【インタビュー】IMMORTAL / Demonaz

2018年06月20日 (水) 20:00

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9年ぶりのニュー・アルバム『ノーザン・ケイオス・ゴッズ』をリリースするノルウェーのイモータル。ギタリストであり、今回はヴォーカルも担当したデモナスに話を聞いてみた。

川嶋未来(以下、川嶋):ニュー・アルバム『ノーザン・ケイオス・ゴッズ』がリリースになります。個人的には90年代のイモータルに戻ったような印象を受けたのですが。

デモナス:2015年にアルバムを作り始めたのだけど、「こういうアルバムにしよう」というプランがあったわけじゃないんだ。いつも通りにやっただけさ。テーブルに座って、ただ曲を書くだけ。最初に書いた曲は「ノーザン・ケイオス・ゴッズ」だったのだけど…。アルバムはもう聞いた?

川嶋:ええ、全部聴きました。

デモナス:もうちょっと遡って話そう。『All Shall Fall』を出した後、俺とアバスとホルグで新しいアルバムを作り始めたんだ。ところが、プリプロダクションがほぼ終わりに近づいた頃、問題が勃発して、アバスはそれらの曲を持ってバンドを抜けてしまった。俺たちにはどうすることもできなかったんだ。だから15年に、まったく一からアルバムを作り直さなくてはいけなかったんだよ。それでホルグと2人でバンドを続けることにして、「ノーザン・ケイオス・ゴッズ」のリフを思いついた。ギターさえ持てば、いくらでもリフのアイデアは湧いてくるからね(笑)。「ノーザン・ケイオス・ゴッズ」が完成すると、すぐに次の曲へと着手した。まあ俺はずっと『Battle in the North』、『Pure Holocaust』、『Blizzard Beasts』みたいな初期のイモータルの作品が好きだったからね。今回アバスの手によるものは一切なくて、俺がすべてのリフを書いた。4−5曲書いたところで、アルバムのラストを飾るエピックな曲を作ろうと思いついた。それで世界から自分を隔離してね。締め切りもなかったから、すべてを忘れてアルバムのことだけに集中しようと思って。バンドは誰でも前のアルバムよりも良いものを作ろうとすると思うのだけど、それだけが唯一のプランだったのさ。

川嶋:なるほど。初期っぽいのは意図的ではないのですね。

デモナス:自然とそうなっただけさ。俺が曲を書く時は、頭の中のアイデアに基づくだけ。山や森に行ってインスピレーションを受けたりしてね。俺はたくさんの音楽を聴いているから、頭の中は音楽でいっぱいだし。音楽が俺の人生なのさ。俺は山腹に住んでいるから、夜などは本当に静かなんだ。そんな環境でギターを持って、曲を書き始めるんだよ。もしかしたら頭の片隅で、ルーツに戻ろうという気持ちはあったかもしれないけどね。『All Shall Fall』でイモータルは、多少誤った方向へ進んだ感もあったから。やはりバンドの内部がうまく行っていないと、何もうまくいかないんだよ。何かを作るにしても、まずバンドの状態が安定していなくてはいけない。今回アバスがバンドを去って独自の道を行くということが決まって、やっとすべての問題が解決したという感じだった。音楽にさえ集中していれば良いという状況になったわけさ。俺には歌詞、音楽共に常にたくさんのアイデアがある。イモータルを始めた時からずっと。そもそもイモータルというのは俺が始めたバンドなんだ。90年当時、俺はAmputationというバンドをやっていて、アバスはOld Funeralというバンドをやっていた。彼とは音楽的につながって、それで彼に聞いたんだよ。「俺は新しいバンドを始めたいと思ってる。名前も決めてあるんだ。イモータルだよ。君も参加しないか?」って。そしたら「ぜひやろう。だけどOld Funeralのライヴが残っているので、それが終わったら参加するよ」ということだった。それでデモとEPを作って、Osmoseからファースト・アルバムをリリースした。俺たちは、とにかくユニークでスペシャルなことをやりたかったんだ。歌詞もスペシャルなものにしたかった。それで俺は「ブラシルク」という単語を思いついた。ブリザードであるとか、俺たちが住んでいる、この冷酷で暗くてすべてを破壊するような環境を表す言葉がなかったからね(笑)。山や森が主なインスピレーションだったのさ。俺たちはよく森に行って酒を飲んだりしてた。俺たちは19−20歳くらいで、ブラック・メタルという音楽で、みんなのぶちのめしてやりたかったんだ。ブラック・メタルというサブカルチャーに、知らずのうちにはまり込んでいたんだ。俺はセックス・ピストルズみたいなパンクも大好きだった。だけど彼らの歌詞は政治的だった。アンチ・キリストを謳うバンドも多かったけど、それは俺がやるべき表現だとは感じられなかった。もっと北方の、俺の住んでいる場所と深く関係しているものを作りたかったんだよ。山や森こそが、俺たちのインスピレーションだったんだ。ファースト・アルバムのジャケットも、雪の中でスパイクをつけて、火を吹いているものにした。ああいうジャケは、それまで誰も見たことがないものだったと思うよ。Bathoryや『Scandinavian Metal Attack』、Manowarみたいなマッチョでパワフルなものが、イモータルのインスピレーションだったのさ。あと、VenomやCeltic Frostが持ってた不気味さとかね。歌詞も含めてアイデンティティを確立したかった。こういうものはすべて70年代からのものなのだけど。もちろん俺が子供のころ、ブラック・メタルなんてなかった。10歳のころに聴いていたバンドといえば、KissやBlack Sabbath、Dioとかで、彼らみたいなパワフルなバンドをやりたかったんだ。

川嶋:イモータルの特徴は、他のノルウェーのブラック・メタルとは異なり、ユーモアのセンスを持っていたところだと思います。これは意図的なものだったのでしょうか。

デモナス:何というか、アクシデントでユーモラスになってしまったんだよ。教会の放火などが行われていたころ、ノルウェーで最大のテレビ局の1つであるTV2からモーニング・ショウでのインタビューをやりたいというオファーが来たんだ。彼らは森の中で撮影をしたいということだった。だけど俺たちはやりたくなかったんだよ。商業的なことではなくて、ブラック・メタルをやりたかったわけだし、「ファック・ユー、ファック・エブリバディ」なんていう調子だったしさ(笑)。ところが、「君たちのビデオも撮ってあげる。それをミュージック・ビデオとして使ってもらわないから」と言われてね。当時自分たちでビデオを作る金なんてなかったからさ。で、白黒のビデオにすること、その他内容については俺たちにコントロールさせてくれるという条件で引き受けたんだ。ところが裏切られた。出来上がってみればカラーだし、ふざけた内容だった。あれを見たときは本当にガッカリしたし、「ファック・ユー、なんてことをしてくれたんだ、これはスキャンダルになるぞ!」って思ったものさ。もちろんあの内容をからかう奴もいたし、インターネットであれが広まると、俺たちのことを面白おかしいバンドだと思う奴もいた。面白いものを作ろうなんて、まったく俺たちの意図じゃなかったんだよ(笑)。

川嶋:そうなんですね。ヴェノムなどはわりと面白い面も持ってたじゃないですか。その流れを引き継いでいるのかと思っていたのですが。

デモナス:いや、最初はアクシデントだったのさ。やがて人々が、イモータルの写真やビデオを使って色々なジョークをやるようになってさ。『Benny Hill』とかさ。実は俺、あれは大好きなんだよ。本当に面白い。あれを作ったやつは天才だよ!最初に見たときは「ふざけやがって、俺たちはシリアスなバンドなのに」なんて頭に来たけど(爆笑)。もちろん俺たちはコメディ・グループではない。でも、どうしようもなかったんだよ。人々はイモータルを色々とネタにして。人生において、自虐的なことも大切なものさ。おかげでイモータルに興味を持ってくれた人もいると思う。だけど俺は音楽というものをとてもシリアスに捉えているので、面白おかしいバンドにはなりたいわけではなかったんだよ。

川嶋:歌詞について教えてもらえますか。あなたたちは、先ほども言われたように「ブラシルク」という造語を使ったり、独自の世界観を作り上げていますよね。

デモナス:例えば冬、大地、夏、空、人間みたいな言葉というのは存在しているけれど、俺たちを壊してしまうような環境、ブリザードや過酷で暗い冬みたいなものを表す単語というのはなかった。そういうものを表す単語を、バンドのアイデンティティの1つとして作りたかったんだ。バンド名がある。メイクもしていて音楽やリフ、ドラミングがある。それらが、そのバンドを聴くときに署名として感じられるわけさ。そういうものをきちんと持っているバンドはたくさんいる。Kiss、Black Sabbathにもあった。俺たちも、あらゆる点においてユニークでありたかったんだ。だから「ブラシルク」という単語を作ったんだよ。みんなすぐに興味を持ってくれたよ。「ブラシルクって何なんだ?」って。イモータルでしか使われない単語だからね。俺が考えた言葉だから。本当は俺は神話を作りたかったんだ。だけど残念ながら俺はトールキンじゃなくて、ただのミュージシャンだからさ(笑)。最初の頃からアバスには言ってたんだ、バンド独自の世界を作り上げたいって。アイアン・メイデンのエディみたいな、あれも一つの世界だろ。イモータルにも何かスペシャルなものを作りたかったんだ。それで新しい単語を考えて、過酷な冬、ブリザードなんかについて歌ったんだよ。その世界観について名前が欲しかったんだ。俺たちが書いた曲の世界を、きちんとファンに理解してもらいたい。これこそイモータルだ。サタンについてでもない、ジーザスについてでもない、イモータル独自の世界。イモータルの写真を取るときは、絶対に工業的な建物やビルは映さない。ただ自然と俺たちだけ。オールドスクールで、他に誰もやっていないようなことをやるのさ。とてもシンプルだけどね。インテリジェントな歌詞でもない。冒険についてでもない。大きな物語もない。俺たちの世界を表すのはたった4つの単語。Cold Dark Grim and Timeless。これが「ブラシルク」の意味するところだ。アルバムを何枚か出すうちに、ファンも「ブラシルク」の意味を理解するようになってくれた。ドイツ東部でライヴをやったときに、山を越えてドライブして会場に来たファンがいたんだ。たどり着くのが随分大変だったようで、彼らは「実にブラシルクだった」なんて言ってたよ(笑)。天候がとてもイモータルだったって(笑)。

川嶋:歌詞の中では"Ride"という単語が多用されていますよね。

デモナス:マノウォーだよ。"Three Sons Have I and They ride by my side."(注:「Blood of My Enemies」のフレーズ)とか。パワフルなフレーズだからね。『Into Glory Ride』というアルバムもあるだろ。よし行こう、戦いに行こう、みたいな意味さ。皆殺しにしてやれ、みたいな(笑)。ManowarもBathoryもよく使っていたフレーズだ。よしこれから戦いに行くぞ、みたいな感じで。例えば『Battle in the North』のオープニング曲も、そんな感じの内容だ。この曲はアルバムの冒頭らしい激しい素晴らしい曲だよ。Metallicaもアルバムの最初に速い曲を持ってくるし、Venomもそうだろう。Bathoryも。アルバムの最初にそういう曲を持って来て、リスナーに、「このアルバムは激しくて速いぞ」っていうのを予告するのさ。とにかく"I Ride"というのはパワー・エクスプレッションさ。「ただ殺されるのを待っていないぞ、行って殺ってやる!」みたいな感じの(笑)。

川嶋:今回ニュー・アルバムを作るにあたって、アバスに代わる新メンバーを加入させるという選択はなかったのでしょうか。

デモナス:その必要はなかったよ。俺がヴォーカルやるのは簡単だったしね。俺がすべての歌詞を書いたわけだから。それにイモータルは俺が始めたバンドだ。このタイミングで誰か新しいメンバーを入れるというのは、新たなトラブルになりかねない。残った二人でイモータルを続けられるというのをファンに示すのが最善の選択だったのさ。もちろんアバスは長い間イモータルのフロントマンだったし、彼はフロントマンとして素晴らしかったことは間違いない。だけど、彼がイモータルのすべてであったわけではないんだよ。それはファンもわかってくれると思う。現時点ではまだアルバムから1曲しか公開になっていないから、あれでアルバムの全貌を掴むのは不可能だ。君はアルバムを聴いているからわかると思うけど、アルバムはバラエティに富んでいて、「ノーザン・ケイオス・ゴッズ」みたいな速い曲ばかりじゃないからね。アルバムがリリースされれば、俺がずっとイモータルに大きく貢献していたということも、みんなわかってくれるだろう。俺たちだけで十分やれるとわかっていたから、新しいメンバーを入れるという選択肢はなかったのさ。

川嶋:ベースはピーター・テクレンが弾いているのですよね。

デモナス:ピーターと初めて仕事をしたアルバムは、『At the Heart of Winter』だった。それ以降のアルバムすべてに彼が関わっているからね。彼は『At the Heart of Winter』、『Damned in Black』、『Sons of Northern Darkness』をプロデュースして、『All Shall Fall』ではレコーディングとミックスもやってくれた。だから今回も彼と仕事をするのは当然の成り行きだった。彼はイモータルのことをすべて知っているからね。ピーターは素晴らしいプロデューサーで、ミュージシャンとしても本当に優れている。このアルバムのレコーディングを始めた時に、彼からベースを弾きたいという申し出があったんだ。もちろん反対する理由なんてなかった。彼のプレイは素晴らしかったよ。ブラック・メタルのアルバムで、あんなに素晴らしいベースを聞いたのは初めてだった(笑)。モーターヘッドみたいでさ。彼が弾いたベースを聞いた瞬間から「ワオ!」っていう感じでさ、ぜひ残りも全部頼むということになったんだよ。彼にプロデュースをしてもらうと、いつもイモータルに付加価値をつけてくれるんだ。プリプロの段階では、全部俺がベースを入れていたのだけど。


川嶋:今後ライヴはどのようにするのでしょう。具体的にライヴの予定はあるのですか。

デモナス:今は、とりあえず一歩一歩進んで来た状況だ。まず問題を色々と解決して、曲を書いて、プリプロをやってスタジオに行ってピーターと話した。だけどピーターは色々なプロジェクトで忙しいので、彼の準備が整うまでに時間がかかった。曲を書き始めたのが15年の終わりで、ホルグがスタジオでドラムをレコーディングしたのが17年の1月。それからベルゲンで俺がギターを入れた。とにかく究極のアルバムを作ることに全力を尽くそうということで、ソーシャル・メディアであるとか、過去の問題とか、あらゆる他のことは忘れることにした。とにかくファン、そして俺たち自身を満足させるアルバムを作ることに全力を尽くした。究極のアルバムを作るというのは、イモータルにとってずっとゴールであったからね。前のアルバムを超える作品を作りたいから。人々が何を言おうが、俺たちはこのアルバムを作り上げた。アルバムができると、次はアートワークを考えなくてはいけない。プロモーションをやらなくてはいけない。アルバムのリスニング・セッションもやった。「ノーザン・ケイオス・ゴッズ」が公開になって、今は大量のインタビューに答えなくてはいけない。そんなわけでフェスティヴァルのオファーもいろいろあったのだけど、すべて保留している状況なんだ。「今はライヴのことは忘れて、アルバムをリリースしよう。夏が終わったら、メンバーを見つけてリハーサルを始めよう。」という感じでね。来年にはライヴもやれると思うよ。

川嶋:そもそものブラック・メタルとの出会いは、どのようなものだったのですか。

デモナス:俺はテープトレードをやっていたからSamaelやMayhemのデモなども聴いていた。それより前にBathoryやCeltic Frostもいた。初めて聴いたブラック・メタルということになると、『Scandinavian Metal Attack』に入っていたBathoryだね。もちろんVenomも。俺たちはVenomが大好きなんだ。86年頃だったかな、VenomとExodus、Slayerのビデオがあっただろう。

川嶋:『Ultimate Revenge』ですね

デモナス:そう、『Ultimate Revenge』。それからヘッドバンガーズ・ボールか何かでCeltic Frostのビデオも見た。「Into the Crypts of Rays」だったかな。あれもすごく良かった。Possessedの『Seven Churches』なんかも大好きだった。みんなはあれをデス・メタルだというけど、俺にとってはブラック・メタルさ。本当にダークでイーヴルなアルバムだからね。最も大きなインスピレーションを受けたという意味では、やはりBathoryのファーストかな。当時聴いたときは、あれを完全に理解できたとは思わないけど。何しろとにかくプリミティヴだっただろ。若い頃はテクニカルなプレイに憧れていたし。だけどとにかく魂に染みる作品だった。テクニックなんかよりも、ヴァイブが大切だということを教えてくれたアルバムだよ。イモータルにとって一番大きな影響を与えたバンドがBathoryなんだ。『Under the Sign of the Black Mark』もね。あれには「Enter the Eternal Fire」みたいなエピックな曲が入ってるだろう。あのアルバムは、それ以降のブラック・メタルのスタンダードを定めたものだよね。クオーソンは速い曲だけでなく、イーヴルでエピックなものも書いてみせたのさ。

川嶋:ノルウェーにおけるブラック・メタル・シーンとの関わりは、どのように始まったのですか。

デモナス:俺は随分と早い時期からユーロニモスとコンタクトをとっていたんだ。Mayhemのファースト・デモなんかも持っていたし、俺はテープトレードを熱心にやっていたからね。ユーロニモスはイモータルともサインしたがっていたんだ。彼にはいろいろとプランがあったから、俺たちは結局Osmoseと契約したけれど。アンダーグラウンドの世界では、みんな知り合いだったんだよ。スウェーデンの、Tiamatとかともコンタクトしていたし、フランスのバンドや世界中のアンダーグラウンドのバンドと連絡していた。メタリオンがやっていたSlayer Magazineのようなアンダーグラウンドの雑誌もあって、彼を通じていろいろと繋がったものだよ。ただ、イモータルは一度も宗教的な主張は持っていなかったし、他のバンドとは違う存在だったけれどね。だから教会への放火などにも関わらなかった。あくまで音楽、音楽の持つ闇だけを追求していたんだ。

川嶋:犯罪に手を染めないことで、インナー・サークルの揉め事に巻き込まれたりということはなかったのですか。

デモナス:まったくなかったよ。ヴァーグ・ヴィカネスやユーロニモスとは知り合いで、一緒に育ったようなものだったからね。みんな友達だった。

川嶋:お気に入りのメタルのアルバム3枚を教えてください。

デモナス:難しい質問だけど、答えは簡単でもあるな。エクストリーム・メタル限定?

川嶋:いや、何でも構いません。

デモナス:俺のレコード・コレクションはかなりの量だよ。俺はレコードで音楽を聴くのが好きなんだ。最も重要な作品の1つは、間違いなくBathoryの『Under the Sign of the Black Mark』。それからCeltic Frostの『To Mega Therion』。あとはPossessedの『Seven Churches』。おそらくこの3枚が、インスピレーションという点において、俺にとっての最重要作品だ。

川嶋:ところであなたのステージネームは、どう発音するのが正しいのですか。

デモナス:ノルウェーでは、「デモナス」だね。ノルウェー語で悪魔は「デモン」だから。英語では「ディーモン」だろ。だから英語圏では「ディーモナス」という感じになる。俺も両方使ってるよ(笑)。

川嶋:では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

デモナス:みんながアルバムを気に入ってくれることを期待してるよ。俺たちは、ずっとやってきたことをやっているだけさ。新しいバンドを始めたわけではなく、昔から継続しているわけだからね。ぜひファンにはイモータルを聞き続けて欲しい。


「でもアバスはいなんでしょ?」
イモータルのニュー・アルバムと聞いて、多くの人が最初に思うことはこれだろう。そしてインタビュー内の受け答えからも感じられるとおり、デモナスもそう思われていることを気にしているようだ。しかし何も心配することはない。『ノーザン・ケイオス・ゴッズ』はタイトルからしてイモータル丸出しだが、音楽も歌詞も、100%イモータルである。それも初期のブラック・メタルど真ん中路線。こうやってデモナス色100%の『ノーザン・ケイオス・ゴッズ』と、リフ的にはスラッシュやヘヴィ・メタル色も強かったここ何作かのイモータルのアルバムや、多少ブラック・メタルから逸脱している部分も見受けられるアバス名義の作品を比較してみると、純粋にブラック・メタルの伝統を守ろうとしていたのはデモナスであることが垣間見えて面白い。

 90年代初頭、ノルウェーのブラック・メタルが大きなムーヴメントとなったが、最初に注目を浴びた理由は、確実に音楽ではなく教会への放火や殺人といったスキャンダルであった。故ユーロニモスを中心に、ブラック・メタルは本当に危険な音楽であると喧伝され、実際にMayhemやBurzum、Emperorといったバンドからは死者や逮捕者が出た。ところがイモータルは、そんな危険なシーンの真っ只中にいながら、むしろ「ちょっと面白いバンド」として大きな人気を博すに至った。インターネットを検索すれば、イモータルを元ネタにしたコラや、パロディ・ビデオが大量に見つかる。しかし実際は、本人たちは面白いと思われようなんて思ってもおらず、ちょっとした事故からそんなイメージがついてしまい、それが怪我の功名としてバンドの人気につながっていったわけだから、世の中わからないものである。インタビュー中で語られているTV2による問題作、「Call of the Wintermoon」は最高すぎるので、ぜひネットで探してみてほしい。

 『ノーザン・ケイオス・ゴッズ』で、「でもアバスはいないんでしょ?」という懸念の声は払拭できることだろう。となると、次はライヴだ。ステージに立つのは来年以降とのことだが、あのアバスという強力なキャラクターの穴を、どうやって埋めるのかに注目が集まる。デモナスがギターとヴォーカルを担当して、ヘルプのベーシストを入れるのか。それとも思い切ってヴォーカルをとれるメンバーを探すのか。ノルウェーの有名どころのブラック・メタル・バンドが殆ど来日を果たしている中、いまだイモータルは未知の強豪のまま。ぜひ陣容が整った際には、ここ日本にも来てもらいたいものだ。

取材・文 川嶋未来


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