【コラム】Rakshasa / 崇

2018年03月19日 (月) 21:00

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Rakshasa HMVコラム第五回 崇編

ローチケHMV コラムを御覧の皆様、こんにちは。初めましての皆様は初めまして。
Rakshasa、Keyの崇です。

ライブ中端っこの方で鍵盤弾きながらクネクネしている人です。
Rakshasaルール付きリレーコラムも第五回になりましたね。
「前の書き手が次の書き手に対して普段聴かなそうなメタルジャンルを指定、そのジャンルのアルバムを一枚レビューする」と言うものです。

このルールは僕にとって色々な意味でクリティカルなんですよ。何故ならRakshasa メンバー6名の中で最もメタルから遠い存在だからです。

随分と長いこと音楽をやっていますが、メタルへの入れ込み具合や経験値…「メタル純度」とでもいいましょうか。メンバーの中で最も若い橘花君にも突き放されています。勉強中、修行中です。

でも物は捉え方ですよね!メタル純度の低い僕だからこそという視点があるはずです。何を指定されようとも新鮮!選り好みせずになんでも楽しめるのは僕の素敵なところの一つだと思います。んん〜!!

はい。そんな僕に指定されたジャンルは「ジェント」です。
おっと。独特なのが来ましたね。聞きなれない人もいるのでは?

いきなりアルバムのレビューに突撃する気でいましたが、大変に音楽的特徴を持つジャンルですので、少し僕と一緒にお勉強しましょう。このジャンルは「知っている方が深く楽しめる」類の音楽だと思います。

さて、そもそもジェント(Djent )とは何故ジェントと言うんでしょうね?何なんでしょう?ジェントって。 これは諸説あるようですが、とあるギタリストが造語として生み出した擬声語、擬音語のこととされています。「ガツンとした辛さ!」という表現があるとすればその「ガツン」の部分です。

「ジェントな音」「ものすごくジェンティー」…日本語ではないので少しピンときませんが、こんな風に用いられていたようです。

本来意味のある言葉ではないということですね。皆が認知したルートもネットを媒介した口コミの様なものとされています。

そんなふわふわしたところから生まれた言葉です。これが一つの音楽のサブジャンルとして定着しているというのですから、相応の理由が存在します。上述したとおり音楽的に大変特徴があるジャンルなのです。

音楽ジャンルと言うのはそのまま音楽的な特徴が重視されるものもあれば、精神的な部分や文化的な側面が重要とされる物もあり、どうしても曖昧な部分や個人の感性に委ねられたりする部分が出てきますが、ジェントに関しては完全に前者だと思います。

大きく3つの特徴があるのです。
「音」「リズム」「フレーズ」ですね。この組み合わせでジェントの音楽的特徴が見えてきます。

まずは音。
これはジェントの語源になった部分ですから最も重要な部分の一つでしょう。ジェントな音…「重く、低く、鋭い音」と言い換えれば良いでしょうか。基本的な音域はベーシックなエレキギターの最低音のさらに下を突きます。 専用のチューニングや多弦ギターが当たり前とされる上、鋭さはそのままに奏法で「高い音の成分」を積極的に殺していくほどです。

また、語源とは離れますがソフトシンセ等エフェクティブな「飛び道具」も使われます。

次にリズム。
ジェントをジェントたらしめる大変重要な部分ですね。「変則的」、「トリッキー」という言葉が最も適しているかと思います。非常に複雑で高度な部分も出てきます。

例えが難しいですが、「1,2,3,1,2,3,…」と数えてしっくり来るリズムと「1,2,3,4,1,2,3,4,…」と数えてしっ くり来るリズムが同時に演奏されたとしましょう。

この2つはポイントになる部分がズレているので同時に演奏すればそれはものすごい違和感を覚えますが、この2つのリズムは一定の周期で必ず一致するポイントが出てくるので最終的にはピタリとあってしまうのです。

…ジェントにはこういった変則さが当たり前のようにボコボコ出てくるんですね。あくまで上のは一例であって、色々なパターンが出てきたりします。

最後はフレーズ。
これは少しリズムと被る部分もありますが、ここも大変特徴的です。

もちろん例外はありますが、ジェントは基本的にメロディアスなリフやフレーズは少ない傾向にあります。旋律で聴かせる様な部分がかなり控えめです。(但し出るとこはでます。)

その代わりにリズムのコンビネーションや噛み合わせ、アクセントで聴かせます。ここが基本になりますから、その他の旋律的な部分が大変際立つようになります。

また、ギターソロ等旋律的な部分が求められる局面の場合は、印象派音楽のような独特なフレーズが多く出てきたりします。少し乱暴な言い方になりますが「ものすごく自由」です。こちらは非常に旋律的なケースもあり、「ジェント同士の差」を表す一つの指標になるかもしれませんね。

個人的にはジャズなどにも通ずる部分だと思います。リズムという要素をベースに作り上げる無骨さと、基本にとらわれないプログレッシブさの同居がジェント独特の世界観を作り出しているといえるでしょう。

こんなところでしょうか!

かな〜り長くなりましたが、是非頭の片隅に入れて置いて欲しい部分です。立ち上がりが曖昧なのにここまではっきりとした特徴を持つジャンルは稀なのでは? こういった要素をベースにバンドごとの個性が乗っかって来るのですから、わあなにこれ面白い…!

ではアルバムの方に移りましょう。お待たせしました。
僕が紹介するのはMeshuggahの"CHAOSPHERE"

「ジェントを産み出したのはMeshuggah」という説が存在するほど代表的なバンドです。フレーズの起点をずらして「正しい拍子でも変則的に聴かせる技」を多用する印象。"CHAOSPHERE" はその3rdアルバムに当たります。なんと今から20年も前の作品です。

他のアルバムを差し置いてCHAOSPHEREを選んだのは、上述した「ジェントの音楽的特徴」が最もダイレクトに伝わってくるからに他なりません。前後のアルバムと比べて無骨さが際立ちますが、それゆえにわかりやすく、またストレートに旨みが味わえる作品だと思います。

さて、そんな本アルバムですが、極めてジェントな作品故に大変一貫性があります。
とにもかくにも「鋭い」のです。1曲目Concatenation からボーナスを除いた最終曲Elastic まで、真っ直ぐに切り刻むようなフレーズが、あの手この手でフェイントをかけながら何度も迫って来ます。


初聴では混乱しか生みださないような変則的リズムが、完全な統制を持って掻き鳴らされ続けるというのは想像以上の聴き応えです。

唯一ミドルテンポと言える4曲目Neurotica以外は徹底してこの調子で演奏されるので、通しで聞いていくうちに自然と思考停止状態になるのを感じるほどです。頭がジェントに染まっていく……

バラエティに富んでいる…とはいえないでしょうが、しかし曲ごとの差はしっかりあります。特に7曲目のThe Exquisite Machinery of Tortureは囁く様なボイスとシャウトのメリハリが大変雰囲気を出していてお気に入りです。頭がジェントに染まっていく……

また、このアルバムには後のMeshuggahの実験的、前衛的な作風の走りを感じさせる様な部分も出てきます。まさか曲の締めに「一定のリズムで54回同じ音を鳴らす」なんて誰が思いつくでしょうか!

特にElasticは度肝を抜かれること間違いありません。ここに関してはネタバレしたくないので是非聞いてみてほしいところです。壊れたのかと思いましたもん。そして同じように思った方はきっといるはず…!!

ですが絶対に心を揺り動かされますので、音を使った芸術という意味ではまさに大成功と言えるのではないでしょうか。僕は凄く揺れました。それはもう不安になるくらいに。(おっと!前衛的と言えば僕このアルバムのPV凄く好きなんですよ! すごく前衛的だと思いますね!最高です!!)

短絡的かもしれませんが"CHAOSPHERE" とはChaos(無秩序)とSphere(球)を一つにした造語だと邪推しています。

球体って完全に整った形ですよね。どこから見ても円です。丸です。
"CHAOSPHERE" はトリッキーな部分が怒涛の様に押しかけてきますから、初めこそ無秩序に感じますが、頭でも振ってみればわかるように必ずしっくり来るように出来ています。無秩序どころかバッチリ整合しているのです。

ジェントな美味しさだけでなく、練りに練られた楽曲と鉄の演奏で、「相反するもの同士を結びつける」という一つの芸術の完成例を垣間見れる…そんなアルバムについたタイトルが"CHAOSPHERE" 。こう考えると滅茶苦茶に深く感じますね。やだ…素敵。

ここまで穿った見方をするのもどうかと思いますが、本当に芸術的な部分すら見えてくるほどの破壊力を感じるアルバムです。本当に完成されていると思います。ジャンルがジャンルですから好みは分かれそうですが、是非好き嫌いせずに聴いてみてほしいですね!

…はい、僕のレビューはここで終わりです。できるだけ専門用語等を使わないようにしたつもりですが、いかがでしたか? 僕はメタル純度の高まりを感じていますよ!

大変お待たせしました。
次は僕らRakshasaのボス、夜摩さんにお願いします。

ジャンルは「ドローンメタル」で! これは苦戦してくれると思っています。

Rakshasa / 崇



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