【インタビュー】KORPIKLAANI

2018年08月15日 (水) 20:45

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 10枚目のアルバムとなる『北欧コルピひとり旅』をリリースするフィンランドのフォーク・メタル・バンド、コルピクラーニ。ベーシストのヤルッコに、いろいろと話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):ニュー・アルバム『北欧コルピひとり旅』がリリースになります。今回の作品は、過去のアルバムと比べてどんな点が進歩していると思いますか。またこれは以前の作品と比べると、少々毛色の違うものだと思いますか。

ヤルッコ:そうだね。確かに以前とは違った風にやろうと思った部分はある。ここ最近のアルバムは、何枚なのかは忘れてしまったけど、ずっと同じプロデューサーAksu Hanttuと一緒に作ってきた。おかげで俺たちも成長することができたし、作品もサウンドもどんどん良くなっていったと思う。一方で前回のアルバム『Noita』を作った時点で、これ以上は進みようがないという地点に達したと感じたのも事実なんだ。だから今回の作品では、ちょっと違ったアプローチをしたいと思ったのさ。それからサウンド的にも、過去を振り返るような、といっても俺たち自身の過去という意味ではなく、前の時代の自然で本物の音が欲しかった。ドラムもコンピューターのサンプル・ライブラリーのような音でなく、本物のドラムキットらしい音で、ギターも70年代〜80年代のマーシャルらしいクランチーな音が欲しかった。こういった点で、今回のアルバムは以前のコルピクラーニのアルバムとは異なったものになっていると思うよ。

川嶋:新たに起用したプロデューサーというのは誰なのですか。

ヤルッコ:ヤンネ・サクサだよ。彼は俺たちのようなバンドとたくさんの仕事をしているんだ。例えばTurisasとかね。彼には、「もしプロデューサーが必要ならぜひやらせてくれ」と言われていたんだ。

川嶋:レコーディングはどこでやったのですか。

ヤルッコ:ホーロラのペトラックス・スタジオで録った。最近はずっとここで録っているんだよ。前回のアルバムではここと、もう一箇所のスタジオを使ったのだけど、今回はアルバム全部をここでレコーディングした。フィンランドではよく使われているスタジオだよ。ヤンネにはレコーディング・エンジニアもやってもらったんだ。

川嶋:個人的には今回のアルバムは、遅い曲が目立っているという印象を持ちました。アルバムの冒頭からして、ゆっくりなパートで始まりますよね。故意にこのような作風にしたのでしょうか。

ヤルッコ:故意とは言えないな。俺たちはアルバムをレコーディングする前に、デモを作るんだ。それで、たいていはデモができあがった時点で、「ああ、アルバムはこういう方向性になるのか」なんて思うんだよ。つまり、「よし、遅いアルバムを作ろう」とか、「速い曲をたくさんいれよう」みたいに、前もって方向性を決めてやるわけじゃない。たまたま今回はこういう曲が揃っただけさ。次のアルバムもこういうスタイルになるのかはわからない。ただ、今回はこういう作品になったというだけ。もちろんいつものような速い曲も入っているけれど、確かに君が言うように、スローでムーディでヘヴィな曲が目立っているね。

川嶋:さらに今回は、アルバムの長さが70分もあります。これまでのコルピクラーニのアルバムは、基本的に40分〜50分と、わりとコンパクトにまとまっていましたが、今回これほど長大な作品になったのは何故なのですか。

ヤルッコ:基本的には良い曲がたくさんできたからというだけだよ。せっかく出来が良い曲をボツにはしたくないからね。今はCDやダブルLP、ストリーミングなどで、それほどアルバムの長さを気にする必要もない。せっかく70何分の素晴らしいマテリアルが完成したわけだから、それを全部入れようと思ったんだ。以前は日本盤用のボーナス・トラックなどで、曲をとっておいたりもしたのだけどね。今回はレコーディングした曲を全部入れた。

川嶋:7曲めの「幻の髑髏杯」などは、10分もある大作です。『Korven Kuningas』のタイトル曲を例外とすれば、これはコルピクラーニ史上もっとも長い曲ではないですか。

ヤルッコ:「Korven Kuningas」は、ずっとドラムが続くシャーマニックな曲だからね。一方で、「幻の髑髏杯」は、確かに10分もの長さのドゥーム・メタル・ソングとも言える面白い曲だよ。曲調が面白いわけではないけれど。90年代のドゥーム・メタルみたいなヴァイブがあって、俺個人的には非常にCandlemass的な雰囲気がある曲だと思っている。Leif Edlingが書いた曲みたいだろう?たまたまこの時期、こういう曲ができあがったんだ。このバンドの面白いところは、どんな種類の曲を書いたとしても、コルピクラーニになってしまう点さ。自分たちを制限することはない。「いくら何でもこれはやすぎだ」と思う人もいるかもしれない。でも、俺たちは自分たちの意見しか気にしていないからね。

川嶋:次の「巨人が分かつ橋」もCandlemassというか、エピックなヘヴィ・メタルですよね。

ヤルッコ:そうだね。「幻の髑髏杯」、「巨人が分かつ橋」、どちらもヘヴィな曲だし、ヘヴィ・メタルだよ。ただ、「巨人が分かつ橋」に関しては、過去にこういうスタイルの曲もやったことがあると思う。近い曲調のものがあった。だけど「幻の髑髏杯」は、過去の俺たちのどの曲とも似ていない。面白いことに、この2曲は、どちらも最初に作った5曲のアルバム用デモにすでに入っていたんだ。アルバムの製作の始まりとしては、とても奇妙なものだったよ。何しろ2曲合わせて16分のドゥーム・ソングなのだからね。まあ結局は、他の7-8曲は、もっと普通のコルピクラーニらしい曲になったけれど、はじめはとても奇妙だったね。

川嶋:コルピクラーニはデビュー以来ほぼ毎年アルバムをリリースしてきましたが、ここ最近の2作は3年に1枚と少々ペース・ダウンをしています。これは何故なのでしょう。

ヤルッコ:ツアーをたくさんやっていたんだよ。それこそ世界中を回る、規模の大きなツアーをやっていたからね。サボってたわけじゃないんだ。ライヴをやりまくっていたから、なかなかアルバムを作る時間がなかっただけさ。それからリード・シンガーであり、曲を書いているヨンネが、ソロ・アルバム(『Kallohonka』(17年))を作っていたというのもある。

川嶋:今回のアルバム・タイトルは、「さすらい人」という意味とのことですが、テーマは「旅」ということなのでしょうか。コンセプト・アルバムになっているのですか。

ヤルッコ:いわゆるコンセプト・アルバムではないよ。いくつかの曲は旅についてであり、いくつかの曲は、ホームシックについて。俺たちはツアーをやっているから、いつもどこかへ行ったり、あるいはどこからか帰ってきたりする。さらに、歌詞のいくつかは、旅人のアウトサイダーとしての視点を持っているんだ。そういうわけで、何曲かは、共通のテーマを扱っているけれど、コンセプト・アルバムというわけではない。

川嶋:アートワークも非常に美しいですね。

ヤルッコ:家があって道がある。つまり「さすらい人」というコンセプトと明確なつながりがあるよね。実はこのアートワークは、実在の場所なんだ。そこの写真を元に描かれている。俺は最初この絵を見せられたとき、「いくら何でもこれはウソっぽすぎる。こんな場所はないよ」って文句を言ったんだ。ところが写真を見せられてさ。本当にこういう風景だったんだ。

川嶋:コルピクラーニの音楽を無理やりカテゴライズするとしたらどうなりますか。通常はフォーク・メタルと言われていますが。

ヤルッコ:フォーク・メタルで良いと思うよ。人々はつねに俺たちのことをフォーク・メタル・バンドと呼ぶしね。別に文句はないし、それで構わないよ。

川嶋:コルピクラーニは、どんな音楽から影響を受けているのでしょう。メタルとフィンランドの民族音楽ははっきりとわかりますが、それ以外の音楽からも影響を受けているのですか。

ヤルッコ:あらゆる音楽だね。このバンドのメンバーが聴いている音楽は、本当にバラバラだからね。あらゆる音楽ジャンルをカバーするほどさ。民族音楽好きなメンバーもいれば、ヘヴィ・メタルやハード・ロックが好きなメンバー、俺みたいにカントリー・ミュージックの大ファンもいる。やっていることに一切の制限がないというのは、とても気に入っているよ。ツアー・バスで、ずっとヘヴィ・メタルばっかりがかかっているような状況はキツイよ。

川嶋:では、メタルに限った場合、どのようなバンドからインスピレーションを受けていますか。

ヤルッコ:俺個人的なことで言わせてもらえば、リード・シンガーのヨンネも同じだと思うけど、オールドスクールなバンドが好きなんだ。Black SabbathやMotorhead、それからもちろん80年代のバンド、W.A.S.P.やIron Maiden、Acceptとか、80年代中盤にピークを迎えた音楽。

川嶋:エクストリーム・メタルより普通のメタルのほうがお好きなようですね。

ヤルッコ:個人的には、エクストリーム・メタルは好きじゃない。それに、今どんな音楽がエクストリーム・メタルだと考えられているのかもよくわからないな。俺の時代では、Venom、Slayer、それからMetallicaの最初の3枚が重要なエクストリーム・メタルだと考えられていたけど。

川嶋:歌詞はフィンランド語ですが、これは現代的な普段使われるフィンランド語なのでしょうか。

ヤルッコ:いや、現代的とは言えない。かつてほどオールドスクールではないけどね。非常に詩的な書き方をされているんだ。詩的というのは、つまり面倒臭いということ。例えば俺たちの歌詞をコピペしてGoogle Translateにかけても、全く意味のわからないものしか出てこないよ。

川嶋:フォーマルな古いフィンランド語ということですか。

ヤルッコ:フォーマルとは言えない。あくまで詩的なんだ。

川嶋:コルピクラーニの初期は、英語で歌っていましたよね。だんだんフィンランド語へとシフトしていき、現在はすべてフィンランド語です。これは何故でしょう。

ヤルッコ:フィンランド語の方が響きがいいんだ。ストロングなサウンドというのかな。それに英語で歌うよりも、母国語の方がもっと感情を込められるしね。もともとヨンネはフィンランド語で歌詞を書いていたのだけど、彼は自分の書くフィンランド語の歌詞に満足できなくて、それで英語を使い始めたんだ。外国語の方が、歌詞を書きやすいということもあるからね。フィンランド語というのは難しい面もあるから。やがて外部のライターによるフィンランド語の歌詞を使うようになっていって、結局はすべてフィンランド語ということで落ち着いたのさ。

川嶋:コルピクラーニの音楽は、フィンランド人が聴くと非常にフィンランド的に感じるものなのでしょうか。

ヤルッコ:そうだね、とてもフィンランド的だと思う。特に歌詞もフィンランド語だし、フィンランド人にとって、とてもフィンランドっぽく感じられる音楽だよ。非常にオールドスクールなフィンランドという感じがするんじゃないかな。何と言うか、田舎者のジョークというか、フィンランドの郊外の音楽の雰囲気。俺たちはまったくオシャレじゃないからね。

川嶋:フィンランドっぽさを特徴づけるものは何なのでしょう。メロディなのでしょうか。それともリズム、あるいは使う楽器でしょうか。

ヤルッコ:歌詞がフィンランド語であることと、アコーディオンを多用していることだと思う。郊外では毎月土曜の夜などにダンス・パーティが頻繁に行われていて、そこではアコーディオンが使われるんだ。フィンランドらしい楽器というと、そのアコーディオンとヴァイオリンなんだよ。なぜかというと、この2つの楽器は旅に持って出ることができる大きさだから。このどちらかを持って旅に出て、演奏をするんだよ。それから俺たちが使っているメロディも、古いフィンランドの音楽と共通点を持っている。俺たちのメロディは、北方ヨーロッパのスタイルなんだよ。アイルランドやスコットランドの音楽と同じ種類のヴァイブを持っている。ただフィンランドの場合、それらの国とは違って、東側、スラヴのメランコリックで悲しい音楽の影響も強く受けているんだ。この要素が、俺たちの音楽を非常にフィンランド的にしていると思う。フィンランドの音楽というのは他の国のものととても違っていて、結果俺たちの音楽も、非常にフィンランド的になっているということさ。フィンランドの伝統的な音楽は、東と西、両方から影響を受けている。しばしばアップテンポで楽しげだけれども、非常にスラヴっぽい、ドゥームっぽい面もあるんだ。

川嶋:日本ではなぜかロシア民謡がよく親しまれており、そしてもちろんコルピクラーニも非常に人気があるわけですが、その哀愁のルーツはロシアなのかもしれませんね。

ヤルッコ:それが音楽そのものなのか、メロディによるものなのかはわからないけど、コルピクラーニは間違いなくメランコリックな雰囲気は強いよね。

川嶋:現在フィンランドはヘヴィ・メタル大国の1つですが、80年代、とくにスラッシュ・メタル・バンドはあまり多くなかったように思います。メタルが盛んになった理由は何だったのでしょう。

ヤルッコ:いや、80年代のフィンランドにも、メタル・シーンは存在していたし、強力なスピード/スラッシュ・メタル・バンドもいたんだよ。ただ、フィンランド国外には、それらのバンドは知られていなかった。当時はどうすれば海外で活動できるのか、わからなかったんだろうね。バンドがフィンランドのレーベルと契約しても、レーベルは海外向けにはプロモートをしてくれなかった。StratovariusやAmorphisなどが海外でも知られるようになったのは、もうちょっとあと、90年代に入ってからだよね。80年代、俺が10代だった頃も、たくさんのメタル・バンドがいた。バンドをやっている知り合いは、みんなメタル・バンドをやっている感じだったよ。だからシーン自体は存在していたのだけど、95年とかまでは国外では知られていなかったということさ。

川嶋:80年代のフィンランドのスラッシュ・メタル・バンドでお薦めはありますか。

ヤルッコ:Stoneだね。

川嶋:Stoneはわりと国外でも知られていましたよね。

ヤルッコ:彼らは今でこそよく知られているけれど、当時はさっぱりだったと思うよ。

川嶋:あなたのお気に入りのアルバムを3枚教えてください。

ヤルッコ:『No Sleep ‘til Hammersmith』。もちろんMotorheadね。それからBlack Sabbathの『Headless Cross』。あとはRushの『Hemispheres』。まあでも明日聞かれた違う答えになるかもしれないけど。

川嶋:現在のフィンランドのシーンはいかがですか。特にシンパシーを覚えるバンドはいますでしょうか。

ヤルッコ:フィンランドには物凄くたくさんのバンドがいて、他のひとびとからすれば競争をしているように見えるかもしれないけど、シーンの状態はとてもよく、フェスティヴァルやツアーなどでさまざまなバンドと会うけど、みんな仲が良いんだ。嫌なやつなんて一人もいない。とても良いコミュニティだよ。もちろん一緒にツアーなどをして、非常に近い関係のバンドもいるし、そうでないバンドもいるけど、クソ野郎はまったくいないね。

川嶋:では最後にアルバムを心待ちにしている日本のファンへのメッセージをお願いします。

ヤルッコ:まずはニュー・アルバムを買いに行ってくれ。これは素晴らしいアルバムだよ。愛情を持ってこれを聴いて、それからプロモーターに、俺たちを日本に呼ぶよう伝えてくれ。



 「旅」をテーマとしているという今回のアルバムだが、インタビューから感じられるとおり、「酔っぱらって大騒ぎ」というイメージを封印した作品になっていると言える。ヤルッコが言うとおり、フィンランドの民族音楽は、アップテンポで楽しげだけれども、非常にスラヴっぽい、ドゥームっぽい面もある。ロシアとスウェーデンに挟まれているフィンランドの音楽は、東西どちらからの影響も大きく受けているが、本作では東側からの、非常にメランコリックな面の方が大きくフィーチャされている印象だ。もちろん以前のコルピクラーニのアルバムにおいても、楽しさとメランコリックさは併存していたし、ドゥーミーな顔が見えることもあった。ただ今回は、「旅」というテーマの下、その比率が変わっているのだ。

 シンガーのヨンネは、このアルバムについて「過去の作品とは比較できない、まったく新しいコルピクラーニのアルバムだ」と語っているし、インタビュー内でもヤルッコが「『いくら何でもこれはやすぎだ』と思う人もいるだろうが、俺たちは自分たちの意見しか気にしていない」と発言していることからも、彼ら自身もこの変化は自覚していると思われる。(意識的に変化したのか、気づいたら変化していたのかは別にして。)『北欧コルピひとり旅』は、美しく、実にメランコリーあふれる、フィンランド産としかいいようがない作品。これはおそらくAmorphisなどのファンにもアピールするアルバムだろう。このアルバムが、今後コルピクラーニのディスコグラフィーの中で、どのような位置づけになっていくのか、実に興味深い。北欧の哀愁が大好きなメタル・ファンは、ぜひこのアルバムを聴いてみてほしい。

取材・文 川嶋未来


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