【インタビュー】MINISTRY

2018年03月09日 (金) 21:15

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ミニストリーのニュー・アルバム『AmeriKKKant』(アメリカント)について、アル・ジュールゲンセンはこう語る。

「このアルバムは世界に向けた鏡だ。“見ろ、これがお前のなりたかった姿なのか?それでいいのか?”ってね」

盟友マイク・スカッシアを失い、一時はバンド解散も考えたというアルだが、さらなる怒りを込めて約5年ぶりの新作で復活。激烈なインダストリアル・メタルに乗せて、ミニストリーが時代をシュートする。

――『AmeriKKKant』はどんなアルバムでしょうか?

現代を俺の視点から切り取ったスナップショットだよ。音楽のアルバムというより、フォト・アルバムに近いかもね。俺のことを“ミュージシャン”や“アーティスト”とは考えないでくれ。“フォトグラファー”と考えてみて欲しいんだ。俺はカメラで自分の周囲のスナップ写真を撮影する。それはミニストリーのどのアルバムにも当てはまることだ。『詩編69』(1992)もそうだった。オールドスクールなポラロイド写真だ。そして自分の周りだけでなく、自撮りをすることもある。『フィルス・ピッグ』(1996)はセルフィーだ。ドラッグや人間関係でボロボロになっている自分自身を捉えたアルバムだった。俺はフォトグラファーがそうするように、自分なりの解釈を込めて被写体を撮影する。そして、アルバムを聴いたリスナーがそれぞれの解釈をするんだ。彼らから受けるフィードバックはいつでも興味深いものだ。世界中のファンが『AmeriKKKant』にどんな反応をするか、楽しみにしているよ。

――2012年にギタリストのマイク・スカッシアが亡くなって、初めて作ったアルバムが『AmeriKKKant』となります。お悔やみ申し上げます。

マイクがいなくなったのは精神的に大きな痛手だった。彼は俺の兄弟みたいなものだったし、ミニストリーはもう終わりだと思ったときもあった。でも人生は続いていく。いずれ宇宙の道筋のどこかでマイクと再び会えると信じているよ。その時を楽しみにしている。

――何がミニストリー解散を撤回させたのですか?

世界の流れだ。マイクが亡くなったとき、世界が止まったかと思った。何も考えられなかったんだ。でも俺たちは生き続け、戦い続けなければならないと気付いた。現在の社会情勢について、黙っていることが出来なかったんだ。ファック、ふざけるなよ。ちょっと言わせてくれ...と思った。マイクがいないからって沈黙するのは、彼のためにも正しくないと考えたんだ。俺はカントリー・アルバムも作ったし、ブルース・アルバム、サージカル・メス・マシーンのアルバムも作ってきた。自分自身と自分の周囲に起こっていることを、大声で主張せずにいられないんだ。

――2016年にサージカル・メス・マシーンのアルバム『Surgical Meth Machine』を発表したとき、あなたはミニストリーとレヴォルティング・コックス、ラードの3プロジェクトでのアルバムが半分ずつ出来上がっていると語っていましたが、その中でミニストリーが最初に完成したのは何故ですか?

現在の社会情勢を考えて、最もタイムリーな話題であり、早く世に出すべきだと考えたのがミニストリーのアルバムだったんだ。俺が「さあ、ミニストリーのアルバムを出すぞ」と決めたわけではない。時代がミニストリーを求めていたんだ。もちろん、それぞれのバンドのメンバーのスケジュール調整も理由のひとつだった。ジェロ・ビアフラ(元デッド・ケネディーズ)は2017年ずっと別のバンドでツアーをしていたし、ラードに割ける時間がなかったんだ。でもジェロとは既に6曲を書いたし、なんとか完成させたいね。とはいっても今度は俺がミニストリーのツアーで忙しいから、人生なかなかうまくいかないものだ(苦笑)。

――『ハウジズ・オブ・ザ・モーレ』(2004)、『リオ・グランデ・ブラッド』(2006)、『ザ・ラスト・サッカー』(2007)は“ジョージ・W・ブッシュ三部作”と呼ばれますが、『AmeriKKKant』は“ドナルド・トランプ・サーガ”の第1作といえるでしょうか?まだ彼の任期はあと3年ありますが...。

現代社会をテーマにしているし、トランプは当然題材のひとつとして描かれているけど、『AmeriKKKant』は決して“反トランプ・アルバム”ではない。別に「トランプ死ね」とか、そんな幼稚なことを主張しているのではないんだ。確かにトランプはブタだよ?でもトランプがチーズバーガーを食べたとか、誰か女性の尻を触ったとか、そんなことは本題ではない。『AmeriKKKant』は“反トランプ”ではなく、 “反・トランプに指揮権を渡してしまった社会”なアルバムなんだ。インターネットのおかげで“情報化社会”といわれているけど、実際はフェイクニュースとかyoutubeの猫がピアノを弾いている映像とか、ちっとも情報化されていなかったりする。ジョークとしか思えない大統領、1%の富裕層と99%の貧困層... この世界が今、最悪な状況にあることは明らかだ。こんな状況が続く限り、俺は声を大にして主張を続けるよ。それがミニストリーになるかサージカル・メス・マシーンになるか、また別のバンドやプロジェクトになるかは判らない。とにかく俺は黙って泣き寝入りをするつもりはないんだ。


――「TV5-4chan」という曲がありますが、あなたは4chan(インターネットの英語匿名掲示板)は見ますか?

常駐して書き込みをするほどではない(笑)。覗いたことがある程度だよ。いい歳こいて親元に住んでいる人々が地下室から「世界の政治はこうあるべき」と言っているのは滑稽に思えることもあるけど、もしかしたら彼らの発言が本当に世界を変える可能性だってある。俺はキャピトル・ヒル(合衆国議会議事堂)に友人がいるし、マスメディアに流れない情報を聞くこともある。4chanで「マスコミが報道しない事実!」とか言われている情報の多くは、そのまま真に受けることは出来ないものだ。でも千のウソの中に、1つの真実があるかも知れない。

――シングル「ジーザス・ビルト・マイ・ホットロッド」(1991)のカップリング曲「TVソング」以来、“TVシリーズ”は続いてきましたが、共通するテーマは何でしょうか?

画面を通じて、それぞれの時代を映し出すのが“TVシリーズ”なんだ。それはCNNだったり、コンピュータの画面だったりする。『フロム・ビア・トゥ・エタニティ』(2013)には「サイド F/X インクルード・マイキーズ・ミドル・フィンガー(TV4)」があったし、サージカル・メス・マシーンの「Unlistenable」もシリーズの一環だった。今回、焦点を当てているのは、ソーシャル・メディアなんだ。人類にとって最大の希望であり最大の脅威はソーシャル・メディアだと考えている。人間の社会関係が露わにされるからね。いま、俺はTVシリーズ『ブラックミラー』がお気に入りなんだ。現代社会とテクノロジーの希望と脅威を描いていて、ミニストリーのレコードに通じる世界観がある。『トワイライト・ゾーン』の21世紀版といえるだろう。

――サージカル・メス・マシーンの「Unlistenable」ではアイアン・メイデン、ラム・オブ・ゴッド、ニッケルバック、ザ・キュアー、モリッシー、ディーヴォ、ミニストリー、そしてメガデスが言及されていますが、かつてメガデスがライヴのオープニング・テープで「バーニング・インサイド」を使ったことで、少なからずミニストリーのメタル世界への浸透に貢献したのではないでしょうか?

そうかも知れないね。デイヴ・ムステインとはちょっと会ったことがある程度で、親しい友人というわけではないけど、彼のおかげで多くの人がミニストリーの音楽に触れることになったとしたら感謝するよ。サージカル・メス・マシーンは俺とエンジニアのサミー・ダンブルオーゾ のプロジェクトなんだ。“バンド”であるミニストリーとは異なっていて、純粋なスタジオ・プロジェクトだった。レヴォルティング・コックスやラード、バック・サタンとも別のファミリーだ。今のところサージカル・メス・マシーンとしての活動を再開させる予定はないけど、二度とやらないとも言わない。社会情勢が求めるならば、きっと復活するだろう。

――ところでロッド・スチュワートの「アイム・セクシー」の共作者でドラマーのカーマイン・アピスはレヴォルティング・コックスがカヴァーした「アイム・セクシー」が好きだと言っていましたよ。

そうか、嬉しいね!教えてくれて有り難う。今日1日ハッピーでいられるよ(笑)。

――スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『A.I.』(2001)にミニストリーが出演、「ホワット・アバウト・アス」を演奏したときのことを教えて下さい。

元々『A.I.』への曲を提供する依頼があったのは、スタンリー・キューブリックが監督することになっていた時期だった。でもキューブリックは亡くなってしまって、スティーヴンが監督することになった。スティーヴンはロック・バンドと一緒に仕事したことがなかったし、俺も“巨匠”の映画監督と仕事をしたことがなかった。スティーヴンは知的でクリエイティヴな人物だったし、友達になることが出来た。巨大ビジネスに縛られて、従業員やマーチャンダイズのことを常に考えて作品を作らなければならないのはある意味、気の毒に思ったけどね。『A.I.』をキューブリックの脚本どおりに作ることは、スティーヴンには出来なかった。彼には背負っているものが大きすぎたんだ。スティーヴンと最初はギクシャクしたこともあった。一度、決裂しかけたこともあるんだ。「スティーヴン、話が違うよ!キューブリックは『A.I.』が“アナル・イントルーダー”というポルノ映画だと言っていたのに」と冗談で言ったら彼は真顔で「えっ!?」と絶句していた。彼がそれをジョークだと気付くのに2週間ぐらいかかったけど、それからは友達になったよ(笑)。

取材・文:山崎智之



日本盤

Amerikkkant

CD

Amerikkkant

Ministry

価格(税込) : ¥2,484

会員価格(税込) : ¥2,285

まとめ買い価格(税込) : ¥2,037

発売日: 2018年03月09日

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