THA BLUE HERB 20周年インタビュー『愛別EP』

2017年08月22日 (火) 18:00

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「FUJI ROCK FESTIVAL '17」最終日、日曜深夜のレッドマーキー午前2時。THA BLUE HERB の出演時間は、殆どの人が3日間の壮絶なアクトに満足し、それぞれの寝床で疲れ切った体を休めている時間だ。その条件の中でも集結した大勢のオーディエンスを前に、ILL-BOSSTINO は「がっかりさせるわけにはいかねえ」と60分間一度も止まることなく言葉を吐き続けた。時折、汗を拭いながら気合の乗った表情でビートを繋ぐ DJ DYEのプレイも壮絶だ。

THA BLUE HERB 20周年。一体何度目のピークを迎えているのだろう?50歳を目前にしてなお熱量を増すライブに頭が下がる。

10月29日(日) 東京・日比谷野外音楽堂での結成20周年ワンマンライブ開催を発表している THA BLUE HERB。その日に向け、7月には初となる公式MIX CD『THA GREAT ADVENTURE - Mixed by DJ DYE』をリリース。8月23日(水)には、4年ぶりとなる新曲がリリースされる。『愛別 EP』と名付けられたその作品には、「ALL I DO」「BAD LUCKERZ」「20YEARS, PASSION & PAIN」という強烈な3曲を収録。20周年を機に改めて提示される彼らのスタンス、そしてこの20周年を関わってきた全ての者たちと共に祝う讃歌。この3曲に込められているのは、彼らの20年の軌跡であり、彼らの最新である今現在だ。
ソロでの活動を経て O.N.O のビートに戻ってきた ILL-BOSSTINO にインタビューを敢行。20周年の事、新曲の事、ライブの事、今回もいろいろと語って頂いた。

インタビュー・文:松井剛(ローチケHMV編集部)

THA BLUE HERB 7/30@RED MARQUEE(FUJI ROCK FESTIVAL '17)


ただの20周年とはワケが違う


--- THA BLUE HERB 20周年おめでとうございます。

ありがとうございます。

--- 20年、改めてスゴイ年月だと思うのですが、あっという間でした?

そうとも言えるけど、それなりに色々あったので、簡単には語りつくせないね。

--- THA BLUE HERB がこんなに大々的に周年を祝うのは初めてだと思うのですが、これまでにも10年、15年と言う節目はあったと思います。今回20年を迎えてそれを祝おうと思ったのは何故ですか?

20年っていう事自体は、諸先輩方と比べるとそれほどの数字ではないと思ってるんです。20周年が一つのゴールっていう感覚も全然ないし。そうは言っても自分が今46歳で、身体も気持ちも全開な時だし、今が一番良い状態っていう自覚もあるんで「ここらで一丁やろうか」っていう感じですね。もちろん、30年、40年っていうところまでたどり着いたときには、また違った境地にいると思うけど。

--- なるほど。

THA BLUE HERB の20年っていうのは、全部自分達で運営して、自分達で作ったものを自分達で広めて、それをビジネスとして成立させてきた20年なので、どこかに雇われて音楽をやっている方々との20年とは、内容の濃さが違うというか。そこに関しては「ただの20周年とはワケが違うよ」っていう意識はあるけどね。

これが出来るのはDJカルチャー側にある音楽の強み


--- その20周年を祝しリリースされた1発目が THA BLUE HERB としては初となる公式ミックスCD『THA GREAT ADVENTURE - Mixed by DJ DYE』になるかと思います。20周年にミックスCDをリリースするというのも、やはり THA BLUE HERB らしいというか。通常だとベストアルバムという形になると思うんですよね。

ベストアルバムっていう形だったら、みんな持っているCDを順番に聴いてくれりゃいいし、ましてやベストな選曲って一人一人違うと思う。そういうモノよりは、20年の時間の流れっていうのを THA BLUE HERB らしい形で表現したかった。例えば、今作のDISC1に関しては、言葉をもう一度全部分解して再構築する事で、20年の歩みを提示しているんだけど、そういう事が出来るのは、DJカルチャー側にある音楽の強みだと思う。俺ら的には普通の感覚だよ。

--- リリックの内容も繋がりとか20年のストーリーを感じさせる仕上がりになっていますが、選曲、曲順、MIX 全て DYE さんにお任せだったのでしょうか?

口出しした部分もあるけど、DYE の仕事だね。DYE にしか出来なかった。

--- INTRO には、『STILLING, STILL DREAMING』の冒頭と同じ、札幌駅に到着する列車の車内アナウンスが使われていますよね。同じアナウンスですが、20年もの間 数え切れない夜を渡ってきた上で帰還する「札幌」は、当時とは意味合いが違うのではないでしょうか。

当時は、札幌の音楽シーンに対して、日本中の人が全く何も知らないような状況だったから、あの列車に乗っているのはリスナー。みんなを札幌に連れてくるという意味合いがあったんだけど、今は違うよね。今は、俺ら自身がいろんな街に行って札幌に帰ってくるっていう事を何百回って繰り返してる。だから列車に乗っているのは俺ら。俺らが札幌に帰って来るっていう感覚だね。

--- 実際あがってきた MIX を聴いて、BOSSさん自身はどんなことを感じましたか?

俺自身がハッとさせられるリリックもあったし、順番の妙で聴こえ方も変わってくるしね。BEAT に焦点を当てたDISC2の方は、O.N.O のオリジナリティがストレートに出てるし、20年の間に変化ももちろんある。凄く楽しめたよ。

--- ジャケットも『時代は変わる』のアナログを想起させるようなデザインで。

そうだね。『時代は変わる』の時は今ほど作品数が無くってああなったけど、今回はまた違う感じだよね。

「愛別」その2文字を作品にする時が来た


--- 『THA GREAT ADVENTURE - Mixed by DJ DYE』の線上にある最新作が『愛別 EP』に収録された3曲になるかと思います。「愛別」っていうのは、北海道の地名でもありますよね。

俺らは札幌から北見っていう街によくライブに行くんだけど、愛別はその途中にある駅の名前。そこを通るたびに「愛」と「別」の2文字を見ていて、「いつかここで写真を撮って作品にしてみたい」とずっと思ってたんで。

--- 遂にその2文字を作品に冠するタイミングが来たと。

そういう感じです。

--- BOSSさんとしては、ソロでの活動を経て「PRAYERS」以来4年振りに O.N.O のビートに戻ってきたという事になるかと思います。マンスリーレポートでは「O.N.Oから送られてくるビートがどれもヤバ過ぎて、選べない日々が続いた」と綴っていますが、ビートはたくさんあったのでしょうか?

そうだね。今回の3曲以外にも「リリックを乗せたい」と思うビートは幾つもあったよ。

--- それが今後また、THA BLUE HERB としての作品になっていくんですね。

いずれそうなるかもしれないね。

--- 「THA BLUE HERB の隠せぬ実力を再認識した」とも綴っていますが、他所とは違う作品に対する手ごたえのようなものがあったのでしょうか?

そうだね。作れば作っただけいい曲はまだまだ作れると思ったよ。

--- 制作過程に関して「これだよな〜と思ってた」と綴っているのも印象的でした。

THA BLUE HERB としての制作は4年ぶりだったとは言え、お互いずっと同じ街でそれぞれに作り続けてきたんで。そういう色んな事を思い出すには十分な時間だったし、楽しかったね。

--- 20年をこの3曲に込めるという、また相当に難易度の高いチャレンジだったんじゃないかと想像します。3曲の中で何を歌うかっていうのは悩まれたんじゃないですか?

いや全然悩まなかったね、今回は。野音で20周年ライブをやるヴィジョンが既にあったんで、そこで歌った時の景色を想像しながら作ってた。それに DYE の MIX CD も聴いてたから、この20年の事を思い出す機会も何度もあった。そういう事が積みあがってたから、わりとスラスラと言葉が出てきたよ。

“お客” が俺らの生活を支えてる
そのリアルな実感


--- 「BAD LUCKERZ」では、ライブでのスタンスをうたっていますよね。

そうだね。それは100%ライブの感じだよね。そこに描いた景色は、毎週繰り返されている事。制作期間中もずっとライブはやってたんで。

--- 20年間、前例のない道を開拓し続けた THA BLUE HERB にとって唯一の指標であった「リスナー」への、飾らない思いがストレートに描かれている。

リスナーとも言えるし、俺らにとっては “お客” だね。“お客” が来てくれないと成立しないし、来続けてくれないとビジネスにならない。CDも含め、お金を出して買ってくれるという事が、俺たちの生活自体を支えてくれてるし、そこにフェアな関係性があると思ってやってる。

俺らは作品に纏わる諸々を決めたり、請求書を書いたりも含めて全部自分たちでやってるから、そのリアルさ、お金の重さも、雇われているアーティストが感じてるのとは全然違うと思う。だからこそ、お金を出してくれた “お客” に対して、ちゃんとしたものを作る、来て良かったと思ってもらえるライブをするっていうのは、俺らにとっては最も大事な仕事。俺らにとって20年はそういう時間だったと思いますね。

平易な事を平易に歌っても、そこに20年の重みが付いてくる


--- 「ALL I DO」は、THA BLUE HERB の活動そのもののスタンスを歌っていますよね。このEPは、この曲から始まるわけですが。

音の質感も、最初に相応しいしね。

--- 「だから言っただろう」という言葉は、20年間結果も残し続けた THA BLUE HERB だからこそ叫べるフレーズですね。

DYE の MIX CD を聴くとわかると思うんだけど、最初の頃の俺って、フリーキーなフロウだったり、変則的な韻の踏み方だったり、「人と違う事をやろう」っていう意識が強かったんだよね。でも割と最近は、平易な言葉で平易な事を歌ってる。「だから言っただろう」っていう言葉一つとっても、20代そこそこのラッパーが言うのと、今の俺が言うのでは全然違う。20年っていうのは、そういう所にもう来てるっていう事でもあるから、難しい事をわざわざ難しく言う必要性も俺には感じないというか。普通に思ったことを言うのにも、20年の重みが出てくるという感じはしてますね。

BOSS 自身も感動したトラック
20周年を “お客” と共に祝う「20YEARS, PASSION & PAIN」


--- 「BAD LUCKERZ」「ALL I DO」どちらの曲も、ヒリヒリとしたトラックの上で、いわゆる THA BLUE HERB のストイシズムがシリアスに歌われていると思います。

そうだね。

--- ところが一転、「20YEARS, PASSION & PAIN」では一音目から、祝祭感あふれる開けたサウンド。このたった一音で世界を変えるトラックにトバされました。

俺自身もこのトラックにはとても感動したし、「今までで一番いい曲だな」って思えるくらいの曲になった。この曲に関しては、かなりトラックに引っ張られる感じでリリックを書けたしね。それこそライブでやったら、みんなの気持ちっていうのがそこに乗っかっていい景色になると思うよ。

--- リリックでは、20年間の回想が歌われています。BOSSさんもすごくリラックスしている印象に聴こえました。

あの曲に関してはビートの感じにも引っ張られて、すごくリラックスして録れた感じだね。ここまで来て、肩に力入れる必要もないし、俺自身もそこを楽しみたいっていう感覚もあるんで。“お客” にも楽しんでほしいし。そういう感じの気持ちがあったんで、気負わずに録れた。

--- 20年間、走って来られた喜びが素直に表現されているというか。これまでに ”喜び” を表現した曲も無かったと思うんで、そういう意味でも新鮮だと思います。

そうだね。最初の2曲がクールな曲だったからっていうのもあるんだけど、純粋にみんなに感謝してるからね。“お客” もそうだし、関わってくれた人たちにも。それを1曲にしたかったから、そういう曲になったんだと思う。

今もまだ汗かいてるよ。相変わらず苦労してる。


--- 「ここがあの日の未来 ないかもなあと思ってた未来」というフレーズもありますが、20年前に結成した時に、20年後の事ってどんな風に想像していましたか?

全く想像してなかったね。実際そこまで考えてやってる奴なんかいないと思うよ。

--- 20年後も活動していたいっていう希望みたいなものはありました?

いや、それもなかったね。2週間後の生活をどうするかっていうような世界に生きてたんで。20年なんていう未来なんて考えもしなかった。

--- アラフィフのラッパーっていう前例もないですしね。

無かったと思うよ。今も何人いるんだって感じだと思うし。

--- 前例のない道を切り拓いてきた20年だったと思うのですが、その事が後輩に与えている影響などを感じる事はありますか?

普通にみんな自分の地元離れないで音楽作って、自分らで売ってるよね。わざわざ大手のレコード会社に雇われたいなんて思ってる奴なんていないし。そういう意味では、俺らが前例になった事で、みんなが今当たり前のようにやっている事はたくさんあるんじゃないかと思う。

--- 20年でアルバム4枚っていうのは、数で言うと少ないじゃないですか。メジャーレーベルに所属して、1年に1枚コンスタントに作品リリースするのとは根本的に違う。それでいて、作品に関しては“たくさん売るために”みたいな妥協は一切無いわけじゃないですか。それがビジネスとして成立しているのは理想であり、ある意味奇跡だと思うのですが、それが実現出来ている理由は何だと思っていますか?

言っても、100万枚売ってるわけでもないしね。ライブだって150人のハコをいっぱいにする事にも苦労する街もある。音楽が支持されなかったり、ライブに人が来てくれなかったら、生活できないんで、それを維持するのに相変わらず苦労してるよ。「どうしたらライブに来てくれるんだろう」って頭働かせて、実際汗かいてる。安泰だと思ったことは一度もないよ。

--- 20周年ライブのプランはある程度もう固まってきているのでしょうか?

まだ何も考えてないね。

--- この20周年のフェイズを経て次に来るのは「フェイズ5」、アルバムにも期待が膨らむところですが、既に構想はあるのでしょうか?

全くないね。まずは次のライブだよ。そうやって積み上げてきたのが俺らの20年だから。


作品情報


THA BLUE HERB
『愛別 EP』
発売日 : 2017年8月23日(水)
税抜価格 : 1,200円

<収録曲>
1. ALL I DO
2. BAD LUCKERZ
3. 20YEARS, PASSION & PAIN

【先着特典】ステッカー(サイズ:H121mm×W85mm)

※特典は無くなり次第終了となります。ご購入前に必ず商品ページにて特典の有無をご確認下さい。

ご購入はこちら

愛別 EP

CD

愛別 EP

THA BLUE HERB

価格(税込) : ¥1,296

会員価格(税込) : ¥1,192

まとめ買い価格(税込) : ¥1,102

発売日: 2017年08月23日


20年を繋ぐ初の公式MIX CD 7月にリリース

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THA GREAT ADVENTURE -Mixed by DJ DYE

CD

THA GREAT ADVENTURE -Mixed by DJ DYE

THA BLUE HERB

価格(税込) : ¥3,240

会員価格(税込) : ¥2,981

まとめ買い価格(税込) : ¥2,754

発売日: 2017年07月26日



旧譜キャンペーン


THA BLUE HERB『愛別EP』リリースにあたり、旧譜キャンペーンを実施。関連対象商品をお買い上げの方に THA BLUE HERB 20周年ステッカー(サイズ:H50mm×W140mm)を差し上げます。

【開催期間】2017年8月22日(火)〜特典なくなり次第終了
※特典は無くなり次第終了となります。ご購入前に必ず商品ページにて特典の有無をご確認下さい。
※特典の状況は各店で異なります。


アルバム対象商品

シングルも対象(※アルバム未収録の重要楽曲だらけ)



ライブ情報



THA BLUE HERB 結成20周年ライブ

【日時】
2017年10月29日(日) 雨天決行
15:30 開場 17:00 開演

【会場】
東京・日比谷野外音楽堂

【チケット】
全席指定 前売券 5,000円(税込)
前売券購入特典:CD(THA BLUE HERB による新曲収録 / ライブ当日現地にて引き換え)


客席後方立見チケット


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