蜘蛛巣城
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izkeiske | 不明 | 不明 | 2021年07月03日
「人は堀、人は石垣、人は城」、武田信玄の言葉だ。シェークスピアの戯曲マクベスを戦国絵巻に仕立てたことで有名な本作は、もう一方で組織におけるトップの人心掌握術を赤裸々に訴える。 占い師の甘言や、妻の讒言を真に受けて、互いに戦場で命を賭した仲間の三木義明の信頼を裏切る三船敏郎演じる鷲津武時。その客観的な視点や判断力の無さ、近視眼的で狭量な発想、人を疑い裏切られる恐怖に耐えられない小心、そして相手の真意を確かめないままの軽率な行動など、凡そ人の上に立つ器にない。 武勇や攻めに秀でていても、知性や守りに劣る男に配下は従わず、国は治まない。三船敏郎のいつになく落ち着きのない、短慮に振れる悲しい男の演技が素晴らしく、ラストシーンの鬼の形相は圧巻そのものだ。 撮影では煙る濃霧の使い方、ラストシーンの弓矢特撮、鷲津浅茅の歪んだ心の陰影を能面の顔で浮かび上がらせたライティングなど、黒澤監督らしい工夫と拘りに目が釘付けになること請け合いだ。 蜘蛛の巣に囚われた虫の如く、猜疑心と虚栄心から坂道を堕ちていく愚かな男の末路を端的に描いた本作は、余りにシンプルではあるが、間違いなく黒澤明の映像表現による普遍的メッセージが迸る傑作だ。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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