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Hi Quality CD 『ザ・フェアウェルコンサート・イン・札幌〜シェエラザード、『売られた花嫁』序曲、他』 ラドミル・エリシュカ&札幌交響楽団(2CD)

『ザ・フェアウェルコンサート・イン・札幌〜シェエラザード、『売られた花嫁』序曲、他』 ラドミル・エリシュカ&札幌交響楽団(2CD)

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    ココパナ  |  北海道  |  不明  |  2021年07月09日

    2006年12月8日、札幌交響楽団第494回定期演奏会の壇上に登場したのは、これまでほとんど無名だったチェコの指揮者、 ラドミル・エリシュカであった。その日のプログラムは、スメタナの交響詩「ボヘミアの森と草原から」、次いでドヴォルザークの交響詩「金の紡ぎ車」、最後にリムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」というものであった。その日、定期演奏会に来た聴衆のたいていは会員たちで、無名の指揮者ではあったが、それでもこのオーケストラが元来得意とするスラヴ系のレパートリーに期待を持って訪れた人が多かっただろう。ところが、その日の演奏は、彼らの期待をはるかにを上回るものだった。生気に溢れる表現、細部まで練り上げられたニュアンスの深さは、たちまち会場に集まった人々を魅了した。翌日、同じプログラムであったが、前夜の成功を聞きつけて、普段にはない多くの聴衆を集め、再び夢のひとときが繰り返されると、「これは本物だ」との声が沸き起こった。その後も、札幌では、エリシュカが壇上に立つたびに、当日券も完売するほどの人気となった。札幌交響楽団はエリシュカに首席客演指揮者の就任を依頼し、これを快諾したマエストロと、その後良好な関係を築き上げることとなる。2008年から札幌交響楽団の主席客演指揮者を務め、さらに2015年からは名誉指揮者として、年に2回のペースで札幌を訪れ、タクトをとった。その過程で、ドヴォルザーク、チャイコフスキー、ブラームスの一連の交響曲集を中心とする録音が行われた。どれもが素晴らしかった。しかし、そんな関係にも終りの時は訪れる。医師から、これ以上の長旅は、体力的に無理であると告げられたエリシュカであったが、「最後に、きちんとお別れが言いたい」とラストの訪日により、2017年の10月27日と28日に札幌コンサートホール・キタラで開催された「ザ・フェアウェルコンサート・イン・札幌」の模様が当盤には収録されている。プログラムを見てすぐに気づくのは、2006年の、エリシュカと札幌交響が組ん、そして札幌の音楽ファンが出会ったコンサートの曲目とそっくりである点である。スメタナ、ドヴォルザーク、そしてメインにR=コルサコフの「シェエラザード」。解説によると、当初は、ラストにベートーヴェンの第3交響曲という案があったのだが、エリシュカ本人の希望により、札幌での「出会い」の楽曲に差し替えられたのだと言う。札幌で素晴らしいキャリアを刻んだマエストロが、その活動の完結を示しているように思えてならない。演奏は、まさにラストに相応しいもの。いつもにもまして、熱い情感が伝わる。スメタナの「売られた花嫁」では、弦のダイナミックな響きが、なにか一つ一つしっかりと刻印を掘るように響くのが印象的。熱血的でエネルギッシュな表現で圧巻の締めくくりを迎える。ドヴォルザークのスラブ組曲では、郷愁的な高揚と、内省的な情緒が寄せては返すようにせめぎ合う。美しい時が流れるように過ぎていく。フリアントの躍動的な音楽の脈動は圧巻である。そして、シェエラザード。一夜にして札幌の聴衆を魅了した楽曲。実に堂々とした運び。全般に遅めのテンポをとり、脈々とうねりを高く重ねていく。情熱に溢れていながら、透明感のある響きがその基礎をささえる。中間2楽章は入念かつ繊細に描き込まれ、シーンの移り変わりに応じた楽器の語り掛けが心に響く。そして終曲。オーケストラが、マエストロとの貴重な最後の時間にすべてのエネルギーを放出しつくしたかのよな豊麗で力強い響きが貫かれる。この最後の曲終了後、客席の拍手と歓声は、25分以上も続いたのである。それにしてもエリシュカを招いてから、札幌交響楽団はあきらかに一つレベルの高い芸術集団になった。エリシュカの偉業は、セルとクリーヴランド管弦楽団の関係を彷彿とさせる功績だろう。

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