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mimi さんのレビュー一覧 

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     2012/02/06

    まず、Gershwin songbookより後は、standardsによる純然たるJazz piano soloアルバムなので、Gershwinとはあまり関係なく、一緒にするのはやや無理があります。しかしながら、それを気にしなければ前半、後半いずれも非常に質の高い音楽なので、全体としても十分推薦に価すると思います。前半のGershwinでは、もともと自分はRhapsody in blueは、original jazz ver.が好きなのですが、フルオーケストラver.よりPianoの比重が高く、そこで若かりし頃のJoanna MacGregorが、まさに天馬空を翔る演奏を聴かせます。日頃聴き古されたRhapsody in blueとは、一味も二味も違う名演です。ピアノ協奏曲は非常にまとめ方が難しい難曲で、正直これに関しては指揮者・オーケストラに不満を抱かざるを得ません。MacGregorの独奏も現在に較べると未だ若いのでしょうが、通常これを弾く当たり前のクラシックピアニストに較べると、やはり一つ一つのフレーズに込める叙情の深さが違い、Jazz,Black musicにどっぷり浸かった演奏家でなければ出せない表現が随所にみられます。Foggy day~Gershwin songbookの数曲はソロですが、同様にGershwinの心を掴み取った、通常のクラシック演奏家ではこうはいかないだろう、と思わせる名演奏と思います。後半のStandards集は、Jazz piano soloとしては強烈な個性に染め上げられた、という程ではないにせよ、黒人音楽と西欧音楽の伝統の両方に根ざした、非常に質の高い音楽で、Gershwinと切り離しても十分愛聴盤になると思いました。CD2枚全体でまとまりはありませんが、ありきたりのGershwinアルバムと違う好演盤ではないでしょうか。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/02/04

    3年前の年末(発売前)に家族から「トイレの神様」を教えられ、同郷であることもあり、応援してきました。FullCDを購入するのは初めてですが、大変丁寧に作り込まれた素晴らしいアルバムと思います。決して傑作ばかりと言う訳ではありませんが、粒ぞろいであり、質が高い曲が非常に多く、何度も繰り返し聴く気になります。自分的には最新曲「メッセージ」がmy favoriteかな。もちろんキャリア的にはもうベテランの彼女なのでしょうけど、「トイレの神様」のブレイクを越え、いま、さらに輝きと安定感を増しつつあると思います。「トイレの神様」を好きになられた方には、是非お薦めしたいですね。地味で目立たないかも知れないけれど、きっと買ってよかったと思いますよ!

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/01/31

    J.S.Bachの諸作品の中で、無伴奏チェロ組曲ほど同曲異演盤が多い曲集は無いのではないでしょうか。しかも同じ演奏者が2回、3回と録音することも珍しくなく、本盤のO.Gaillardにしてもまだ(おそらく)40にもならないのにすでに2回目の録音です。それだけ、チェリストにとって近寄りやすく、また曲集の性質として様々な演奏が広く受け入れられる。しかしながら、かえってそれだけにこの傑作集の真の名演奏に出合うことは、簡単ではないように思います。O.Gaillardの最初の録音は、まだ(たぶん)20代ながらバロック・チェロの演奏中では正確無比の驚異的な技術と高い表現意欲、何よりもBachの曲の本質を全く正統的に見通す能力で際立った存在感を有していました。2回目の録音である本盤は、楽器が変わり、演奏技術・表現力の点で1回目よりも明らかな成熟がみられ、1回目にまだ若いかな、と思わせた諸部分でそのような印象を受けなくなっています。とにかくバロック・チェロによる無伴奏で、ここまで美しい演奏ができるのは他にWispelweyくらいしか思いつかず、その意味で充分過ぎる程の存在意義を有する盤と思います。ただその反面、今回は特に諸組曲の緩徐部分中心にテンポと強弱の恣意的な揺れが非常に気になり、前回自分たちに感銘を与えた、あくまでBachの音楽のみに厳格に奉仕しようとする客観的な演奏姿勢は、やや後退しているようです。多くの再録音するチェリストが、「自由」という便利な言葉に隠れて抑えきれない「我」が、Gaillardのこの演奏にも諸所で表れているように思います。第6番Allemandeの、あらゆる音楽中でも稀有と言える程の完璧な旋律を、たとえ歴史的にチェリストの裁量が許されていたとは言え、崩してしまうのは自分には理解できません。技術的・音楽的に最上の演奏になり得たと思うと残念です。無伴奏チェロ組曲を何度も録音することの難しさを感じました。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 9人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/01/22

    モダン・ヴァイオリニストに詳しい訳でもなく、またこの2曲の聴経験が他人より豊富な訳でもないのですが、2曲とも名演と言えるのではないでしょうか。I.Faustは不勉強にして初めてですが、決して華やかで豊満な音色ではなく、ヴィブラートを極端に抑えた、まるで精髄だけ取り出そうとでも言うような求心的な演奏ながら、一瞬たりとも痩せた印象はなく、余分な装飾のない純粋な音楽が鋼のような太さと強さを持って迫ってきます。もちろん、名器(眠りの森の美女!?)の役割も大きいのでしょうが、それ以上に奏者の驚異的な技術と高い芸術性に圧倒されます。A.Bergの千変万化するリズムと楽想に、何の逡巡もなく確信的で、しかも安らぎに満ちた音楽を築いて行く様は圧巻です。これはC.Abbado/Orch.Mozartの伴奏にも全く言えることですが、これだけ透徹した、細部も全体も構造的にクリアで、かつ膨らみにあふれたBergを聴くのは、自分には初めてかも知れません。Beethovenは、I.Faust, Abbado, O.Mozartいずれも、何の重々しさも無い、Beethoven中期傑作とは思えない天上的な軽みを持ちながら、やはり隅々まで意志の張りつめた引き締まった演奏。Faustのヴァイオリンは、Bergよりも余裕を持ち、しかしどんな細部にも表現に手を抜かない最上級の音楽で、Abbadoの伴奏も含めてどちらかと言えばゆったりしたテンポにも関わらず、(演奏によっては、この曲に時折感じる)長々しさを全く感じさせません。すっきりして非常に見通しの良い演奏なのですが、クールであっても冷めた印象は微塵もなく、絞りに絞った音楽がこれだけ熱く膨らみを持って迫ってくるのは驚異です。3楽章の最初からフィナーレに向けて、火の玉が次第に燃えさかっていくかのような演奏は、Abbadoがライブでのみ昔から時折見せる最上の姿を彷彿させます。昨年のBPOとの「大地の歌」にも思いましたが、Abbadoは今生涯で一番自由な境地にいるのではないでしょうか。伝統的な昔ながらのBeethovenとは言えないでしょうが、この上なく美しいBergを含めて、垣根を越えた音楽を愛する多くの方々にお薦めしたいと思います。

    9人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/01/16

    ブクステフーデのカンタータは20年以上前に、エアチェックで数曲集めて聴いて以来で、まとまったCDとして購入したのは初めてですが、地味ながら非常に質の高い演奏です。Cantus Collnとしては初期の録音に属するかも知れませんが、個々の歌手の力量が高く、独唱、少人数の重唱から合唱に至るまで、歌唱は常にクリアで安定しています。どちらかと言えば小規模なコンチェルト形式のカンタータばかりなのですが、演奏の構成、テンポも申し分なく、やはりこのルネサンスから前・中期バロックにかかるこの時代の作品に関しては、Cantus Collnは非常に素晴らしいことが再認識させられます。目立たない録音ですが、多くのひとにお薦めできる名盤の一つかと思います。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/01/05

    ベルリン・フィルを始めとする現代オケ以外でのEmmanuel Pahudのディスクは、J.S.Bachのフルート・ソナタ全集しか知らず、その演奏は美音ながら、Bachのソナタのあまりにもシンプルかつ重層的な曲構造を全く構築できていない印象がありました。この盤でもBWV1079のトリオ・ソナタは、曲構造の把握と厳格な構築性がまだまだと思いますが、それ以外の曲においては見違えるような素晴らしい演奏を繰り広げており、やはりJ.S.Bach以降の疾風怒涛期にさしかかるこの時期の音楽に、Pahudの音楽性はより適合するのではと思われました。不勉強にして、ここに収録されてる作曲家に十分詳しくはないのですが、やはり比較するとC.P.E.Bachの存在感は圧倒的で、最後のHamburger Sonataは自分が数種類聴いた中でも最上の演奏ではないかと思いました。Carl Philippの無伴奏は、有田正広の名演が耳についていますが、様式感は劣るもののPahudの美しさも格別です。1枚目を担当するKammerakademie Potsdamは、節度と生命感を兼ね備えた充分な名演奏、そして何よりもTrevor Pinnock/Jonathan Mansonの世界最高の通奏低音コンビが、この演奏の価値を数段高めています。昨今ほとんど新譜を耳にしないPinnockですが、これを聴くとそのチェンバロ演奏はますます軽みと美しさ、そして味わいを増しているようで、1980年以降のLeonhardtの域に近づきつつあるのではと思います。正直、アルバム全体としては、繰り返し聴きたい曲ばかりではないですが、演奏者の名演については十分に推薦に値する好盤ではないでしょうか。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/12/26

    S.Kuijken/La Petit Bandeのイタリア・バロックは、MonteverdiのVesproなどもそうでしたが、愉悦・軽妙洒脱といったイメージとは違い、静謐である意味堅く生真面目、人によってはかなり好みが分れるかも知れません。しかしながら、そこにB.Kuijkenのソロが大きくクローズアップされると趣きがだいぶ変わってきます。個人的にB.Kuijkenは、現存する世界最高のフルート奏者と考えていますが、その演奏は一瞬たりとも木と人肌の感覚を失う事がなく、それでいて水晶のように高貴で美しい音色は、以前よりますます磨きがかかっているように思います。このフルートが加わる事で、本来どちらかと言えば気楽に楽しむ作品10が、暖かくしかし格調高い芸術作品に変貌しています。Vivaldiならではの、愛想の良い活き活きとしたバロックを期待するとずれるかも知れませんが、非常に上質の演奏であることは確かで、近年のLa Petit Bandeの中では目立たないがお薦めの盤と思います。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/12/25

    2010年春に輸入盤が発売されてすぐ購入し、幾度か聴いてきました。Hassモデルのダイナミズムと美しい音色を生かした、A.Staierの演奏はある意味技術的にこれ以上無いと言える位で、その第一印象は圧巻の一言でした。ただ、反復して接するにつれ、この演奏に対する疑問も出てきます。あまりにも単純化した言い方で申し訳ないのですが、非常に「重い」のです。もちろん、現在なおGoldberg Var.の作曲・成立事情については、判らないことが多く、この曲が全曲通して演奏されることを意図されていない、とはっきり断言する研究者もいるのですから、このような重厚な演奏を全曲通してつき合うのは、鑑賞方法として正しくない可能性もあります。しかしながら一方でGoldbergの全体としての曲構造を、明確に打ち出して全曲を全く時間の経過を感じさせずに聞き通させてしまう力を持った名演も存在するのも事実です(Gouldの晩年盤がまさに代表でしょうが)。A.Staierのこの演奏が全曲通して聴くに重い印象を与える原因は、おそらく各曲が非常に鮮やかに輝かしく演奏されていても、実はその細部における細かなフレーズ・多声処理が意外と雑に通り過ぎていくからではないでしょうか。Goldbergという曲は、ヨーロッパ音楽数百年の歴史がいっぱいに詰まって、その細部は掘り起こせば掘り起こすほど、何層にも歴史的・音楽的意義が現れてくる傑作と思うのですが(これは使用楽器云々とは別問題で、モダンピアノでももそうした時間的・空間的意味を感じさせる演奏は存在します)、A.Staierの細部から全体の意味を問うよりも、表層の演奏効果が重視された演奏では、そうした一瞬一瞬に遥かな想いをはせる余地がなく、結果として長く重々しい印象になってしまのではないでしょうか。演奏技術的な面では最高でしょうし、佳演ですが、Goldberg var.という西洋音楽史上に類を見ない傑作の価値を十分に明らかにするレベルには至っていないように思います。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/12/24

    実は恥ずかしながら、ヤーコプスやシュタイアーの相棒としてでない、オーケストラ単独としてのフライブルク・バロック・オーケストラを聴くのは初めてですが、非常に個々の技量が高く、また特に指揮者を置いてないにも関わらず、だれたところの全く無い演奏団体と感じました。類似の団体ではベルリン古楽アカデミーが、しばしば縦の線の揃わない甘い演奏になりがちなのに比して、この団体の演奏の引き締まった様はある意味驚異的で、コンサートマスターを中心とした演奏者間の意思疎通が並でないことを伺わせます。ただ演奏の質の高さに比較して、管弦楽組曲全曲の演奏としては、かなり癖の強いものでもあります。基礎にはまぎれなくドイツ・バッハ演奏の伝統が強く感じられ、その意味では安定感はかなりなものですが、特に各曲の舞曲において、テンポの恣意的な動かし方は相当気になりますし、第二番のフルート・パートは、ほとんど原旋律が現れない位に即興的に崩していくので、原旋律のあまりにも完璧な美しさを愛する者には、ほとんど編曲のレベルに感じられます。また、第三番airをはじめとして、所々で今一つBachの最深奥に届かないもどかしさを感じ、心から感動できない不満が拭えません。最もこれを感じない演奏などごく稀なので、この点で演奏者を減点するのは酷なのでしょうが、演奏レベルが高いだけに惜しく思ってしまいます。せめてもっと素直に演奏されていれば....。技術的には疑いなく現代最高の団体の一つですし、佳演ですので、管弦楽組曲を集めておられる方には、持っておられる価値があるかと思います。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/12/22

    「ヨハネ受難曲」という曲は、従来、超越的・理知的・劇的と言われる事が多かったと思います。もちろんこれは4福音書中、疑いなく最も特異で最も思弁的なヨハネ福音書の性格に拠る所が大きく、J.S.Bachの作曲もそのように行われている訳ですが、情緒的・感情的で慈愛に満ちたとされるマタイに比較して、従来のヨハネ受難曲の演奏も、威厳に満ちた劇的で崇高な性格のものが多かったのではないでしょうか。古のKarl Richterの名盤でも、ヨハネの激しさ・神々しさは群を抜いていますし、E.JochumやM.Corbozなどの大指揮者の名盤も、あまりの激しさに時に気疲れする程でした。ヨハネの名演を聴き尽くした訳でもないのに、えらそうに断言はできないのですが、Junghanel/Cantus Collnの最新盤は、その点が全く異なるように思います。突拍子もない連想ですが、まるで聖母マリアの眼差しで語られた受難曲とでもいうべきでしょうか。とにかくこれほどに優しく、常に慈愛に満ちた、まるでもう一つのマタイのようなヨハネ受難曲には初めて接します。声楽が8人でOVPPであるのはもちろん、器楽も小編成ですが、隅々にいたるまでー激しい群衆合唱も含めてー常に演奏者の、イエス・キリストに対する思いと涙が感じられ、決して遅い演奏ではないのですが、全曲が本当に慈しむように美しく奏でられます。OVPPの演奏の質としては、群衆合唱、審問の部分なども含め、決して現代最高の技術と言い難い面もみられますし、またEvangelistのHans Jorg Mammelも経験豊富で安定した歌唱ながらいま一歩の崇高さを求めたい気がしないでもないですが、Junghanel率いる演奏者全員の、この異様なまでの心の篭りようの前では、不満を言う気にもなりません。挽歌のRuht whol〜終曲Ach, Herrにかけての部分は、最上のマタイ受難曲の名演以外で、こんなにも人間に対する慈愛を放射する音楽にはめったに出会う事はなく、慣れ親しんだヨハネにも関わらず、涙無しに聴き終える事ができませんでした。Junghanel/Cantus Collnの最も素晴らしい部分が出た演奏ではないでしょうか。これまでにない、素晴らしいヨハネ受難曲の演奏として、多くの方に聴いていただきたいと思います。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2011/08/31

    録音データが記されていないのですが、おそらく50年代から60年前後、Stereoという記載が一ヶ所ありますが、録音はおそろしく貧弱で特にオルガンは全く奥行きのない平板な音です。最初のGoldbergと同じ頃、おそらくLeonhardt最初期の録音で、正直購入時あまり期待していなかったのですが、貧しい音に釣り合わぬ素晴らしい名演でした。前半オルガン、後半チェンバロの構成ですが、いずれも各声部の明晰さ、テンポとリズムの全く恣意性を排した透明さ、しかもすでにLeonhardtが先鞭をつけた時代に裏打ちされた微妙なアクセント、ずれもふんだんに駆使され、他奏者の録音の良いフレスコバルディと比較しても全く遜色がありません。さすがに後年(70年代)以降のLeonhardtのフレスコバルディと較べると、テンポとフレージングにおいて若々しさを感じますが、それもかえってこの盤の大きな魅力になっています。フレスコバルディの深く精緻な多声構造を表出することにかけて、Leonhardtは初期から唯一無二の存在であったことを、あらためて確認できる貴重な演奏で、録音は悪いですがフレスコバルディ演奏史上の名盤の一つと思います。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/08/18

    G.Frescobaldiの鍵盤作品(かなり声も入ってますが)を、一つのレーベルと限られた演奏者で網羅する画期的な企画です。核となるのは、主にオルガンを受け持つF.Tasiniと、主にチェンバロ担当のS.Vartoloで、両者とも自分の力量を生かした誠実な演奏と言えるでしょう。ただ、ルネサンス鍵盤音楽の頂点としての、Frescobaldiのまるで幾何学模様の如き精緻な多声構造が十全に表出されているか、という点ではやや疑問符がつきます。特にS.Vartoloは高い技術を持っていると思うのですが、テンポやフレーズを表出的に動かしてややロマン的な表現に傾くため、明晰な演奏とは言えません。Leonhardtなどの、全く恣意的な感情表現を排した、まるで数学的建築構造をみるような透徹したFrescobaldiには到底及びません。さらにこのシリーズは、近年の録音も含まれているにもかかわらず、所々録音が非常に不安定なのもウィークポイントです。とは言え、他に代わるものが殆どない点でも、確実に値段以上の存在価値のある全集とは思います。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/27

    オランダ、デンマーク、ドイツ、スウェーデン、ベルギーの5台の歴史的オルガンを弾き分けた演奏。ブクステフーデのオルガンCDはこれまで1枚ものばかり持っていて、オルガン作品全集を購入するのは初めてなので、他の奏者との比較はできませんが、演奏・録音・装丁・価格(輸入盤)を総合して、おそらく現在最も素晴らしいものではないでしょうか。Foccroulleの演奏は、どの楽器においても極めて明晰で、優秀な録音も手伝ってブクステフーデの作品の細部にいたるまでくっきりと鑑賞できます。しかも作品によっては、北ドイツ楽派らしく極めて壮大な響きも用いますが、その場合にあっても演奏は常に清冽な詩情を湛えており、聴いていてもたれることがほとんどありません。ブクステフーデの膨大な作品の、多様な姿が一つ一つ誠実に描き分けられています。もちろん個々の有名曲においてはこれ以上の演奏もあるのでしょうが、少なくとも自分の乏しい試聴歴では、これより満足できるブクステフーデ作品集はそうなく、このBachの偉大なる先達の音楽を知るのに最もお薦めできる盤と思います。輸入盤のFoccroulleによる解説は、極めて詳細で誠実なもので、読みごたえ十分です。

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2011/07/25

    他のレビュアーに便乗するような書き方で恐縮ですが、自分も評判が良いので期待していた割に満足できませんでした。ほぼ10人のOVPPに準じる演奏形態ですが、それ以前の問題があると思います。J.S.Bachの音楽は極めて質が高いため、いかなる演奏スタイルでも必ず何らかの魅力は感じ取れますが、さりとてどういう風に演奏しても最高という訳ではありません。むしろBachの音楽の演奏ほど難しいものはなく、その最も重要な点は正しいリズムとテンポ、フレージングを(全ての声部において)見出すことで、多くの曲においては未だに最高の演奏というものは現れていないのが実情と思います。ユングヘーネル&カントゥス・ケルンの演奏も、この点で正しいリズム、テンポを見出しておらず、結果としてこのBachの最も難解な多声構造を持つ曲で、柔らかだけれど、曖昧模糊とした響きの塊しか作り出せていません。OVPPとしてはどちらかと言えば近年の演奏に属するのですが、S.Kuijken/La Petit Bandeの全ての声部が透明で明瞭に独立したロ短調ミサと比較すると、その質の差はあまりにも大きいようです。カントゥス・ケルンでは、Vespro(Monteverdi)やシュッツの好演に較べてBachのカンタータ集などで今一つよい印象を持てなかった理由が、このロ短調ミサの演奏を聴くと判るような気がします。もちろん悪い演奏ではないですが、演奏形態にかかわらず、全てのロ短調ミサの中で平均レベル以上の演奏ではないように思います。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/17

    いずれも15年以上前、J.MacGregorが30代の録音ですが、やはりとても通常のクラシック・ピアニストに対する感覚では推し量れない、一口で言って非常に求心力の強い演奏です。まずフランス組曲ですが、モダン・ピアニストのほとんどが、この曲集の愛らしい旋律や和声にとらわれて、内部構造の不明確な、外見はバロックでも内実はGallant様式の亜流のような音楽を作ってしまうのに対し、MacGregorの演奏は、複数声部を完全に独立させ、時には旋律や和声を犠牲にしても(?)まるで低音声部が主役のような、あくまで強固に多声的・構築的な音楽を実現しています。明らかにGouldの影響を受けていると思われる部分もあるのですが、そういった外見以上に、この点をモダン・ピアノではっきり実現できているのは確かに過去Gould以外は思い当たりません。ぱっと見、強烈な印象はそれ程にないのですが、繰り返し聴くにつれ、フランス組曲の簡素だが堅固な音楽に惹きつけられていきます。明らかにモダン・ピアノによるフランス組曲全曲での、数少ない名演奏の一つと思います。フーガの技法は、演奏の組み立てはさすがに若々しくラフで、即興性を重んじてるかと思えるほど。決してペダルも忌避せず、縦の線も厳格に揃えているわけではないのですが、各々の声部が完全に独立し、数人の奏者(声部)が自由にしかも生き生きと発言しつつ、全体を構成していく様が、MacGregorの強烈なテクニックに支えられて圧巻です。最新のGoldbergの名演に較べると、演奏全体の考え抜かれた透徹さは一歩譲りますが、それでも数あるモダン・ピアノによるフーガの技法中で、これだけ古典派以降のピアノ音楽伝統に囚われない、バロック的でも現代的でもある自由な演奏は、Gouldのピアノによる数曲を除いては、他に越えるもののないレベルであると思います。Gouldがいない今、現存するピアニストでMacGregorほどに、多声音楽に根ざしたJ.S.Bachの本質を生き生きと正しく伝えることのできる奏者は、いないのではないでしょうか。J.S.Bachの音楽を愛する、できるだけ多くの方に聴いてもらいたい好演盤です。

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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