シューベルト:弦楽四重奏曲第14番『死と乙女』、メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第6番 ヴィジョン弦楽四重奏団
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村井 翔 | 愛知県 | 不明 | 2020年05月02日
全員20代のドイツ人男性四人による新鋭クワルテットのデビュー録音。チェロ以外は立奏、暗譜で演奏、ジャズやロックもやるという、いかにも今風の四重奏団だが、第一ヴァイオリンのヤーコプ・エンケは意外にも甘い音色、細やかな歌い口の持ち主で、決してべたべたした甘党クワルテットではないけれど、四楽器均等のマッシヴな響きでガンガン押していくという近年のSQのトレンド(その代表はアルバン・ベルクよりもむしろ全盛期のエマーソンSQだったと思う)とはちょっと違うところを目指しているのが面白い。ただし、第一ヴァイオリンのつややかな歌に対して、ヴィオラやチェロは鋭角的なリズムで突っかけてくるから、古き良き時代の感覚と現代のセンスのハイブリッドといったところ。『死と乙女』第1楽章提示部のリピートを省いているのも、いわば「先祖返り」的だ。終楽章などはもちろん非常に速いが、しなやかさとリズミックな推進力の配分がなかなか巧み。昨年からリリースが相次いだこの曲の録音のなかでも、別格と言えるピリオド奏法のキアロスクーロSQを別にすれば、最も注目すべきディスクだろう。カップリングがメンデルスゾーン四重奏曲の最高傑作、第6番へ短調というのもグッド・アイデア。姉ファニーの死を悼んで作曲された曲だから「メメント」というアルバム・タイトルにもふさわしい。3人の方が、このレビューに「共感」しています。
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