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【インタビュー】MEMORIAM / Karl Willetts
2018年03月23日 (金) 19:15
|HMV&BOOKS online - ロック

16年、世界中のデス・メタル・ファンから惜しまれつつ解散してしまったイギリスのレジェンド、Bolt Thrower。そのヴォーカリストであったカール・ウィレッツが、Benediction、Sacrilegeのメンバーらと立ち上げたのが、このメモリアムである!セカンド・アルバム『ザ・サイレント・ヴィジル』がリリースになるということで、カールに話を聞いてみた。
川嶋未来(以下、川嶋):ニュー・アルバム『ザ・サイレント・ヴィジル』がリリースになりますが、昨年のデビュー作『For the Fallen』と比べてどのような点が変化、進歩していると思いますか。
カール:実を言うと、デビュー・アルバムの音質に関しては少々不満があったんだ。あまりにディジタル臭すぎるというか。なので、今回のアルバムではその点に注意をした。もっとナチュラルなコンプレッションがかかるように、もっとオーガニックなサウンドになるようにね。曲に関しては、多少メロディックになった部分もあると思う。だけど個人的にはやっぱり一番の変化は歌詞だよ。Bolt Thrower時代から、戦争について歌うというのがトレードマークになっていたよね。前作でも戦争以外のトピックを扱ったものが何曲かあったけれど、今回の歌詞はもっとずっとバラエティに富んでいる。反人種差別や反ファシズム。将来に対する不安。これらは今の世界情勢を反映してのことだよ。それから次元についての歌詞もある。これは人の死というものに触れて、大きな衝撃を受けて書いたんだ。
川嶋:前作から約1年でもうセカンド・アルバムが完成ということですが、Bolt Throwerが05年以降10年以上新作を発表しなかったことを考えると、これは物凄いペースですよね。
カール:そうなんだよ(笑)。俺ももう50を過ぎて、人生というのは短いんだと感じはじめてさ(笑)。このバンドは古くからよく知っている人間が集まっているので、それでインスピレーションやクリエイティヴィティというものが爆発しているという部分があるのだと思う。俺としては5年に1枚しかアルバムを出さないというのではなくて、もっとどんどん作品を発表していきたいと思っているんだ。だからBolt Throwerの頃とは違って、あまり深く考え過ぎないようにしている。もうすでに次のアルバムのアイデアも湧いてきているんだよ。
川嶋:曲は主に誰が書いているのですか。曲を作るさいに、Bolt Throwerっぽいものにしよう、あるいはBolt Throwerとは違うものにしようという意図は働かせているのでしょうか。
カール:俺たちは確かにBolt ThrowerとBenedictionのメンバーで構成されているけれども、決してその2つのバンドが過去にやったことをなぞっているわけではない。だけど一方で、Bolt Throwerっぽくならないように、故意に変えているわけでもないよ。曲は主にギターのスコット・フェアファックスが書いているんだ。彼は他のメンバーより10歳くらい若くて、多少俺たちとはジェネレーションが違う。彼がドラムマシンでデモを作ってきて、それを何度か聞いた上でどの曲、リフをやるか決めて、それでリハーサルをやるという感じでやっているよ。曲を作っていく中で、自然とBolt ThrowerやBenedictionっぽい部分が出て来ることもあると思う。でもそれは決して故意にやっていることではないんだ。

カール:良い質問だね。アートワークはDan Seagraveによるものだ。彼は90年代に多くのデス・メタルのアートワークを手掛けているということもあって、彼に描いてもらっているんだ。Benedictionもやっているし。実は俺は、次のアルバムを含めて3部作にしようと思っているんだ。前回の『For the Fallen』では、アートワークの中心に棺があった。やはり今回も棺があるのだけど、そこからは木のようなものが出てきている。木のようなのだけど、それは生きているように見える。そして向こう側には光が見えるだろ。これが生命というものが向かっていくところを表現しているのさ。次のアルバムでは、これの続きが描かれる予定だよ。
川嶋:あなたの音楽的バックグラウンドはどのようなものなのでしょう。初めて接したエクストリームな音楽は何だったのですか。メタルだったのでしょうか。それともパンクでしょうか。
カール:これも良い質問だね(笑)。実を言うと、俺は15-6歳の頃、オルタナティヴ・パンクにハマったんだ。Sex Gang ChildrenやSister of Mercy、Alien Sex Fiendとかね。これをゴスだと言う人もいるけれど、俺にとってはオルタナティヴ・パンクだった。その後、いわゆるアナーコ・パンクを発見した。Antisect、Flux of Pink Indians、Hellbastard、Axegrinder。それからもちろんSacrilege。Sacrilegeのライヴを見て、これこそ俺がやりたい音楽だと思ったんだ。俺はバーミンガム出身で、バーミンガムというのはアナーコ・パンクがとても盛んな地なんだよ。Napalm Deathもバーミンガム出身だし。あとVenomなども聴いたし、アメリカのMetallica、Slayer、Possessed、ヨーロッパ大陸からはHellhammer、Celtic Forstなどを聴くようになった。スウェーデンのデス・メタルとかもね。というわけで、俺の初めてのエクストリームな音楽というのは、オルタナティヴ・パンクなんだ。Iron MaidenやJudas Priestではなくて(笑)。

川嶋:Venomと言うと、おそらく88年頃、日本の雑誌で紹介されていたのを読んだのが、Bolt Throwerというバンドを知ったきっかけでした。その紹介が、「デス・メタル版Venom」か、「グラインドコア版Venom」というようなものだった記憶があります。これはおそらくファースト・アルバム『In Battle There Is No Law』におけるあなたの声が、クロノスに近かったからそういう表現が使われたのだと思うのですが、実際にクロノスからの影響はあったのでしょうか。
カール:(笑)。Venomは聴いていたけれど、ヴォーカリストとして特に影響を受けていたということはないよ。初期のデモやPeel Sessionまでは、Alan Westという別のヴォーカリストが歌っていたんだ。そのあと俺が加入して、非常に低予算でデビュー作を急いで録ったんだよね。Venomも初期の作品は好きだった。今はすっかり別バンドだけど。よくあるパターンだけど(笑)。
川嶋:ファーストが最高というバンドは多いですよね。
カール:俺はエリート主義でもスノッブでもないけどさ、やっぱり1stこそが最高というバンドは多いよ(笑)。
川嶋:一方でBolt Throwerはそれが無いですよね。どれかアルバム1枚が好きなら、すべてのアルバムを気に入るというバンドだと思いますが。
カール:そうだね。Bolt Throwerもアルバムによって多少の違いはあるけれど、決して大きな逸脱はしていない。だから初期からラストのアルバムまですべて好きというファンは多いと思う。
川嶋:AmebixとVenomを比較する人も多いですが、以前Amebixのメンバーと話したときに、Venomからの影響は皆無だと言っていました。結局あの歌い方って、クロノスがどうということではなく、イギリス的な発音、発声が共通しているとういだけなのではないかと思っているのですが。
カール:そうだと思うよ。AmebixとVenomを比べたがる人は多いけど、音楽的にはまったく違うよね。
川嶋:あなたがBolt Throwerに加入したころ、Bolt Throwerをどのようなスタイルのバンドだと捉えていましたか。スラッシュ・メタルなのか、デス・メタル、あるいはパンク・バンドでしょうか。
カール:スラッシュ・メタル、デス・メタル、グラインドコア。あるいはウォー・メタルかな(笑)。あまりどうカテゴライズするということは気にしていなかったよ。スラッシュからアナーコ・パンクまで、すべて混ぜ合わせるのがBolt Throwerの得意技だったし、Bolt ThrowerはBolt Throwerだという感じだった。
川嶋:セカンド・アルバム『Realm of Chaos』で大きくサウンドが変わったという印象だったのですが、あれは意識して変化をしたのでしょうか。
カール:あそこから大きく音やコンセプト、ヴィジュアル的にも変わったのは間違いないと思う。Earacheと契約して、レコーディングの予算も十分に増えたし、色々なデス・メタルのバンドと一緒にステージをやる機会も多かったしね。個人的にも、あのアルバムから俺が歌詞を書くようになったというのもある。
川嶋:お好きなヴォーカリストは誰ですか。
カール:メタルのシンガーでいうと、トム・G・ウォリアーだね。彼は素晴らしいシンガーだよ。それからもちろんSacrilegeのリンダ。あとカム・リー。
川嶋:Massacreですね。
カール:そう。実はカム・リーとは一緒にプロジェクトもやっているんだよ。Troikadonという名前なんだけど、俺とカムとデイヴ・イングラム(元Benediction、Bolt Thrower等)、つまり3人のヴォーカリストが集まってやっているんだ(笑)。ライヴなどはやる予定がなくて、完全に音源だけのプロジェクトなのだけど。
川嶋:お気に入りのアルバムを3枚教えてください。メタルでもパンクでも構いません。
カール:やはり一番に挙げなくてはいけないのは、Sacrilegeの『Behind the Realm of Madness』。Sacrilegeこそが俺が今ここにいる理由だからね。それからAntisectの『In Darkness, There Is No Choice』。これが2番目のチョイス(笑)。(タイトルとかけたシャレ)。それから、やっぱりAxegrinderの『The Rise of the Serpent Men』。Axegrinderの「War Machine」は、ずっとカヴァーしたいと思っているんだ。次のアルバムでカヴァーするかもしれない。
川嶋:DischargeやGBH、The Exploitedといったイギリスのハードコアのバンドの名前が挙がりませんが、このあたりはあまりお好きではなかったのでしょうか。
カール:もちろんDischargeやGBH、The Exploitedとかも好きだったよ。GBHはバーミンガム出身だしね。だけどハードコア・パンクは、アナーコ・パンクほどは夢中にならなかったな。
川嶋:現在のデス・メタル・シーンについてはどのように思いますか。
カール:20年くらい前にブラック・メタルが登場して、デス・メタル・シーンを侵食してしまったよね。あのとき俺は本当にブラック・メタルが大嫌いでならなかった。非常にノイジーで、アイデンティティ的にも俺が好きな音楽とは真反対だった。まあ今でもブラック・メタルというものはあまり好きではないのだけど、しかし俺のフェイヴァリットでないものも、誰かのフェイヴァリットであるのだと思うようになったんだ。グルーヴ・メタルやメタルコアについても同じ。俺が気に入らなくても、それを気に入る人間はいる。俺も年をとってきて、そういう風に物事を受け入れられるようになった(笑)。そういう意味で、今のエクストリーム・メタルのシーンの在り方というのは、とてもヘルシーだと思うよ。
川嶋:残念ながらBolt Throwerは日本でプレイする機会がありませんでした。
カール:そうなんだよ!実は15年か16年の頃、日本でプレイするという話もあったんだ。
川嶋:確かその頃友人がBolt Throwerを日本に呼ぶかもしれないという話をしていた記憶があります。
カール:15年だったかな、だけどその時カナダのフェスに出演しなくてはいけないなど、スケジュール的に忙しくて実現しなかった。オーストラリアには行けたんだけどね。日本には16年にはという風に考えていたんだけど、残念ながら歴史は終わってしまった。(注:ドラマーが急逝。)
川嶋:私はBolt Throwerのライヴを見たことをいつも友人たちに自慢していますよ!
カール:君が責任を持って、メモリアムを日本に呼ぶようみんなに働きかけてくれよ(笑)!!
川嶋:では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
カール:サポートしてくれてありがとう。俺の人生において、日本でプレイするというのは大きな目標なんだ。君が責任を持ってメモリアムを呼んでくれると思うけど(笑)。

そのマーティンへの追悼として、カール・ウィッツが始めたバンドがこのメモリアムである。ドラムは94年までBolt Throwerにいたアンディ・ホエール。ギターのスコット・フェアファックスとベースのフランク・ヒーリーはBenedictionのメンバーで、フランクはSacrilegeにも在籍している。まあこのメンツを見ただけで、UKデス・メタル・ファンはよだれが出ることだろう。Bolt Throwerとして最後にリリースしたアルバムは、05年の『Those Once Loyal』が最後。その後は「『Those Once Loyal』を超える作品が作れない」ということで、10年以上アルバムを発表しないまま解散に至ってしまった。一方こちらのメモリアムは16年に結成されたばかりだが、この『ザ・サイレント・ヴィジル』がすでに2枚目という、Bolt Thrower時代の寡作ぶりがウソであるかのような活動ペースを誇っている。
Bolt Throwerもメモリアムも明らかに、例えばアメリカあたりのデス・メタルとは違ったサウンドを持っている。先ほど「渋い」と表現をしたが、とにかく暗く湿った独特のサウンドだ。これは明らかにルーツの違いだろう。今回のインタビューからもわかるとおり、その根底にあるのはスラッシュ・メタルよりも、クラストやアナーコ・パンクなのだ。80年代のイギリスにも、パンクとメタルの融合、いわゆるクロスオーヴァーが起こっていた。だが、そのサウンドは、D.R.I.やS.O.D.といったアメリカ産のバンドとはまったく異質な、ダークでヘヴィなものであった。ぜひカールがルーツとして挙げているバンドはチェックしてみてほしい。Axegrinderは、アナーコ・パンクをやっていた人たちが、Celtic Frostみたいなのをやろうとして結成されたバンド。カールも挙げている彼らの唯一のアルバム『Rise of the Serpent Men』(89年)ではAmebix色が強く出ているが、87年のデモ『Grind Your Enemy』は、かなりのトム・G・ウォリアーっぷりだ。ちなみに結局製作されなかったセカンド・アルバムは、『Killing Technology』期のVoivod風になる予定だったらしい。Sacrilegeはイギリスを代表するクロスオーヴァーのバンドだが、彼女たちもパンク・バンドとしてスタートし、やがてSlayerなどのスラッシュ・メタルから大きな影響を受けていく。Candlemassのファンでもあったようで、その叙情性はまさにヨーロピアン・メタルである。Hellbastardは「クラスト」という言葉を初めて取り入れたバンドとして知られているが、彼らもやはりパンク出身ながら、VenomやHellhammerに影響されメタル色を強めていった。この辺のバンドは、生粋のメタル・ファンであっても楽しめると思うので、メモリアム、Bolt Throwerとあわせて聴いてみてほしい。(それにしてもHellhammer/Celtic Frostの影響力というのは凄まじいものだ!)
Bolt Throwerでは叶わなかった来日公演。ぜひともメモリアムとして実現してもらいたいところである。
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