交響曲第5番 チョン・ミョンフン&ソウル・フィル
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2015年08月20日
第5番は確かに一面では、対位法的にがっちりと組み立てられた純粋器楽交響曲であり、また金管奏者を中心にその名人技を極限まで引き出す「管弦楽のための協奏曲」的な側面もある。そういう構築的な面、あるいはオケの名人技を重んずる人にとっては、この演奏はやや物足りないかもしれない。しかし、曲の内的プログラムを考えれば、この曲はたとえばベートーヴェンの第5番のように「闇」から「光」へのドラマが一直線ではなく、屈折した味わいに満ちている。その点では、これはやはり無視し得ない、説得力に富んだ演奏だ。具体的に言えば、細かい緩急のアゴーギグ、音色の明暗を駆使して曲のプログラムを細密に描こうという演奏。2013年6月のN響定期でも大変感動的だったが、たとえば第2楽章展開部序盤、ティンパニのとどろきを背景にチェロがユニゾンで第2主題をレチタティーヴォ風に奏する部分などは、音楽が止まってしまいそうなほど遅い。柔らかく、繊細きわまりない表情のアダージェットも絶美だし、終楽章では音楽が一気呵成に突っ走ってしまわないように、そのアダージェットから終楽章に持ち込まれた主題が「鎮静」と「異化」の効果を担っているのだが、この楽章での変化に富んだテンポ配分も実にうまい。最後は盛大な拍手入り。5人の方が、このレビューに「共感」しています。
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