『ファウスト』全曲 マッカナフ演出、ネゼ=セガン&メトロポリタン歌劇場、カウフマン、パーペ、他(2011 ステレオ)
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2014年04月18日
演出は全く感心しない。原爆を作ってしまった科学者の苦悩という読み替えの枠が所詮はメロドラマに過ぎないオペラの中身とマッチせず、取ってつけたように見えてしまう。ワルプルギスの夜(バレエは全面的にカット)のみ強引に原爆と関連づけたが、場違い感はぬぐえず、教会音楽(天使)とオペラ(悪魔)の間で引き裂かれた作曲者グノー自身の苦悩を枠に使ったコヴェントガーデンのマクヴィカー演出に遠く及ばない。しかし、演奏そのものはなかなか魅力的。普段は軽薄に聴こえてしまうファウスト役だが、カウフマンのこの役には重過ぎるほどの声(高い音はファルセットでかわしている)は、見た目は青年だが中身は老学者というこの人物のギャップをうまく表現している。マルグリートも「宝石の歌」のコロラトゥーラから最終場の劇的な表現力まで『椿姫』のヴィオレッタ並みの多彩な能力が求められる難役だが、ポプラフスカヤは大いに健闘。一方、パーペはこの種の役を演じると非常に作り物めいた、人工的な演唱になってしまう。それを良しとするかどうかで好みは分かれよう。退屈なページもなくはないオペラだけに、作品を引き締めているネゼ=セガンのシャープな指揮も高得点だ。2人の方が、このレビューに「共感」しています。
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