【インタビュー】ANATHEMA

2017年06月09日 (金) 17:15

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現代イギリスを代表するモダン・プログレッシヴ・ロック・バンドのひとつとなったアナセマがニュー・アルバム『ジ・オプティミスト』を発表する。
『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』(2001)のジャケット・アートからインスピレーションを得て、主人公の“ジ・オプティミスト=楽観主義者”のそれからの物語を描いたトータル・アルバム。ダイナミズムとアンビエンスがせめぎ合う起伏に富んだサウンドは、音で紡ぐロード・ムービーだ。
ダニエル(ギター、キーボード)とヴィンセント(ヴォーカル、プログラミング)のキャヴァナー兄弟が解き明かす『ジ・オプティミスト』の世界観に耳を傾けてみよう。

――『ジ・オプティミスト』のコンセプトについて教えて下さい。

ダニエル:元々は『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』(2001)のジャケット・アートから発展していったものなんだ。自動車の中から見た写真で、主人公は服を脱ぎ捨て、海に入っていったように見える。その後、彼はどうなってしまったのだろうか?...と考えて、ストーリーを書いていった。彼は再び車に乗って、真夜中のカリフォルニアの道路を北上していく。彼の旅路を描いたのが『ジ・オプティミスト』なんだ。それと同時に、このアルバムは俺自身の心の旅路を描いたものだった。ここ数年、5年ぐらいは自分にとって精神的に辛い時期だった。燃え尽きて、 “でかいパンに薄く塗り拡げられたバターの気分”だった。『指輪物語』の一節だよ(笑)。“ジ・オプティミスト”は俺自身であり、バンドであり、アルバムを聴くみんなを投影したキャラクターなんだ。多くの表現はメタファーであって、文字通り受け取ってしまうべきではない。聴く人が自分のイマジネーションを投影することで、それぞれの作品が出来上がるんだ。

ヴィンセント:そう、『ジ・オプティミスト』には何通りも解釈があるんだ。主人公の旅路を描いているともいえるし、このストーリーが逆回転だという解釈をすることも出来る。実は最後の曲「バック・トゥ・ザ・スタート」が始まりで、1曲目に向かってリヴァースで時間を遡行していくんだ。あるいは『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』の最後、海で死ぬ瞬間に主人公が見る走馬燈が『ジ・オプティミスト』だという解釈も出来る。どの解釈も正しいんだ。でも俺たちなりの解釈もある。ライヴでは俺たちの解釈をヴィジュアル要素を交えて表現するよ。アルバム全曲を曲順どおりにプレイして、映像をスクリーンに映し出しながらストーリーを追っていくんだ。前半が『ジ・オプティミスト』、後半がそれ以前のアルバムからの曲という構成になるよ。

――『ジ・オプティミスト』のストーリーに影響を与えた作品はありますか?

ダニエル:ロックのいわゆる“コンセプト・アルバム”には好きなものもあるけれど、ほとんど影響を受けなかった。それよりも触発されたのは、アメリカの映画やTV番組だった。映画『ミッドナイト・スペシャル』やTVシリーズ『MR. ROBOT / ミスター・ロボット』からは刺激を受けた。「サンフランシスコ」は静まった真夜中の都会を車で走っていくイメージを曲にしたものだ。この曲を書いたとき、俺の頭の中にはサンフランシスコと同じぐらい東京のイメージがあったんだよ。『MR. ROBOT / ミスター・ロボット』はニューヨークが舞台なんだ。第5話の最後、主人公が電車に乗っていて、タンジェリン・ドリームの「ラヴ・オン・ア・リアル・トレイン」が流れる。ソファから立ち上がって、「こういう曲をやりたい!」と思ったよ。その後YouTubeで探したら、東京の電車(注:ゆりかもめ)から見た景色の映像に「ラヴ・オン・ア・リアル・トレイン」をかぶせた動画があった。あまりに素晴らしくて、25回ぐらい連続で見たよ。常に動き続けるのが美しいんだ。ヴィンセントと話して、似たムードの曲を書いてみることにした。アルバムのストーリーがアメリカ西海岸を舞台にしているから「サンフランシスコ」というタイトルになったけど、俺の中では本当は「トーキョー」なんだよ。

――“ジ・オプティミスト”はサンディエゴからサンフランシスコ、スプリングフィールドへと旅していきますが、スプリングフィールドという町はアメリカ各地にあります。主人公の旅の流れだとカリフォルニア州かオレゴン州のスプリングフィールドかと思われますが、あなた達のイメージでは、どのスプリングフィールドなのでしょうか?

ダニエル:実はこの曲は『ジ・オプティミスト』のストーリーが生まれる前から「スプリングフィールド」というタイトルだったんだ。この曲のリフは2013年ぐらい、サウンドチェックで書いたものだった。そのリフを携帯で録っておいて、何となく「スプリングフィールド」とタイトルを付けておいたんだ。去年(2016年)、アルバムを作る前のツアーでプレイしたけど、そのときも正式なタイトルがなかったから「スプリングフィールド」としてプレイした。まだアルバムで発表していないのにすごく盛り上がって、しかもみんな「スプリングフィールド」というタイトルを受け入れているようだった。だから、どの州にあるスプリングフィールドかはあえて特定していないんだ。オレゴン州でもカリフォルニア州でも東京都でも、自由に解釈して欲しい。この曲はダークだし、特定してしまうと気の毒な気もしてね(笑)。この曲の最後には「この町は、記憶の中の“町”。そして記憶は薄れていく」というフレーズがある。このアルバムを定義するメッセージのひとつなんだ。

ヴィンセント:俺自身はオレゴン州のスプリングフィールドをイメージしていたけどね。ただ、それが唯一の正解ではないんだ。実際の町というより、町の薄れていく空虚な面影なんだ。夜の街で、霧が垂れ込めて、誰もいない。


――主人公は『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』の頃から“楽観主義者”だったのですか?

ヴィンセント:当時その名前はなかったけど、彼は常にここにいたんだ。そして“ジ・オプティミスト”と名付けられたことで、彼のアイデンティティがさらに明確になった。このアルバムを作っていくうちに、自分たちの音楽の集大成であることに気付いたんだ。意図的にそうしようとしたのではなく、そうであることが徐々に見えてきた。アナセマの音楽は作品ごとに進化しているし、同じ場所に留まることはないけど、作品同士の世界観は繋がっているんだ。たとえば主人公は『A Natural Disaster』(2003)ジャケットのボート上の人物でもあり、『We're Here Because We're Here』(2010)のジャケットで立っているのも彼だった。彼はバンドを擬人化した存在なんだ。過去のアルバムにも『ジ・オプティミスト』に繋がる歌詞がたくさんあるし、「32.63N 117.14W」で主人公が車のドアを開けて、レジオをつけると、『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』の「テンポラリー・ピース」が流れる。かつてビートルズも自分の楽曲を引用する手法をやっていたよね。俺たちはビートルズの大ファンだから、そういう部分で影響を受けたのかも知れない。実際には鳴っているのは彼の脳内のラジオなんだ。現実ではなく、彼の過去の幻影であって、彼はそれから逃れようと旅を続ける。それでも過去の呪縛に囚われているんだ。

――ダニエルは『ジ・オプティミスト』について「わざと曖昧な表現にして、リスナーごとの解釈に任せる」と語っていますが、1曲目「32.63N 117.14W」では正確な座標(サンディエゴ郊外のシルヴァーストランド・ステイト・ビーチ)をタイトルにしているのはどんな意図があるのでしょうか?

ダニエル:『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』のジャケット写真を撮影したのがシルヴァーストランド・ステイト・ビーチだったんだ。『ジ・オプティミスト』の物語は、具象的なものから徐々に拡散していき、抽象的なものへと変化していくんだよ。この物語は『ア・ファイン・デイ・トゥ・エグジット』の続編であり、特定の場所で、特定の主人公を迎えて、彼が車で走り出すところで始まる。でも、その後のストーリーは、聴く人それぞれがイマジネーションを膨らませて欲しいんだ。アルバムには幾つか具体的なキーワードも含まれている。サンフランシスコやスプリングフィールドのようなね。でも、このアルバムはインタラクティヴな経験として楽しんで欲しい。きわめて解釈のオープンな作品なんだ。

ヴィンセント:『ジ・オプティミスト』のストーリーは緩いもので、聴く人それぞれの人生に当てはめることが出来る。主人公は過去の亡霊に追われている。彼は車でどこまでも逃避することで、自我の崩壊から逃れようとしている。でもそれは出来ない。もう何日も寝ていない彼は、車を道路脇に停めて目を閉じる。「クローズ・ユア・アイズ」のジャズ・シーンは夢の中の情景なんだ。そして「ワイルドファイア」で破滅が訪れて、彼の周囲すべてが炎に包まれる。そうして彼は決断を迫られるんだ。それは彼が予測していた結末ではない。でも彼はスタート地点へと戻っていくことになるんだ。...それがおおよそのストーリーだけど、それに囚われることなく、自由にイマジネーションを羽ばたかせて聴いて欲しい。アナセマのアルバムは、ただの曲のコレクションではなく、最初から最後まで通して聴くべき作品なんだ。1曲だけダウンロードやストリーミングするのではなく、1時間をアルバムに委ねて欲しい。1時間をひとつのことに費やすのは難しい時代だけど、だからこそかけがえのない経験なんだ。“ジ・オプティミスト”との旅に、ゆっくり時間を割いて欲しいね。

取材・文:山崎智之
Photo by Caroline Traitler

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