聞いてビックリ!ホンモノどころじゃない。私はマケラの日本ファンクラブを設立して会長の座に付きたい、すら思える名盤である。

    私はシベリウスが好きだが、スコアの速度記号通り演奏するとせせこましくなるといつも思っていた。だからあのベルクルンドさえ、あっさりし過ぎだと思っていた。ところがこのマケラ、オスロフィルの少し薄い響きを活かして、極力スコア通りに演奏しつつ、基本的に腰の座ったじっくりしたテンポで歌いまくる。これですこれ。私はこういうシベリウスが聴きたかった。シベリウスのスコアは複雑で難しいと思う。音が絡み合っているからじっくりしたテンポを取りにくい。余程しっかり読み込まないとメチャクチャになる。マケラはそれに挑み成功させた。具体的にいうと、1番は出だしから抑え気味ながら余裕を見せている。だからスケールが大きい。あと細かい動きをしっかり拾っているので、こういう音がするのか、という発見も多い。特に4楽章最後のじっくりした作り込みがいい。2番も同様のアプローチだがもっと優しい。私は冒頭だけで泣きそうになった。暖かいシベリウスって想像もしていなかった。4楽章のメリハリも心に沁みてくる。最後など、なぜ皆スコア通りにやらないのか私は疑問だったが、マケラは本当にスコア通り、かつG6→Dの最後の和音を心からの共感で締めくくる。私は3番が雑な全集は嫌いだが、ここでもマケラはしっかり歌ってくれる。1楽章コーダを聞けばマケラの真摯さと優しさがわかる。3番は名曲である。4番は厳しさと優しさの交替で成り立っている。最後も絶望ではなく、そこはかとなく救いが見える。5番はもともと曲が優しいから、鳴らしすぎないように良い意味で抑制している。お若いのにそんな抑えなくても・・と思うが、マケラは自己抑制できるオトコなんです。1楽章の最後など、マケラが一番バランスよく演奏していると思う。私は6番が一番好きだが、この曲こそせせこましい演奏が多い。マケラは最初から落ち着いたテンポでこの名曲をしっかり歌い上げる。曲の冒頭は冷徹な歌い込みだが、終楽章はゆっくり暖かくなる。練習番号LのAllegro assai をしっかり歌ってくれるのが本当に嬉しい。こういう演奏だから7番が良いのは当然である。マケラは楽章の終わりには常に相当気を配っており、理想の鳴らし方をする。あの難しい7番の終わり方、マケラが絶対いい。あと3つのフラグメントは聞けただけで嬉しい。これはシベリウスそのものだ!マケラにとってこ全集が実質のデヴュー盤。これだけ鮮烈なデヴューはカルロス以来と絶賛したい。というかシベリウスの全集としてもヴァンスカと並ぶ最右翼である。

    一つだけ難癖。ジャケ写がダメ。Wiki見るだけでもっといい写真あるんだから使ってあげなきゃ。メジャーレーベルのデヴュー盤だよ。もっと気を遣ってあげなよ。と心から文句言いたくなる。

    それにしても、パリ管の慧眼恐るべし。あの響きの良いホールでこのコンビが聴けたら、本当にファンが増えるだろう。これからもファンクラブの会長として、マケラを応援したい!
    早く実演が聞きたい。

    8人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/03/08

    ロンドーは今回初めて聞いたが、これは恐るべき説得力を持つゴルトベルグだ。最初のアリアを聞けば、一音一音考え抜いて弾いているのがわかる。テンポは遅い。最初のアリアだけで5分半もある。通常すべてのリピートを実行した録音は80分前後のものが多いが、これは108分!30分近くも長い。しかし、聞いていてなんの違和感もない。遅いなぁとも感じない。この傑作を録音する方は全て考え抜き、またグールドという高い壁の存在に畏怖しつつも、自らの可能性を探っていると思うが、それにしてもこのロンドーの演奏は何かが違うと感じる。私が思うに、ロンドーの最大の特徴は、この曲のメロディをしっかり鳴らすことで、旋律線が必ずきれいに描かれる。他の演奏では、伴奏の分散和音が旋律線の邪魔をすることもあるが、ロンドーは伴奏が旋律線と重ならないよう細心の注意を図っている。また、「響き」にもこだわるので、必然的にテンポが遅くなるが、その効果は抜群である。例えば第16変奏の最後の寂寥感や、曲の最後のG音の深淵さとか、音で精神世界を描き出す。リピートでも同じ「繰り返し」を拒否し、演奏の可能性をトコトン追求する。最初のアリアと最後のアリアはテンポも装飾も響きも異なる。そのためにロンドーは楽譜から楽器まで、多大な労力を払っているのだろう。その姿勢が、演奏以前の蓄積こそがロンドーなのだ。この名曲に新しい命を吹き込んだ傑作ディスクであると、私は心からそう思う。齢30にてこの姿勢は怖さすら感じる。何かを犠牲にして削ぎ落としている感もする。優れた古楽器奏者はマンロウもスコット・ロスも早世した。失礼だし、不謹慎とも思うが、ロンドーにそういう哀しみが訪れないように祈りたい、とすら思った。最後に、録音についてだが、音自体は明晰であるものの、若干残響感が引っかかる。これを是とするかどうか、この点だけは意見が分かれると思う。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/03/07

    今回もジャケ写が秀逸である。前回のベートーヴェン チェロソナタで、笑顔結社ヨーマーに身を投じたアックス、早くも完全に同化して宗家よりも満面の笑みを讃えるに至った。そこに勧誘されたカヴァコス 、彼らの上部組織、S・クラシカルの意向にも逆らえず、参加はしたものの、「俺は感化されないぞ」というカヴァコスの心の揺れを映し出しており、またも笑いを誘う素晴らしい出来である。さて、本題だが、演奏自体は完全にヨーヨーとアックスのペース。彼らは決して出しゃばらず、自然な流れを重視している。特にヨーヨーは編曲のせいもあるかもしれないが、完全に一歩引いている。言い換えれば、ヨーヨーとアックスのサポートの下にカヴァコスが得意の美音を響かせているようなアルバムである。2番だと、ファウスト・ケラス・メルニコフの名盤があるが、あちらが颯爽として、推進力中心の音楽作りなのに比べ、こちらは余裕の大人という感じ。いつもの通り力は抜けているが、スケールは大きい。ところで、この2番のピアノトリオ版はベートーヴェン本人の編曲と思っていたが、アックスがワシントンポストのインタビューで、この編曲はフェルディナント・リースが編曲し、ベートーヴェン が監修した、と述べている。ここでの演奏もベートーヴェン編曲とされている楽譜を使用しているが、本人編曲ではないことを初めて知った。また5番は有名なコリン・マシューズの編曲。新しい響きを模索していると思う。それにしても、ヨーヨー・マは先程のインタビューで言いたい放題。「マシューズはあまり好きじゃない」とか挙げ句の果ては「カヴァコスは本当は俺たちとやりたくないんだ」とか。アックスも「カヴァコスは他で忙しいからな」とフォローしている。どこまでが本気でどこまでがジョークなのか(笑)。カヴァコスがこの二人と距離を置いたあのジャケ写は当然なのかもしれない。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/02/23

    5番の録音が2019年5月だから、録音してすぐにこのコンビは来日して同じ曲を演奏した。当然と言えば当然だが、私も聞いたこのコンビの演奏会の記憶とこのディスクはマッチする。確かに綺麗だったが、これがブルックナーかと言われるとちょっと首を傾げる。もちろんネルソンスはそんなことはわかっている。その上で5番ではこういう演奏を繰り広げている。ブラームスと同じように、ブルックナーも「必要以上に重くなりすぎていないか」という彼なりの問題提起であり、しっかり響かせながら、流線型を目指しているのだろう。こういうネルソンスを聞くと、私は自分に自信が持てなくなる。なんとなく同郷の先輩であるヤンソンスと同じ香りがする。ネルソンスもヤンソンスも同じように「美しさ」を求めている。しかし、私にはあまり響かない。でも彼らは大スターだ。私の感性がおかしいのだろうか、と思ってしまう。でも、なんとなくわかってきたようが気がするのだが、ネルソンス、ドイツ物以外の方が良さが出るのではないだろうか。ベートーヴェンもつまらなかったし、ボストンでもブラームスよりショスタコーヴィッチの方が良いと思う。ところで、なぜかブルックナーの1番はある意味5番より力が入っていて、私には好ましかった。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/02/18

    ポゴレリチがソニークラシカルと契約してから、新譜が出るようになって嬉しい。また、ショパンに回帰してくれたこともますます嬉しい。このアルバムではポゴレリチ節ともいうべき、明晰なタッチで濃厚な音楽がたっぷり味わえる。インテンポ、と楽譜に指定のある場所であっても一音一音を大切にするポゴレリチには関係ない。微妙なテンポの揺れで歌いまくる。普通はこれをやられたら、中トロだけの寿司みたいに辟易するのだが、ポゴレリチの明晰なタッチで楽譜通りのリズムを刻むので、もたれない。言い換えれば「あっさりしたコテコテ」というような矛盾した概念を実体化する演奏であり、引き続き賛否は分かれるかもしれないが私は諸手を挙げて賛同する。なぜならこの演奏、テンポはさておき、表現自体は楽譜を読み込み正確な再現を図っているからである。まず最初の夜想曲2曲はもはやバラードと呼んでいいくらいの深さを出してくれる。幻想曲に至っては、何と16分!普通の演奏の1.5倍である。主たる理由はLento Sostenutoの中間部で、まさに「Lento」のテンポでコラールを繰り広げる。これが滲みてくる。また行進曲の部分もコラールの続きのように音を響かせてくれる。正確に刻みながら、即興的にアルペジオも響かせたり、まさに幻想的かつ構成的でこの曲の大名演と思う。メインのソナタだが、このポゴレリチの主張とソナタという形式美が若干食い違う気がする。重くなり過ぎるという理由からだろうが、第一楽章提示部のリピートを省略するのはいただけない。また、ちょっとしたルバートやタメが連続するので、ソナタとして見たら好みが分かれると思う。しかしソナタだろうとノクターンだろうとアプローチがブレない。これぞポゴレリチ。次は是非ともバラードが聞きたい。今の彼にピッタリだろうから。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 13人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/02/15

    発売前のレヴューは慎まなければならないが、このディスクだけはどうしても言いたい。東武レコーディング、本当にありがとう。この演奏はまさに至宝であり、正規盤で世に出ることを心から喜びたい。テンポは悠久だが、集中力がもの凄いので、一切弛緩しない。だからこういう音になる。私はチェリビダッケは「音」にとことん拘った指揮者だと思っているが、その最上の成果がここにある。とにかく、この演奏の素晴らしさを多くの方と語りたい。だからこそ、聞いてください。それにしても東武レコーディングスは本当にすごい仕事をしくれた。重ねて心から感謝します。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/02/02

    天地創造はハイドン畢生の名作で、初演当時から人気が高い。ナポレオンもこの曲のパリ初演を聞いたそうだ。その天地創造を代表する一枚が誕生した。好調なサヴァール、今回も冴えまくりである。このところのサヴァールは音楽を立体的に構築し、ピリオドの良さとスケール感を両立させているが、それがこの曲にピッタリである。この曲は対位法が精緻ゆえに、全てを出そうとするとバランスが崩れる。また、テノールの音域が高いところが多く、下手をするとテノールだけが聞こえるような演奏もあるが、さすがサヴァール、絶妙のパート間バランスを保ち、それが品位を上げ、素晴らしい構成感を生み出している。合唱は第九と同じだが歌手陣は全く異なり、サヴァールの意図を汲み、劇的な表現を避け、凛とした表現が素敵である。特にソプラノのイェリー・スーは清楚さすら感じさせる。合唱もよく洗練されていて、歌いこんでいることがよくわかる。この曲が好きな方は多いと思うが、ぜひこの演奏を聴いて欲しい。大型オケでの演奏は意外にベッタリするし、ピリオド派は曲の持つスケール感が出ていないものが多く、不満が残っていたが、それがサヴァールによって見事に解消されている。それにしても、この録音が2021年5月、第九が同年9月末と短期間で大きな仕事を連発しているサヴァール。この勢いで古典派の名曲をもっと録音して欲しい。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/01/01

    このディスクを聞くと、間違いなくショパンに対する理解と愛情が深まる。フー・ツォンの演奏はそういうショパンである。聞いてすぐ感じたのが「深淵」であること。バラード1番の最初のC音の深いこと。最初から闇に引きずり込まれそうになる。リマスターのせいか録音が思ったより良く、フー・ツォンの意図が明確にわかる。低音は奥底まで深く、高音は雷のように空気を引き裂く。彼独自の倍音もとても美しい。それでもショパンの本質は人の心の奥底にあるものだ、決して美だけではない、と彼の持つ美音で逆説的に語る。十八番の夜想曲とマズルカの暗さと深さも比類ない。私もWJMさん同様、若いときフー・ツォンを実演で聴いたが、本当に今、このショパンを聴いて、もっと丁寧に聴いておけば良かったと心から悔いているし、レヴュワー各位同様、ピアノを、ショパンを愛するなら、このディスクをぜひ聴いて欲しいと願わずにいられない。フー・ツォンは録音に恵まれなかったのが残念であるが、MERIDIANレーベルに90年代録音シューベルトやドビュッシーの前奏曲集があるらしい。ぜひ日の目を見て欲しい。彼に限らずだが、良いピアニストは後世のために録音を残して欲しい、と心から祈りたい。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/12/21

    人の心に最も寄り添う楽器は、アコースティックギターなのではないか、と思うことがある。特に飲んだ時に優しいメロディをこの楽器に奏でられると、その涙腺破壊力は抜群だ。また、気持ちが辛い時にこの楽器に慰められる経験をした人も多いだろう。そんな思いが凝縮したのがこのアルバム。もう一曲目の「How Deep isYour Love」の素晴らしいフレージングにやられてしまう。だって、ビージーズですよ。サタデーナイトフィーバーですよ。若い人にはわからないだろうなぁ。その後もムーンリバー、禁じられた遊び、ニューシネマパラダイスときて、バッハや亜麻色の髪の乙女、ビートルズ、そしてロメオとジュリエットでほぼ涙腺は枯れてしまうくらいの名演奏が連続する。そしてこの時期ならではのMerry Christmas Mr .Lawrenceで深い感銘が訪れる。ところが話はこれで終わらない。アンコールのようなアルハンブラ宮殿の思い出で村治の高い技術を味わった後に「花が咲く」がやって来る。またこの曲か、とすら思っていたが、聞くとなぜか過去を思い出して言葉にならなかった。もう既にこの名曲は私たちの心の奥に存在しているし、私たちの気持ちを支えているとすら思えた。そしてメモリーで幕が閉じる。曲のことばかり書いたが、当然のことながら村治の演奏あってこそ、であり改めて素晴らしいギタリストだと心から感謝を捧げたい。またこの曲と曲順を選んだプロデューサーにも敬意を表したい。クリスマスに限らずプレゼントにも最適だ。そうだ、こういうアルバムを評する良い言葉があった「一家に一枚」である。

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     2021/12/12

    私はスティーブン・ハフのことはあまりよく知らない。実演に接したこともない。真面目なローワン・アトキンソンみたいな風貌もあいまって、私は、いつも彼に求道者的イメージを持ってしまう。ヴィルトゥオーソ的な要素は一切なく、リストやラフマニノフ辺りには見向きもしない、いわばクリフォード・カーゾンの再来的イメージだ。このブラームス、やはり想像通りの演奏だった。基本的にテンポは中庸やや早め。派手な音を避け、曲の性格を描き出す。117-1では淡々と歩むものの、フレージングは精緻を極め、一音一音を本当に大切にしている。117-2はバスを必要以上強調しないこともあり、浮遊感があるものの、音をしっかり描き分けるので奥深い。118−1は刺激的な音を一切出さないでまるで次の曲への序奏という感じ。118-2はグールドと同じくらいのテンポであっさりと、でも端正に心込めて弾いているのがよくわかる。また118−5はとても表現豊かで、聞き惚れてしまう。また119−3もとてもチャーミングでこの曲の良さを一番引き出してくれたのではないだろうか。私はブラームスのこの曲集はやはり、ハフのように内に向かってエネルギーと思いを凝縮させる演奏がぴったりだと思う。胸に迫る、とはこういう演奏のことを言うのだろう。アファナシエフのような毒はないが、折に触れて聴きたくなるアルバムに出会えた。名盤が多い曲だが、「ハフもいいんだよね」とサラっと言いたくなる。

    ところで調べてみたらハフには若い頃リストの録音がいくつかあるようだ。やはり独り善がりのイメージを持ってはいけない。それでも、この方が笑顔でリストを弾く姿は想像できないなぁ。来日してくれたら複数回足を運び、イメージと実際を確認したい。

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     2021/12/08

    今やかてぃんの師匠として、再ブレイクを果たしたルイサダ、などと言うと失礼かもしれないが、彼は実に日本に馴染みの深いピアニストである。NHKの収録があったからかもしれないが日本録音が半数を占めるこのアルバム集、本当に初回限定なら絶対に「買い」である。ルイサダといえばフランス人らしい洒落たショパン、的イメージを持っていたなら、DGのワルツ集のイメージを持っているなら、それよりも遥かに進化したルイサダが聴ける。この方、実演でもそうだが「深い中低音」を持っており、それが土台となってリリシズムとスケールを高いレベルで一致させた演奏をする。例えばソナタの3番や、スケルツォの2番を聞けば、「ルイサダって、すごい」ことが私のような素人でもすぐわかる。バラード4番の終結部など、深い読みが音楽に一層生気をもたらす。良い意味で「おおらか」であるが、決してショパンの闇を蔑ろにはしない。言い換えれば、清濁併せのむ、だ。フランソワ的フランス人ピアニストの演奏とは一線を画し、あくまでも正攻法でショパンに向かい合う。改めてこのかたの素晴らしさを認識させてもらった。アルバジャも、タローも、ベアトリーチェもとても良いショパンのアルバムを出したが、ルイサダは私が思うに、もう一つ先の世界を持っているのではないだろうか。それにしても、人の世はわからない。ルイサダはその時5位だったが、このような素晴らしいアルバムにより、名を後世に残した。優勝者はケガをされたと聞いた。回復と復帰を心から祈りたい。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/11/25

    このコンビ、今回はブラームスでまたも無双状態である。好録音でいつものマッチョさが響き渡る。ノンヴィブラートで、ホーネックが計算した通りのバランスで鳴らすスタイルは変わらない。

    このスタイルがなぜかブラームスにマッチする。出だしこそオールドスタイルでH音を引っ張るが、あとはビシビシ決めまくる。哀愁とか余計な感情を排除して、徹底的に「音響そのもの」で勝負する。だから第二楽章とかも強めの響きにより、ブラームスの意図が分かり発見が多い。かつちょっとしたところにタメを作ったり、優しさを出すので奥は深い。白眉のなのが第三楽章。この楽章、どの指揮者も扱いに困る曲だが、ホーネックのやり方だと遠慮なく「Allegro giocoso」が生きてくる。今までで一番正気溢れる演奏と思う。第四楽章はもともと曲自体が計算されているから、ホーネックのように余計なルバートなどかけずにそれこそビタビタに決めるだけでスケール感が支配する大名曲ということが改めてわかる。これだけ決めまくることがどれほど大変か。半世紀前のセルを思い出し、オケは違うものの再来ではないか、と感じた。

    マクミランの曲はシベリウスにアメリカの吹奏楽を足して2で割ったようなわかりやすい曲。良い曲だが、わかりやすさが逆に鼻につく感じがしないわけではない。

    それにしても、このコンビ早く来日してくれないものだろうか。これだけすごいアンサンブルを誇るオケは他にはないと思うのだが。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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