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シェーンベルク(1874-1951)

CD Pierrot Lunaire, Erwartung, Etc: Boulez / Ensemble Intercontemporain, Bbc.so

Pierrot Lunaire, Erwartung, Etc: Boulez / Ensemble Intercontemporain, Bbc.so

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    伊奈八  |  茨城県  |  不明  |  2021年09月06日

    ブーレーズ指揮によるシェーンベルク作品集。例によって別々のLPで発売されたものの再編集である。ジャニス・マーティン独唱によるモノドラマ「期待」Op.17、「月に憑かれたピエロ」Op.21のIRCAMオープニング記念「七千両役者」盤、ジェシー・ノーマン独唱による、グレの歌から「山鳩の歌」室内楽版の3曲が収められている。ブーレーズはシェーンベルクの作品を数多く録音し、その普及に大きな貢献をした。半面、ブーレーズによるシェーンベルク演奏は、自分を音楽史上の「一流」作曲家として位置付けるためのルーツとして取り上げているように見える節があり、「敬意を表しているが愛してはいない」感がにじみ出ている。このCDの最初の2曲はそういう微妙さが垣間見える演奏となっている。 まず、モノドラマ「期待」だが、これはLP3枚組の「シェーンベルク作品集」に収められた1曲だった。収録されていたのは「ヤコブの梯子」「期待」「幸福な手」「第1室内交響曲」「第2室内交響曲」「室内オーケストラのための3つの小品」「声楽とオーケストラのための4つの歌曲」の7曲。最大の目玉は大作「ヤコブの梯子」で、「期待」は実は期待外れな演奏だった。その印象は改めて聴き返しても変わらない。この曲の繊細なオーケストレーションが味わえないし、感情の変化にも寄り添っていない。BBC交響楽団の演奏がピリッとしないのは、ブーレーズの指導に熱がなかったからだろう。ジャニス・マーティンが孤軍奮闘していて可哀そうになる。モノドラマ「期待」は9枚くらいディスクを持っているが、これを聴くよりは他の演奏の方がよい。次は七千両役者盤の「月に憑かれたピエロ」だ。LPジャケットはアンリ・ルソーの「Le Soir du Carnaval」という絵が素敵だったが、LP1枚でピエロ1曲というのはかなり割高な印象だった。一流の演奏家を7人も集めたせいでコストがかかったのだろうか?という邪推はともかく、録音の経緯は船山隆氏が詳細に述べられている。 すなわち、1977年6月17日(日)IRCAMのオープニング・コンサート・シリーズの一企画、〈ヴィ―ン楽派W〉と題されたコンサートのプログラムで、バレンボイム、ズッカーマン、アンサンブル・アンテルコンタンポランによるベルクの「室内協奏曲」に続いて、「七千両役者」(と船山隆氏は呼んだ)すなわちミントン(語り)、ズッカーマン(ヴァイオリン)、ハレル(チェロ)、ドボ(フルート&ピッコロ)、ペイ(クラリネット&バス・クラリネット)、バレンボイム(ピアノ)、ブーレーズ(指揮)らがステージに上がり「ピエロ」を演奏した。その直後の6月20日〜21日にパリのリバン教会で録音したのがこの演奏なのである。 しかし、LP当時からこれが果たして良い演奏なのか釈然としなかったが、今ではもっとハッキリと言える。これはかなり酷い演奏だ。「七千両役者」達は、皆自分の色を出そうとして、わがまま勝手に弾いている。もう最初の曲から、アンサンブルの乱れがある。どの曲でも誰かが足を引っ張っている。特にバレンボイムの横暴さやペイのスタンド・プレーは鼻につく。第三部の「月のしみ」に至っては、もう何をやっているやらカオスの様相だ。ミントンは勝手に音程をつけて「歌って」おり、シェーンベルクの意図から最も遠く、数ある「ピエロ」の語り手の中でも最悪の方だ。これというのも、ブーレーズが確たるイメージを持たずに指揮台に立ち「どうせ企画ものだから、みんな好きにやってくれ」といういい加減な指揮をしているからだ。同時期にDGに録音した「室内協奏曲」が、気合の入った超名演なのと比較すれば、ブーレーズのやる気の差は歴然だ。ブーレーズは三度も「ピエロ」を録音し、いずれも名演の誉れ高いが、ドメーヌ盤はピラルツィクの語りのエグ味が強過ぎて初心者には聞かせたくないし、「七千両役者」盤は酷い演奏だし、後年のアンサンブル・アンテルコンタンポラン盤は「上手なだけ」で死ぬほどつまらないし、どれも人には薦められない。「ピエロ」は数十種類聴いているが、ブーレーズとヘレヴェッヘ以外だったら誰の演奏でもいい。よくブーレーズと比較されて馬鹿にされてきたクラフトの新盤など、ブーレーズが生きていたらクラフトの爪の垢でも煎じて飲ませたい程の名演だ。 さて、最後は「山鳩の歌」だが、これは室内楽版の中では超名演だ。これはアンサンブル・アンテルコンタンポランによる「セレナード」や「ナポレオン・ボナパルトへのオード」と一緒にLPにカップリングされていたもので、低温の抒情に貫かれたアルバムだったが、なにしろジェシー・ノーマンの歌唱が素晴らしいのだ。ブーレーズ指揮全曲盤のミントンの歌唱もはるかに凌ぎ、数ある「山鳩」の中でも最高位の名唱となっている。伴奏の背筋がピンと伸びた演奏も見事。このノーマンの歌を聴いて腑抜けた伴奏をするくらいなら、音楽家を辞めた方がよい。 さて、随分と毒を吐いてしまったが、私の評価では「期待」が2点、「ピエロ」も2点、「山鳩」だけが5点で、(2+2+5)÷3で星三つとした。点が辛過ぎるとは思わない。「ブーレーズのシェーンベルクは最高」と今でも思っている人がいるかどうか知らないが、20世紀の都市伝説と言うべきだ。

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