百田尚樹

本 日本国紀

日本国紀

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    金山寺味噌  |  愛知県  |  不明  |  2018年12月21日

    この本を読んだ感想を一言で表すなら「玉石混淆」であろうか。評価できる部分、できない部分が入り混じったような本である、という印象を受けた。それぞれに論じたいと思う。 【評価できる点】さすがにベストセラー作家というべきか、筆力はさすがに高い。歯切れよくテンポのある文体で、読者を一気に「百田ワールド」へと引き込んでいく。歴史書をとっつきにくいと感じている人も、これなら読みやすいはずだ。ベストセラーになっているのも決してフロックではない。全書中のハイライトと言えるのはやはり朝日新聞批判(465p〜 )であろう。ここからの「朝日・リベラル批判」の文章の熱量は明らかにそれまでの文章と異なっており、百田氏はここが書きたかったからこの本を書いたのでは、と思えるほどだ。WGIPについて指摘したのも(421p〜 )いかにも百田氏らしいチョイスと言えよう。また、江戸時代の財政家荻原重秀を「ケインズを先取りした」先覚的な経済改革者として評価した(184p〜 )ところは大いに首肯できる。 【評価できない点】全体を通して天皇および皇室についての扱いがアバウトかつ冷淡に感じられるのは、保守派を自任する人の著書としては違和感を覚える。継体天皇の出自についての論考やその後の「万世一系」についてのコラム(30p〜 )、崇徳天皇の出生についての記述(82p〜 )などが特にそうだが、皇統について論じることへの百田氏なりの思いとかスタンスが余り伝わってこないのはどうなのだろうか。昭和天皇についての記述についても通りいっぺんのような印象を受けた。思うに百田氏は天皇や皇室への思い入れがそれほど 深くないのではないか、そう感じられてならなかった。また、鎌倉・室町・戦国時代は近年定説の見直しが盛んで、最新の研究成果が次々と発表されているが、百田氏の記述は従来通りの古い定説をほぼなぞったもので、情報のアップデートがなされていないのはちょっと気になった。例えば応仁の乱が起きた原因については「息子を将軍にしたいという母の我儘な思いからだった」(130p)と日野富子ひとりに責任を被せるように書いているが、呉座勇一氏の『応仁の乱』を読んだ後ではこの認識はいかにも単純すぎると感じられる。「各地の大名同士の戦いは歴史的にはさほど重要なものではない」(134p)という、戦国時代についての認識にはとても賛成できるものではない。各地の大名同士の戦いが収斂されて三英傑の天下取りへと繋がっていくのであり、これを無視するのはあまりに乱暴すぎるのではなかろうか。もう一つ、全体を通して「朝鮮」を不必要なまでに攻撃的に書く一方で「中国」について多少遠慮がちに書いているのはやや気になった。 こうして論じていくとやはり「玉石混淆」の印象はぬぐえない。

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