ヒューマンエラーの心理学 ちくま新書

一川誠

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784480072351
ISBN 10 : 4480072357
フォーマット
出版社
発行年月
2019年07月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
一川誠 ,  
追加情報
:
272p;18

内容詳細

たとえば直観的に動いて失敗した。だから今度はじっくり考えて行動したのに、やはり選択を誤ってしまった。または、はっきり記憶している経験が、実はぜんぜん違うものだった…など誰でも体験があるだろう。人間とは、間違える動物である。それは認知的な処理能力に制約や限界があるため。だが、それらを知って上手にいかせば、ミスを減らすことができる。自分のことは当然ながら、仕事や教育、災害現場などで、他人を思い通りに動かせるかもしれない。不思議な錯覚・錯視から危険な認知バイアスの理由まで、心理学が解き明かした、人間の知覚の本質とは。

目次 : 第1章 人間は間違える―知覚認知が誤りやすい理由/ 第2章 音を見る、光を聴く―感覚はウソをつく/ 第3章 身体と感情―錯覚は知覚や心理にどう影響するか/ 第4章 直観はなぜ間違えるのか―確率的特性と合理的判断/ 第5章 認知的バイアスに見る人間特性―思い込みと選択ミス/ 第6章 改変される経験の記録―記憶の誤りとでっちあげ/ 第7章 機械への依存とジレンマ―合理的判断が最適とは限らない/ 第8章 人間の適応戦略―錯誤を自覚することの大切さ

【著者紹介】
一川誠 : 1965年宮崎県生まれ。大阪市立大学文学部人間関係学科卒。同大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(文学)。カナダ・ヨーク大学研究員、山口大学理工学研究科助教授などを経て、千葉大学大学院人文科学研究院教授。専門は実験心理学。人間の知覚認知過程や感性の特性について研究を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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人間は他の生物種と比べて特に優れた知覚認...

投稿日:2021/04/23 (金)

人間は他の生物種と比べて特に優れた知覚認知過程を持っている訳ではない。むしろ、周囲に在る事物の特性や、自分自身の状態についての知覚や認知において、圧倒的に高い頻度で誤りを犯すと著者は言う。技術革新に伴い、更新され続ける人工的環境の中で、十分に適応しきれない課題の解決において、人間は頻繁に間違いを繰り返している。にもかかわらず、益々高い精度が求められるのである。情報伝達と情報処理に関する話題も納得がいく。膨大な情報を得ることが可能になっても、視野に入った刺激ですら何らかの処理を経なければ記憶に残らず判別もされないことが多い。ましてや意味の処理が必要な場合は、注意を向けて深い処理をする必要がある。情報が大量になった場合、それを正確に判断するのは困難である。更に判断に十分な時間が与えられていない場合には、ある程度決まりきった方略で情報を処理、判断する傾向に陥り、同じ判断の誤りを繰り返すことになりがちである。また、自らの身体の状態や感情、印象に関わる内的状態についての知覚の錯誤も切実である。我々は意思決定の局面ですら、自分で思っているほど意識的に行動しているのではないという。高次の処理過程が関わる事象では、我々の情報処理系のバイアス(先入観、偏見、思い込み)によって、おおよそ同じように「規則的」に認知的錯誤が生じるのだ。人間には、自分が信じていることを否定するような出来事や事柄の経験は認知され難く、記憶もされ難いというバイアスがある。特に個人の判断に大きく影響を及ぼす要因が「自尊感情」である。我々は自尊感情を傷付けないように、自分の失敗はあまり認知せず記憶もしない。上手くいったことだけ覚える傾向にあるのだ。また、自分自身の認知的状態についての認知が「メタ認知」であるが、此処にも不幸なバイアスがある。さまざまな認知能力に関して、その能力の低い人は、自分自身の能力についてのメタ認知に失敗し、自分の能力を実際よりも高く評価する傾向があるのだ。個人のであれ集団のであれ、著者が論述する各種認知的バイアスは、自尊感情由来の誤り、或いは認知、メタ認知での誤りを未然に防ぐ為にも一読し、知っておくべきだろう。

農夫 さん | 岡山県 | 不明

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