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天然芝 さんのレビュー一覧 

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     2014/06/22

    商品レビューにもある通り、これでもかと非イタリア系の重量級キャストで固められているけれども「トロヴァトーレ」や「リゴレット」ならともかく「ドン・カルロ」という作品は、こうした非ラテン系の方向性を許容できるのではないかと思う。

    カウフマンは生理的にダメな人は、おそらく受け付けないのだろうけれども、私の耳がカウフマンに慣れたのか、カウフマンのヴェルディがこなれてきたのか、はたまたドン・カルロという役柄特有のものなのか、歌唱に違和感を感じることは無かったし、繊細さや神経質さを巧みに表現した好演だと思う。

    ハルテロスはカウフマン同様に見栄えもよく、暗めの強い声でエボリや国王との対決でも一歩も引かず、ハンプソンも歌唱については相当違和感があるはずなのだが、やはりルックスと芝居の良さで存在感を示している。サルミネンは大審問官ならまだしも、フィリッポには歳を取りすぎとは思うし、全盛期の重戦車みたいな迫力こそ無くなったが大ベテランらしさを出している。セメンチェクのエボリも好演だけれども周囲を重い声の人で固められた分、少し印象が薄くなったかもしれない。

    パッパーノは普段コヴェントガーデンで聞かせる、軽妙で快活な音楽とは違って重心の相当に低い重厚なものに聞こえる。それでいながら重苦しい「ドン・カルロ」の、しかも多分に冗長な五幕版を全くダレることなく聞かせる手腕はさすが当代一のヴェルディ指揮者と言いたい。

    P・シュタイン演出は大道具をあまり用いず抽象的なものにしながら、歌手にはかなり細かい演技を要求しているようで、妙な読み替えも無く個々の人物の性格表現などがわかりやすいのが好ましいと思う。

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     2014/05/10

    「マタイ受難曲」というと、ブランデンブルグ協奏曲やニ短調のトッカータとフーガといったポピュラーな作品と比べ(マタイももちろん「名曲」なのだが)ある種の近寄りがたさを感じてしまうのは私だけではなかろう。増して敬虔なクリスチャンでもない私のような人間が聖書のテキストを咀嚼してこの作品を「理解」しようとするのは並大抵のことではない。

    そうした意味で、この映像作品はゴシックの名建築であるサン=ドニの大聖堂の壮麗で厳粛な空間に誘われ、丁寧な日本語字幕の助けもあって、まるでオペラ作品のように一気に聴き通してしまう素晴らしいものだと言えるだろう。(それが正しいか否かは別にして)

    ネルソンの適度に軽快でかつ適度に劇的な音楽は、一部のピリオド奏者のように音楽が痩せてギスギスすることも逆に重苦しくなることもなく、オックスフォード・スコーラ・カントルムを主体とした若いメンバーで編成された合唱団も実に真摯で透明感のある歌いぶりが素晴らしい。ソリストもいくつかの場面を除いて過剰な表現に傾くことが無く、押しなべて好感が持てるものと思う。(欲を言えばバスが最後のアリアで息切れ気味なのが惜しい)

    映像は劇場と違って照明やカメラの配置に制約のある会場でもあり、細部まで明晰と言い難い場面も無くはないが、演奏の始まる頃にはステンドグラスから夕日が差していた聖堂内が、3時間に及ぶ演奏とともに徐々に薄暗くなっていく様子も見て取れ、重厚な時間の経過を体感させてくれるのも良い。
    最終合唱では、悲劇的な響きの中、目にうっすらと涙を浮かべて聴き入るソリストの表情も捉えられていて、つい胸が熱くなってしまった。

    前述の通り、日本語字幕が備わっているのは非常にありがたく、ブルーレイ盤の画質・音質もおおむね良好であり、多くのマタイ愛好者や私のような初心者にもお奨めしたい一枚である。

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     2014/03/02

    主役の四人を揃えるのが至難なだけに、音だけの記録でもなかなか決定盤の無い(強いて言えばカラヤン62年のライヴか)作品だが、この映像は久々に強力な歌手が揃った聴きごたえ、見ごたえのあるものと言えるだろう。

    特にホロストフスキーのルーナは、バスティアニーニの高みにこそ及ばないものの「ホロストフスキーのルーナ伯爵」という役作りを確立していると思う。安定した歌唱と恵まれた容姿(やや偏執狂的な役作りだが)で、当代一のルーナと言えよう。

    ザジックのアズチェーナも見事、先に映像で出た「アイーダ」での衰えぶりに、とうとう過去の人かと思ったが、ここでの鬼気迫る演技と安定して圧倒的な歌唱、舞台上での存在感も素晴らしい。

    ラドヴァノフスキーは今回初めて耳に(目に)するソプラノだが、暗めの声質はマリア・カラスを近代化したような感じ、コロラトゥーラの技術も申し分なく、メットの巨大な空間にも負けない声量にも恵まれているようだ。
    そもそもレオノーラという役は専ら受身の印象が強いのだが、ラドヴァノフスキーは自ら悲劇の渦中に飛び込んで、ファム・ファタール的な空気さえ感じさせるのがユニークだ。

    アルバレスはそもそもがリリコであろうと思うのと、上記の重量級の歌唱(外見ではなく)に押されて多少印象が薄くなってしまったが、甘さと明るさを備えた優れた演唱だろう。(ちなみに第3幕のカバレッタは半音下げ)

    アルミリアートの指揮は、歌手をよく引き立てながら音楽のクライマックスは切れ味良く盛り上げており、この歌合戦的な公演を的確にまとめていたと思う。

    マクヴィカーはお得意のよく作りこんだセットや豪華な衣装で、非常にわかりやすく説明的な舞台づくり。回り舞台を効果的に用いた展開の早さも心地よい。スペイン独立戦争時代に時代を移したという設定も、人物の相関もわかりやすくて良いのではないか。
    保守的なメットでの演出とあって、いつもの猥雑な表現は控えめだが、マンリーコを取り巻く親衛隊に長身イケメンの役者を並べたのは、マクヴィカーの性的嗜好であろうかとニヤリとさせられた。
    アンヴィルコーラスで、彼らが巨大なハンマーで金床をガンガンぶっ叩くのだが、それがしっかり音楽になっているのも見もの・聴きものであった。

    カメラワークは相変わらず忙しいところもあるが、今回は幾分控えめで見やすく、毎度邪魔臭い上演前や幕間のバックステージは、休憩が1回しか無いおかげで我慢できる範囲内であった。

    日本語字幕こそ無いが「トロヴァトーレ」の最初の一枚としてお奨めできる映像作品である。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/03/20

    当初ロミオに予定されていたポルーニンを念頭にした映像化・商品化の計画だったと思われるが、この公演を目前にした突然の退団で、ポルーニンのロミオの映像が残せなかったのは惜しまれる。

    しかしながら代役とつとめたボネッリが、穴を埋めて余りある好演で「ロミジュリ」のファーストチョイスにもふさわしい、完成度の高い映像に仕上がったと思う。ボネッリの甘いマスクと気品は、なんでも「王子様風」になってしまうかと思いきや、これほど等身大で生身の「青年ロミオ」が生まれるとは予想していなかった。

    今回の映像では(ポルーニンを予定したせいか)ロミオのアップがやけに多いこともあり、ボネッリの細やかで的確な表情が手に取るようにわかるが、そこには「作りもの」めいたところが皆無で、殊にタイボルト殺害を決意する場面での、あたかもボネッリ自身の悲しみと怒りとも思える表現は圧巻といえるだろう。

    カスバートソンは清楚で美しいジュリエット、序盤メイクのせいもあってか「少女」に見えにくいのは残念だが、ボネッリ同様に大仰な表情づけがなく、寝室でのロミオとの別れから幕切れまでの悲痛な表現は、一貫していてなおかつ哀しい美しさを放つ。ロイヤルの女性ダンサーの中では比較的上背のあるカスバートソンだが、ボネッリのサポートが盤石なので安心して観ていられるのもよい。

    ガートサイドの苦み走ったタイボルトも、粗暴に振る舞うこと無く品格のある威圧感や敵対心を表現して、主役の二人とのバランスも好ましい。(それでも「タイボルトの死」での目を見開いたままの死にっぷりは、キャピュレット夫人の狂乱ぶりともども凄絶)

    キャンベルのマーキュシオは素晴らしく軽快な技の冴えを見せる一方、コミカルな表現が控えめで、悲劇の中にキャラクターが埋もれ気味だがベンヴォーリオ、乳母といったキャラクターも抑え目で全体として陰りを帯びた、悲劇性の強い映像に仕上がっていると思う。

    映像は非常に美しく、特に遠景の立体感さえ感じさせる精緻さは見事、音質もきわめて良好。映画館のスクリーンを前提としたと思われるカメラワークで、全景とアップの多用が目立ちダンサーの細かな表情の変化から、群舞の全体の動きまでよく見せてくれる一方、ダンスの部分ではしっかりとダンサーの全身像を捉えてストレスを感じさせないカット割りのセンスは絶妙。

    ワーズワースのバレエのスペシャリストらしい、丁寧な音楽づくりも好ましい。(第2幕のバンダがやけに荒々しいのは不思議だが)

    日本語字幕付きの特典映像(ドキュメンタリーと、決闘シーンのメイキング)も充実していて、マクミラン版「ロミジュリ」の良い手引きとなろう。ロイヤルでのこの演目は、既に複数の優れた上演が映像化されているが、この一枚はまず最初に推したい素晴らしい完成度といえるだろう。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/01/22

    マリオッティの演奏を聴く(観る)のは「シモン〜」続いて2作目。そちらも素晴らしかったが、この「ナブッコ」も凄い。所作が師のアバドにいちいちそっくりな割には、そこから繰り出される音楽はむしろ全く似ず、ガンガンに突っ走ったかと思えば、かの有名な「思いよ、黄金の翼に〜」では、繊細なピアニッシモを聞かせてくれたり飽きさせることが無い。
    別項のバッティストーニ、ルイゾッティ、ザネッティなどと並んで、イタリアオペラ界の若手・中堅マエストロは実に人材豊富で頼もしい。オケ、合唱もマリオッティの棒によく答えていると思う。

    歌手はなんといってもヌッチが圧巻! さすがに以前の映像に比べれば「老い」は否定しがたい部分もあるけれども、そこを役作りに生かして、ナブッコの「弱さ」まで掘り下げて見せるのはあっぱれと言うほかない。
    テオドッシュウはいささか不安定で、声域によってムラが目立ったのは残念。スリアンの朗々としたザッカリア、フェネーナのキウーリも安定してなかなか良いと思う。

    演出は、ソリストは時代がかった衣装、合唱は現代風で物語の宗教的な背景を表現しようとしたと見るが、ちょっと不統一というか半端な感もなきにしもあらず。ただ、元々が分かりにくいストーリーではあるし、音楽を邪魔するようなこともない。

    映像は美しく鮮明、音声はデッドな音響を感じさせ、一部バランスの悪さもあった。日本語字幕も的確で分かりやすく、こうした作品ではありがたいと思う。ちなみに件の合唱はアンコールも演奏されたはずで、それも収録してもらえれば、一層感動的な内容であったと思う。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/01/22

    なかなか演奏の機会が無い、ヴェルディ前期の熱血オペラ。これまで録音も少ないなりに、ムーティ、シノーポリ、ガルデッリと名盤が存在するので、ついつい比較してしまうのだが、バッティストーニのガッシリと筋肉質でリズム感と歌心に満ちた指揮は、上記のマエストロにも決してひけをとらない見事な出来と思う。(B氏のおかげですっかり迷走気味のスカラ座を立て直してくれないものか・・・)

    歌手ではパローディとブランキーニが良いと思うし、他も若手主体ながら不足なところは無いと感じた。敢えて言えばエツィオのカターナだが、カプッチッリ、ザンカナロ辺りと比べてしまうのは流石に酷だろうか。

    演出は「伝統的」というより、財政上の問題じゃないかと思うが背景がスクリーンに映し出される映像のみというのは、寂しい気がする。場面転換の多い作品だけに、慣れれば音楽の邪魔にならないし悪くないかもしれないが。衣装はなかなか手がかかっているし、幾分やりすぎな気がしないでもないメイクも役柄の個性を出していると言ってよさそうだ。

    映像は暗い場面が多いなりに綺麗、音響も小劇場のデッドな雰囲気をよく再現してくれていると思う。「アッティラ」の新たな名盤・名演に数えられるべき映像作品の登場を喜びたい。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2013/01/22

    よく言えばオーソドックス、セットや衣装も豪華絢爛で安心して見られる「くるみ割り」がマリインスキーのこの版だろう。映像で比較してしまうと、ロイヤルの濃厚なドラマや、ボリショイのダイナミックな舞踊の洪水に比べて物足りなさは感じてしまうけれども、こういった「くるみ割り」も大事なのだろうと思う。

    ゲルギエフの指揮も、今回は至って普通(?)

    普通じゃないのがカメラワークで、やたらせわしなく動き回るカメラとアップの多用(バレエなのに足元の映らないアップ・・)更には唐突なゲルギエフのどアップには、子供でなくともびっくりさせられる。

    主役の二人に関しては、予想以上の出来だったボリショイのペアの映像が強く印象に残っているせいか、悪くは無いがちょっと物足りない感も・・・ソロのパートはいいとして、リフトの場面では荷物の上げ下ろしに見えてしまったり・・・二人の相性もあるかもしれないが、マリインスキーのトップダンサーという期待は幾分満たされない部分もあった。

    どちらかというと、ほのぼのと楽しみたいプロダクションだっただけに、忙しすぎて集中力を削ぐカメラが、なんとも残念な内容になってしまった。

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     2012/04/07

    バレエファンにはお馴染みのジュライチスの指揮が素晴らしい。
    冒頭から終始異様なまでのテンションに満ち溢れ、特に各幕の後半の劇的な盛り上がりが凄い。バイエルンのオケの反応も鋭く、美しさと荒々しさを兼ね備えながらジュライチスの要求によく答えていると思う。

    歌手陣では、やはり全盛期のアトラントフが抜きん出ており、自身による数種類のゲルマンの中でも出色の出来といえるだろう。オブラスツォワのドスの効いた響きも、必ずしも声の出番の多い役ではないものの、要所をよく締めている。
    ヴァラディはなんとなく異質な感じがしないでもないが、ファンの一人としては貴重なオペラ全曲盤だけに大いに満喫。どこか熱病にうかされたような異様なテンションは、むしろこの役に「ハマって」いるのかも・・・

    第2幕第1場の劇中劇がごっそりカットされているのは、この公演の背景からすると解せないところもあるのだが、個人的には聞いていてだれてしまうパートなので、これもありといえば「有り」だろうか。

    その第2幕以降、作品の緊張感の高まりとともに歌手、オケ、聴衆までも巻き込んで渦巻くような興奮の坩堝と化す様子がよく収められている。スペードの「狂気」は、やはりこのぐらいやってもらいたいのだ。

    オペラハウスでのライヴながら、録音は極めて優秀。スペードファンなら是非手元に置きたい一組である。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/04/06

    ボリショイのグリゴローヴィチ振付の作品といえば、80年代末ごろに一斉に映像化されたものがあり、
    「くるみ割り」もアルヒーポワ&ムハメドフという強力なキャストによる素晴らしい公演が残されている。

    今回はカプツォーワとオフチェレンコというフレッシュな組み合わせ。
    グリゴローヴィチ版では、マリーが金平糖のパートも通しで踊るのだが、カプツォーワは可憐さと卓越した技術・音楽性で
    このプロダクションでの理想のマリー役といえるだろう。
    パートナーのオフチェレンコは、この時23歳の若さ。すらりとした長身で、長い手足を優雅にコントロールして、
    若々しく美しい王子を演じている。 細かいところで雑な部分も目に付くが、今後に期待したいダンス・ノーブルである。
    サーヴィンのドロッセルマイヤーも、芝居巧者で大活躍、ドミトリチェンコのネズミの王様もダイナミックで見応え充分。

    グリゴローヴィチの振付はマイムが非常に少なく、この「くるみ割り」でもガンガン踊りまくるのが印象的で、
    雪のワルツや花のワルツも豪華、ヴィルサラーゼの美術も幻想的で美しい。

    ブルーレイで発売された「くるみ割り」の映像では、このボリショイとロイヤルが双璧ではなかろうか。

    映像は他レーベルに比べると、最高とは言えないのが惜しいが、願わくばグリゴローヴィチのレパートリーを
    一つでも多くハイビジョンの美しい映像で残してもらいたい。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/10/12

    まず冒頭に、映像が1080/24pとフィルム撮影っぽい仕様であることや、楽器のアップやクレーンカメラを多用して、かなり忙しいカメラワーク、クロスフェードを多用(かつてのカラヤンの映像作品を思わせる)することで、いささか臨場感や生々しさに欠ける点をまず指摘しておきたい。

    演奏は、かの悪名高い(?)ウィーンのライヴよりは手兵のオケということもあり、ゲルギエフのやりたい放題なところも多く、特に5番ではテンポの振幅を大きく取った自己主張の強いもので、フィナーレのコーダでの煽り方などもかなり恣意的である。
    「悲愴」は同オケとの優れたセッション録音もあり、そこでの直截な表現が好ましかったが、今回の演奏も比較的それに近い部分もあるものの、終楽章ではかなり遅めのテンポを基調に、クライマックスにかけて極端なアッチェレをしかけるなどかなり主観的な表現も見受けられる。

    個人的に腑に落ちかねたのが4番で、全体に抑制的あるいは中庸であろうとする意識が強いのか、作品に対するゲルギエフの共感のようなものが伝わりにくいように思う。殊にフィナーレは落ち着いたテンポで始まり、第2主題の回帰で大きくテンポを落としたり、コーダでテンポを煽ったりするが、いまいちしっくり来ないところがある。(ちなみに4番だけは指揮棒・スコア有り)

    総じて「ゲルギエフのチャイコフスキー」という期待度の高さに対して、肩透かしをくらう感が無きにしもあらずだが、現代のチャイコフスキー演奏として優れたものであることに間違いは無いと思うし、解釈については好みの問題もあろう。 また、ゲルギエフの強引とも言えるタクトに食い入るような団員の真摯な眼差しは感動的である。

    なお、前述の映像仕様の他に音声の仕様がPCMマルチでは無く、DTS-HDであることも指摘しておきたい。

    ※第1〜3番他も同時に収録されているはずなので、商品化を望みたい。

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     2011/01/08

    「俗物」とのお叱りを受けるかもしれないが、映像作品である以上は歌手だって美男美女揃いの方が良いに決まっている。殊にこうした現代劇への読み替えの場合はそれが強力な武器になるのではあるまいか。

    グラインドボーンの名舞台で「普段着でも面白いのではないか」と思わせたパーション、レーティプーは案の定で、殊にレーティプーはスマートなイケメンぶりが際立っているうえに、歌唱においてもこちらの方が自信に満ちているように見える。

    スコウフスとプティボンもこのコンセプトに見事にハマっていて、歌唱はもちろん芝居巧者っぷりに舌を巻く。 「歌唱」という点ではそれぞれの歌い手がモーツァルトの枠を逸脱している部分もあるのかもしれないが「だってグートの舞台だもの」と思えば別に不思議ではない。

    グートの演出は優れた歌手(役者)の力もあって、読み替えも綺麗に収まっていると思う。アルフォンソの持ち出す「羽根」はフィガロから、邸宅に忍び込む「森」はドン・ジョヴァンニへと三部作の「つなぎ」としての意図も見え隠れするが、お得意のストップモーションともども邪魔といえば邪魔。 ただし総じて受け入れやすいプロダクションだとは思う。
    兄フィッシャーの指揮は弟に比べ仕上げの甘い部分も散見されるが、あまりピリオドに傾斜せず流暢さとふくよかさを残した演奏には好感が持てる。

    ブルーレイでの映像・音声は水準以上と思うし、輸入盤ながら日本語字幕がしっかりしているのはありがたい。

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     2011/01/02

    まずはフォーゲルの「理想のアルブレヒト」を映像として、彼の「旬」の時期に発売してもらえたことに感謝したい。
    どうもアルブレヒトという役はプレイボーイタイプか、逆に誠実だが分別くさいタイプが多いように思う。
     その点、甘いマスクに少年の面影を残すフォーゲルの描くアルブレヒトは、ただ純粋に無邪気にジゼルを愛し、
    それ故にジゼルの死に強く後悔し、傷つき、幕切れではアルブレヒトの魂もまた滅びてしまったのではないかと見る。
    そんな壊れやすい一人の若者の姿を美しく儚く演じきったフォーゲル、やはり「理想のアルブレヒト」といえるだろう。

    上野のジゼルは初日ということもあってか、役の咀嚼が足りないように思えるのと、フォーゲルが
    ジゼルの持つべき「夢見がち」な部分まで持っていってしまったためか、やや存在感が薄いのが残念。
    (2006年、同カンパニーでのコジョカルの印象があまりに強いせいもあるか・・・)

    後藤の押し出しの強いヒラリオン、田中の小粒ながら凛としたミルタ、おなじみ橘さんのベルタも舞台に厚みを添える。
    若いメンバーによるペザントの踊りも眼福、いつ見ても幻想的で美しいヴィッリと「東バのジゼル」は安心して楽しめる。

    DVD規格ながら映像は驚くほど美しく、出来ればBlu-ray盤でも発売していただければと思う。
    また特典映像での主役二人のインタビューも必見、是非手元に置きたい「ジゼル」の映像である。

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     2010/12/31

    コジョカルの可憐で儚いジゼルは私にとってまさに理想、同年の来日公演でのルグリとの競演も
    素晴らしいものであったが(商品化は無理なのだろうか?)やはり本拠地での公演は、なお一層充実したものと思う。

    パートナーのコボーは決してプレイボーイタイプではなく、今にも壊れそうな脆いジゼルを丁寧に扱いつつ
    「お遊び」ではない真剣な愛情を交わしていると見る。この辺がライト卿の指導かプライヴェートの投影なのかは定かでないが・・・

    いかにも粗野で骨太なハーヴェイはコボーとのコントラストも好ましく、コンリーのベルタの存在感も舞台に厚みをもたらしている。
    ヌニェスはメイクのせいか、いかにもおっかないミルタで驚くが、美しくも恐ろしいヴィッリのコールドとともに
    第2幕の緊張感を高めているといえるだろう。第1幕のパ・ド・シスのメンバーも贅沢だが、やや不揃いなのが惜しい。

    ヴィッリに姿を変えてからのコジョカルは一層青白い美しさで、コボーのまさに体を張った熱演も素晴らしい。

    細部まで念入りに作りこまれた舞台装置や、重厚で豪奢な衣装もまさに眼福、ブルーレイの映像も大変に美しい。
    コジョカルファンにはもちろん、「ジゼル」のファーストチョイスにもお奨めしたい一枚である。

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     2010/11/25

    ムーティが「円熟」を感じ始めさせた頃の名盤。ヴェルディ初期作品の持つエネルギーを存分に沸き立たせながら、上滑りすることがない会心の出来栄え。
    歌手もどこかバスティアニーニを思わせるザンカナロがハイバリトンの魅力全開、レイミーの粗野なタイトルロールもいい。ステューダーもこの頃が声の盛りであったろうか、細身ながら鋭いオダベッラにふさわしい声の持ち主であった(近年復活したそうだが)、シコフはちょっと役柄が違うような気がするが健闘しているとは思う。

    ムーティがスカラ座を去って暫く経つが、こうしたヴェルディ初期の作品の魅力を我々に伝えてくれる次代の指揮者は現れるのだろうか・・・・

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     2010/11/04

     待望のくるみ割りの最新映像、期待以上の美しく楽しい映像に仕上がっている。 ねずみの魔法でくるみ割り人形に変えられてしまったドロッセルマイアーの甥の青年ハンス・ペーター、クリスマスの夜にドロッセルマイアーがそのくるみ割り人形をクララに託すところから物語が始まる。この設定は筋が通って判りやすくなおかつ感動的でもある。

     この3人の配役がまさに適材適所、ルーツとセルヴェラのフレッシュなカップルは、はじけるような笑顔に実に表情豊かな表現で、ルックスもこの役にぴったり。「各国の踊り」でこの2人が踊りまくるのもライト版ならではのお楽しみ。 ギャリーはほとんどマイムばかりだけれども、さすがの演技力と存在感で舞台に厚みや深さをもたらしている。

     既にロイヤル退団を表明していた吉田のこんぺい糖、登場時やカーテンコールの熱烈な拍手から、退団を惜しむ観衆の想いがひしひしと伝わってくる。 技術的にはバーミンガムの「伝説の」映像があり、そちらにも看過すべきではないが、若いプリンシパルのマクレーに「ロイヤルを頼みますよ」と語りかけるかにも見えるパ・ド・ドゥは感動的である。

     吉田と切っても切れないライト卿のくるみ割り(バーミンガムの劇的でデモーニッシュなプロダクションも捨てがたいが・・)さすがに細部までこだわった舞台装置や場面転換、登場人物たちの細かな表情など隙が無く、作品やダンサーへの愛情を感じる舞台になっている。

     吉田都のファンだけでなく、大人も子供も楽しめる美しく楽しい舞台、最新の美しい映像であり「くるみ割り」のファーストチョイスにもお奨めの素晴らしい一枚。

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