『トロイアの人々』全曲 ウェストブローク、アントナッチ、イーメル、マクヴィカー演出、パッパーノ指揮、ロイヤル・オペラハウス(2012)(日本語字幕付)
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鉄血桃太郎 | 神奈川県 | 不明 | 2022年10月20日
「トロイアの人々」はワーグナーの「リング」に匹敵するモニュメンタルな歌劇作品だが、なぜか今まで親しまれてはいなかった。いくつかCDやDVDもあったようだが、あまりパットしなかった。このDVDを見ると、それが不当な評価だったことが分かる。マクヴィガーの演出、パッパーノの指揮などのおかげだろう。どちらかと言えばトロイア陥落を描いた前半部の方が緊密で充実している。後半は少し冗漫な所がある。ワーグナーの「リング」と異なり、原作(アエネイス)に引っ張られ過ぎているのではないか?そのへんもう少し鑑賞を深めた方が良いのかもしれないが。 前半のカッサンドラ、後半のディドンがそれぞれ実質的に主役と言えよう。二人の死で各ドラマが閉じられるところは、前者がエレクトラ、後者がブリュンヒルデを思わせて面白い。ともかく、こういうソフトの出現を喜びたい。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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タケセン | 千葉県 | 不明 | 2014年05月25日
最初のレビューである村井翔さんの解説・批評は素晴らしいもので、感服しました。 わたしは、この曲の最初の録音(コリン・デイヴィス指揮 コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団1969年・日本盤発売は71年)のLP5枚組を学生の時に購入して以来、40年以上の間、愛聴してきました。 「トロイアの人々」は、想像力の権化のような天才ベルリオーズの晩年の傑作ですが、あまりにも見事な(高貴な)音楽がオペラの形式を超えているようで、なかなか演奏されませんでした。 CD時代になってからも新盤は出ず、同じ演奏の輸入盤を購入しました。後に、ようやくデュトワ、そしてレヴァイン(はじめての映像)の新盤がでましたが、デイヴィスの知と情がバランスした熱くかつ「古典的」な演奏には及ばず期待外れでした。 Blu-rayは、平板な新演出(パドリッサ)にガッカリでしたが、この新盤は演出演奏共に素晴らしく、はじめての日本語字幕付です。最初の全曲録音から43年、ようやく「トロイの人々」が市民権を得た、との思いで感無量です。なお、わたしは、ガーディナーのもの(日本語字幕はない)は、未視聴です。5人の方が、このレビューに「共感」しています。
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2014年04月06日
この大作の(おそらく)五組目の映像ディスク。しっかりした主張のある演出、攻撃的な指揮、なかなかの豪華歌手陣を擁する注目の演奏だ。演出は時代を19世紀半ばに移し、シェロー版『指輪』同様にそのような読み替えが可能であることを説得力十分に見せてくれる。たとえば、前半のトロイ戦争のくだりは、機械じかけの木馬に象徴されるように、産業革命をなしとげたヨーロッパ列強(ギリシャ軍)が後進国(トロイ)を蹂躙するという構図。確かにナポレオン3世治下のフランスもその「ヨーロッパ列強」ではあろうが、(ロンドンの批評家は誰も思い至らなかったようだが)それはまさに「大英帝国」のことではないか。この演出がコヴェントガーデンで大喝采という皮肉な結果に、スコットランド出身のマクヴィカーは密かにほくそ笑んでいるのではあるまいか。一方のカルタゴは「反近代」的なエスニックな世界。北アフリカ風の街のミニチュアを「蜂の巣のような」城壁が囲み、「女王蜂」ディドンがここを仕切っているという趣向。彼女の長いモノローグはコンヴィチュニーの『神々の黄昏』さながらに、幕の前でのプリマドンナの独演会となる。 パッパーノの指揮は速めのテンポで鋭角的かつ力強い。ロマンティックなふくらみを多少、切り捨てたとしても魅力的だ。カウフマンの代役だったハイメルはカリスマ性には欠けるが、技術的には達者。私には『悪魔のロベール』のイメージが抜けないが、終盤の「人でなし」ぶりを考えれば、実はエネはダークヒーローなので、悪くない人選だ。ガーディナーの盤に続いて登場のアントナッチは堂々たる巫女ぶり。ウェストブロークは相変わらずパワフルだが、この役では抒情的な部分での繊細さ、声楽的には中音域の豊かさが足りない。そのためこの人物の器の大きさが表現できず、最終場もやたらヒステリックに流れてしまうのはまずい。6人の方が、このレビューに「共感」しています。
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