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John Cleese さんのレビュー一覧 

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2023/04/02

    ヴァンスカ先生によるマーラーのシリーズはすべて聴いてまいりましたが、録音の優秀さとミネソタ管の技術の高さに感心しつつも、いまひとつ心を動かされることがありませんでした。第6番などどうも裃を羽織っているような硬さがどこか付きまとい、繰り返し聴くディスクの私のリストには入っていません。第7番なんかもペトレンコ先生のような勢いがなくて微温的といいますか、あまり・・・しかし今度の第9番、ついに真打登場ですね。これはもう届いたばかりですがすでに通しで数回も繰り返して聴いて感心しております。この9番に関しては硬さはすっかり消え、ヴァンスカ先生はご自身やりたいことを忠実に実現させているのではないかと感じられます。堂々たる古典的威容の第一楽章、中間楽章の闊達さ、勢い、そして終楽章の深い情感・・・ぜひこのディスクはSACDマルチチャンネルで再生してください。とくに第一楽章の複雑な対位法の透明度、明晰さ、まるで指揮台で聴いているかのようなオケ全体の見通しの良さは卓越しております。その昔カラヤン大先生のディスクがCDで登場した時に録音技術の発展がマーラー第九の浸透に貢献するといわれましたけど、これほどの質の最新録音を聴くと、さしものカラヤン先生の名盤も古く感じられてしまいます。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2023/01/25

    以下は、SACDシングルレイヤー盤のレヴューです。かつてLPで出ていたころからの愛聴盤が理想的な音響で蘇り新たな感銘を受けました。LP時代を彷彿させるデジタル臭のない自然な音響・音場、またSACDシングルレイヤーの膨大な容量を、音響のみならず、初期・中期・後期の3セットをそれぞれ1枚づつに収録するという、ありそうでなかったパッケージングのほうにも活かしたこの新セットには目から鱗です。中期の全曲を届いた日にまず一気に聴いてしまいました。ブタペスト、ジュリアード、スメタナ、アルバンベルク、ラ・サール(後期のみ)と聴いて、若手の、それこそ腕っこきの正確無比のアンサンブルのベートヴェンも枚挙に暇がないくらい聴いてきましたが、結局私にとってのベートヴェンの16曲の原点はこの旧東独のいぶし銀のアンサンブル、かつて「ベルリン四重奏団」と不思議な表記をされていたカール・ズースケ率いるこの四重奏団によるものです。一曲一曲語りだしたらキリがありませんが、今まさに聴いております作品95における、まさに知・情・意のバランスのとれた姿など、あたかも瓶詰めから齢30年ほども隔てたボルドーワイン、それも特一級畑のラトゥールかムートンか、はたまたマルゴーか、といった完璧さです。突出している要素が皆無。円満なバランスの一言。素晴らしい。他アンサンブルに時として惹かれることがあっても、やはり戻ってくるのはここ。いいなあ。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 10人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/12/10

    一昨日、発売延期になったラインの黄金ともども、最終的にアナウンスされた日に届きました。
    はるか大昔の十代から聞き続けてきたショルティ先生のリングですが、エソテリックSACDよりも、その後リマスターされたCDおよびそれのブルーレイ化、よりも今回はさらに進化したリマスターという感想を持ちました。SACD層しか聴いておりませんが期待以上のすばらしさです。従来、すでに録音時キャリア終盤のハンス・ホッターは、やはり名前でキャストされたのだなと思っていましたが、旧盤で従来聴いてきたような若干不安定さも感じさせる老人の声の中に、今回本当に目の覚めるようなつややかさが蘇り、さすがは一世を風靡した名歌手による歌唱であることを再認識しました。それほどの音質向上です。同様にニルソンも決して金属的な金切り声ではなく、高音の強烈なアタックの中にも十分な繊細なニュアンスを持っていることを再発見。ワルキューレ第三幕を、届いた直後にすべて通しで聴いてしまいました。最初さわりだけ聴こうと思ったのですが、一旦聞き始めたら途中で停めたり早送りなんてする気が起こらなくなるほどすっかり魅了されてしまったのです。

    10人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/09/18

    ソニー時代のマーラー全集のLP化と同様、こちらも極めて商品価値が高いと感じる豪華・美麗な装丁といい、わずか2600部しか生産されないというシリアル・ナンバー入りの製品で、実にコレクター心・マニア心を刺激してくれます。が!十代の大昔から私の偏愛に訴えてきた最も重要な作品である第6番の、それも終楽章が、提示部のあと開始から10分の地点で無残にLP10枚目のA面とB面に分断されております。この面切りにはがっかり。終楽章は33分かかっていますのでおそらく音質保持のため二分割したものと思われますが・・・それだけが不満。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/06/12

    当然のことながら、本製品は、2月に既発売のブーレーズDG全集に含まれるリング全曲BDと同一製品と思われますので、その部分のレヴューをいたします。
    リングBDはオリジナルがアナログビデオですからブルーレイにアップコンバートされても映像はさほど向上なし。これはカラヤン先生やチェリビダッケ先生の映像BDリリースから学びましたので予想通りですが、音声はかなり向上しており、過去のレーザーディスク(とんでもなく高価だった!シリアル・ナンバー入りでね。当時ゲッツ・フリードリッヒのリングが本邦初上演の年に同時リリースで、ワーグナー・ファンは上演チケットのセット券購入と合わせて、実際のバイロイト詣でに匹敵する出費を強いられたものです。)やDVDよりかなりいい音。DVDのDTS音声は「なんちゃってDTS」でしたが、こちらは本格的なDTS-5.0になっています。今回のリリースでは、上記LD時に付録でついていた(DVDでも既発売ですが)若きシェローがとんでもなくさわやかなイケメンぶりで登場するメイキング・ビデオのディスクが一緒です。このメイキングはブーレーズDG全集には含まれてはいなかったので、商売上手ですなあ。しかしメイキング目当てで、すでに全集CDセットに含まれているBDを購入している人々が、はたしてどれくらい本製品を購入するかなあ。個人の価値観の問題ですけど。その懸念だけマイナス一つ星。内容そのものは5つ星。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2022/02/08

    正直なところ、プレヴィン、ムーティ先生の最近のBOXでお腹一杯のところ、ブーレーズ先生のDGリリースに関しては90年代からリアルタイムで一枚づつ購入していたリリースに加えて、20世紀の作曲家に特化したBOXやらマーラーの交響曲全集やらのBOX購入でほとんどすでに二重三重(!)に所有しているディスクばかり。これは購入はしまいと思ったのですが、バイロイトのリングがBD化、さらに80年代にはリリースされていたリングのフィリップスCDも復活、という点がアピールとなって結局ポチるはめに・・・
    良い点は天蓋を開けるとディスクが作曲家別に色分けされており、取り出しやすくバルビ先生のワーナーBOXの無造作ぶりとは比較できないほどユーザーフレンドリーな点。気になるリングBDはオリジナルがアナログビデオですからブルーレイにアップコンバートされても映像はさほど向上なし。これはカラヤン先生やチェリビダッケ先生の映像BDリリースから学びましたので予想通りですが、音声はかなり向上しており過去のレーザーディスク(とんでもなく高価だった!シリアル・ナンバー入りでね。当時ゲッツ・フリードリッヒのリングが本邦初上演の年に同時リリースでワーグナー・ファンは上演チケットのセット券購入と合わせてバイロイト詣でに匹敵する出費を強いられたものです)やDVDよりかなりいい音。DVDのDTS音声はなんちゃってDTSでしたが、こちらは本格的なDTS5.0になっています。そしてCD。フィリップスの懐かしいいい音。はやり音に特化している分、映像より纏まったいい音です。ブーレーズ先生のリングは上に述べたシェロー演出のLDのインパクトが大きく、音のみで話題にされることが少なかったのでこれを機に耳を傾けられることを期待します。

    8人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/11/27

    以下は、スウェーデン国営放送が最近発見した音源によるBISレーベルからリリースのSACDに関するレヴューです。
    早速通しですべて聴きました。これが実際の、全く編集のないバイロイト・ライブそのものであるとすれば、従来EMI=ワーナーで聴かれてきたバイロイトの第九における「足音」「フルヴェン先生がオケに話しかける二言三言」は何だったのだろう?何処へいったのだろう?という疑問が生じます。収録マイクの位置が異なるのでしょうか、まったく聴こえません。これらのアンビエンス音は、大変な話題となったSACD化のリリースや、最新の「フルヴェン商業用レコード録音全集」のBOXセットに至るまで、バイロイトの第九には一貫して存在してきた音です。また終演後の拍手も違っているような・・・ここで聴かれる拍手は、例の凄い追い込みで最後の音が消えたのち、やや間があって、最初は一瞬少しまばらに始まりますが、やがてホール全体の熱狂的な拍手に拡大してゆく様が手に取るように分かり、従来聴かれた間髪入れずに始まるやや不自然な大喝采とは全く異なります。従来から編集による演出の噂が囁かれていましたが、これはやはり・・・しかしバイロイト祝祭劇場内であることに間違いはないと思います。熱狂した観客の木造の床を踏み鳴らす独特の音はどちらでも聴こえてきます。私自身もここ数年はコロナ禍で行っておりませんが毎年ではないものの30年以上通い続けているホールですし、それは間違いないと感じます。
    さて、肝心の楽曲部分の音質は、モノラルでもやはりBISレーベルですね、やや音像が遠目で、収録レベルが大きくないので、かなり音量を上げての再生でないとよく聴こえません。特に優美な音になっているSACD層では、楽曲開始が分からないほど小さい音。しかし最新録音にも通じるBISレーベルの美質がよく出ています。従来のフルヴェン先生のバイロイト第九における現状の個人的なベストは、平林直哉先生の38pオープンリール起こし最新盤(足音も拍手もなし)ですが、ティンパニの豪快な迫力などは平林盤に譲りますものの、本盤は、とくに高弦に艶やかな美質が感じられる点で大変気に入りました。モノながらDレンジも広大。半面、気になるのはテープ音源であるにもかかわらずパチパチというスクラッチ音が聴こえるのはどういうわけだろう?特に第二楽章の出だしがひどい。また全体を通して正体不明のモーター回転音のような低周波が聴き取れます。しかしそれらは聴いているうちにさほど気にならなくなるレベルでして、それらを以てしてこの貴重な音源をファンの方々に推薦しないといこうことはあり得ません。私は非常に満足しております。最後にパッケージ。フルヴェン先生のあまたある写真をテキトーにフィーチャーしているだけのリリースが多い中、これは先生の横顔の木炭か鉛筆で描かれた精細な絵で、たいへん品のあるジャケットになっております。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/10/09

    同指揮者によるマーラー・シリーズでは最も気に入りました。私は9番などはどうもピンとこない出来で、何度も聞き返すことがない演奏なのですが、これはいい。この曲に必要な予想以上に高いオケのヴィルトゥジティ、指揮への俊敏な反応が感じられます。ユニークな点は楽章順が今主流になりつつあるアン→スケに加えて、マーラーの一番最初の発想である終楽章の「三番目のハンマー」まで復活させていることです。久しぶりの第三ハンマー、予想していなかったので結構な威力に驚き思わず飛び上がってしまいました。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/10/06

    HMVの今回のリリースに関しての説明にもありますように「第1番、第7番、第9番、『大地の歌』などはこれまで他のレーベルからの復刻がありました」が、それらを購入した者ですが、音質が悪く、ほとんどAMラジオ並みといってもよい音に懲りてしまって一曲もまともに聞きとおせなかったのです。が、「今回初めてSWRとWDRのオリジナル・マスターテープから新たにリマスタリングされてのリリースとなります」という説明に望みを託し、ダメ元購入しましたが、今回のリマスタリング、正解でした。以前のリリースとは比較にならないほど改善。これならちゃんと途中で諦めることなく鑑賞できます。事実、2枚にわたる6番を聴き終えたところです。意外なほど良好な音の1番、際立った個性の第7、第9、もっと広く聴かれてしかるべき名指揮者の遺産です。マーラー・ルネッサンスを牽引していたのはワルター先生やバーンスタイン先生だけではありません。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/10/05

    以下は、最新のグランドスラム・平林直哉先生によるテープ起こし復刻版のレヴューです。
    内容についてはいまさら申し上げることはないのですし、ここはやはり皆さん聞きたいのは従来との音質の違いだと思いますので、その話に絞ります。ただし昔のピッチが高かった復刻はもう私も聴かなくなって久しいので比較的新しい復刻をリファレンスにしました。
    昨日、アナウンスされていた発売日よりかなり早く届きました。もう矢も楯も止まらずさっそく通し鑑賞。現状では個人的な意見ですがウラニアのエロイカの最良復刻版は2011のターラ盤(TAHRA Furt2008、なんだこのテキトーな番号は?でも米国の某サイトでは100ドルを超える価格が・・・)のハイブリッドSACDですので、終了後すぐにそれとの比較。またもう一点2012年のオルフェス盤(C834118Y)ウィーンフィルとの共演に特化したセットの3枚目もよく聴くので一部聴き比べしました。結論。今までのどの復刻と比べても迫力はものすごい!いい歳して興奮しました。なんだこれは?という衝撃は最初のピッチが高かったヒステリックな復刻を聞いた衝撃にも近いです。「ロックだな、これは!」と思ったものです。この最新復刻では音場が左右に広がり(モノラルなのに何言ってんだ!と思うかもしれませんが)近接した弦楽器の様子など生生しくてびっくり。低弦なんか最新録音みたいな深みを感じる。平林先生もライナーノートで「確証は持てないが・・・」と言いながらも書いておられるようにこれはなんと!「全楽章通しの一発録音」だったようです。楽章間のアンビエンス音も聴き取れます。比較すると、全体のバランスの良さではターラ盤に分があります。SACD層ではなおさら優美に聴こえます。オルフェス盤はもっと整いすぎて大人しい演奏に聴こえ、なんか普通のエロイカになっております。今回こそ、ウラニアの唯一無二の破天荒な魅力と迫力を伝える復刻です、大変気に入りました。お薦めです。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/10/03

    ハインツ・レーグナー先生のマーラーは、聴く前は彼のブルックナー演奏の印象から、まったく根拠のない予断でしたが、ザッハリッヒ的な、速いテンポでやや事務的に進行する職人気質の、ある意味「そっけなく」淡々と進む演奏を勝手に予想していたのですが、実際に聴くとそれとはかなり異なる印象でした。特に第6番の方は、第一楽章は24分超で、終楽章も30分以上かけていますので、かなり遅めのテンポでじっくり構えた演奏です。1981年の録音ということで、中間楽章の順番も伝統的なスケ→アンと勝手に予想していましたが、これも意外でしたが今日トレンドのアン→スケです。しかし特に第6だからといって肩をいからせたところもなく、純音楽的に古典的な威容を十分に感じさせるスケールの大きな演奏でとても気に入りました。第3番も同様に決して否定的な意味でなく手堅くまとめた名演と言っていいでしょう。第4楽章のアルト独唱も心に沁みました。終楽章はさすがにバーンスタイン先生ほど遅いテンポで歌うようなことはレーグナー先生はいたしませんが、必要にして十分な歌がそこにはあり、満足できる演奏です。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/10/02

    一気に聴きとおし、非常に感銘を受けました。フェルツ先生のマーラーの交響曲のシリーズはすべて新譜でリリースされるたびに聴いてきましたが、正直なところ、毎回の購入の動機は主として新奇な解釈を求める興味本位のもので、決してこの指揮者の解釈に共感するとか感心するとかといった類のものではありませんでした。個性的なテンポ設定や強弱は時として恣意的と感じられ、面白いとは思いながらもその効果は散発的で、ほかの人々に薦める気はあまりしないリリースばかりでした。好みの6番と7番は結構繰り返し聴きましたが、6番は割と普通な出来でした。しかし今回、チクルス最後の仕上げの第9番は、感心しました。この指揮者のマーラーで初めて「感動」がありました。相変わらず個性的なテンポの変動はありますが、根底のところで実に考え抜かれた曲への洞察と共感に貫かれており、少なくとも初めて他の人にもこれは素晴らしい、と薦めたくなりました。比較的オーソドックスな解釈の第一楽章は立派な出来。第二楽章は早めのテンポでまるで初めて聞く曲であるかのような新鮮さ、そしてやはり面白さがある。個性的な第3楽章と連綿とした情緒が従来とは一味違う味を持つ終楽章。技術的に完璧でこれ以上の完成度の高さは考えられないラトル先生とベルリン・フィルの第9は、万人に薦められるとは思いますが、しかし!私は毎回聴くたびに感心しながらも全然面白くないのです。古いワルター先生とコロンビア、バーンスタイン先生とコンセルトヘボウやイスラエルのライヴのような何回聴いても飽きの来ない面白さがこの新譜にはあると私は感じます。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/08/17

    以下は最新リマスターによるシングルレイヤーSACD盤のレヴューです。
    国内盤にしては珍しく一か月近くも発売延期になっていてやきもきさせられましたが、ようやく予告の発売日の前日に届きました。初期LP盤4枚組を購入して以来45年間(!)にCD化、そして一部エソテリックによるハイブリッドSACD化などを経て、ようやくカラヤン先生がモニター室で聴き、最終OKを出した音に近いものが聴こえてくるのではないかというレベルの音響に達したのではないかと考えます。演奏内容の凄さ、素晴らしさについては、他のレヴュー諸氏が書かれている通りですし、初出LPから今回のSACDにもそのまま転載されている柴田南雄先生による素晴らしい解説(これこそ本当の「ライナーノート」。昨今の、欧文も含めてとてもライナーノートとは呼べない類の貧相な「解説」とは比較を絶しております)の通りでありまして、今更なにも付け加えることもないですから、音質について申し上げます。従来のCD時代には総奏では団子状の音隗となってしまって聴こえなかった繊細な音の重なりが、SACD化によって綺麗にほぐされて聴き取れます。初期LPでも当時の再生装置の限界でやはり聴き取れなくて欲求不満であった部分がかなり解消されております。とくにペレアスの素晴らしさは筆舌に尽くし難いです。カラヤン先生が聴かせたかった音・・・それはこういう風だったんだと改めて思います。浄夜がエソテリックSACDで発売されたときもその素晴らしさに驚き、同時になんでペレアスをSACD化してくれないのだ?と不満でしたが、それも今回解消。浄夜に関しては、Dレンジの広大さなど、もちろん今回のSACD化も優れていますが、音そのものの華麗さ・豊麗さはほんの僅かですが、エソテリック盤の方が優位にあるような気がします。ポリーニのベートーヴェン後期などにおいても、この一連のユニヴァーサルSACDよりも音そのものの官能性というか豊かさはエソテリックに分があるような気がしますが、当然再生装置や環境の違いによって、私とまるで反対の感想を持つ方もいらっしゃるでしょうから、いずれにせよ、45年前の初出LPより少ない出費で(貨幣価値の変動を考慮すればさらに遥かに安価で)これだけの体験ができるのですから、ぜひLP・CD等すでにお持ちの方も、購入はご一考に値すると考えます。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 26人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/07/21

    映画ファンでもありまして、メディアが新しくなるたびに「アラビアのロレンス」だとか「ゴッドファーザー3部作」、欧州の旧作、アンジェイ・ワイダ先生やロッセリーニ先生の作品などがずいぶんライブラリーを賑わせております。あと黒澤・小津ですかね、「七人の侍」なんてBDでも米クライテリオン盤と国内盤の画質が違うと聞いて二種類そろえたり・・・VHS→LD→DVD→BDとコレクションを買い替えて総入れ替え。こんなことに人生のエネルギーとお金を費やすのはほんとにバカバカしいのですが、止まらない。そしてフルヴェン先生のヒストリカル音源もしかり。ウラニアのエロイカ、バイロイトの第九、戦後復帰の運命、5月25日も27日も、ブル8も44年49年54年しかもそれぞれ別の日のテイク・・・それぞれ板起こしだのSACDだの何種類もあって、いったい何種類買わせる気か?
    ・・・って、それなら買わなきゃいいだろう、と健常者の方々は簡単におっしゃるでしょう。それはその通り。病気の自分が悪いんです。
    こんどは2021年最新のリマスターですって。バイロイトの第9は最新のグランドスラム盤でもう最終かな、これ以上の改善は想像もつかない、というところまで行っているのでさすがにもう収集はやめよう、と思っていたけど、やっぱり2021年リマスターも聴きたい。やっかいなのはトリスタンとワルキューレ全曲。SACDまでそろえたんですよ。もういいいでしょう。でも聴いてみたい。最新録音はCDがSACDを凌駕するってことはまずないけれど、しばしば旧録音ではSACD化されたものよりCDのほうがいいじゃないか、ということも起こります。スペック上優れていても聞く側の人間の感性に即しているかどうかは別ですね。
    というわけでやはりポチります。なんと罪作りなセットでしょう。

    26人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2021/07/07

    半ば予想していたのですが、画質はがっかりでした。ブルーレイにアップ・コンバートしたというものの、ソースが昔のレーザーディスクのものですからね、現在の家庭用モニターのサイズでは粗さが目立つだけです。かつて発売されていたDVDよりは少しまし、というレベルの画質です。音質はリマスターでさすがにかなり良好になっておりますが、音だけだったらSACDがシングルレイヤーでもハイブリッドでも手に入りますから、そちらで十分かと。演奏内容は星10個でも足りませんが、商品としては…ねえ。星2というところ。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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