【インタビュー】ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)『20YEARS, PASSION & RAIN』台風直撃の日比谷野音 結成20周年記念ライブDVD

2018年04月16日 (月) 17:45

|

HMV&BOOKS online - 邦楽・K-POP

THA BLUE HERB が、昨年10月29日 日比谷野外大音楽堂にて開催した結成20周年記念ライブ、日本のヒップホップにおける一つの金字塔となったあの夜の記録がDVDとしてリリースされる。台風22号の直撃という厳しい環境の中、THA BLUE HERB の20年を、そしてオーディエンス自らの20年をフラッシュバックさせた特別な一夜。今回も ILL-BOSSTINO にインタビューを敢行。あの夜の事を存分に語って頂いた。あれだけの壮絶なライブを乗り越えた先に、THA BLUE HERB はどんな未来を描くのだろうか?改めて彼らの未来に期待させられた。

「今日という日が俺たちの歴史の中で語られていく事になるだろう」


--- 雨すごかったですね。映像で見ると改めて...

すごかったですね。俺も映像を見て改めてそう思いました。PA機材とかも結構やばかったんですけど、それでも音だけは止まらなかった。それは本当に救いでしたね。

--- THA BLUE HERB は、「雨=逆境の象徴」として歌ってきた所もあると思うので、雨どころか台風が来たっていうのも、逆境の中を突き進んできた THA BLUE HERB の20年をある意味象徴していたのかなと感じるところもあります。

終わってみればそうやって振り返ることもできますけどね。やってる時はギリギリでした。正直「20年間で1番辛いライブだった」といっても過言じゃないくらい。それは観てた人にとっても同じことが言えるんじゃないかな。

--- 確かに状況は過酷でしたよね。でも僕個人としては、ライブ中全く辛いとは感じていなくて本当に素直に楽しめたんです。むしろ「こんな環境も音楽一つでこんなに楽しくなるんだ」と改めて音楽の力を感じたというか。それは他のお客さんもそうだったんじゃないかと思います。

東京から来てる人も、石垣島から来てる人も、札幌から来てる人も、「ここで引き下がるわけにはいかない」って言う場面でしたからね。俺らももちろんそうでしたし。そこから帰る以外にこの状況から逃れる方法がない、だったら楽しむしかないっていうくらいみんな追い詰められてた。その中で「過酷さを乗り越えた」っていう記憶よりも、「楽しかった」っていう記憶が残ってくれたであれば俺もよかったと思うし、何よりですね。

--- 野音は、数々の伝説が起こってきた場所でもあると思うのですが、実際やってみて特別な何かを感じるところはありましたか?

やる前は他の方々が言うほど野音に対する思い入れは無かったですね。ただ終わった瞬間から、野音って言うキーワードが俺たちのキャリアの中でとても大きなものになった。「今日という日が俺たちの歴史の中で語られていく事になるだろう」とは思いましたね。

--- それは間違いないですよね。

ただ、もしもあの日が秋晴れの気持ちいい夕方だったとしたら、俺たちのライブのクオリティという面ではもっと高かったと思います。なんだかんだあの雨で俺たちも相当乱されてたんですよね。演者にしか気づかない小さなミスもたくさんあったし。自分たちがやってきた音楽っていうものを披露するために用意したステージが野音だったんだけれど、ふたを開けてみれば一小節一小節を乗り越えていく事で精一杯だった。映像としてはかえってシリアスで生身の人間力が全開といった感じだし、結果としては雨も引き立て役になってくれたけどね。

--- なるほど。

LIVE開始前に一瞬止んだんですよ、ただ、始まって早々に降り出して、その後ずっと雨足は衰えなかったですよね。つまりシチュエーションとして雨はずっとそこにあった。ライブの展開としてダークに沈みこむ時も雨だし、MCも雨だし、過去を振り返る時も雨だし、そこから上がっていくのも雨。全部雨なんですよね。でもその雨があることによってそのシーンが何倍にもドラマティックに見える。そういう意味では結果オーライだったなって思います。

--- オーディエンス的にも、あのシチュエーションの中で、あの音と言葉を体験したっていうのは、深く刻まれるものがあると思います。

俺自身、ちゃんとやってきてよかったなって思いましたよ。本当に心も乱されるし、寒いし、手もかじかんでくるし、背中にも雨が入ってくる。結局、いつも通りやってきたことがそこで改めて問われたなって思いますね。それがあったからこそあの状況の中で、ほとんど夢中な状態でもあのクオリティまでもっていく事が出来たんだと思います。

20年間を表現するセットリスト


--- あのライブは THA BLUE HERB の最先端であり、過去にもトバされるようなライブでもあったと思うんです。僕自身、曲ごとに当時の自分がフラッシュバックしてくるような感覚もあったし、同時に今現在最も新しい THA BLUE HERB も感じていた。例えば冒頭で並べられた新旧の2曲「BAD LUCKERZ」(「雨降らば降れ」というリリックが有る)から「AME NI MO MAKEZ」の流れ。そういう対比というか、時間軸の揺り戻しのあるセットリストにとにかくヤラれました。

8月の頭にニューヨークに3週間ぐらい行ってたんですけども、そこでずっと練ってましたね、セットリストは。9月の頭に帰国してまたライブを始めた段階ではもうある程度構想は出来てました。最初に DYE と組んだやりたい曲を全部並べたセットは、とても3時間じゃ収まらなかった。そこから削る作業の方が多かったですね。本当はもっとやりたい曲たくさんあったんですけど、自分たちの20年間を表現する必要最小限まで絞り込んでいく。あれは最小限なんですよ。それぞれ THA BLUE HERB に入ってきた時間も思い入れもみんな違う中で、どうやって自分たちの歴史の一体感を作るかって言うところを考えました。新旧の曲を並べる事によって聴こえてくる新しい感覚の妙っていうのは、俺たちが楽しんで欲しかった事の一つですね。

--- 「MAINLINE」(あきらめなかった奴が掴むのさ)「ALL I DO」(だから言っただろう)「時代は変わる Pt. 1」の流れも熱すぎて拳があがりました。

あの時間帯の雨の量もハンパなかったですからね。そこから「STILL STANDING IN THE BOG」そして「RIGHT ON」。

--- そうなんですよ。「RIGHT ON」終盤のカオスなサウンド展開の中、あの口上 "WE ARE THA BLUE HERB 〜"。鳥肌立ちましたもん。

俺もあそこあたりでやっと、地に足がついた感じでしたね。その段階であと1時間だったんで「ちゃんと楽しまなきゃ」みたいな気持ちになったけど、そこに行くまではかなり必死でしたね。

--- 個人的には、「スクリュードライマー」で完全に開放されたというか、雨が全く気にならなくなった。THA BLUE HERB の世界に引き込まれた感覚があります。

確かに弾みになりましたよね。俺もステージからみんなの雰囲気を見ててそんな感じがしました。あの曲は THA BLUE HERB のライブでやるのは初めてだったし、あそこから「未来世紀日本」「路上」とそこでしか聴けない曲に続いたので、あの場面もとても重要な時間でしたね。

--- あれは DYEさんのミックスですよね。それが野音にハマってたっていうか。すり鉢状のあの空間にサイケデリックなサウンドがグルングルン回ってる感じでした。

「開き直るしかない」って言うお客の気持ちを奮い立たるにはもってこいの曲だったから。結果的にあの曲をあの位置に置いたのはベストでしたね。

--- 雨もそのあたりから、超豪雨になってきたんですよね。

そうそう(笑)。

15分に及ぶこの楽曲「路上」のフルサイズ披露


--- この公演来場者に配布された新曲「”KOTODAMA” TAKES US THERE」に乗せたDVDの序章では、オープン前のドキュメント映像が流れます。一瞬ですが楽屋に飾られたTシャツに焦点があたるシーンがありますよね。

Tシャツにプリントされているのは昔からの仲間、死んだ仲間の写真ですね。実際に生きてたらすごく喜んでくれた仲間だと思う。俺が彼を野音に連れてきたように、お客さんの中にも大切な仲間の魂を一緒に連れてきた人もいるだろうしね。

--- ライブ前のボスさんの姿も多く捉えられていますが、大舞台を前にリラックスしているようにも見えました。

実際みんなの熱気も裏側まで伝わってきてたし、天気の事は心のどこかに引っかかってはいたけど、何よりも楽しかったですね、最初の段階から。ワンマンで、あんだけのお客さんの前でやるのも久しぶりでしたし。そのためにずっとやってたんで。

--- 15分に及ぶこの楽曲「路上」がフルサイズで聴けた事もこのライブのトピックでした。

ここでやらないでいつやるんだって感じでしたよね。「路上」とか「未来世紀日本」はストーリーテリングの曲なので、曲のオチっていうのが1番重要なんです。そのオチがわかっちゃってる人の前でやっても...っていうのが俺の中ではあったんですよね。あの手の曲って1番最初に聴いた時が1番ショックなんで、俺の中では2回目以降は無い。1回目のために作ってる曲です。今までやってこなかったのはそれが理由なんですけど、でも「未来世紀日本」は、日比谷っていう所謂「官公庁」の真ん中でやることによってちょっとしたディストピアみたいな空間になればいいと思ったし、「路上」に関しては長い間みんなが支持してくれている曲でもあるので。あの雨も相まって結果的に凄い事になりましたし。

--- 映像では、この曲をBOSSさんが歌い終えた後、雨が打ち付ける足元、赤のステージライトに照らされた野音のステージが映し出されます。この部分も映像作品として完璧だと思いました。

俺も潤くん(川口潤監督)のあの編集は凄いと思いましたよ。めっちゃハマってましたよね。

特別な演出とゲスト


--- 今回はステージセットも派手でしたよね。最初はシンプルで何もなかったステージ上に、途中で札幌所縁の場所のネオン看板がバーンと。これはまさに20周年ライブだけの演出と言うか。

俺自身はいつも通り1MC1DJでシンプルにやろうと思ってたし、ステージに関してもいつもの照明だけで十分だと思ってたんです。お金も含めてそれなりにかかったんだけど、やっぱり祭りでしたからね。やっておいて良かったと思いました。

--- ゲストとして登場したのは JERRY "KOJI" CHESTNUTS と B.I.G. JOE だけでしたよね。ゲストは同郷・札幌の仲間だけっていう所にも意味深いものを感じました。

本当は客演もゼロでやろうと思ってたんですよね。「1MCだけで3時間やり切った」っていう誰にも覆せない金字塔を作ってやろうと思ってたんです。だけど、あの日の3週間位前に北海道の北見でライブをやった時に、JERRY "KOJI" CHESTNUTS と B.I.G. JOE も来てくれたんです。終わった後、みんなでワイワイやってて、その時に気付いたんです。「それは俺のエゴだな」っていう事に。俺と彼らは本当に20年以上前から遊んでた仲間だし、彼らが出てくれることでやれる曲もあって、お客さんも喜んでくれるはず。そう思った時点で彼らを誘っちゃってたっていうか。やっぱりそうするべきだったと思うし、そうして良かったと思ってます。

20年間やり続けたからこそいけるステージ


--- KRUSHさんとの共作曲「Candle Chant(A Tribute)」も久々でした。個人的には「LIVING IN THE FUTURE」が続けて聴けたのが、めちゃめちゃ熱かったです。この2曲は KRUSHさんとのコラボ作であると同時に、曲同士の関連が強い曲ですよね。

そこに尽きますね。あの並びは最初の段階から出来てました。20年もあればきっと、みんな大切な誰かの死を見送ったりしているわけじゃないですか。と同時に「LIVING IN THE FUTURE」みたいな世界観の中で生きている人もいる。順序は「死から生」なのか「生から死」なのかわからないけれど、どっちにしても、あの2曲で語られている事・表現に、俺自身も挑戦を続けてきた20年でもある。お客さんにとっての20年っていうのも同じだったと思いますし。だからあの時間帯で表現した事っていうのは、20年間やり続けたからこそいけるステージだったと思いますね。

--- 本当にそう思います。そして最終的に「MY LOVE TOWNS」「未来は俺等の手の中」「20 YEARS, PASSION & PAIN」の流れに続いていく。それこそ20年を集約しているようでした。

本当ですよね。

--- 「20 YEARS, PASSION & PAIN」のあの祝祭感ある1音目が鳴った瞬間に涙流したお客さんも多かったと思います。

本当にハマりましたよね、あのトラックは。あの場所で、あの時間帯に鳴らしたいっていう思いで作った曲だから。こちらから見える景色も美しかったですよ。

--- 「AND AGAIN」が、映画のエンドロールみたいな役割で、本当に壮大な1本の映画を観たような感覚でチルしました。

そうですね。

やっちゃダメな事なんて無かった


--- そこで幕が下りたような印象でしたが、その後で「この夜だけが(1996年ヴァージョン)」の音源をステージでかけるという。THA BLUE HERB って、作品にもライブにも、完璧性みたいなものが貫かれていて、これまでだったら、ステージでただ音源を流すみたいなことは絶対にやらなかったことだと思うんですよ。

それは「お客さんに楽しんで欲しい」っていう一心ですよね、本当に。「音」と「言葉」っていう俺たちが持っている唯一のものを全部出しきって楽しんでもらおう。その日だけしか出来ない事をやろう。そう考えた時にやっちゃダメな事なんて俺の中には無かった。ましてやあの曲は自分たちにとって1番最初に作った曲だし、そこから現在までが繋がってる。やっぱりやって良かったと思いますね。

--- それで最終的には「この夜だけは」のリメイク版で「オレは譲れやしない この夜だけは」とバッチリ終わっていく。

一度しかないあの場所で「この夜だけは」っていう刹那的な意味合いも感じて貰えたと思います。俺たちがこの20年の間にいろんな場所でみんなと過ごしてきた場面が想起される曲でもあるんで、あの曲で終わる以外のシナリオは考えられなかったですね。

--- 終わった後のボスさんも満足の極みといった表情でした。

まぁ安心しましたよ、最後まで行けた事で。本当に過酷でしたからね。

20年目にして得た感覚としては、あれ以上のものは無かった


--- 直後に感じていた事、今感じている事に変化はありますか?

基本は変わらないですね。あれだけの過酷な状況であれだけの表現ができたっていう事は自信にもなったし。20年目にして得た感覚としては、あれ以上のものは無かったと思います。俺たちが20年間やってきた事、それは「今を楽しもう」っていうメッセージでもあったので、それをお客さんも含め、あれ程の悪天候の中でみんなで実現できた事が1番大きかったと思いますね。

--- ブラフマンの日本武道館ライブの後には、「何というか、心の中にしぶとく残ってた、あの野音の達成感が遂に消え去った夜だった。またゼロから始まる。頂上は高く遠い。」と綴られています。こうやって THA BLUE HERB は打ち立てた金字塔を壊して新しいものを積み上げていくんだな、更新していくんだなと感じさせる象徴的な言葉だったと思います。

そうありたいと思うし、そうじゃなきゃダメだと思うし、きっとそうなっていくと思う。

--- そうなると PHASE 5 に期待が。

野音に関しては、20年間やり続けてきた中で出会った方々にありがとうございましたっていうフィーリングだったんですよね。そういう方々全員に来て欲しい、最近は来てなかった人にも来てほしいっていう、ある意味ご祝儀的な場だったし、その場所で一つの結果を出す事も出来た。この次は、いわゆるご祝儀的な事は出来ないし、やっぱり自分たちが「いい曲を作る」っていう事以外は、この物語を続けていく術が無いんですよね。逆にそれをやり続けていれば、自ずとストーリーは続いていくと思っているので、このDVDの発売後しばらくはそれに向けてやっていくつもりですね。またいい曲を書いてみんなに来て貰えるように頑張りますよ、俺も。

--- この大きなヤマを乗り越えた先にある THA BLUE HERB っていうのに凄く期待させられます。

お楽しみにって感じだよ。俺も自分自身で楽しみだし。

--- 本当に楽しみにしています。今日はありがとうございました。


インタビュー・文:松井剛(HMV&BOOKS online)


作品情報


THA BLUE HERB (ザ・ブルーハーブ)
DVD『20YEARS, PASSION & RAIN』
THA BLUE HERB RECORDINGS
TBHR-DVD-008
¥4,167(税抜)
2018年04月11日(水)発売

収録時間: 3時間15分
監督: 川口潤
<先着特典>
・ステッカー
※特典は無くなり次第終了となります。ご購入前に必ず商品ページにて特典の有無をご確認下さい。
<初回生産分のみ>
・デジトールケース仕様
※特典は無くなり次第終了となります。ご購入前に必ず商品ページにて特典の有無をご確認下さい。

ご予約はこちら

20YEARS, PASSION & RAIN

DVD

20YEARS, PASSION & RAIN

THA BLUE HERB

価格(税込) : ¥4,500

会員価格(税込) : ¥3,915

まとめ買い価格(税込) : ¥3,555

発売日: 2018年04月11日



最新EP

ご購入はこちら

愛別 EP

CD

愛別 EP

THA BLUE HERB

価格(税込) : ¥1,296

会員価格(税込) : ¥1,192

まとめ買い価格(税込) : ¥1,102

発売日: 2017年08月23日


20年を繋ぐ初の公式MIX CD

ご購入はこちら

THA GREAT ADVENTURE -Mixed by DJ DYE

CD

THA GREAT ADVENTURE -Mixed by DJ DYE

THA BLUE HERB

価格(税込) : ¥3,240

会員価格(税込) : ¥2,981

まとめ買い価格(税込) : ¥2,754

発売日: 2017年07月26日

シングル(※アルバム未収録の重要楽曲だらけ)


%%message%%

最新ニュース・情報を受け取る

THA BLUE HERBに関連するニュース

HMV&BOOKS online最新ニュース

最新ニュース一覧を見る