【インタビュー】BILLYBIO

2019年01月10日 (木) 20:00

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バイオハザードのギター/ヴォーカル担当、ビリー・グラツィアデイがソロ作品をリリース。これが80年代後半〜90年代のNYHC、そしてバイオハザードの全盛期を思わせる素晴らしい出来。ということで、ビリーに色々と話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):ソロとしてはデビュー作となる『フィード・ザ・ファイア』がリリースになります。バイオハザードではメタルやヒップホップなど、さまざまな要素をミックスしていましたが、今回はハードコア色が強いように感じました。

ビリー:(何故か笑)世界は最近ますますクレイジーになってるからね。俺は常に周りで起こっていることの鏡なんだ。感じていることを最も純粋な形で伝えるという点において、俺は最高のアーティストなんじゃないかな。世界は悪くなっているように思える。もちろん、俺は善や人間性というものは信じているし、善というものは広がっていくと思っている。そうでないと世界はさらにめちゃくちゃになってしまうからね。だけど、俺がアーティストとしての表現をしてきたこの何十年間で、やはり世界は悪くなってしまった。偉大なる変化も起こってはいるけれど、これで満足なんてできないし、正しい方向への変化を起こし続けなくてはいけない。今回のアルバムでも、俺は木を揺すり続けているんだ(笑)。

川嶋:ラップ色が少な目になっているように感じたのですが。

ビリー:俺はただ感じたことを表現するだけさ。「アントゥルース」や「ソダリティ」みたいな曲では、今までで最高のラップが書けたと思っている。ラップのフレーバーはそれなりにあると思うよ。パワーフローもやっていて、そっちではラップからの影響も前面に出しているけれど、さっきあげた2曲のフローの出来にはとても誇りに思っている。


川嶋:アルバムにはデス・バイ・ステレオ、ゼブラヘッドのダン・パーマー、スイサイダル・テンデンシーズのラ・ディアスらが参加しています。メンバーはどのように決めたのですか。

ビリー:ダンとは長い付き合いで、ラともずっと友人なんだ。もちろんスイサイダル・テンデンシーズも大好きだしね。シモは、Guttermouth、Ten Foot Poleなどのドラマーで、彼はハードコアなんだけど、The Bloody Beetrootsというイタリアのかなりビッグなバンドでも叩いてる。みんな友人なんだよ。曲を書いてデモを作って、彼らに演奏をしてもらって、俺の音楽に彼らのフレーバーを付け加えてもらったのさ。

川嶋:彼らはツアーにも参加するのですか。

ビリー:そこが難しいところなんだ。ヨーロッパ・ツアーでは、彼ら全員別のバンドでツアー中だったから、ジ・エクスプロイテッドやコマ、イタリアのグラインドコアバンド、クリップルド・バスターズのメンバーに参加してもらった。来週から始まるアメリカ・ツアーには、ダンは参加する予定だけど。スケジュールが空いていれば彼らが参加するけれど、そうでなければ他のミュージシャンにやってもらうんだ。

川嶋:歌詞はやはりすべて実体験なのでしょうか。

ビリー:もちろん。俺は他人の経験を歌詞にしたりはできないからね。俺が感じたこと、経験したり、考えたことばかりさ。

川嶋:"All the Good"=「すべての善なるもの」というフレーズが繰り返し出てきますが、これがキーワードなのでしょうか。

ビリー:俺は非常にP.M.A.なんだ。人生はいくらでもネガティヴになりうる。バイオハザードでも、ネガティヴな問題について歌ってきたけれど、そこにはいつもポジティヴな一筋の光があった。「アントゥルース」には"May your enemies live long"なんていう歌詞がある。「ライズ・アンド・スレイ」のビデオも公開したばかりだけど、これらは自分を正当に扱わないやつらをどう扱うかということについてだ。兄弟なんて呼んでくるくせに、平気で裏切る。そういうことをされた経験がある人も多いだろう。だけど、復讐をするのではなく、もっと深いやり方を考えるべきなんだ。その方が自分にとって有益だからね。過去を水に流し、先へと進んでいく、結果として勝つ。復讐は最上の方法ではないんだ。少なくとも俺は考えている。

川嶋:オープニング・ナンバーの「フリーダムズ・ネヴァー・フリー」というタイトルは、複数の解釈が可能ですが、「自由はタダでは手に入らない、自由には代償が必要だ」という意味なのでしょうか。

ビリー:もちろんそういう意味さ。自由を得るには、たくさんの代償が必要だ。考えていることを広めたり、自分を表現する権利を持つこと。もちろんアメリカには表現の自由というものがあるけれども、そこには潜在的な代償というものがあるのさ。例えば、自分の意見を口にすれば、考えの異なる奴らから批判される可能性がある。だけど、俺は世界中全員が俺と同じような考え方をするようなことは望まない。意見の違う人間からの批判というのは、俺にとってはヘルシーなものさ。自分がどうやって生きるかは、自分自身で決めるべきだ。全員が俺のように考え、俺が信じるものを信じるなんていう必要は全くない。そんな世界は退屈だよ。人々が自由の権利を行使するというのは、アメリカでは日常の光景だけれども、お互いへのリスペクトがなければ、意見の異なる人間同士で傷つけ合うことになりかねないということさ。

川嶋:「ノー・アポロジーズ、ノー・リグレッツ」はどのような内容なのですか。

ビリー:これは俺自身についてだよ。俺自身の生活、俺自身の経験を経て、俺という人間が出来上がった。良いことも悪いことも、ポジティヴなこともネガティヴなことも、全て含めて俺が人生でやったことが、今の俺を作り上げた。みんなと同じように、俺もそれらの経験を誇りに思っている。

川嶋:この曲には"Red white and blue"(=愛国心旺盛な)という表現が出てきますが。

ビリー:俺はイーグルの入ったアメリカ国旗のタトゥーも入れている。俺はアメリカという国をとても誇りに思って成長したんだ。ブルックリン出身というのは、俺にとってとても大きな意味があった。やがてニューヨークが世界の中心というわけではなく、俺は人類という大きなグループの一員なんだということに気づいた。言語や文化が違うからといって、俺たちとは違う存在ではない。もちろん違う点はあるけれども、それによってどちらがユニークだとか、スペシャルだとか、良いとか悪いということではない。


川嶋:「ディスアフェクテッド・ワールド」は、イスラムについてですか。

ビリー:いや、イスラムについてではないよ。今の世界ではお互いへのリスペクトが欠けているということ。メディアは常に、誰が優れているか、誰が正しくて誰が間違っているかなんていうことを報道しているが、こういうことは憎しみやネガティヴさしか生み出さない。人々は団結ではなく、分断されていく。最低なことさ。「シック・アンド・タイアード」などでも扱ったけど、世界は負のスパイラルに陥っているんだ。メディアは「こいつはイーヴルだ、この国はイーヴルだ」なんていう調子で、悲嘆にくれるしかない。朝起きて、朝食と笑顔、そして屋根があれば十分幸せで、ポジティヴで良い人間になれるはずなんだ。ところが、毎朝目にするのがメディアや他人からのネガティヴな情報、いやらしい薄ら笑い、泥の乗った皿だったらどうなってしまうだろう。これらの曲のテーマはこういうことさ。

川嶋:バイオハザードは、ハードコアやメタル、ヒップホップを融合したことで知られていますが、あなたの音楽的バックグラウンドについて教えてください。

ビリー:6歳からピアノを弾くようになったんだ。母が隣に座って歌を歌ってね。それから祖父や叔父が、さらに色々な音楽を教えてくれて、クラシックなジャズのインプロビゼーションなんかをピアノでプレイするようになった。その後パンク・ロックに出会って、全てが変わった。音楽的な完璧性を求めない表現というものがあることを知ったんだ。自分のフィーリング、メッセージをいかに表現するかというのが重視されるということさ。それが俺のアーティスト魂に火をつけたんだ。パンクやハードコアにはパワーがあった。メッセージがあるということが、俺にとってとても大きなインパクトだったのさ。そこからさらに進んで、メタルなども聴くようになった。メッセージを持ちつつも、演奏が上手かったり、ミュージシャンとして才能があるなんていうやり方もあるんだって。バイオハザードを始めた頃は、俺はパンクやハードコアばかりを聴いていて、そういうバンドからの影響を持ち込んだのだけど、他のメンバーは、俺が知らなかった音楽を色々と教えてくれた。初期のジューダス・プリースト、アイアン・メイデンとか。当時クレイジーでワイルドなパンクの友人がいてね。そいつがある日、カセットテープをくれた。片方の面には、セプティック・デスかデイグロー・アボーションか何かが入ってたのだけど、反対の面にはペンタグラムが描いてあったんだ。スケボーをしならがそのテープを聴いていたら、A面が終わり、自動的にB面が始まった。そしたらスーパーヘヴィなリフが始まって、「アーーーー」って高音スクリームが入ってきて、それが低音のグロウルに変わった。びっくりしてね、巻き戻しボタンを押して、もう一度聴いてみた。「一体何なんだこれは!」って。それがスレイヤーの『Reign in Blood』だったんだ。俺がメタルにハマるきっかけになったのは、確実にスレイヤーだよ。

川嶋:パンクを聴き始めたのは、何歳くらいのことですか。

ビリー:うーん、覚えてないなあ。10代だったのだけど、Museum of Corruptionというバンドが好きで、そのバンドのギタリストが辞めたから、「ギター練習するから入れてくれよ」なんて言ったことを覚えてる。最初に聴いたのは、マイナー・スレットの最初のやつ、アグノスティック・フロントの『Victim in Pain』、クロ・マグスの『The Age of Quarrel』とかだった。一番最初はセックス・ピストルズとかだったけど、これらのアルバムがリリースされた時は、「ワオ、こいつらは違うぞ」という感じだった。『Victim in Pain』の最初のコードなんて、チューニングが合ってないだろ?「なんだこれ、最高だ!」なんていう具合で、完璧な作品ではないけど、そのエネルギー、パワー、表現にすっかりハマってしまった。不完全であることで、より良い作品になっているわけだからね。Museum of Corruptionというと、面白い話がある。ギタリストが抜けて、彼らはバンドをやめようとしていたんだ。勉強や学校の方に専念するって。俺は「諦めるなよ。俺を入れてくれ、そうしたらCBGBでプレイできるようになるから」なんて言ってさ。「無理だよ、そんなことできるわけない」「いや、俺がいれば絶対大丈夫だ」なんて言い合った。結局、彼らは解散してしまったのだけど、ヴォーカリストとは今でも友達で、昨日も話をした。彼は同じ哲学、美学を持ち続けて、きちんと勉強して弁護士になり、今は裁判官をやっているのさ。彼には色々と法的なアドバイスもしてもらってるんだ。彼は、親父が俺にしてくれたアドバイス通りの人間だ。俺はパンク・ロック・キッドで、この世界というかすべてが大嫌いだった。ある日親父と昼飯を食いながら話していたんだ。「お前は何になりたいんだ」っていう、典型的な父子の会話さ。「俺がやりたいのはスケボーとバンドだけだ」って答えたら、「お前が色々なものが嫌いなのはわかってる。政治やこの国が嫌いなのも知っている。だけど、お前がアウトサイダーである限り、誰もお前の言うことなんて聞いてくれないぞ。モヒカンで、破れたアメリカ国旗が描かれたジャケットなんかを着ていては、誰も耳を貸さない。何かを変えたければ、内側から変えなくちゃいけないんだ」なんて言われた。その時俺は、典型的な親父のアドバイスということで聞き流していたのだけどね。親父のことは大好きだったけど、あの頃はすべてのことに反抗をしていたから。やがて、俺も大人になり、バイオハザードがうまく行って、ワーナー・ブラザースと契約すると、俺は巨大な箱の中にいるように感じた。ファンは俺の言うことに耳を傾ける。俺のメッセージ、俺の生き方、俺の音楽に耳を貸す。俺はもはやすべてに反対するアウトサイダーではなく、インサイダーだった。内側で戦っていたのさ。つまり、俺もその友人クリスも、それぞれ形は違っても社会の一部となりながらも、自分の信念に忠実なやり方を見つけたということだよ。

川嶋:ハードコア、メタル、ヒップホップの融合というのは、どのように行われたのですか。デモからファースト・アルバムに向けて、大きな発展があるように感じますが。

ビリー:うーん、どうだろう。俺は自分の音楽をカテゴライズしたいとか、レーベルやメディアにカテゴライズして欲しいと思ったことはないんだ。俺たちが作ったスタイルというのは、身近で起こっていたことから影響されたものさ。俺たちが育ったブルックリンでは、Run D.M.C.、ビースティー・ボーイズ、シュガーヒル・ギャングみたいなヒップホップやラップを聴いている奴がそこにいたかと思うと、通りの向こうでは、たくさんのキッズが集まってアイアン・メイデンやジューダス・プリースト、ブラック・サバスをかけていて、さらにすぐ近くではクロ・マグスやアグノスティック・フロントみたいなパンク・ロック、ハードコアを聴いてる奴らがいる、みたいのが当たり前だったんだ。ディスコみたいなヒット曲を聴いてる奴らもたくさんいた。そういう奴らとはあまりつるまなかったけどね。だから、みんなで座って「よし、メタルとハードコアとヒップホップを取り入れよう」なんて話あったわけじゃなく、すべて自然に起こったことなんだよ。デモの曲の多くはファースト・アルバムにも入っているし、俺としてはそんなに違いがあるとは思わない。「Survival of the Fittest」、「Hold My Own」、「Victory」なんかはデモには入っていないし、それに音質は確実に良くなっていると思うけどね。あのアルバムをレコーディングした時は、ちょっと内容がロックンロールすぎるかもしれないけど、まだ俺たちもドラッグにどっぷりでさ。メンバーもとてもワイルドだった。レコーディング中に、機材を全部積んだバンを盗まれたなんていうこともあったな。最悪だったよ。すでに閉鎖したスタジオを無理やり安い値段で使わせてもらってね。だけどレコーディング用の予算をほとんどコカインに使ってしまった(笑)。安いホテルに泊まっていたので、メンバー2人の股間の上を虫が這ってたり、毛ジラミになった奴もいてさ、すぐにホテルを変えたり(笑)。レコーディングはさっと仕上げて、またいつもの生活に戻ったのを覚えている。

川嶋:デモの収録曲の一部が人種差別的であるという誤解を受け、それに対して「カーニヴォアのファンを獲得しようと思った」と発言されています。常に疑問に思っていたのですが、カーニヴォア、あるいはピーター・スティールは、本気でああいった歌詞を書いていたのでしょうか。それともジョークだったのでしょうか。

ビリー:それ、Wikipediaで見たんだろ?

川嶋:その通りです。

ビリー:子供たちがいつも言ってるよ、Wikipediaは見ちゃダメだ、信用できないからって。その情報は嘘なんだよ。俺もあれを訂正しようとしているんだけどさ、訂正しても毎回元に戻されてしまうんだ。あれは確かにインタビューで答えた内容ではある。インタビューでいつもデモの件を尋ねられるから、まだワイルド・キッドだった俺たちはウンザリしてね。ジョークで言ったんだよ。「カーニヴォアのファンを獲得しようと思って書いた」って。だけどさ、読む側からしてみたら、それがジョークだなんてわかりはしないから、そういうジョークは言うべきではなかったんだけどね。「マスター・レイス」みたいな曲も、カーニヴォアのファンを得ようとして書いたわけじゃないよ(笑)。俺たちはカーニヴォアが大好きだったけどね。エヴァンはカーニヴォアのローディだったし、ピートとも友達だった。いわゆるフェイク・ニュースさ(笑)。ところで質問は何だっけ。

川嶋:ピートは人種差別的な歌詞をいくつか書いていますが、あれは本気だったのか、あるいは皮肉、ジョークの類だったのか、どちらだったのでしょう。

ビリー:バイオハザードっていう名前を提案してくれたのは、ピートなんだよ。彼はとてもインテリジェントだった。この質問はピート自身しか答えられないだろうけど、俺としてはジョークだったと思う。彼は皮肉屋で、ウィットに富んだ人物だったからね。誤解を生みかねない曲をたくさん書いていたよね。少なくとも俺は皮肉として書いているんだと思っていた。彼が極右や白人至上主義者だったら、そもそも彼とは仲良くならなかったし。皮肉というのはニューヨーク、特にブルックリンでは当たり前のことなのさ。彼とはしょっちゅう話したけど、彼は俺同様移民の家族で育っているし、自分自身や周りのことに対する不満、怒り、ネガティヴさを反映しているような人物だった。バイオハザード、シアー・テラー、タイプ・オー・ネガティヴ、それからトキシミアとで、「ネガティヴ・ナイト」っていうライヴをやったほどさ。当時はみんな若くてドラッグをやりまくり、世の中も自分たちも憎んでいた。悲惨な状況だと仲間が欲しくなるだろ。だけど、音楽が俺に新しい道を示してくれた。仲間と音楽を作ることの方が面白いと気づいたんだ。おかげで救われたよ。ドラッグもやめられて、ポジティヴな道を歩めるようになった。音楽、バイオハザードがなかったら、俺の人生はずっと酷いものになっていたよ。


川嶋:なるほど。ここ日本にいると、本気なのか皮肉なのかを見極めるのは非常に難しかったです。

ビリー:S.O.D.なんかもそうだったろ。「Speak English or Die」とか、色々と問題になった。だけど俺はこれも皮肉だと思っていたよ。

川嶋:マーフィーズ・ロウの「カリフォルニア・パイプライン」とか。

ビリー:そうだね。マーフィーズ・ロウは好き?

川嶋:もちろん大好きです。

ビリー:ジミー(ゲシュタポ)はここのところずっと病気なんだよ。とても酷くて、一ヶ月くらい入院してるんだ。

川嶋:あなたは現在ロサンジェルスにスタジオを持っていますが、ニューヨークからロスへと引っ越した理由は何だったのですか。

ビリー:ここもいいけどね、やっぱりニューヨークが恋しいよ。来週ニューヨーク行くんだ。やっぱりニューヨークが俺のホームタウンだから、気候や人々の姿勢、食べ物、すべてのものが大好きなんだ。俺はブラジル人の女性と結婚したのだけど、彼女がニューヨークの寒さに耐えられなくてね。結婚して3年後、ブラジルに帰るか、カリフォルニアに移住するか、ということになった。だからここに引っ越してきて、子供を授かって、とても幸せにやっているよ。ハッピー・ワイフ、ハッピー・ライフ。俺もとてもハッピーさ。

川嶋:お気に入りのアルバム3枚を、ハードコア、メタルそれぞれで教えてください。

ビリー:先ずは、アグのスティック・フロントの『Victim in Pain』。マイナー・スレットの『Out of Step』、クロ・マグスの『The Age of Quarrel』。いや、待てよ。やっぱりバッド・ブレインズの『Rock for Light』。4枚になっちゃうけど、決められないからこれで。メタルだと、ブラック・サバスのファースト。メイデンの『The Number of the Beast』。エクストリーム・メタルじゃなくてもいいんだろ?レッド・ツェッペリンの『IV』。これは親父のコレクションで、レコードプレーヤーの上に置きっぱなしになってたんだ。たまたま聴いてね、面白いと思ったのだけど、ミュージシャンとして彼らがいかに素晴らしいかは、後々まで気づかなかった。バイオハザードのドラマー、ダニーがジョン・ボーナムの大ファンでさ。キッスの『Alive』もいいね。

川嶋:バイオハザードの特長の1つであったグルーヴは、どのあたりから来ているのですか。

ビリー:おそらくツェッペリンやブラック・サバス、それからバッド・ブレインズからも来ていると思う。ヒップホップのグルーヴもあるとは思うけど。ダニーはバックビートのドラマーだから、テンポを半分に落とすことによって生まれるダイナミックな変化のグルーヴは最高さ。ビリーバイオのレコードでも、この手法は使い続けているよ。人生というのは常に一定のテンポで進むものではないだろ。速くなったり遅くなったり、アップダウンもある。そういうダイナミクスは、俺の音楽の重要な一部なのさ。

川嶋:聴いていた、影響を受けたヒップホップのアーティストというのはどのあたりですか。

ビリー:RUN D.M.C.、ビースティー・ボーイズ、シュガーヒル・ギャングのような初期のヒップホップを聴いていた。サイプレス・ヒルにもびっくりしたね。最初に聴いたのはデモかEPだったかもしれない。「何なんだこれは!』という感じだったよ。アイスT、パブリック・エネミー。俺は最初1つのジャンルばかりを聴いていてけれど、やはり6歳でピアノをやったのが良かったのだろう。ジャズ、クラシック、メタル、デス・メタル、パンク・ロック、ハードコア、ヒップホップに至るまで、どんな音楽でも楽しめるという素養ができた。そういう意味で、父と母にはとても感謝しているよ。

川嶋:では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

ビリー:日本にはずっと行けてないんだけど、このアルバムが出て、また日本でもライヴをやりたいね。バイオハザードの曲もやるけど、新曲もピットに火を放つような最高の作品さ。まさにジムに行く前に聴くような音楽で、ヨガ用じゃない。警告はしたぜ。


 カーニヴォア、ピート・スティールの部分は、注釈が必要だろう。バイオハザードがリリースした88年のデモには、「マスター・レイス」や「アメリカ」といった、人種差別的ともとれる歌詞を持った曲が収録されていた。そのためビッグネームとなった以降も、それらの曲についての釈明を求められ続けウンザリした彼らは、インタビューで「カーニヴォアのファンを奪ってやろうと思ったんだ」とジョーク発言をしたのだ。反体制的な側面が強いロックの世界では、たいていはリベラルな思想が優勢になりやすい。ところが、80年代のニューヨーク・ハードコアやその周辺のシーンでは、なぜか右傾化という現象が起こっていた。その中でも、過激な歌詞で物議を醸しまくっていたのがカーニヴォアだ。カーニヴォアは、後のタイプ・オー・ネガティヴで大成するピート・スティールがやっていたスラッシュ・メタル・バンド。ピートは、カーニヴォアで「もしアメリカが気に入らないのなら、今すぐ荷物をまとめて出て行け!」なんていう歌詞を書いていただけでなく、アグノスティック・フロントに、「政府が俺の稼ぎの半分を持って行くから、お前は働きもせず暮らせる」なんていう、生活保護を糾弾する歌詞まで提供をしているのだ。バイオハザードは、そんなピートと深いつながりがあった。インタビュー中にも述べられているとおり、バンド名をつけてくれたのもビートだし、エヴァンはカーニヴォアのローディをやっていたほど。しかし、ピートのこれらの発言が、果たしてどこまで本気だったのか、あるいは完全なジョークであったのかは、よくわからない。これはピートに限った話ではない。アグノスティック・フロントにしたって、ヴォーカリストのロジャー・ミレットはキューバからの移民であるし、バイオハザードのエヴァンはユダヤ人である。このような背景を考えると、彼らが本気で人種差別的な思想に染まっていたというのも考えにくい。マーフィーズ・ロウの「カリフォルニア・パイプライン」は、「俺はアメリカ人であることを誇りに思う、俺は共和党支持、ロナルド・レーガンを愛してる、彼の映画も愛してる」と、本気なのか皮肉なのか、まったく判別がつかない内容。S.O.D.の『Speak English or Die』も、当時大きな非難を浴びたものだが、彼らが本気だったとも思えない。まあ結局は、本気ではなかっただろうが、100%ジョークだったとも言い切れない、何と言うか若気の至り的部分も大きかったのではないかと思う。

 それはともかく、ポジティヴなメッセージであふれている『フィード・ザ・ファイア』は、バイオハザード、そしてNYHCのファンなら必聴の会心のアルバムに仕上がっている。バイオハザードの最後の来日が、すでに10年も前のこと。ライヴではバイオハザードの曲もやっているとのことだから、久々にその勇姿を見せてもらいたいところである。

取材・文 川嶋未来



日本盤

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Billybio

価格(税込) : ¥2,484

発売日: 2019年01月11日

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