【インタビュー】EPICA / マーク・ヤンセン

2016年10月05日 (水) 18:00

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ニュー・アルバム『ザ・ホログラフィック・プリンシプル』をリリースするオランダのエピカ。バンドのブレインでもあるギタリスト、マーク・ヤンセンに話を聞いてみた。
川嶋未来(以下、川嶋): ニュー・アルバム『ザ・ホログラフィック・プリンシプル』がリリースになりますが。

マーク:今回は1年以上じっくりと時間をかけてアルバムを作ったんだ。まず曲を書いて、それから皆で集まって、プロデューサーのJoost van den Broekと1曲1曲仕上げていった。このプロセスにいつもより時間をかけた。どの曲も細部にまでこだわっていて、曲として流れるようにしたかったしね。それからやっとデモ・ヴァージョンのレコーディングをし、満足の行く結果が得られたので、やっとアルバムのレコーディングに着手したという訳さ。以前のアルバムと違うのは、今回はすべて本物の楽器を使ったということ。前も合唱隊やストリングスは本物を使っていたけれど、今回は金管も木管もパーカッションも、すべて本物を使ったんだ。だからレコーディングの作業も大変で、時間もかかったよ。とにかく最高の結果を得ようと頑張った。

 歌詞は、タイトルの通り「ホログラフィック・プリンシプル・セオリー」についてだ。つまりこの世界はただのホログラム、幻影でしかないかもしれないという話さ。俺はこのセオリーにとても興味を持っている。最近のヴァーチャル・リアリティのテクノロジーの進歩には目を見張るものがあるしね。現在もヴァーチャル・リアリティを体験できるマスクがあるけれど、まだ本物と区別がつかないほどではない。だけどそう遠くないうちに、そうだな10-15年くらいの間には、現実に非常に近いものが作り出される可能性があると思う。そうなってくると、今のこの世界も実はヴァーチャル・リアリティではないとは言い切れなくなってくるだろう。この世界は、より高い次元の世界から投影されているただのホログラムかもしれない。

川嶋: ヴァーチャル・リアリティを取り上げようと思ったのは、哲学的な興味からでしょうか、それとも『マトリクス』のような映画からの影響でしょうか。

マーク:両方だね。俺はマーストリヒト大学で心理学も学んだし、研究の過程で哲学もやった。研究を終えたあとも、哲学についての本を読み続けているしね。前作の『クォンタム・エニグマ』は量子力学についてだったけれど、今回の「ホログラフィック・プリンシプル・セオリー」も量子力学と関係がある。『クォンタム・エニグマ』では言い切れなかったこともあるし、その続きという面もある。『マトリクス』というのは古い映画ではあるけれども、今見ても十分にリアリティがあるだろう。『マトリクス』の最初のやつを最近見直したのだけど、やはり素晴らしい映画だと再認識したよ。当時としては最高の特殊効果が使われているしね。シモーネは『インセプション』から影響を受けているし、映画も重要なインスピレーションの源さ。

川嶋: アルバム全体を通して一つのストーリーになっていたり、あるいはメッセージが込められていたり、というのはありますか。

マーク:もしこの世がホログラムだとしたら、そもそも現実とは何なのかという哲学的な問いだよ。メッセージというものではなく、あくまで真理の探究というのかな。俺たちの能力には限界があり、誰も真理というものを見通すことはできないわけだからね。残念ながら俺たちは、この世のすべてのものを理解するほど賢くはない。すべてを理解することは不可能なんだ。だけど同時にそれは興味深いことでもある。

川嶋: 非常に哲学的ですね。お好きな哲学者というのはいますか。

マーク:それは特にいないな。哲学に関しては、古代ギリシャから現代思想に至るまで一通り勉強したけれど、興味深いのは、テクノロジーが発達した今よりも、昔の方が優れた理論が出てきているところさ。

川嶋: エピカの音楽は非常に多様ですが、メタルという点に限るとどのようなバンドから影響を受けているのでしょう。

マーク:そうだな、若い頃はMegadethが一番のインスピレーションだった。俺がメタルを聴き始めたのも、Megadethのおかげだしね。それからGorefestやSepultura、Amrophis、あと皆と同じようにもちろんIron Maidenなどを聴くようになった。今でもメタルは良く聴いているよ。最近のバンドだとOpethが大好きだ。

川嶋: ではクラシックからの影響はいかがでしょう。

マーク:もちろんあるよ。ラフマニノフとかね。ラフマニノフはとてもヘヴィだから、若い頃はあまり好きではなかったのだけど、15-16歳の頃から少しずつわかり始めた。もちろんモーツァルトの『レクイエム』も好きだ。歴史上最も美しい曲だと思うよ。

川嶋: 今回のアルバムでもラテン語での混声合唱が入っていますが、これはレクイエムからの影響でしょうか。

マーク:もちろんそうだよ。モーツァルトからはずっと影響を受け続けている。『レクイエム』は非情に荘厳で感情豊かだろう。メロディも強いしね。すべてが素晴らしい出来だ。

川嶋: 他にはどんな作曲家がお好きですか。

マーク:すべての作品が好きだという訳ではないけど、ベートーヴェン。彼にも非情に美しい作品があるよね。カール・オルフも好きだよ。『ザ・クラシカル・コンスピラシー』で演奏したのもお気に入りの作曲家の作品だよ。

川嶋: では映画のサウンドトラックからの影響はいかがでしょう。

マーク:ハンス・ツィマー、ダニー・エルフマン、ジョン・ウィリアムズなどは本当に素晴らしい作品を書いているよね。俺は音楽が良くない映画には惹かれないんだよ。一方で映画としてはダメだけど、音楽は優れているものもある。音楽さえ良ければ、俺はそこから多くのインスピレーションを得られるんだ。

川嶋: シタールやバラライカなどの民俗楽器も使用されていますが、民俗音楽もお好きなのでしょうか。

マーク:メンバー皆、民俗音楽が大好きなんだよ。色々な国に行くと、その国の民俗音楽にとても興味を惹かれるんだ。いくつかの国には本当に優れた民俗音楽があるからね。実を言うと、俺はオランダの民俗音楽にはあまり興味を持てないんだ(笑)。アジアには素晴らしい民俗楽器もあるよね。前作に入っていた「フィフス・ガーディアン」もそうだけど、俺たちは常に民俗音楽への傾倒を表明しているよ。今回も「ダンシング・イン・ア・ハリケーン」のような曲が入っているし、他の曲でもシタールを使っている。

川嶋: そもそもメタルとシンフォニック、あるいはエスニックな要素を混ぜようと思ったきっかけは何だったのでしょう。具体的に影響を受けたバンドはいますか。

マーク:子供の頃からメタルとクラシックを混ぜたら面白いだろうとは思っていたんだ。そういう方向を試すバンドもいたけど、それはあくまで一回のショウ限定であったり、実験的なものでしかなかった。バンドとしてフルに、メタルとクラシックを混ぜたらどうなるだろうと思っていたんだ。やがてOrphanageやThe Gatheringといったバンドが、メタルと女性ヴォーカル、そしてキーボードによるナイスなアレンジメントを融合させはじめ、それが非常にうまくいっていることに気付いたんだ。当時としてはこういう試みはまったく新しく、とてもエキサイティングに思えたので、自分でもこの方向性でやってみようと飛びついたのさ。まさに俺がやりたいと思っていた方向性だったし、今でも同じスタイルを続けている。俺はこのスタイルが大好きだからね。

川嶋: あなたは作曲やオーケストレーションの勉強をされたのですか。

マーク:エピカのメンバーのうち、4人がクラシックの教育を受けていて、2人が受けていないんだ。俺は心理学を専攻していたから、受けていないんだよ。4人は大編成のアレンジメントもできる。俺はもっと直観で曲を書いていて、もし理論的に誤りがあれば、彼らに正してもらうようにしているんだ(笑)。


川嶋: エピカの音楽スタイルを定義するとしたらどうなりますか。

マーク:カテゴライズするのは難しいけど、やはりシンフォニック・メタルというべきかな。一方でデス・メタル的な要素もある。特にここ最近の2枚のアルバムは、シンフォニックな要素を取り払うとベースはデス・メタルだ。これらの要素を一言で表現するというのは難しいね。

川嶋: オランダにおけるシンフォニック/ゴシック・メタルの歴史についても教えてください。やはりThe Gatheringが最初のバンドだったのでしょうか。

マーク:そうだね、The Gatheringか、あるいはOrphanageだ。Orphanageを知っている人は多くないけれども、彼らは90年代の終わりに非常にうまくこのスタイルを完成していた。当時Within TemptationがOrphanageのオープニングをやっていたりね。今ではWithin Temptationは非常にビッグなバンドになったけれども。残念ながらOrphanageは得るべき名声を得られなかったが、彼らは間違いなくトレンド・セッターの一つだったよ。The Gatheringはビッグになったんだけどね、Orphanageはアンダーグラウンドのままだった。次のステップには進めず解散してしまった。俺はいつでもこのバンドについて言及するようにしているんだ。ファンが彼らをチェックするようにね。彼らは間違いなくオランダのゴシック・メタル・シーンの父親、創設者の一つだから。

川嶋: The GatheringとOrphanageは、世界で最初にこのスタイルを確立したバンドなのでしょうか。

マーク:そうだね。

川嶋: ということは、ゴシック・メタルというのはオランダが発祥だと考えますか。

マーク:そう、オランダとノルウェーで同時発生的に出てきたんだと思うよ。ノルウェーにもSins of Thy Beloved、Tristania、Trail of Tearsなどがいて、非常にシーン自体も大きかった。だからオランダだけでなく、ノルウェーもゴシック・メタルのシーンに大きな影響を与えたと言えるね。

川嶋: あなたにとって一番インパクトが大きかったゴシック・メタルのアルバムは何でしょう。やはりThe Gatheringの『マンディリオン』あたりでしょうか。

マーク:『マンディリオン』、それからOrphanageの『バイ・タイム・アローン』だね。この2枚には本当に圧倒された。『マンディリオン』は俺にとってはピュア・マジックだったよ。初めて聴いた時に、これは大傑作だと思ったけど、今でもまったく同じ意見だ。『バイ・タイム・アローン』についても、すべてが素晴らしい。

川嶋: 日本のファンはエピカの来日を待ちわびていますが、日本に来られる予定はありますか。

マーク:実は話はあったんだよ。オファーがあったのだけど、俺たちのマネジメントが「いや、ラウドパークの可能があるから、この話は見送ろう。」って。ところがラウドパークの話もダメになってしまったんだよ!マネジメントも、次の日本からのオファーは必ず受けると約束してくれている。日本でぜひプレイしたいからね、このアルバムのツアーで行けたらと思っているよ。

川嶋: では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

マーク:何年も俺たちのことをサポートしてくれて、どうもありがとう。俺たちが日本に来るのを長い間待ち続けてくれているファンもいると思う。具体的なことはまだわからないけど、このアルバムのツアーで日本に行くことを約束するよ。



 エピカの作品を一言で形容するとしたら、ゴージャスという言葉が最適だろう。オーケストラ、合唱隊をフルに起用した作風は、そのままハリウッド映画のサウンドトラックとして使用できる豪華さだ。しかもただ単に豪華であるとか、シンフォニックであるというだけではない。エピカの音楽は、実に多くの要素が絡み合っており、非常に高度で先進的なものなのである。

 オランダという国で、シンフォニック/ゴシック・メタルというジャンルが発達した経緯もとても興味深い。The Gatheringという特異なバンドが商業的にも成功し、一国のシーンを根底から引っくり返してしまったのだ。そもそもThe Gatheringというバンド、あるいはゴシック・メタルという音楽は、どのようにして生まれたのか。『ザ・ホログラフィック・プリンシプル』のライナーノーツでは、Celtic FrostからThe Gatheringへの流れも考察したので、ぜひそちらも読んで頂きたい。

 ヨーロッパでは絶大な人気を誇っているが、いまだ来日を果たしていないまだ見ぬ強豪バンド。サバトンが昨年来日を果たした現在、まだ見ぬ強豪枠の代表が、このエピカである。ただメンバーの前向きな発言からすると、そう遠くないうちに日本でエピカを見られる日が来るのではないだろうか。

取材・文 川嶋未来/SIGH
Photo by © Tim Tronckoe




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