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フォアグラ さんのレビュー一覧 

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     2021/11/29

    とても美人さんだ。それもそのはず本業は女優だそうだが全く見覚えがない。これは58年米コロンビア録音だが、声を聴いてびっくり。ハスキーな低音でブルージー。ジャケットの雰囲気とあまりに合わない。しかもまだ20代なのだ。写真は別人じゃないかと疑い、動画を探したのだが、やっぱりこの顔で歌っている。全く稀な声質だと思うがそれだけではなく素晴らしい歌唱なのだ。「サムシング・ワンダフル」など感動的。ヴォーカルファンには絶対のお薦め。

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     2021/11/20

    クレバッサの魅力を満喫できる素晴らしいアルバム。スペインをテーマにしているが、アリアあり歌曲あり、オケありピアノ、ギター伴奏あり、ソロありデュエットありと並の歌手のアルバムとは次元が違う。モンポウがオーケストラ編曲版なのも珍しい。「カルメン」で始まり「カルメン」で締める構成も心憎い。クレバッサは小柄な人で声量がどうなのかはわからないが、録音では問題なく、コケティッシュな歌が素敵だ。イギリスの若手ベン・グラスバーグの指揮もとてもいい。

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     2021/11/06

    ブルックナーゆかりのウィーン・フィルによる交響曲全集は今もこれが唯一。ティーレマンによる企画が進行中だが、今のウィーン・フィルではここで聴けるホルンの響きは失われてしまっている。演奏も抜群に面白い。ベームやマゼールの定評ある名盤がある一方、あまり評価されていないショルティ、メータなどもある。ところが29歳のメータによる9番が徹底的に歌い抜いた圧巻の出来。アバドの1番での躍動的な表現もいわゆるブルックナー指揮者からは聴けない魅力がある。ショルティは7番はいまいちだが8番は迫真的な演奏になっている。彼らのブルックナーが日本で評価されなかった理由は聴けばわかるが、こういう動的なブルックナーも否定すべきではない。シュタインの2番6番は反対に安定したブルックナー演奏で、もちろんこれもいい。オリジナルジャケット仕様は嬉しいが、初めて見たベームの3番、ショルティの8番の冴えないデザインには驚かされた。当時のキングレコードがデッカオリジナルジャケットを殆ど採用しなかったのも納得。

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     2021/11/05

    バッハの同時代人シュテルツェルは無名ではないもののメジャーとは程遠い。大半の作品が散逸したのも要因らしいが、やはり同時代人のグラウプナーの再評価が進む中、シュテルツェルにも日が当たってほしい。「子羊が往く、咎を背負って」はライプツィヒでバッハも指揮した作品で、代表作と思われる(私も大した情報がないのでわからないのだが)。作風はバッハに近い。コラールはバッハの曲かと思うくらい。構成もバッハの受難曲と同じだが、音楽が劇的にならず、聴く者を心理的に追い詰めることもない。アリアも3分程度で淡々と進んでしまうため深い感動まで至らない。それでも個々のナンバーは美しい曲が多く一聴の価値は十分あると思う。演奏も優秀。ソプラノのヴィンターの美声が心地よい。

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     2021/10/23

    ロンドンでミュージカルナンバーや映画音楽を大編成オケでやるとなるとジョン・ウィルソンが有名だが、ロイヤル・フィル・ポップスも根強く活動を続けている。これまでRPOレーベルから出ていたが、今回ナクソスから登場。バルカムのアレンジはオーソドックスなもので意表を突くことは全くないが、こうしたスタンダード中のスタンダードをフルオーケストラで聴く機会自体少なくこれはこれで楽しめる。ヴォーカルのカーリュー、ビックリーもRPOポップスの常連だが、これまでの録音に比べカーリューの声が衰えているのが残念。そこをジャズセンスを加味して凌ごうとしているがあまり上手くない。ジャズヴォーカルならシナトラをはじめ名唱だらけだからね。次回はメンバーチェンジをお願いしたい。

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     2021/10/02

    毎度のことながらHMVの年表が素晴らしい。これを見ると、戦前、戦後の混乱期にクリップスがウィーンでいかに奔走したかがわかる。リヒャルト・シュトラウスやフバイとのエピソードも興味深い。欲を言えば英国米国での活動記述をもうちょっと濃くしてほしいところだが、これだけの情報を見れて文句を言うのも大人げない。全て持っている音源だが、年表の読み応えに感謝し購入させていただく。クリップスといえば、高崎保男氏が「ドン・ジョヴァンニ」を酷評したり、ウィーン・フィルが非協力的でクリップスが泣いた、とかあまり好意的な記事が日本では出ず、評価はいまいちな人に甘んじている。しかし、私はクリップスの「ドン・ジョヴァンニ」が大好きだし、ウィーン・フィルやLSOの録音にも逸品が多いと思う。この人も偏った批評の犠牲者と一人といっていいだろう。それにしても、得意としたブルックナーのステレオ録音がひとつもないのは惜しい。残っていないのだろうか。

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     2021/09/24

    スカルコッタスはシェーンベルクのマスタークラスで学んだということだが、第1集の交響曲集はベタな調性音楽で、あれっという感じだった。この第2集収録の組曲第1番は12音が出てきてシェーンベルクの教え子らしくなってきた。世界初録音とのことだが、なかなかの秀作であり埋もれさせるには惜しい。ギリシャ舞曲は完全な調性音楽であり、エネスクやパンチョ・ヴラディゲロフに通じるエスニックな民族舞曲で楽しめる。ツィアリス/アテネ国立管弦楽団の演奏は第1集では緩く感じたが、1年後のこの録音ははるかに好調。無調の組曲も面白さを引き出すのに成功している。

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     2021/09/04

    67年バイロイト引っ越し公演では、ブーレーズとN響が極めて良好な関係であったのに対しシッパーズはN響から総スカンだったと言われている。このCDに付いている当時のシッパーズのインタビューでもシッパーズはN響より日本フィルのほうがいいと言っているので関係が良くなかったのが伺えるし、インタビュー自体シッパーズが生意気な若造と受け取られるように書かれている。しかし、それを額面通りうけとっていいのか。インタビュアーにはN響の悪評が耳に入っていただろうし、シッパーズの米国人らしいフランクさが失礼な奴と感じられた可能性がある。では演奏はどうか。オペラティックな興奮、白熱度、感動はブーレーズの「トリスタン」を上回ると私は思う。ブーレーズよりシッパーズのほうが年下だが、オペラ経験は比較にならないし、エネルギッシュで瑞々しい音楽はむしろブーレーズより新しく感じられる。歌手もいい。シリヤとデルネシュは20台。若々しくしなやかでありニルソンやギネス・ジョーンズより新鮮だ。この二人のブリュンヒルデとジークリンデがステレオで残されたのはブーレーズ盤以上に重要ではないだろうか。アダムのヴォータンもいいが、「ヴォータンの告別」でシッパーズが折角遅めのテンポで聞かせ場を用意したのに先走ってしまうのは残念。N響は本当によくやっている。N響はテンペラメントな指揮者が嫌いだからシッパーズと合わなかったんだろうが、その演奏ぶりは懸命であり、胸を熱くさせる。

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     2021/08/29

    ヤノフスキは常にオペラティックに音楽を盛り上げることはせず、透明で構築的な演奏を志向する人だ。ドレスデンでもシュターツカペレではなく、普段オペラはやらないフィルハーモニーを起用しているのもヤノフスキの方向性に沿ったものだろう。正直ヤノフスキのワーグナーは透明すぎて毒がなく興奮させてくれないので好みではないが、「フィデリオ」は元々カンタータ的なところのあるオペラなのでヤノフスキの表現と合致しすこぶる優れたものとなった。ドレスデン・フィルはベルリン放送響より響きが硬質で、それもベートーヴェンに合っている。独唱陣も優秀。とりわけダヴィドセンのレオノーレが立派。ツェッペンフェルトのロッコもいい。「レオノーレ」序曲第3番がないのが寂しいが、ペンタトンの録音は優秀であり推奨できる出来栄えだと思う。

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     2021/08/25

    ユニヴァーサルから出たグリュミオー全集は速攻で完売。不良があったということで一時的に再発したがこれも瞬殺。そりゃそうだ。私も買ったもん。ユニヴァーサルはグリュミオー人気を過小評価していたんじゃないか。だって、ヴァイオリンの魅力を突き詰めるとグリュミオーにいくんだから。オリジナルジャケットの問題とかいろいろあるけどやっぱり買っときたい。さて、グリュミオー全集を買えなかった人にメンブランのセットは手頃に見えるが、これはお薦めできないなあ。コリン・デイヴィスとのモーツァルト・コンチェルトとフルネとのフランスものの音が悪すぎる。板起しに使ったレコードの状態が良くなかったのだろう。このセットの音源は全集がなくても国内盤で全て手に入るからそちらを買うべきだ。

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     2021/08/10

    この演奏、新譜で出た時に評論家から酷評されたのをご存知だろうか。曰く、ワルベルクの鈍重な指揮がグリュミオーの足を引っ張り云々。嘘はいかんよ嘘は。ワルベルクのどこが鈍重なの。この曲に必要な要素はちゃんと用意されているしオケも燃えている。グリュミオーはユダヤ系のヴァイオリニストとは違い、音色は脂っこくなく透明で清潔、それでも緊迫した展開も歌心も万全の名演奏である。

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     2021/08/08

    70年代中学生になってから様々な指揮者の実演に接することができた。その中で驚いた指揮トップ3はショルティ、ザンデルリンク、ブーレーズ。ショルティとザンデルリンクはそのヘンテコぶりに思わず笑ってしまった。一方ブーレーズはここまで指揮者が感情的にならず冷静かつスマートに指揮できるものかと感心したのだ。カルロス・クライバーはもちろん凄かったが、クライバー以降は指揮者がかっこよさを相当意識するようになり、その弊害も大きかったと思われる。ショルティ、ザンデルリンク、ブーレーズは自分がどう見られているかは関係なく自分の音楽を表現するとあのスタイルになったのだろう。これが本来の指揮者の有り様だと思うのだが。さてこの大阪での「トリスタン」。実は映像を見ることができる。前奏曲ではアップはないもののブーレーズの指揮ぶりが見れるのだが、これが私が70年代に見たブーレーズとは違い、大きく手を振りときに熱情的なのだ。そして非常にわかりやすい。N響がワーグナーに不慣れなことを知りスタイルを変えたのだろう。N響に非常に好評だったというのはよくわかる。ブーレーズは臨機応変にできた人だとわかるし、ブーレーズには珍しく白熱する場面もある。歌手の出来はバイロイトのベーム盤以上かもしれないしオケもなんとか持ちこたえている。記録的価値を考慮しなくても一聴の価値があると思う。

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     2021/07/29

    クーベリック/シカゴBOXからの流れでロジンスキーコレクションを購入。というのも、シカゴでのクーベリックの前任がロジンスキーでキャシディ女史はロジンスキーを激賞しクーベリックをこき下ろしたからだ。共通するブラームス1番、チャイコフスキー6番、「展覧会の絵」を聴き比べるとクーベリックが断然いい。キャシディには音楽的見識も良心もなかったことがわかるが、こんな人間に23年間評論させ、クーベリック、ショルティ、マルティノンの心に深い傷を負わせたトリビューンの責任は重い(ショルティが最晩年に書いた自伝でもキャシディへの怒りを隠していない)。とはいえそれはロジンスキーに関わりないこと。彼の音楽はテキパキ進行する割にクライマックスはそっけなく淡泊なところが物足りない。オーケストラ・ビルダーとして有名な人だからNYPの状態はいいが紹介されているような熱血、爆演は少ない。これはウェストミンスター盤に共通する感想だ。いいと思ったのは、シベリウス4番、ワーグナー。コロンビア交響楽団を振ったトワイライト・コンサートは随分ごった煮のプログラムだがなかなか楽しめる。SPの音質は驚くばかり。スクラッチノイズもほとんどなく極めて鮮明だ。

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     2021/07/24

    クーベリックの遺産中最高のものがシカゴ響とのマーキュリー録音である。クーベリックのライフワークであった「わが祖国」も第1回録音のシカゴ盤が断然素晴らしく同曲のベストワンだと私は思っている。知と情のバランスが見事でフォルムは崩れず、それでいて白熱的な演奏であり、シカゴも圧倒的な素晴らしさだ。またブラームスの1番、チャイコフスキーの4番、6番も屈指の名演であり、クーベリックが欧州に帰って数年後に録音したウィーン・フィルとのデッカ、EMI録音とは密度も燃焼度もまるで違う。クーベリックはエモーショナルな表現が突然出てフォルムを崩したり、知が勝ちすぎて面白みのない演奏になったり私はあまり評価していないのだが、シカゴ時代はそんなことがないのだ。オケとの関係が良好だったことも伺える。加えてマーキュリーの超優秀録音!ウィルマ・コザート、ロバート・ファイン夫妻との出会いがこの幸福な録音を生み出すことになった。エロクエンス盤の解説が読み応えがある。これを見ると当時クーベリックが意欲満々のプログラムを組んでいたことがわかる。また、クーベリック退任の大きな要素になったシカゴ・トリビューン紙クローディア・キャシディの功罪がまとめられているのも興味深い。彼女の批評の表現はちょっとありえないレベルでありこれだけ優れた演奏をしてこんな叩かれ方をされたらクーベリックが深く傷ついたのもむべなるかなと思わせる。

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     2021/07/22

    私にはもうひとつわからない指揮者であるキリル・ペトレンコの新譜。7番はマーラーの交響曲中最も好きな曲なので評価も厳しくならざるを得ないが、高水準な演奏であることを認めつつトップ5に入るものではないという感想だ。ペトレンコでよくわからないのは表現の一貫性が希薄なことで、ここでも抜群に切れ味鋭い部分と案外サラッと過ぎてしまうところが混在している。そのため部分的には面白いのだが、意外に盛り上がらないのだ。第3楽章も随分明るい音楽になっているが失われたものも多いように思える。

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