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バッハ(1685-1750)

CD ゴルトベルク変奏曲 アンジェラ・ヒューイット(2015)

ゴルトベルク変奏曲 アンジェラ・ヒューイット(2015)

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    mimi  |  兵庫県  |  不明  |  2017年10月05日

    昨年末に購入して以来、折りに触れて数回聴いてきました。この現在、世界的に最高のBach演奏家としての名声を得ているA.Hewittに対して、これまで自分は決してよい聴きてではありませんでした。1999年のGoldberg旧録音についても、かなり以前にiTunesで購入していましたが、演奏の外形はさすが当代一と言えるくらいに美しくまとまっていても、その中身に意外な程詰まったものが少ない音楽に、いつしかライブラリから削除していました。この最新録音、A.Hewittにとっては、もはや彼女の代名詞であるFAZIOLIによる再録音、という意味が大きいと思われ、事実世間的な評価もそれを越えるものでは無いようです。しかしながら、この半年ばかり聴いてきた自分の印象では、これはこれまでのA.HewittのBach演奏で最も優れたものではないでしょうか。確かに演奏外形上は、旧盤と一聴して違いは判り難いかも知れませんが、聞き込むにつれ、その違いが明らかです。決して新鮮なGoldbergとは言えず、G.Gouldによって確立されたモダンピアノによるGoldbeg演奏の方法論上に、特に新しいことは何もやってないのですが、曲の細部、声部と声部のバランス、それによって構成される多声音楽としての曲構造、何よりもBach演奏の永遠の課題である、至適なリズム、テンポ、バランスを見いだすことにおいて、旧盤とは比較にならない程、進歩しています。そう、同じカナダ出身のGouldが新旧2種のGoldberg名演で、全く例をみない方法で辿り着いた理想的なBach再現法に、まだ並んだとは言えないが、彼女の数十年のBach演奏キャリアを経てやっと近づくことができつつあるように思います。思えば同国出身で、同じくBachを主要レパートリーとするGouldに対してHewittも、旧盤や他の文章で当然のことながら意識と尊敬をこれまでも表現しているようですが(ここはGouldに対する敬意と屈折、反感が同じくらい、言葉と演奏に表れるA.Schiffと違う)、一方でHewittの背景がGouldと大きく異なるのは「フーガの技法」を近年までBoringと感じていたのが端的なように、はなからルネサンス・バロックの多声音楽的要素に(たぶん)馴染まなかった点ではなかったでしょうか。Gouldは自分の音楽のルーツは、中世に端を発するルター派のコラールである、と述べ、バード、ギボンズから現代のシェーンベルク、ウェーベルンに至る、あくまで声部声部が独立して対等である音楽を身上とし、その上に立って、やはり多声的音楽構造がその本質であるJ.S.Bachの音楽構造を生涯をかけて愛し再現しましたが、その点がまさにA.HewittのこれまでのBach演奏のWeak pointに一にも二にも繋がっていたように思います。8年前の平均律新盤では、まだあまりにも恣意的な古典派的ロマン派的解釈とその一方で、最高のフーガにおける構造再現がとても未熟な姿であったことを思えば、HewittのこのGoldberg新盤のすべてのバランス(その核になるのが声部間の多声構造であるのはいうまでもありませんが)が理想に近づく演奏を実現できたのは、おそらく彼女が数年前に、それまで避けてきた「フーガの技法」の演奏に初めて取り組んだ事が大きいのではないでしょうか。その演奏自体はクラシックマスコミの持て囃しとは裏腹に、まだ決して一流の「フーガの技法」レベルには遠いものでしたが、それでもそれを体験し通過することにより、A.Hewittの演奏はそれまでの彼女のものとは明らかに変貌しつつあるように感じます。GoldbergはBachの作品中でも、類をみない幅広い包容力を有しており、演奏者の背景、音楽的思考、歩みが如実に反映される傑作ですが、ここにいたって、A.Hewittが真の意味でのJ.S.Bach演奏家となりつつある事を示した、記念すべき盤ではないでしょうか。決して新鮮でも驚くような内容でもありませんが、Goldbergの普遍的再現(それは一つではありませんが)に近づき得た演奏として、Bachファンにはお薦めしたいです。個人的には、ぜひ平均律の三度目の録音にもチャレンジして欲しいですね。

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