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shef さんのレビュー一覧 

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/09/26

    ヴァント晩年のライブ集は聴き応えがあった。ライブらしい雰囲気に満ちているし、それゆえに「荒さ」を見ることも出来よう。個人的には前者に魅力を感じる。歳を感じさせない生気溢れる演奏はいかにもヴァントらしい。ほとんどの演奏はスタジオ録音もあるし、別のライブ録音もあるが、ヴァントの演奏スタイルは大きく変わっていない。また老いれば演奏スタイルが変わるものだが、彼はそれも少ない。確固たる信念で音楽に臨んでいたことを窺い知れる。ベストはシューマンの4番。モノラルならアーベントロートやフルベンが決定盤として挙げられるが、ステレオでは「粘りつく情念」のバーンスタインを凌ぐベストではないか?天才と常軌を逸する紙一重の領域にあるリズム感が「重力のくびきから離れて」展開する様は背筋がぞくぞくする。低弦のリズムに支えられた金管の咆哮は心に響く。ベートーベンの1番もヴァントらしいリズム感の良さと清々しさを味わえる。シューベルトのグレイトは巨大な音楽だが、「起承転結」に欠け、平面的な一面を持つ。ケンペはやや前のめりのリズムで颯爽と駆け抜ける。ヴァントもまたリズムを軽やかに刻みながらシューベルトの美点である美しいメロディを謳いあげている。ブラ1は例によって冒頭からアレグロで突っ走る。この解釈には好き嫌いがあるが、全体としては「潔いほど」しっかりした構成を保ちつつ、内面から突き上げるエネルギーには頭が下がる。ヴァントにはどこかシューリヒトやフリッチャイに通じる「匂い」がある。演奏様式は異なるが、音楽に「潔さ」とか「清々しさ」を感じるのだ。そして構造力とそれを突き破らんとする精気溢れるエネルギーとリズム。ヴァントの美点を堪能できるライブ集だと思う。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/09/19

    2番は「鄙」を感じさせるような演奏が多いなか、晩年のワルターが描き出したのは、まるで北海を行く巨鯨のように、寂寥感とパトスに縁取られた世界だった。たしかに2mov.は「のどかさ」に満ちている。しかし、心休まるような弛緩した「のどかさ」ではない。むしろ、深い悲しみを抱いたのどかさ、ではないのか。 それに対比する3mov。モーツァルトの「走る悲しみ」ではないが、まるで涙をこらえて疾走しているかのようだ。フィナーレは怒涛の如き。悲劇的序曲という組み合わせのも良い。

    以前から聴いていたが、このCDを聴いて印象が少し変わった・・・・マスタリングのせいで音質が硬化したとの指摘もある。たしかに音の輪郭がしっかりした分、キンキンと響く。ホールトーンが消えてしまった? それだけに音楽全体の印象も変わってしまったのかもしれない。 それはそれとしても、聴き応えのある演奏であることに変わりはない。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/08/24

    ザンデルリンク晩年のライブ録音が数多くCD化されたことはファンにとって喜ばしい。6番はゆったりとした、落ち着いた演奏。フレッシュ感や躍動感は影を潜め、たおやかに音楽は深みを目指している。このあたりで好みが分かれそう。
    フィナーレの幸福感に満ちた音楽に接すると、思わず涙ぐんでしまうのだが。

    W協奏曲は、ベルリン交響楽団との交響曲の演奏のように、やわらかなベルベットを感じさせる肌合い。それでいて、ちゃんと芯を通しているのがザンデルリンクらしい。彼の語り口で聴くブラームスは、私にはとても好ましい世界だ。

    ザンデルリンクの演奏は、私の主観としては、好きな部類に入る。だが客観的に見れば、「躍動感」がもうすこしほしいと感じる。「熟練の技」といってしまえばそれまでだが、いかにも「善人の音楽」であって毒がなさ過ぎる、と贅沢な愚痴をこぼしたくなる。特にベートーヴェンでは。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/08/24

    フカフカした苔の上に腰を下ろし、森の中を吹きぬける風や大樹を見上げながら聴いている、そんな雰囲気になる演奏。4番は5番と違い、ある意味「甘ったるいだるさ」を含んだ音楽だと思う。その「だるさ」に気をとられると締まらない音楽になるし、逆に5番のような構築性やリズムを前面に押し出すと「面白み」がなくなってしまう。クーベリックはまず大きな容器をしっかりと作り上げて、そこに「だるさ」を満たすことで、4番の魅力を引き出した。ザンデルリンクはごく自然に、まるで息をするように音楽を紡ぐ。それだけではブルックナーの音楽はだれてしまう。「弦のトレモロと管楽器のファンファーレ」と酷評されるオーケストレーションとベートーヴェンのような起承転結を欠く構成の弱さが浮かび上がるだけだ。
    ザンデルリンクはクーべリックと別の手法で「だるさ」を克服する。それは繰り返される旋律一つ一つをカッコでくくるように際立たせることだった。流れながら、決して繰り返しではない、そこに緊張感を生み出している。
    フワッとしているのに芯がある、そんな音楽世界を創り出している、そしてそれは」ブルックナーの音楽と実に合致している。
    聴き終わったあとに、クーベリックのような高い満足感は得られない、だが、実に幸福な気分に満たされている。
    これが音楽を聴く喜び、ということだろう。
    久しぶりに良い「ロマンティッシュ」に出会えた。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/08/05

    1番は力強く、ロマンチシズム溢れる、切れば血しぶきが上がるような演奏だった。でもどこかブラームス風のスパイスが効いていて、アクアマリンのような冷たい透明感には程遠い演奏でもあった。「氷のような鋭利さを含む春風」のような6番を聴くと、ザンデルリンクの限界点みたいなものが浮かび上がってくる。モサモサした感じ、冷たさを感じさせない温度感といえばいいのか、小さな違和感が付
    つきまとう。しかしフィナーレまで聴くと、その違和感が積み重なる。これはこれでザンデルリンクの個性であり、彼の音楽表現だと思う。だから、あくまで個人的趣味というレベルの問題だ。それでもシベリウスの音楽を聴く楽しみには、フィンランドらしい空気感、温度感、湿度感があると思う。Cデイヴィス、マゼール、サカリあたりが私の耳には合っている。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/07/24

    多くの人が5つ☆。これほどレヴュアーの意見が一致するCDはそう多くないだろう(と想像する)。「新世界から」のCDは数多い。ボヘミア色を漂わせる演奏から、もっと機能的にオケをフル回転させるような演奏まで多様だ。ドヴォルザークの魅力は旋律美と音離れのいい多彩な管弦楽法(ブラームスが嫉妬さえしたほどの)。それを十全に表現した上で、フリッチャイの音楽には品格がある。まるで清冽な柿田川の流れに戯れる梅花藻のように無理なく流れる音楽、そして、透明感の中に浮かび上がる堅固な構築性。加えて彼が作り出す音楽世界には「汚れがない」あるいは「あざとさがない」。
    「新世界から」はよどみなく流れ、弦楽と木管の絡みが透かし彫りのように浮きあがる様、ヴァイオリンとチェロとの掛け合いのまるで会話のような調子、対比する金管の咆哮など、とても60年も前の演奏とは思えないほどの完成度。録音は古いが、それさえも気にならない。モルダウもレ プレリュードも文句なしの一級品。レ プレリュードは、おそらく、これがベストであり、比類なき演奏だと思う。ダイナミックさだけでなく、愛らしさや慈しみさえこめられている。人生は過酷ではあるが喜びにも溢れているのだ、と不運を背負ったフリッチャイが語りかけてくるよう。フリッチャイの演奏は、とにかく全部手元に置きたい。

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     2012/07/23

    小手先勝負ではなく、正々堂々と四つに組んだ大相撲を思わせる、大家風の演奏。細かいニュアンスにこだわりつつも、ゆったりとした足の運び。やや神経質かなと思う場面もあるが、2movに入ると、[慟哭]ともいえる大胆な表現に度肝を抜かれた。そのための1movだったとしたら・・・・「はめられた!」と苦笑い。3,4movもあわてることなく丹念に音を拾い、巨大な建造物を構築する。インバルの設計思想に感心しつつ、都響の奮闘に拍手を惜しみなく送りたい。欲を言えば、設計思想と言うことばがつい出てしまうほど、どことなく「人工的」な香がする。感情の爆発が理性(形式、様式)という枠を超えてほとばしる「予想外のエネルギー」というか、「生の感情」が希薄であって、「計算済みの爆発」のような理性が全体を支配している印象はぬぐえない。これがマーラーだと、逆に、プラスに作用しているように思う。
    とはいえ、日本のオケでこれだけ高品質のエロイカが聴ける、これは世界に胸を張れる。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/06/11

    リストの面白さはオーケストレーションの遊び、だろうか。ピアノのヴィルトゥーゾはリストだから、それも面白いが、えぐいまで、
    「これでもか」とリストはオーケストレーションに仕掛けを施す。それを淡々と、まるで意に介さないように、やや斜に構えて受け流すサロネン。アックスもさらりと難しいパッセージを弾き飛ばしながら、丁々発止とサロネンとやり合う様。やや冷たい感触が逆にこの曲に合っているように思う。 実はバレンボイム・ブーレーズを聴いて、このCDの良さに改めて気付かされた。濃厚な味付けも悪くないが、洗練の極み、とも言えるこの演奏に私は軍配を上げる。

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     2012/06/11

    ダーヴィト・フリードリヒの暗い、重厚な風景画の世界が広がるリストの協奏曲だ。まるでタペストリーのように。これまでアレックス・サロネンのコンビで楽しんでいたリストの世界とはまったく異次元だ。この世界をもたらしたのは、おそらくバレンボイムだろう。彼らしい、ねっとりとしたエロティックな質感。 この妖しげな世界をブーレーズの音楽が少しは中和しているから聴いていられるのか。
    私の美意識は否定したがるが、まるで媚薬のように心に纏わりつく。魅せられる、とはこのことだろう。
    フリードリヒが描くた暗いそがれの空が脳裏に浮かんでくる。

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     2012/05/10

    ソリッドで求心力が全体を貫く、なかなか聴き応えのある演奏。クリーブランド時代、マゼールはかなり録音を残している。そしてスタイルが共通している。客観的で、ちょっと作品から距離を置き、冷徹な眼差しで見つめているような。4〜6番をCDを持っているが、熱い、ロシア的なロマンチシズ、うねるような、あるいは感情の爆発はない。スコアを微分し、ゴチック建築の大伽藍ように再構築した演奏スタイル。マゼールが試みているのは、セルが残した名器クリーブランド菅の高機動性を最大限に発揮した演奏なのだろう。感情ではなく、スコアに書かれた音そのものを厳密に再生することで、どこまで感情に迫られるか・・・そんな実験のようにも見えてくる。ここにあるのは、ダヴィンチのような正確無比なスケッチであり、ミケランジェリのようなマニエリスムの世界だと思う。たしかに表面的には冷徹で、音楽にタメがなく、既成概念的なチャイコフスキーとしては淡白で面白くないと感じられるかもしれない。実際、6番など、こんなにあっさりしていては「まるで鶏のささみ」と感じることもある。 だが、こうした表面的な事象に捉われることなく、彼の音楽に耳を傾けると、底流にはマグマのようなパッションが隠れている。 それをあからさまにしない美学もある、それをマゼールは表現しているのかもしれない。 個人的にはとても好きな演奏。 シノポリの5番の対極にあるような演奏だ。

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     2012/05/09

    ウィーンフィルの尻を引っぱたいて、唸りを上げながら疾走させているようなハンガリー舞曲集。たしかにロッシーニの序曲ではこうしたアバドの音楽性がメリットになって溌剌とした明るいエネルギー感を与えるが、ロマの音楽には違和感を伴ってしまう。チャールダッシュもシュトラウスの「こうもり」もその底には憂いとか悲しみが潜んでいる。ブラームスが交響曲を書き出す頃はクララとの関係もあり音楽が「昇華」しているが、今頃の彼にはまだそれもない。採取したロマの音楽を編曲した作品集(だから作品番号付いていない)で、もっと民族的な要素が色濃く残っているはずなのに、アバドはそれも「浄化」してしまっている
    オーケストラのエチュード」としてなら、なかなかの演奏で、引き締まった音つくりが心地よいのだが、悲哀とか情感のような「ドロドロした」部分まできれいに浄化されてしまったように思う。
    ブラームスの交響曲ではそれがメリットなって、複雑で大きな構築性がくっきりと浮かび上がってくるのだが、ハンガリー舞曲では逆にデメリットになってしまったようだ。
    個人的にはフィッシャーが指揮した民族色が滲み出たCDが好き。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/04/09

    映像をBSで見たが、メンバーが実に楽しげに演奏していたのが印象的だった。アバドと音楽を造る、その喜びにあふれていた。
    それにしても流麗でスタイリッシュなバッハだ。イタリア的、というより、コンテンポラリーで自由闊達なバッハで、聴き手もウキウキしてくる。カチッと型にはまったバッハが好きだったが、ムローヴァのバッハを聴き始めてから、少しバッハへの感覚が変わったようだ。 
    コンチェルトグロッソ特有の楽器同士の会話のような音楽にどこか「わたあめ」のようなふわっとしたとろけるような甘さが加わり、魅力的なバッハになっている。
    逆に言えば、シューリヒトやレオンハルトのブランデンブルクの良さもさらに味わえるようになった。 そうそう、コレギウム アウレウムの演奏もリストアップされないかな。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/04/07

    低価格なので思わず購入。 以前から好きなマルティノンのドビュッシー。LPで海と夜想曲を愛聴していたのは大学生の頃(懐かしい!)。 メリハリのある、推進力のあるドビュッシーで、まるでステンドグラスのように透明感と重厚感ある響きが好き。それだけなら他の指揮者でも楽しめるが、エスプリと知性が加味されるのはマルティノンだけだろう。シカゴでは冷遇されたマルティノンだが、フランス音楽を振ると、彼の本領が発揮される。 
    さて、レヴュアーたちも指摘するEMIの録音の悪さは致し方ない(セルのドボ8やシューベルトの9番、ブラームスのVn協もスカスカだ)。通常はダイレクト接続で楽しんでいるが、EMIはちょっといじらないと音に艶が乗らない。それでもマルティノンの演奏はいまだにトップクラス、文句は言えない。最近はイベールやオネゲルのアルバムがリストから消えているが、これらも再発してくれることを祈る。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2012/03/15

    バッハというと、先入観かもしればいが、ゴツゴツした、額にしわ寄せた音楽、というイメージが先行する。だが、ムローヴァのバッハはエレガントでジューシーだ。それは構築性が弱い、ということではなく、リズムと強弱のつけ方にある。
    音楽の流れに乗ってリズムが刻まれるのであって、その逆ではない。 それが彼女のバッハの特質のように思う。
    協奏曲だが、コンチェルトグロッソのようにソロが突出せず、アンサンブルと対等にかみ合っているのも好感が持てる。
    既成概念のバッハではないだろうが、個人的には好きな演奏。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/03/10

    7番の清々しさは類を見ない。ごつごつした7番ではなく、軽やかなリズムと透き通るように曲の構造が見えてくる演奏。5番は重厚そのもの。ゆったりとした歩みは、ともすれば鈍するかと思いきや、巨大さをじんわりと感じさせてくれる。5番はエグモントと組んでいたが、7番と一緒になってエグモントが消えてしまったのが惜しい。このエグモントも凄まじい演奏なのに!

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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