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Tan2 さんのレビュー一覧 

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     2021/07/14

    20世紀初頭の混迷するクラシック音楽界にあって、第一次大戦後に新しい音楽の方向を示したのが若きフランス六人組でした。
    重厚長大化するドイツ・ロマン派の流れや、調性の制約を逸脱する「シリアス」な「新芸術」を目指す動きを尻目に、キャバレーやダンスホールの音楽、民族音楽や大衆音楽も取り入れていく軽くてポップな音楽。その六人組の中でも最も「歌心」にあふれているのがプーランクでしょう。
    ここにはプーランクの代表的な管弦楽曲を、デュトワが主にフランスのオーケストラを指揮した演奏が収められています。演奏内容や音質は問題ありませんが、オケがモントリオールだったらもう少しニュアンスの違った演奏になったかもしれません。
    プーランクには、プレートルの指揮した管弦楽曲や室内楽、ピアノ曲を含めた旧EMI盤(現Warner盤)の曲集もありますが、そちらはやや古い録音が中心なので、音質の面ではこちらのCDの方が聴きやすいと思います。
    「クラシック音楽が途絶えた」といわれる20世紀前半にも、こういう音楽が作られ続けていたということを知る意味でも、一度耳を傾けてみることをお勧めします。(できれば、室内楽、ピアノ曲にも手を伸ばしてみてください)

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     2021/07/09

    ムーティは意外なことにけっこうロシア音楽をよく演奏してきました。デビュー直後の1970年代にはフィルハーモニア管とチャイコフスキーの交響曲全集、1980〜1992年のフィラデルフィア管の音楽監督時代にはスクリャービンの交響曲全集やプロコフィエフなども録音しています。
    そんなムーティも、ショスタコーヴィチは1992年の交響曲第5番の録音があるのみで、あまり興味がない、あるいは苦手なのかなと思っていました。ところがシカゴ響の音楽監督になってから、2012年に「ミケランジェロ組曲」を、そして2018年に交響曲第13番「バービ・ヤール」を録音しています。どちらも声楽が入ること、特に「ミケランジェロ組曲」はロシア語訳になっているとはいえ祖国の偉大な芸術家ミケランジェロの生誕500年を記念して作曲されたことに敬意を表しての演奏だったのでしょう。
    この「ミケランジェロ組曲」は作曲者の最晩年に死の床で作曲されました。息子マキシムの話では交響曲第16番としたかったようですが、時間がなかったためまずピアノ伴奏で発表され、直ちに管弦楽編曲がなされました。そのためにピアノ伴奏版の作品145と、管弦楽版の作品145aとがあります。
    曲は、楽章の数・構成や楽章相互の関連が、交響曲第14番と相似形になっています。その意味で「交響曲」としての意図があったのでしょう。選ばれた詩は、ミケランジェロがパトロンである教皇やメディチ家との軋轢の中で創作したこと、偉大な芸術家であったダンテの功績が権力によって追放・抹殺されたこと、真の芸術は死後にも長く人の心の中に残ることなどが歌われたもので、ショスタコーヴィチの心情に近いものが選ばれたのでしょう。
    録音自体が少ない曲なので、このムーティの演奏は出来栄えや曲に対する思い入れからほぼ最高水準の内容だと思います。
    交響曲と並んで、もっと演奏され聴かれてよい曲だと思います。

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     2021/07/09

    ムーティは意外なことにけっこうロシア音楽をよく演奏してきました。デビュー直後の1970年代にはフィルハーモニア管とチャイコフスキーの交響曲全集、1980〜1992年のフィラデルフィア管の音楽監督時代にはスクリャービンの交響曲全集やプロコフィエフなども録音しています。
    そんなムーティも、ショスタコーヴィチは1992年の交響曲第5番の録音があるのみで、あまり興味がない、あるいは苦手なのかなと思っていました。ところがシカゴ響の音楽監督になってから、2012年に「ミケランジェロ組曲」を、そして2018年にこの交響曲第13番を録音しています。いずれも声楽が入ること、特に「ミケランジェロ組曲」はロシア語訳になっているとはいえ祖国の偉大な芸術家ミケランジェロの生誕500年を記念して作曲されたことに敬意を表しての演奏だったのでしょう。
    ムーティのショスタコーヴィチは、いわゆるソ連系のエキセントリックな爆演とは対局の、余裕ある豊かな響きの演奏です。金管楽器の咆哮も余裕のある破綻のない響きであり「さすがシカゴ響」という感じです。
    ただ、そういった「西側風」演奏の中では、美音にこだわりすぎてハイティンクの緊張感や迫真性を越えるところまでは行っていない気がします。

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     2021/07/07

    最晩年の交響曲とヴァイオリン・ソナタばかりが演奏される作曲家ですが、生涯にはオルガン曲や宗教曲もたくさん作っています。でも演奏されることはほとんどありません。難渋で面白みに欠ける曲が多い中で、4曲ほどある交響詩は物語性やオーケストレーションの巧さもあり、華やかさや官能性にあふれていて聴き映えがします。
    このCDには3曲の交響詩が収録されており、そのうち「プシュケ」(あるいは「プシシェ」)はオーケストラのみで演奏されることが多いですが、ここではオリジナルどおりの合唱入りで演奏されています。
    フランクは、フランスの作曲家といいながら、そのオルガン曲や管弦楽曲の構成や響きにはドイツ音楽に通ずる「重厚さ、安定感」があります。そのせいか、これらの交響詩はフランスの指揮者やオーケストラもあまり取り上げません。もちろん他国や日本のオーケストラが取り上げることも少ないので、結果としてあまり聴く機会に恵まれません。
    弟子たち(ダンディ、ショーソン、デュパルク、マニャールなど)に「ペール・フランク(父フランク)」と敬愛され、その弟子たちが「フランキスト」と呼ばれるほどに影響を与えた作曲家ですから、もっと聴かれてよいのではないかと思います。
    でも、やはり「渋い」といえば渋い作曲家ではあります。

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     2021/07/06

    このHMVの曲名表記に記されている作曲者の正没年は間違いで 1804〜1875が正しい。その程度にマイナーな作曲家かな。
    ルイーズ・ファランは、ベルリオーズの1歳下、シューマンやメンデルスゾーン(1810年生まれ)、リスト(1811年生まれ)、ワーグナー(1813年生まれ)とほぼ同時代の女流作曲家です。その意味でファニー・メンデルスゾーン(フェリックスの姉、1805年生まれ)と同世代、クララ・シューマン(1819年生まれ)の先輩にあたります。
    作風はウィーン古典派からドイツ・ロマン派に近く、「メンデルゾーン」といっても通用しそうです。オーケストレーションはシューマンよりも手慣れていると思います。
    パリ音楽院初の女性教授とのことで、管弦楽曲がシューマンに絶賛されるなど、存命中は国内外で活躍し評価されたようですが、女流作曲家ということもあり、没後は忘却・無視されたようです。
    そんなファランの交響曲を「実際の演奏」として聴くことができるのは意義深いことだと思います。
    交響曲第2番は、作曲者41歳の1845年の作品で、4年前の第1番に比べて重厚さが加わり、ますます起伏と変化に富んだドイツ・ロマン派風になっています。
    第3番は、その2年後の1847年の作品で傾向は同じです。
    演奏は、この曲の真価を味わうには十分な水準であり、録音も良好です。

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     2021/07/06

    このHMVの曲名表記に記されている作曲者の正没年は間違いで 1804〜1875 が正しい。その程度にマイナーな作曲家かな。
    ルイーズ・ファランは、ベルリオーズの1歳下、シューマンやメンデルスゾーン(1810年生まれ)、リスト(1811年生まれ)、ワーグナー(1813年生まれ)とほぼ同時代の女流作曲家です。その意味でファニー・メンデルスゾーン(フェリックスの姉、1805年生まれ)と同世代、クララ・シューマン(1819年生まれ)の先輩にあたります。
    作風はドイツ・ロマン派に近く、「メンデルゾーン」といっても通用しそうです。オーケストレーションはシューマンよりも上手いような。
    パリ音楽院初の女性教授とのことで、管弦楽曲がシューマンに絶賛されるなど、存命中は国内外で活躍し評価されたようですが、女流作曲家ということもあり、没後は忘却・無視されたようです。
    そんなファランの交響曲を「実際の演奏」として聴くことができるようになったのは意義深いことだと思います。
    交響曲第1番は、作曲者37歳のときの作品で、なかなか楽想や機転に富んだ、充実した内容の音楽だと思います。
    序曲も、まるでモーツァルトの交響曲の序奏のような荘厳な開始、メンデルスゾーンを思わせる軽快さと色彩感の曲です。
    演奏は、曲の真価を味わうには十分な水準で、きびきびと小気味よいです。録音も良好です。

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     2021/07/06

    サン・サーンスは早熟の天才と呼ばれ、その上長生きもしたので(27歳年下のドビュッシーよりも長く生きた)作品数はかなりの数にのぼります。その中で最も有名で演奏頻度の高いものが「動物の謝肉祭」だとしたら、これは気の毒という以上に失礼というものでしょう。次によく演奏されるのが「オルガン付き」交響曲ですが、これはその編成の珍しさと「いろもの、キワモノ」的演奏効果によるものでしょう。これに比べて、他の交響曲は確かにパッとしません。
    サン・サーンスがその真価を発揮している管弦楽作品は、実は一部のピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲、そして交響詩なのだと思います。もっぱら「死の舞踏」ばかりが有名ですが、他の3曲の交響詩もなかなか充実しています。
    サン・サーンスはフランス人作曲家でありながらドイツ音楽的な基礎も身に着けているため、華やかな中にも構成や響きの充実感・重厚さがあって「フランス音楽っぽくない」ところがあり、フランスのオケの来日公演ではあまり取り上げられません。フランス音楽を苦手とするドイツや日本のオケは当然あまり取り上げないので、結果としてほとんど聴く機会に恵まれません。
    その意味で、このCDはサン・サーンスの交響詩の真価を味わうにはうってつけです。リールはベルギーとの国境に近いフランスの都市ですが、そこのオケはリヨンと同様、明るい音色とともにインターナショナルな響きで、フランス音楽とドイツ音楽のよい面を併せ持つサン・サーンスの演奏にうまくはまっています。準・メルクルのきびきびした指揮でよい演奏をしています。録音もなかなかよいです。

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     2021/07/06

    サヴァリッシュがストコフスキーのいろもの管弦楽編曲の演奏? そのイメージの「あり得なさ」に一瞬たじろぎますが、オケがフィラデルフィア交響楽団というのを見て「なるほど!」と膝を打ちました。サヴァリッシュは、フィラデルフィア交響楽団の大功労者であるストコフスキーの功績を正当かつ芸術的に評価してもらいたくて、この録音を行なったのでしょう。その狙いどおりに、サヴァリッシュの真摯な職人芸がストコフスキーのいろもの編曲を正攻法で端正に芸術的に再現しています。
    ストコフスキーの編曲はシロウト向けのキワモノと思っている方にも、ぜひ一度耳を傾けてみてほしいものです。

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     2021/07/05

    ああ、このセット、こんなに安くなったんだ、しかも歌曲集まで追加して。彩り豊かな演奏をするチッコリーニには、ドビュッシーやサティが向いていますので、安心してお勧めできるセットです。しかも、このセットはドビュッシーのピアノ独奏曲の全曲が納められており、1セット持っていて損はありません。
    ドビュッシーはいろいろな演奏を聴いて、その色彩や香りの違いを楽しむ作曲家ですから、このような「全曲」があれば、他の演奏と比較して楽しむにも便利です。

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     2021/06/30

    立花隆氏が逝去されました。1996年に武満徹氏が亡くなったときに、NHKの追悼番組に立花隆氏が出演し、いろいろな思い出や音楽について語っていたのは、こういった交流があったからなのだ、ということをあらためて思い起こさせてくれた著作でした。
    立花隆氏が一流の批判的精神をもった「自立した個人」であることが、孤独に自分の信じる道を歩んできた「自立した音楽家」武満徹氏と肝胆相照らすところがあったのでしょう、相互に深い踏み込みと信頼と共感の上に成立した奇跡的な著作だと思います。年齢差10歳なので、世代的にも親近感があったのでしょう。お二人の気さくで楽しそうな対話が聞こえて来そうです。
    クラシック音楽、現代音楽を聴く人も聴かない人も、日本が戦後歩んできた道と、その中で音楽を愛し続け創造の道を歩み続けた作曲家の真摯な思いに耳を傾けることは、日本の文化の現状とこれからを考える上で大事な視点を与えてくれると思います。
    立花隆氏の逝去の報に接し、ぜひ他の方々にもお勧めしたいと筆をとってみましたが、現在は在庫も乏しく絶版なのでしょうか。出版社にもぜひ再版をお願いしたく、一筆を献じたいと思います。

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     2021/06/27

    ヨーロッパの音楽を、中世から20世紀初頭まで、大づかみに「音楽の存在のしかた」、つまり「音楽の需要と供給の関係」「音楽と社会の関係」の観点から概観したものです。作曲家ひとりひとりの「個性の芸術的表出」や「感情表現」といったロマン派的視点を排除して、「社会と音楽」という20世紀的な観点から規定することを試みるとともに、「進化論」的な「音楽の進歩」という「向上、優劣」の観点ではなく「変遷、変化」という相対的な視点で一般していることが特徴です。
    決して読みやすい内容ではないし、またいかにもドイツのインテリにありがちな「尊大で自信過剰な」文章が多いものも確かですが、ヨーロッパ音楽史の「幹」の部分を統一的な視点でたどってみたい人は、一度手に取ってみてもよいのではないでしょうか。文庫本で安いですし。

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     2021/06/27

    長い間読み継がれている人生の指南書。哲学書のように難しいものでもなく、底の浅い単なるハウツー本でもなく、現実的な日々の問題に悩む現代人に、そっと寄り添って心の中に入り込み、目を向ける方向や心の持ち方を教えてくれる。
    宗教のように頭から信じ込んだり、帰依したり、洗脳されたりするものではない。あくまで「自分で考える」ことを助けてくれるものであり、だからこそ本当の解決策(ベストではないかもしれないが、その時点で必要なもの)を冷静に見つけて行動することができる。
    人生で何回か読むことになりそうなので、本箱の片隅に置いておくとよいかもしれない。

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     2021/06/26

    有名な「ジャンヌ・ダルク」の歴史的な事実を知りたくて、この本を手に取りました。それを知りたかったきっかけは、フランス六人組の作曲家オネゲルのオラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」の歌詞がチンプンカンプンだったこと。フランス貴族、イギリス王たちのトランプゲームの中で、賭けの対象としてジャンヌの引き渡しが決まったり、ジャンヌの宗教裁判の裁判官や判事がブタや羊だったり。
    なるほど、イギリス王といってもイングランドを領地に持つフランス貴族だし、貴族どうしで「なあなあ」(掛けトランプのようなもの)で領地を決めようと思っているところに、ガチで「神のお告げだ!」といってしゃしゃり出て来た田舎娘がいたら、その扱いに困るでしょう。利用できるだけ利用した後は、教会勢力と結託して「魔女」に仕立て上げて一件落着。
    それを「フランスの救世主」と祭り上げたのは、フランス革命後に「国民国家」としての求心力を作り上げようとしたナポレオンの陰謀だったようです。
    フランスの様々な地方の領主とその配下の貴族たちが非常に複雑で追うのが大変ですが、日本でいえば「戦国時代」に相当するのがこの「英仏百年戦争」であることが分かるだけでも、この本を読む意味があるようです。

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     2021/06/26

    「壮大な実験」と呼ばれて既に過去のものとされてしまった「ソビエト連邦」について、あらためてその実態を知りたいと考えて手に取りました。
    「ロシア史」ではないので、何故革命が起こったのかというところはほとんど触れられておらず、革命の勃発からの記述です。
    ソ連の歴史的な歩みについてはひととおり整理できますが、その裏に流れる「歴史を動かしたもの」は結局分からずじまいでした。「社会主義、共産主義」の実験だったのか、あくまで「ロシア・ソビエト」という「一つの国家」の実験だったのか、それによって「社会主義」という体制の良し悪しを判断してよいのか、読後も判断は付いていません。
    そうはいっても、20世紀に70年以上にわたって存在した国家だし、第2次世界大戦やその後の東西冷戦の一方の中心をなした国家であり、その歴史を知ることは20世紀の歴史を知る上で重要なポイントになります。
    また、大好きな作曲家であるショスタコーヴィチやプロコフィエフが、その人生や芸術を賭けて対峙しなければならなかった存在でもあり、音楽やその背景を想像する上で大いに役に立ちました。
    「国家とは」「社会体制とは」そして「そこに生きる人々」「そこから生まれる芸術」といったことを考える上で、ひとつの確かな「視点、立脚点」を与えてくれる本だと思います。

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     2021/06/26

    日本で「先の大戦」といえば「太平洋戦争」を真っ先に思い浮かべますが、ヨーロッパではむしろ「第一次大戦」の方を「歴史を変えた大戦争」と思う人が多いようです。
    それまでの19世紀の延長として、ヨーロッパには「ドイツ帝国」「ハプスブルク帝国(オーストリア・ハンガリー帝国)」、「ロシア帝国」、そしてその周辺には「オスマン帝国」などの列強がひしめき合っていました。
    そこに1914年6月のオーストリア皇太子暗殺を契機に勃発した戦争。誰もが「クリスマスまでには帰るよ」といって戦地に赴いたが、結局1918年11月まで延々と戦争は続いた・・・。
    戦争によって長い歴史をもつ帝国が崩壊し、民族自決によって様々な国が独立を果たすものの、渦巻く不平不満や格差が再び戦争への道を進んで行くことになります。
    社会の担い手も、それまでの貴族、上流市民(ブルジョア)やエリートから、一般市民・庶民に移っていくきっかけとなり、それによって文化・芸術のあり方も大きく変わります。
    「クラシック音楽」を愛好する立場からいえば、第一次大戦後には「いわゆるクラシック音楽」がもはや生まれなくなりました。
    そんな時代の大きな転換点である「第一次世界大戦」について、高校世界史レベルから一歩踏み込んで、でもあくまで「一般向け」として書かれたこの本はいろいろなことを教えてくれ、頭を整理させてくれます。ヨーロッパを理解し、ヨーロッパの文化・芸術を理解するためにも、こういったバックグラウンドを知っておくことは必要でしょう。

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