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Maya さんのレビュー一覧 

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     2023/06/10

    この作品を舞台にかけるとは素晴らしく攻めた企画ではないでしょうか。当時のメルケル首相の顔も客席に見える、ドイツ統一記念日でもあるこの日。おそらく「統一」とか「神聖」とか「壮大」といった価値観をいったんパステルで塗りつぶして子どもの遊びにしてしまおうという舞台。ドイツ表現主義から真剣さと漆黒さをあえて取り外し、ふざけ倒してしまおうという「ノイエ」な舞台。その結果複雑怪奇な「ファウスト」の世界が輪をかけてちんぷんかんぷんなものにされ、内容伝達よりは脱臼化が確信犯的に繰り広げられる。その意図は分からなくもないが、正直最後までいたたまれない思いがあった。

    で、あるにも関わらず、視聴した翌日も、美しいとしか言いようのないわだかまりが残っている。雨後の水溜まりが紫陽花を映しているように。なぜなのか。やはり音楽である。繊細過ぎ、一心過ぎて影のように流れていたシューマンの音楽が、「舞台」という視覚への暴力のあとに、不屈の野花のように香り、脳裏に立ち上がってくる。
    そしてそれが舞台の記憶に逆流して、汚泥が汚泥のまま祝福される世界が広がっていた、そんな気がしてきた。

    ファウスト、グレートヒェン、メフィストフェレス、それぞれが同時に2人づつ存在するが、それは演じ手と歌い手であるとともに、二重化している人格を人間存在の象徴とみなすものと思われ、原作をあえて忠実に視覚化するならこうなるほかあるまい。

    つまりある程度原作を知っていることが求められる舞台である。しかしそれならシューマンが曲をつけなかった部分まで語らせる必要は、私見では、なかった気がする。それがあっても内容理解が直接深まることはなく、むしろ混乱するし、ストーリーは人間存在の悲惨とそこからの脱却を象徴するものと割り切れば、シューマンが付曲した範囲で充分と思われるからである。
    そのことを別にすれば、舞台化困難と思われる楽曲への、大胆な挑戦であり、私としてはかねて大事に聴いてきた曲をますます好きになれた思いがするだけでも感謝したい。

    第1部では葬列に生きながら運ばれてくるグレートヒェンの祈りがまず卓抜な着想であると思われた。全体に、舞台がどんなに極彩色でも、歌と管弦楽の響きはまさに王道のものと感じられ、その視覚と聴覚の齟齬が非常な詩情を醸す瞬間もある。
    第2部での控え目だがドラマティックな音楽は舞台の有無に関わらず素晴らしいが、やはり死者たちを少年少女合唱が演じる作曲者の着想に驚嘆を新たにする。
    第3部はマーラーに半世紀以上先駆している超絶的な音楽だが、マリアを讃える神父役のテノールが私としては不満であった。しかし一切を茶番化する方針の舞台にあって、この熱く悲愴な旋律は、何者が歌っても違和感を伴ってしまうであろう。

    全体に、この曲はやはり思念の中で、ひとり向き合うときにだけ、理屈や論理を越えたヴィジョンをもたらしてくれるものであろう。作曲者は、ゲーテを使って、ゲーテ以上のものを模索していたと思われてならない。そのことに気づかせてくれたのがこの舞台であることに間違いはない。
    この内面的な音楽に現実の舞台を与えて、大勢の美意識や価値観に問題を提起するというリスクを敢えてとった企画実行者と出演者全員に、この場を借りて心からの感嘆と感謝を捧げたい。

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  • 15人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/09/17

    曲名を見て、私ならそれだけで買いますね。シューマンに何度も挑もうとする人の挑戦にはすべて耳を澄ます。「正解」に安心したい人はシューマンには近づかない方がいい。不満だけがつのる。だが、解はないのにそれを出し続ける虚しさに折れそうになる人間にとって、シューマンは共に戦う相棒そのものだから。

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     2013/12/12

    非常に鋭利で美しい音楽。20世紀の弦楽四重奏曲としてはシェーンベルク、バルトークは非常に有名ですが、他ではこのクレネク(と発音されるのを本人は望んでいたとか)とヒンデミット(デンマーク四重奏団による全集あり)が個人的には素晴らしいと思います。いずれも緊迫した雰囲気をたたえ、時代の底から時代に刃向かっていく、混濁の中にも怜悧な純粋さを感じさせます。ソナーレ四重奏団は未知でしたが1980年創立のドイツの団体とのこと。ヴィオラとチェロは曲によって交代があるようですが、どの曲も一貫した、木目調の美しい響きで非常に好感が持てました。ちなみにジャケットはクレネク自身による抽象画であるとのこと。ほかのサイトでは入手が困難になりつつあるようですので迷ったらとりあえず入手しておくことを強くお薦めします。

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     2013/10/23

    貴重な全集です。3枚のディスクがそのまま箱に入って、日本語解説書が付いています。折りたたまれた紙1枚の裏表ですが情報量は多く、よく読みながらだと曲がさらに面白く感じられます。多少高価でも日本語解説付きのものをおすすめします。いずれの曲も明朗な中に、それと気づかぬほどの翳りがしのばされ、非常に高雅な印象です。ラヴェルをして「最も重要な作曲家」と言わしめたミヨーの全貌はなかなかつかみにくいですが、独奏曲はこの3枚で全集。繰り返し聴くに足る素晴らしい内容だと思います。ちなみにパリジーQによる弦楽四重奏曲全集と合わせて聴くと、さらに豊穣な世界です。(なおHMVではどうして国内盤や日本語解説付きのディスクが日本語で検索できないのでしょう。)

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     2013/06/25

    正式名称は「聖金口(せい・きんこう)イオアン聖体礼儀」とのこと。チャイコフスキー運命の年1878年(交響曲第4番などの頃)作曲。1時間近い全編無伴奏合唱になります。依頼された作品ではなく、自主的につくられた曲とのことです。それどころか当時聖歌を管理していた帝室聖堂の抗議(「世俗の者が聖歌などもってのほか」とか)を受け、裁判沙汰にまでなりながら世に送り出されたものです。作曲者葬儀の際にも奏されたというこの静かなる、反骨の聖歌は、宗教概念のようなものを越えて、胸に沁みるものがあります。ライナーに歌詞はありませんがお祈りの定型文中心ですのでほかに調べようはあります。「1時間無伴奏混声合唱?」正直最初抵抗がありました。今もたびたび聴くというわけでもありませんが、いざ聴けば、時の流れが澄み渡って、時に追われてばかりいたことに気づくという感じになります。バレエ曲でのような聴かせ上手な感じはまるでなく、嘆くでもなく訴えるでもなく、ひたすら静かな内的昂揚をもって生をほめたたえる音楽。いわゆる3大バレエがどれも依頼された作品であることも考えれば、実はこの静かな熱誠こそがチャイコフスキーの本懐、そして全作に通底するものではなかったかと考えます。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/11/16

    この四半世紀様々な演奏でベートーヴェンの協奏曲を聴いてきましたが、最近最もうたれたのがこれでした。この曲も両翼配置のオーケストラが伴奏すると俄然美しいので、メニューイン/クレンペラー、スーク/ボールト、ツェートマイアー/ブリュッヘンなどが特に記憶に残っています。このフェラス/ベーム盤はモノラルゆえオケのステレオ感は当然ないわけですが、高い巌か深い森のように立ちはだかる暗いオケを切り分けかけのぼっていく独奏の、ほとんど痛みさえ感じさせる清純さに比類のないものを感じました。
    51年といばフェラスは当時まだ18歳ほどということになります。その後のムターを知るゆえ若さだけでは驚きませんが、このひりひりするような存在感はどこからくるのか。揺らしも破綻もなくほとんどまっすぐ弾いているのに、次の音が無事つむがれるのか決して安心できないのです。ほとんどの奏者がもたらす安心感がない。にもかかわらず懸命につむがれていく。それゆえに旋律が既成のものの複製ではない、唯一無二、今生まれたものと思えるのです。表面的にはまるで似ていませんが、精神的にエネスコ、メニューイン、シゲティを思わせます。
    なお私が知る限りでフェラスのベートーヴェンで忘れ難い凄演としては、1959年プラード音楽祭ライヴでケンプとの「クロイツェル・ソナタ」(M&A)、そして1970年の三重協奏曲(ハイドシェク、トルトゥリエ、マルティノン。DOREMI)があります。年々崩落ぎりぎりで奏でているような熱気が強まっていきます。故にこのディスクでの意志と熱気の危うい均衡はかけがえがない瞬間をとらえたものということができます。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/11/14

    この素晴らしい演奏がこの値段で復活しているのにどなたのレビューもないとは。初演者ベームの録音をまだ知らない私などが出る幕ではないのですが、全編ルチア・ポップの「独奏ヴァイオリンのような声つき歌劇」といいたくなる美しさをお伝えしたく思いました。「ばらの騎士」より30年近く後の作品ですが、神話にふさわしい古典的な響きがします。耳に優しいのにほかでは絶対に聴けないと断言できる新しさがあります。
    冒頭少しはずれたようなホルンが聴こえますが本当のアルペン・ホルンが吹かれているとのことです。ダフネが樹木と化す幕切れまでの20分、どんな名曲名演奏でも疲れてくる頃ですが何とか集中力を維持していただきたい。この世ならぬ官能美の表現にうたれます。
    邦訳があればとも思いますが、この曲の場合この響きがすべてと感じます。ポップは人の匂いがしない神話の少女として天性のものがあるかと。シュライアーの声は個人的に苦手なのですが嫉妬深いフラれ役(大事です)が絶品。オケはふくよかで美しく鮮明なのですが個人的には録音としてさらに解像度があればとも思いました(ヘッドフォンでも例えば第2ヴァイオリンが右からなのかどうかはっきりしない)。なおライナーには1982年11月の録音とあります。このシリーズはあっけなく廃盤になるのでご注意の上、この信じがたい価格であるうちにどうぞ。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/11/14

    内容紹介。DISC1.ブラームスのハンガリー舞曲全曲。 2.ドヴォルザークのスラヴ舞曲全曲。 3.ビゼー「子どもの遊び」、フォーレ「ドリー」、ラヴェル「マ・メール・ロワ」、プーランクのエレジーほか2曲、ミヨーの「スカラムーシュ」。 4.ファリャ、アルベニス他のスペイン音楽集。 5.チャイコフスキーの「イタリア奇想曲」(作曲者編)、「白鳥の湖」から3曲(ドビュッシー編)、「眠りの森の美女」から5曲(ラフマニノフ編)、スラヴ行進曲(Batalina編)、スクリャービンの幻想曲イ短調。 6.ガーシュウィンのラプソディ・イン・ブルーを2台ピアノ版(デビュー録音)と管弦楽伴奏版(シャイー指揮クリーヴランド管)の2種、2台ピアノ版のピアノ協奏曲ヘ長調、そしてプーランクの2台ピアノのための協奏曲ニ短調(小澤指揮ボストン響)。以上です。
    ピアノ連弾曲は今まで後手に回してきましたが、世界がひろがります。管弦楽の色彩感はなくても、このような優れた奏者の手にかかれば白と黒の世界にも無限の濃淡と詩があることに気づかされます。
    なお信州の方の「連弾曲も2台ピアノで演奏している」という貴重なレビューで「これだ」と思い購入を決めました。連弾曲も音だけで聴く以上、奏者が並んで弾くことにこだわらなくても、高音部(姉カティア)と低音部(妹マリエラ)が左右のヘッドフォンからはっきり分かれて聴こえてくるのは、音楽の構造を理解するのにありがたいばかりか、奏者ふたりの間に腰掛けて聴いているような、ばちあたり的に贅沢なポジションが味わえるという意味でもありがたいです。キンキンしすぎないフィリップスの録音も私は好きです。
    ラベック姉妹を盤歴四半世紀にもなるのに今まで聴かずにいたことが悔やまれますが、逆にこれから知っていけるというのは幸福です。なお姉妹はKMLという独自レーベルも立ち上げており、素晴らしい音をいれています(BOXも出ているようですがHMVではみかけません)。
    なおEMIにも若き日の名演奏が残されています。エラートへの録音も復活してくれることを望みます。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/11/13

    DISC1は最晩年の「小ミサ・ソレムニス」、そのオリジナル稿の録音です。4人の独唱者と8人の4声合唱団をフォルテピアノ2台とハルモニウムが伴奏。後に作曲者自身によってオーケストラ伴奏版が書かれますが、晩年の傑作作品集「老いの過ち」の延長で、その総決算として作曲者の心を聴くならこの室内演奏版に限ります。独唱はPARES-REYNA(S)SIPPOLA(A)DEWALD(T)LIKA(B)。
    DISC2のスターバト・マーテルも室内楽的な明澄さがあって非常に美しいです。独唱はMARTINES,MINGARDO,CASTIRONOVO,RELYEA。
    ブックレット、歌詞はありませんが、オペラと違って歌詞はほぼ定型文ですし、どうしてもならナイーヴのサイト上に歌詞・解説がある旨案内があります。この値段でこんなに質の高い演奏。廃盤にならないうちに是非どうぞ。
    この頃真摯と諧謔の境を自在に行き来するロッシーニやオッフェンバックの音楽に魅せられておりますが、こういった真摯な、濁りのない演奏でこそ、込められた諧謔や皮肉がよりリアルに効きます。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/10/24

    幻想曲へ短調。私の今の心にかなうという意味ではありますが知る限りその最高の表現です。ふかみどり、とでも形容したくなる音色。淡々としていながら艶やかなオーラがあり、一瞬一瞬「笑いと涙」がブレンドされているおもむきです。国内盤として1990年代に出たときに入手。その後様々な演奏で聴きましたがやはりここに帰ってきます。当時は3枚組でしたが2枚になっても収録曲に変わりはないようです。当時の原文ライナーノートには演奏中の2人の写真があり、ケフェレックが高音部を弾いていました。ちなみに添付されていた邦訳解説は細かい字のびっしり並んだてかてかの紙で、そこには辞書的でない心のこもった曲目解説と、奏者二人の師にあたるアルフレート・ブレンデルによるいわば推薦文(かなりな分量)がありました。「そんな言葉は不要、安価に、音さえ聴ければ」という方々にもこの演奏は充分応えてくれるでしょうが、製作者(国内へこの素晴らしい演奏を紹介した当時の関係者の方々)の思いとともに聴く「音」はまた格別だったことも申し添えます。通り一遍過ぎたり主情的過ぎたり、要するに緊張感のない「解説」に幻滅することしばしばの昨今の「国内盤」への疑念も込めて。

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 10人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/09/25

    まもなく25年になる盤歴で、はじめの10年はどうしてもケンプをいいと思えませんでした。音が薄く感じられたのです。それが3つの評言に出合った頃から不思議と聴こえ方が変わってきました。邪道なのかもしれませんがやはり共感できる誠実な言葉というのは何であれ導きの糸だと感じます。ひとつはピアニストのブレンデルの言「ケンプはエオリアン・ハープだ」。もうひとつは同じピアニストの内田光子氏が尊敬を込めての言で「ケンプの呼吸は短い」。そして3つ目が20世紀のピアニストが紹介してある海外の著作の翻訳でしたが確か「本当のデカダン」といった言葉でした。ケンプは私にとって今では最も大切に聴くピアニストのひとりです。「技術」が気になったことは一度もありません。また「精神」だけの人とも思いません。吹き抜ける風がハープを鳴らすような人為性のないバッハを聴くたびにその「音」の美しさ、濁りのなさに静かに圧倒されます。重厚でない、浅い呼吸で歌われていくメロディの下にたとえようのない虚無が口をあけている、そういうシューベルトの危うさと強さを自分の言葉として表せるピアニストを私は他に知りません。そして刹那的にきらめく「仮面劇」で、こんなに軽やかに黙示録的な真実を告知するシューマンを描くピアニストも。ただそのシューマンの一部の曲とベートーヴェン作品は50年代の別録音か別レーベルのライヴ盤の方がいっそう破滅的な熱気と静けさがせめぎあうケンプの本領を表しています。なおかつて出ていたシューベルトの国内盤全集にはケンプ自身の感銘深い文章が邦訳されていました。バッハ平均律はオリジナルも抜粋だったはずで、このセットではそのバッハ録音とショパンなどがまとめられているのが注目されます。ブラームス晩年の小品集は50年代の旧録音もありましたがここにはないようです。ケンプのスピーチはかつて大意付き国内盤ででていました。その思いのほか張りのある精悍な語りは忘れ難いものです。

    10人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2012/09/13

    他社の案内ではピアノはルービンシュタインの、チェロはデュプレのそれぞれ使っていた楽器とのことです。40年前デュプレが倒れなければベートーヴェンの録音などに続けて録音されたかもしれない曲集を、2005年になってから同レーベルに録音。他人事と思えぬ感慨があります。私の20年のクラシック遍歴で最初から常に変わらぬ距離で居続けてくれた男、バレンボイム。こんなに熱いのになぜ深いところに入ってこないのだろうなどと不遜な不満を抱いた時期もありましたが、たとえぽっかり空洞がのこるだけと知っていても敢然と時代に真正面から向き合っていく生き方。この生き方を横に置いて彼の音楽を静聴するわけにはいきません。時に疑問を抱き、時に歓喜しながら前に行く。行きながら、聴く。これが私なりの彼との向き合い方です。ただこのモーツァルトでは片意地張らぬ純粋な喜悦がほとばしってきて、名器に沁みこんだ盟友たちの魂も躍っているかのようで、本当に何度も聴きたくなります。

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     2012/08/29

    10年聴いていますがバイエルン放送響中心の得がたい演奏ばかりです。DISC1がクーベリック指揮の劇音楽「マンフレート」全曲(1974年録音)、DISC2,3がラインスドルフ指揮マティス、プライ、クラス他独唱でゲーテ「ファウスト」からの情景全曲(1971年)、DISC4が協奏曲集でR.ゼルキンとリーガー指揮ミュンヘンフィル(1976年)、フルニエとクレツキ指揮(1967年)。クーベリックとリーガーの指揮下ではヴァイオリン両翼配置、とりわけピアノ協奏曲はゼルキンの硬派な熱気もあって目の覚めるような表現となっています。独創的なカデンツァが聴かれるフルニエのチェロ協奏曲ですが彼の遺した複数の録音(意外といずれも入手難か)の中でも最も印象深いものといえると思います。またラインスドルフの「ファウスト」も、もってまわらぬ直截な指揮と不滅の独唱者、そして渾身の合唱もあって忘れ難いものがあります。歌詞も解説もなくライナーは簡潔そのものですが音はいずれも明晰で、奏者たちが真剣にシューマンに向き合っている気迫が生々しく捉えられていると思います。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/07/02

    1957年ローマでのステレオ録音です。両翼配置のヴァイオリン群が左右から聴こえる素晴らしさはとりわけ第3幕で顕著です。イタリア語歌唱でオルフェオ役はアルトのスティーヴンス。第2幕には当然「精霊たちの踊り」があるほか第3幕ではバレエ音楽も繰り広げられこの幕だけで50分以上、全曲120分以上ですが、敬愛するモントゥーの指揮によるオーケストラは生気にあふれ心をつかんで放しません。また全曲を通して合唱も鮮烈です。全体にカラッと乾いた抒情の質感、もってまわらぬ率直な語り口、そして何より音楽そのものしか感じさせぬ、私が「指揮者」というプロに求めるすべてをやってくれており、さらに敬愛の念が深まりました。モントゥーにはもっともっと歌劇を録音してほしかったです。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/06/15

    4年前全5巻を購入してから愛聴しています。貴重な全集です。チャイコフスキーの本領は歌曲、そう信じています。露英対訳が付いているのもありがたいです。どんな小曲にも、どんなフレーズにも繊細なドラマと抒情がこめられています。メゾに近い深みのある声です。何よりネイティブの声楽家ですべて聴けることに感謝します。ちなみに全音楽譜出版社から出ている「チャイコフスキー歌曲集1,2」には全曲の半分ほどですが楽譜のほか露日対訳があり重宝しています。さらに入手困難ですが伊東一郎氏による「チャイコーフスキイ歌曲歌詞対訳全集1,2」は素晴らしい案内書です。私の場合ですが、歌曲は優れた日本語の言霊とともに摂取しなければ完全には血肉にできません。ですから懸命に歌詞は外に求めました。まずはこうして音源があること。これは本当にありがたいことです。

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