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mimi さんのレビュー一覧 

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/12/22

    J.S.Bachの器楽合奏曲録音史上、おそらく最も重要な盤ではないでしょうか。この盤が出た当時、古楽演奏は「未熟」「下手」「学問であって芸術的でない」「博物館」など、評論家にもクラシックファン(を自認する人)にも、まだまともに相手にしてもらえる時代ではなかったと思います。確かにその当時たまに日本で聴けた古楽器演奏は、少数の例外を除き、現代楽器による演奏以上の印象を残すものは稀でしたが、一方で現代楽器によるBachの協奏曲・管弦楽曲は、ガチガチのロック・ジャズ少年だった自分には、古典派・ロマン派のSymphonyなどに比較しても、生ぬるく平板な音楽にしか聞えず、曲の真価など判らないままでした。Leonhardtが盟友達と活動を始めて四半世紀のこの当時(1975年)、ようやく全ての機が熟したのでしょう。とにかく、それ以前の現代楽器演奏によるBrandenburgと、全てが違う。各楽器の音色、その集合体としての響きの織りなす綾が、Bachのポリフォニーと溶け合って渾然一体となる瞬間、楽想に沿って自在に揺れ動くテンポ、古典派・ロマン派では決して聴けないバロック時代特有のリズムと音型、現代楽器演奏では無かった新鮮で刺激的な強弱の変化、Leonhardt,Bruggen,Bylsma,Kuijkenらがちりばめる雅びやかな装飾 ー 西洋音楽史上最も重要な曲集の一つである、Brandenburg協奏曲の歴史的・音楽的価値の一端に、初めて触れることが出来た衝撃的瞬間でした。もちろん、現在からすれば35年前、如何にこの盤が当時の名手を集めたとは言え、その後の若手の古楽団体に較べれば技術的に劣る面はあるでしょうが、その後のBach古楽器演奏の基礎として、この盤に優る歴史的重要性を有するBrandenburugは未だに皆無でしょう。寡黙なLeonhardtが原盤に寄せた、「この録音が決定的なものとか、正統的なものとして、折り紙付きにならないよう、私は願っている」という言葉は、その後の世界のBach演奏の歩みが実現したと言えるのではないでしょうか。細部に触れる訳にはいきませんが、最も有名でしかも最も難曲である(満足できる演奏がない)5番の1楽章のこの盤の演奏は、Leonhardtによって、遥か数百年前のルネサンスから、Bachと同時代の様々な音楽様相を経て、古典派に連なる音楽史の転回点を眼前に彷彿とさせる、奇跡的な名演と思います。Bach演奏史上の歴史的名盤というにつきます。現在のSonyの廉価盤は、値段の安いのは大いに結構ですが、この名盤の重要性を些かも考慮していないお粗末な装丁で、自分の有するSEON原盤の美しい装丁とは比べ物にならず、この点だけは是非今後の再発で改善していただきたいですね。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 14人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/12/17

    実はヘンスラー盤の購入を考えているのですが、4年前にBrilliantを購入した者として投稿します。この大全集の一番の目玉は、Hans Fagiusのオルガン全集ではないでしょうか。へンスラー盤の、各時代毎に奏者を変えるオルガン曲全集も非常に興味深いものですが、どうしても奏者間のバラツキはでてしまう(バラで半分位所有)。Fagiusの全集は、Walchaの新盤の驚異的な透徹ぶりに比較すれば遜色はあるとはいえ、全体に亘ってリズムとテンポを明確にし、非常に構築的ながら新鮮で、他の奏者の全集と比較しても、統一感のある一級品のBach/オルガン全集と思います。ノイマイスター・コラール集など、Walchaの時代には未発見だった作品が網羅されているのも嬉しいですね。英語になりますが、Fagius自身の解説も非常に充実したものと思います。Leusinkの教会カンタータ全集は、他のどれよりも優れているとは言えないかも知れませんが、美しく堅実で非常にまとまりのあるもので自分はBachカンタータの魅力を味わうのに何の不足も感じませんでした。そもそも教会カンタータだけは、Richterの75曲選集の圧倒的な存在のせいか、Harnoncourt/Leonhardtの全集以上の古楽器による全集は(鈴木雅明/Gardiner/Koopman含めて)未だに出てないように思えますので....。Peter Schreierの世俗カンタータ集は、多くのレビュアーの指摘されるように定評ある古典的名盤。Mark Lubotslyの無伴奏Vnは、日本では無名ですが、ちょっと他に超えるもののない現代最高の演奏ですし、前の盤では弱点だった平均律全集もBelderのチェンバロとしては最高レベルの演奏に差し替えられたのも喜ばしい。Asperenのイギリス組曲は、地味ですが傑作の一つです。Belder/Musica Amphionのブランデンブルグも一流の演奏です。若きPinnock/Preston/Savallによるフルート・ソナタの隠れた名演が、他に差し替えられてるのは少し残念ですが....。前回の発売時、あれだけ大絶賛を受けてたのが、競合盤が増えてくると微妙に評価が変わってくるのは、市場だからやむを得ないと思いますが、今回の盤は確実に質の改善が計られ、しかも前回より6000円以上安くなってますので、公平にみてコストパフォーマンスは非常に高いと思います。差し替えられた分は判定できませんし、この手の企画の常としてすべて最高はあり得ませんが、十分にお薦めできるのではないでしょうか。

    14人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2010/12/08

    指揮者・オーケストラ・一人一人の奏者全て、非常に質の高い、引き締まった演奏と思います。J.S.Bachの管弦楽組曲は、意外に決定的にいい演奏が無いのですが、古楽器・現代楽器、ヨーロッパ・アメリカ含めて、これだけ新鮮で、生命力に溢れ、しかも全く正統的なBachは、そうないのではないでしょうか。不勉強にして初めて耳にする演奏者なのですが、すでに30年以上の歴史を有し、アメリカでは最も伝統ある古楽団体であるとのこと、この真正で安定した演奏に大いに納得しました。もちろん、No.3-Airなどをはじめ、もう少し味があればと思う箇所もあるのですが、実は有名な割に意外に名演がほとんどないSuite No.2などは、素晴らしく美しい演奏ですし、総合的に疑いなく現代最高水準のBachであると思います。各序曲を反復していないのも、学問的な正当性は別にして、個人的には序曲のアーチ構造が明確になって好みですね。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/11/23

    このCDが発売される3年少し前、スピッツのメンバーは各所でいろんなインタビューに答えてます。その辺りの発言を聞くと、この時期メンバーの様々な想いが、(おそらく)このCDの全編に影響していることが判って興味深い。おそらく今までのスピッツのアルバムの中で、一番強烈なメッセージ性を持った作品集で、最初から最後までかなり強い一貫した意志を持って作られていると思います。そのことが、時にあまりに綺麗すぎる、同じような曲ばかり、という批判にも頷ける原因になっているのかも知れません。しかしながら、この全編を流れる異常なまでの美しさ、爽やかさは、それが失われた世界を想定して意図的に生み出された部分であると考えると、逆にスピッツのこのアルバムに込められた、ある意味悲痛な想いを裏返しに反映していることに気づかされます。自分たちに、「うた」に、何ができるか、そのことを真摯に考え続ける人間達が贈ってくれた、あまりに美しい、しかし決して軽くはないメッセージが感動的な作品です。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/11/22

    前作ほどに強いメーッセージ性を持たない、どちらかと言えば一見まとまりは緩いアルバムのようですが、反面非常にSimple&Strongな作品に仕上がってると思います。先行発売された数曲を敢えて意識せずに、最初から最後までじっくり聴くと、先に出された曲がアルバム全体の中にしっくり収まるのが驚きで、彼らが3年の間にこのアルバムの完成を視野に入れて少しずつ作品を作ってきたのがよく判ります。特に7,8,9を越えて、10から11(「若葉」)を頂点に14まで締めくくる流れは、一つ一つの曲の完成度の高さも相まって素晴らしく見事でした。スピッツにつき合ってはや15年以上、もう少しアルバムのリリース間隔が縮まれば、と思いたいけれど、世間の評価に動かされず、あくまで自分たちのペースで着実に作品を作り続けていく彼らの前では、何も言う事はないですね。いつまでも、この調子で素晴らしい作品を届け続けて欲しいです。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/11/16

    チェンバロによる平均律全曲として、稀に見るクリーンな演奏です。まずこれほどにチェンバロを美しく奏でられる奏者は、世界でも数人しかいないでしょう。全ての音が濁り無くくっきりと顕れ、しかも常に羽のように軽やかな感触を失いません。演奏は一聴して客観的でストレートなようですが、じっくり聴くと楽想に合わせて細かにテンポを変え、リズムを揺らし、また控えめな装飾を随所にちりばめる様が、何とも言えず味わい深い。Belderが、テレマン、コレッリ、パーセルなど、Bachと同時代の作曲家の驚異的な全集を作り上げてきた成果が、この平均律全曲に確実に反映されていて、それらの数々の音楽がこの演奏の背後に透けて見えます。特に第1巻の典雅さと新鮮さ、正当さは、古今のチェンバロによる平均律の中でもトップに属すると思います。第2巻はさすがに、これに較べると一筋縄では行かず、低音声部の対位法的精密さが充分でないためでしょうか、曲構造がくっきり再現されて来ない瞬間が多々あります。ただそれが十分実現できて感動的なレベルの演奏というと、自分はGould、Leonhardt位しか知りませんし、Belderのこの演奏も充分一級品であることは間違いありません。第1巻の最後のフーガの気品と詩情溢れる演奏はこの盤の白眉です。チェンバロ奏者としてのBelderの、現時点における集大成ではないでしょうか。価格も安く、チェンバロによる平均律全曲としては現在最もお薦めできるものの一つと思います。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/11/03

    自分のようなBachファンでも滅多に出会う事のない、素晴らしい無伴奏チェロ組曲と思います。楽器のことはさておき、決して器用でも流麗でもない演奏で、楽想に呼応した細かなテンポの揺れ、強弱の細い上下、ヴィブラートなど、人によってはアクが強いと感じられるかも知れません。しかしながら、それが全く恣意的な印象を受けず自然なのは、近年多い他の主情的な演奏と異なり、バディアロフ氏の演奏が、古楽器製作者・古学研究家/演奏家として、この時代の(おそらく)音楽だけでない幅広い社会・文化を研究し、その紹介・再現を実践してきた経験を、あくまで基盤としているからではないでしょうか。Bachがこの曲集で語りたかった思想を十分に理解した上で、それを自分の言葉として訥々と時間をかけて語り尽くす様が、例えようもなく感動的で、それはまさに、この曲集を世界で初めて発掘したカザルスが、行った作業に他なりません。最後の大規模な6番など、これだけの内容を聞ける演奏は滅多にないと思います。Spallaという楽器の正当性については、専門的に語る資格を有しませんが、確実に言えることは、聞いていて「やっぱりチェロの方が...」という想いは一度も浮かびませんでした。これはバディアロフ氏の師のKuijken、先輩(多分)の寺神戸氏の同じSpallaによる無伴奏チェロ組曲の演奏ではなかったことで、正直、この楽器を自在に扱い表現することにかけては、この二人を完全に越えていると思います。Spallaによる演奏にマイナスイメージを持つ方にも、ぜひ一度聴いてみて欲しいですね。楽器の問題を超えて、数多ある無伴奏チェロ組曲の中でも(30数種類位しか聴いてませんが)、決して多くはない、「Bachに忠実な」素晴らしい名盤ではないかと思います。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/10/01

    Chick Coreaが今現在も変わらぬ活動を続けていることが、Jazzにとっていかに幸せなことか、しみじみと感じさせる作品です。このCD(1枚目)、タイトル、曲名、演奏形態、曲の構成、どれをとっても単なる再会・再結成・同窓会的セッションのようですが、一度聴き始めるととんでもない。一見新しいことなどないような外形に、此れ程までに新鮮な音楽が盛り込まれているのは驚き以外の何ものでもありません。Coreaの言葉にあるように、彼らはBeBop以来の、モード、Fusion、ロック....己が今までに辿ってきたあらゆる音楽的要素をアコースティックな演奏に注入して、これらのありふれたナンバー、ありふれた演奏形態を全く新しい音楽芸術に昇華させる。昨今の若手のJazz奏者の多くが、ジャズの古様式を忠実に再現することに腐心するのと対称的に、このCD(1枚目)には、どこをとっても、後ろ向きな部分がありません。ラスト3曲の白熱ぶり、特に’No Mystery’~’Senor Mouse’の2曲は、たった3人でありながら、まるで全盛期のGil Evans Orchestraを聴いているような錯覚にとらわれる。Jazzがもしかすると到達していたかもしれない、最も高い音楽がここに聴かれることは、長年Jazzにつきあってきたものとして心から幸せです。70歳を前にして、なおも前進し続けるCoreaとその仲間たちに、最大の感謝と尊敬を捧げたいです。CD2枚目の位置づけはBonus CDで、1枚目の真剣勝負とはうってかわってリラックスした演奏ですが、全く違う意味で物凄く質の高い演奏の連続で、価値の高い記録と思います。

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     2010/09/28

    正直、もともと同じ曲であるとは言え、決して気軽に聞き流せるものではないミサ曲を2枚組、4曲は重いのではないか、と思っていましたが、聴き始めるといつの間にかOckeghemの魔術にはまり、次から次へと聞き通してしまいました。’Missa Cuiusvis Toni’は、Ockeghemのミサ曲としては一曲一曲は小規模ですが、その音楽的内容の充実たるや大変なもので、さながら万華鏡が移り変わっていくようなめくるめく聴体験、最後の第4旋法によるCredoの終結部など、あまりの音楽の充実に、身動きできない程の感動を覚えます。自分の乏しい知識ではCD時代以降、4旋法すべて全曲収録したのは、この盤が初めてではないかと思うのですが、Ensemble Musica Novaの演奏は下声部をがっしりと組み立てた上で、精緻な線を紡いでいくやり方で、過去の演奏、例えば現役盤のClerk’s Groupなどの上声部中心に線の明確さを重視した演奏より、重厚なOckeghemの音楽に適合しているように感じられました。遥か500年以上前の音楽にこれほどに感動できるなんて、人間の文化・歴史の不思議さ・深さをしみじみと感じますね。ルネサンス以前の音楽に興味を持たれる方にとって、必聴の名盤と思います。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/09/13

    生演奏を聴いたことがないので軽々しく言えないのですが、現役の日本人チェンバリストの中で、これ以上に質の高い演奏が出来る人は、いないのではないでしょうか。リュッカースの名器を完璧に鳴らし切り、バッハ音楽の再現として全く正統的で揺るぎがない。数十年に亘って、バッハのみならず、幅広いルネサンス・バロックの作曲家・作品に深く関わって来られた経験が、難曲であるPartita Nr.4の細部に亘るまでの確信を持った再現を支えているのだと感じました。質的に自分が知る日本人のバッハ・チェンバロ演奏の最高であるのはもちろん、国際的にもトップクラスの演奏と思います。唯一、文句があるとすれば、CD企画内容で、とても名曲集を一枚出せばそれで終わりというレベルの奏者ではありません。会社は、ぜひこんなCDで終えず、パルティータ全曲、各種組曲全曲などを企画していただきたいですね。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/08/28

    自分の深く尊敬する音楽評論家M氏の表現を借りれば、まさにこれは「Monteverdiの心をすくいとったような」名演。遥か400年前の巨大な作品が、これほどに隅々まで生き生きと必然性を持って蘇ったことは無いのではないでしょうか。Concerto Italianoの演奏は、古いConsort of Musickeなどに比較すると対位法的な精密さでは一歩譲るとしても、とにかくこんなに歌と喜びに満ちあふれ、しかもそれがすべて聖母マリアを褒め称える目的のみに奉仕するVesproは、自分の知る限りでは有りません。ルネサンス音楽から脱皮して人間の素直な感情の発露へと、歴史を切り開いて行ったMonteverdiの心がまざまざと実感できます。イタリア人でなければなし得なかった演奏かもしれませんが、美しく喜びに満ちあふれた、光り輝く名盤です。歴史的なM.Corboz盤に唯一、匹敵するのではないかと思います。西洋音楽をお聴きになる方なら、(値段はやや高いですが)是非とも一度は触れて頂きたいですね。

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  • 12人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/08/27

    自分が最初に聴いたAbbadoのMahler Nr.1は、1983年(だったかな?)ザルツブルク音楽祭でのVPOとのLive録音・NHK-FMでした。Tennstedtで初めてこの曲を知って好きになり、複数の指揮者の録音を、まだプレーヤーなど持ってない貧乏学生の身でエアチェックで集めまくっていた頃ですが、Abbadoの演奏は他の誰とも違う、限りなく若々しく情熱的でありながら、一切の低俗さを許容せず、ひたすら高みをめざしていく高潔な音楽で、それまで確たる印象を持たなかったAbbadoに、一夜でファンになった思い出の曲です。それからほぼ30年、Abbadoは言うまでもなく、仕事に、家庭に、そして自分の健康に、様々な困難な道を歩んできたのでしょう。今回のDVDで、Mahler Nr.1としても、こんなに瞑想的で美しい第1楽章はやはり若者の音楽ではないし、第3楽章の「若人」旋律が涙が出るほど味わい深いのも、年齢の裏返しかと思います。1983年にはひたすら前を向いていたAbbadoも、一人ではもはや前を向いて前途を信じる事は出来ないのかも知れません。DVD映像の指揮姿だけみると、もうAbbadoには力など残ってないようにすら思えます。しかしながら、その痩せて老いたAbbadoの姿から想像できないくらいの、終楽章をはじめとする力強く気高い音楽は、現在のAbbadoがもはや自分一人で音楽をやることをある意味放棄した -- メンバーの総意によって音楽を成り立たせることに専念したことによって、初めて生まれ得たもので、その意味でこのDVDは、Abbadoの音楽ではなく、Abbado/Lucerne fest.o.の音楽と言えるのではないでしょうか。一人では前を向けなくても、皆の力でなら前を向いて歩いて行ける。そんなAbbadoの心境が伝わってくるような名演奏と思います。Live特有の傷、アンサンブルの乱れ、など毎度のことですが、こんなに指揮者・奏者一人一人が幸せそうに演奏しているMahlerは自分は知りません。終わりのない物事も出会いもありませんが、それでもこの幸福な演奏者達にこれからも出会っていけたら、と心から思います。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/08/23

    おそらく多くの聴き手にとっても、「フーガの技法」をどの演奏形態で聴くか、は永遠の懸念ではないでしょうか。音楽学的には現在、ほぼ鍵盤楽器用の作品であることが支持されるようになっていますが、どの鍵盤楽器を使用しても、これで充分というものはない。一方でこの作品を純粋に抽象的音構造物ととらえるなら、電子楽器含めてどんな楽器、組み合わせでも許容される。大井浩明氏の立場は、意図する音構造を充分に提示するために、現代ピアノより歴史的楽器が選択されるというもので、作品の歴史的背景をことさらに強調したものでありません。それはいいのですが、歴史的楽器、特に演奏習慣の解明もおそらくまだまだのクラヴィコードなどを使用する場合に、ルネサンス・バロック以来の複数の地域・時代にわたる鍵盤音楽の作品・演奏史の上に立った演奏が欠かせないにもかかわらず、あまりにその点が希薄です。現在廃盤になっているLeonhardtの「フーガの技法」奇跡的名演(DHM)にしても、彼が若い頃からフレスコバルディ、スウェーリング、フローベルガーといった幅広い名演を残してきた基礎の上に立ったものであるわけで、現代楽器の奏者がいきなり(ではないのかも知れませんが)歴史楽器に向き合っても、これだけの味しか出せない例と言えるのではないでしょうか。加えて、大井氏のライナー記述からは、チェンバロでなくクラヴィコードでなければどうしてもいけなかった理由が、今一つ強く伝わって来ません。相当に技術的には腕の立つ方なのでしょうが、現時点では「フーガの技法をクラヴィコードで演奏した」という以上の、音楽的価値は高くないように感じました。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/08/22

    J.S.Bachの作品中で、珍しくほぼ2段チェンバロのためと確定しているGoldbergを、あえてクラヴィコードで演奏する意図はさておき、相当の技術的困難を克服しての録音であったのは容易に想像できます。その意味では演奏者の技術と苦労には拍手をおくるべきでしょうが、残念ながらCDに刻印された演奏はその苦労に充分報いたものとは言い難いようです。恐ろしく古い話ですが、Bachのかなりな作品をクラヴィコードで録音し、名演を残したR.KirkpatrickでもGoldbergとイタリア協奏曲はチェンバロで録音してますが、その意味がこのCDを聴くと逆によく判った気がしました。誠実な演奏と思いますが、存在意義は資料的な価値に留まると思います。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/08/17

    これはまた何という魅力的なGoldberg変奏曲なのでしょう!。不勉強にしてJ.Macgregorは初めてですが、彼女にはAfricanの血も入ってるのでしょうか?そう思わせるほど、このGoldbergからは様々な響きが聞こえてきます。そこらへんの古典派・ロマン派中心の、あるいは「バッハまでは弾く」現代ピアニストと違って、ルネサンス・バロック音楽の様式・音型・リズムに通暁してなければ表現できない部分を見事に音化してるのはもちろん、後の時代、現代の様々な音楽、さらには西洋音楽以外の多種多様な地域の音楽の姿すらこの演奏からは時折現れては消えて行きます。しかもとても重要な事は、J.Macgregor自身はあくまで忠実に、厳格にBachの音楽構造を再現することのみに集中した結果、奏者の持つ音楽的背景・資質が自然と露になってきていることで、換言すればGoldbergという音楽作品がどれだけ多種多様な時代・地域の音楽にその姿を投影し得るか、という驚異的な作業がJ.Macgregorを通じて行われてるようなものです。とにかく全く正統的でありながら、これだけGoldbergという傑作の世界が大きく自由に見える演奏は、自分の乏しい経験では(Pianistでは)Gouldの新旧録音以外には思い当たりません。Bachを愛する人できるだけ多くに聴いて欲しい、素晴らしく意義深いGoldberg演奏と思います。

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