『無伴奏フルートの世界〜パンの笛 400年の旅〜』 有田正広
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うーつん | 東京都 | 不明 | 2021年07月04日
前作より更に自由自在に吹かれたフルートで400年のタイムトラベルが愉しめる。 優れた録音により、フルートが息を吹き込むことで音が発せられるということに改めて気づかされるほど息遣いの豊かさに驚かされた。以前はフルートから出る音があまり好きになれなかったのだが、ここ数年だろうか、音のみでなく息遣いにも耳を澄ますようにしてフルートにも親しむようになった気がする。そのきっかけを作ってくれたのが有田正広の代表作『パンの笛〜フルート、その音楽と楽器の400年の旅(アリアーレ、1998年)』だった。 当盤ではソロに徹することでよりフルートの表現を堪能することができ、現代曲や自作も入れて表現の可能性もアピールしてくれた。楽器の細かい話は解説書に詳しく書いてあるが、曲ごとにフルートの音が変わり違う時代・部屋に案内されたような気がする。それこそが「旅」である。 私が一番気に入ったのは有田の自作。親交のある陶芸家・中里 隆氏の陶芸風景にインスピレーションを得たということだが、私のつたない感想としては陶作で土にこめる力や、(詳しいことは知らないがキイとタンポ皿?でパタパタ音を出す表現により)陶作が「手触り」の芸術である事も想起し、炎(炎もフルートの音も空気、または息が必要だ)が立ち上り焼成されていく過程を想像することができた。作品の凛とした佇まいにも想像の奥行きが広がる。実際に聴かれて各々で解釈を楽しんでほしいところだ。 音楽を愉しむだけでなく、フルートという楽器の変遷を学び、音色の個性に親しむ格好のディスクとしておすすめしたい。前作をお持ちの方ならなおさらお薦めしたい。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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