【インタビュー】EQUILIBRIUM

2016年08月12日 (金) 20:00

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 5枚目となるアルバム『アルマゲドン』をリリースするドイツのエピック・メタル・バンド、エクリブリウム。ことスタジオ・ワークにおいては、作曲から殆どすべての楽器の演奏、レコーディングに至るまで一人でこなしているルネ・ベリティオムのワンマン・バンドの様相を呈している。ニュー・アルバム、音楽的バックグラウンドなどについて、そのルネに話を聞いてみた。
川嶋未来(以下、川嶋): まず最初に、あなたのお名前の読み方について教えてください。スペルを見た感じだとフランス系のお名前のようですが、これはフランス式にルネ・ベルティオムと読んで良いのでしょうか。

ルネ・ベリティオム:そう、フランス語から来ているからルネだよ。父親がカナダ人なんだ。

川嶋: ニュー・アルバム『アルマゲドン』がリリースになりますが。

ルネ:今回の作品は、以前のアルバムに比べるとずっと暗い内容になっている。もちろんいつも通りのハッピーでポジティヴな面白い部分もあるけれども、全体的なムードはもっと暗い。『アルマゲドン』というタイトルが示す通り、歌詞が暗いものだしね。今回は人類が自分たち、あるいは地球や動物といった環境を破壊しているというような暗いトピックを扱っているんだ。

川嶋: 以前のアルバムと比べて、一番進歩しているという点はどのあたりでしょう。

ルネ:うーん、良い質問だね。もちろん人それぞれ意見は違うかもしれないけど、俺としては音質がとても良くなっていると思う。とてもヘヴィだし、ドラムもパンチが効いている。すべての楽器がうまく溶け合って一体感があるしね。今回、ヴォーカリストのロプセにとっては3枚目のアルバムになるのだけど、彼が加入したことで曲の作り方に変化があったんだ。前のヴォーカリストはもっと高音でスクリームするタイプだったけれど、ロプセのスタイルはもっと暗いものだからね。それで俺の曲の書き方やギターなども、より深いものに変わったと思う。それに今回もとてもオリジナルな作風になっているよ。

川嶋: 前回のアルバム『源祭壇 - Erdentempel』ではあなたが殆どすべての楽器を一人で演奏していますよね。

ルネ:そうだよ、ギター、ベース、キーボードすべて演奏した。

川嶋: ドラムは?

ルネ:ドラムは打ち込みだよ。ナチュラルに聞こえるようにプログラムするのは大変な作業だったけど、俺はそもそも打ち込みで曲を作るからね。エクリブリウムのメンバーは、色々な国にちらばっているから、集まるのが大変なんだよ。特にドラマーはイスラエル人だから。締め切りがある中で、皆が集まってアルバムを仕上げるというのは容易ではない。だからドラムは打ち込みでやるようにしているのさ。

川嶋: 今回のアルバムも同じスタイルですか。

ルネ:そう、今回も同じだよ。ギターとベースは俺が弾いて、ヴォーカルはもちろんロプセがやった。それからフルート・プレイヤーが参加している。ドラムは今回も打ち込みだよ。


川嶋: なるほど。クレジットにはギタリストやベーシスト、ドラマーの名がありますが。

ルネ:彼らは皆ライヴ用のミュージシャンさ。俺にとってはスタジオでアルバムを制作するという作業とライヴは、まったく別物なんだ。バンドを始めた時から、俺は一人で殆どのことをやってきた。こういうやり方の方が、俺にはやりやすいんだよね。ずっとこういうやり方でうまくいっているし。

川嶋: あなたはどのようなメタル・バンドから影響を受けているのでしょう。

ルネ:最近のメタル・バンドから、直接的な影響を受けるということはないね。特にメタル・パートを作曲するという点においてはね。影響を受けたメタル・バンドとなると、エクリブリウムを始めた頃よく聴いていた、例えばアイアン・メイデン、ディム・ボガー、ヒポクリシー、モーターヘッドとか、スタイル的にはバラバラさ。この辺のバンドにはエクリブリウムを始めた頃、メタルらしいパートを作曲する上で、大きくインスパイアされたね。今でもこれらのバンドからの影響は、体に刻まれていると思う。もちろん俺が受けている音楽的な影響というのはメタルだけにとどまらない。映画のサウンドトラックであるとか、コンピューター・ゲームの音楽、それから世界各地の、南米、東欧、アイルランドなどの民俗音楽とかからも影響を受けているよ。

川嶋: クラシックからの影響というのはいかがでしょう。

ルネ:もちろんあるよ。ただ今言ったように、俺はサウンドトラックからの影響が大きい。そして多くのサウンドトラックというのはクラシックから多大な影響を受けているだろう。だから俺はクラシックの作曲家から直接的な影響を受けているというよりは、サウンドトラックを通じて間接的にインスパイアされているという感じだね。

川嶋: お好きなサウンドトラックの作曲家は誰でしょう。

ルネ:たくさんいるよ。いわゆる大御所だと、ジョン・ウィリアムズ、ハンス・ツィマー、ハワード・ショアとか。それから大好きなのが、何と発音するのかわからないのだけど、ジョー・ヒザイシ?宮崎駿の映画音楽を手掛けている人さ。

川嶋: 久石譲ですね。

ルネ:彼は素晴らしいよ。独自の世界観があって。大好きな作曲家さ。

川嶋: 世界各地の民俗音楽にインスパイアされているということでしたが、ドイツの民俗音楽についてはいかがでしょう。

ルネ:今回のアルバムに関していえば、典型的なドイツの民俗音楽からの影響というのはないな。ドイツは地域によって、様々な民俗音楽が存在する。前回のアルバム『源祭壇 - Erdentempel』では、バイエルン地方の民俗音楽から直接的影響を受けた「Wirtshaus Gaudi」という曲を入れた。アコーディオンなどが入っている、俺の住んでいるドイツ南部の民俗音楽さ。

川嶋: エクリブリウムの音楽は、ドイツ人が聴くととてもドイツ的に感じるものなのでしょうか。

ルネ:いや、そんなことはないと思う。もちろん多くの曲がドイツ語で書かれているので、その点においてはドイツ的だ。だけど音楽的な部分に関しては、ドイツ的だとは思わないな。音楽的影響は世界中の音楽から受けているからね。

川嶋: エクリブリウムの音楽を定義するとしたらどうなりますか。フォーク・メタル、ヴァイキング・メタル、ペイガン・メタルなど、様々な呼称が使われますが。


ルネ:バンドを始めた頃は、ヴァイキング・メタルとかペイガン・メタルと呼ばれることが多かった。北方ドイツの神話について歌っていたからね。今はそういうトピックではなく、もっとパーソナルな内容について歌っているから、俺たちとしてはもっとシンプルに「エピック・メタル」をやっていると考えている。音的には非常にシンフォニックだし、なるべくビッグなサウンドにしようと思っているから、エピック・メタルという呼び方がぴったりじゃないかな。

川嶋: 北方ドイツの神話というのは、ヴァイキングとも直接的なつながりがあるのでしょうか。例えばヴァーグナーが北欧神話から影響を受けていたりとか、このあたりのつながりを理解するのが難しいのですが。

ルネ:確かに複雑というか、わかりにくい部分はあるよね。ドイツのバンドがヴァイキング・メタルをやったり、北欧神話について歌っていたり。時にヴァイキング・メタルというのは単にその音楽スタイルのみを意味することがあるし。ドイツの神話と北欧の神話は、多少のつながりはあるよ。もちろんドイツにはドイツ特有の神話があり、ノルウェーやスウェーデンにも彼ら特有の神話がある。ただ共通点はあるんだ。確かにファースト・アルバム(注:『神々の紋章 - Turis Fratyr』2005年)ではこのトピックについて歌っていたけれども、セカンド(注:『サーガス - Sagas』2008年)では激減し、サードではまったく触れていない。俺たちとしてはサード・アルバム(注:『再創神 - Rekreatur』2010年)こそがエクリブリウムの本当の始まり、第一章だと考えているんだ。サード・アルバム以降、俺たちはドイツの神話以外の、もっと広い世界に目を向けるようになったからね。

川嶋: 歌詞の殆どがドイツ語ですが、これは何故なのでしょう。

ルネ:バンドを始めた頃から、ドイツ語で歌うのが一番自然だったんだ。歌詞を書いているのはヴォーカリストだけど、彼にとってもドイツ語で書くのが自然なんだろうね。今回のアルバムでは何曲か英語で歌っているし、もちろんドイツ語でしか歌わないというような制限を設けるつもりはないのだけど、やはりエクリブリウムにとってはドイツ語で歌うというのは重要なポイントだね。英語で歌うというのと、ドイツ語で歌うというのは、音楽的にも違いがあるだろう。今回のアルバムでは、英語で歌ったほうがしっくり来るだろうと思える曲がいくつかあったんだ。それに英語で歌った方が、より多くの人に歌詞の内容を理解してもらえるというのもあるし。

川嶋: その点をお伺いしたかったのですが、歌詞がドイツ語であるか、英語であるかによって曲の書き方が変わるのでしょうか。

ルネ:間違いなく変わる。例えばラジオでかかっている英語の曲を、そのままドイツ語に訳して歌ってみると、非常にダサくなることがあるだろう。もちろん逆もあって、ドイツ語の歌詞を英語にすると、まったくうまくいかなくなるというケースもある。

川嶋: 今回の歌詞はパーソナルで暗い内容とのことでしたが、もう少し詳しい内容を教えてもらえますでしょうか。

ルネ:今回の歌詞は、現代社会における問題についてだよ。人類がこの星や自分たちを滅茶苦茶にしていることとか、今起こっている暗いことについてさ。もちろんそればかりではなくて、もっと軽い内容のものもある。我が家に帰ることについて、自然をどう感じるか、人間と動物との関係について、とかね。

川嶋: 「ヘルデン」は何について歌っているのでしょう。ロールプレイングゲームですか?

ルネ:ハハ、あの曲は愉快だろ。あれは一般的なゲームについて歌っているんだ。俺はコンピューター・ゲームが大好きだからね。6歳のときに最初のニンテンドーを買ってもらったんだ。だからゲームから影響を受けることもあるんだ。この曲には8ビットのコンピューター・サウンドも入っているだろう。コンピューター・ゲームへのオマージュさ。

川嶋: つまり「赤いキノコの中を走れ!」という歌詞は、そういうことなのですね。

ルネ:もちろんそれは、マリオが赤いキノコをとってデカくなることについてだよ!

川嶋: エクリブリウムというバンド名を選んだのは何故ですか。どのような意味を込めているのでしょう。

ルネ:エクリブリウムというのは、バランスというような意味なのだけど、バンドを始めてバンド名を決めるときに、方向性を限定するようなものにしたくなかったんだ。ああ、これはデス・メタル・バンドだな、とかブラック・メタル・バンドだな、パワー・メタルだな、とわかるようなものにしたくなかった。初期の頃はただそれだけで、それ以上の意味というものはなかったのだけど、最近はこの名前が非常に重要に思えるんだ。今はバランスというものを見つけるのが難しくなってきているだろう。自然や、人生で起きることなどを見ていてもそうだ。物事にはバランスが必要なのさ。だから今はこのバンド名をとても気に入っているよ。

川嶋: 去年来日予定でしたが、直前でキャンセルになりました。一体何があったのですか。

ルネ:そうなんだよ、残念ながらキャンセルになってしまった。ツアーでは中国と日本に行く予定だったのだけど、中国のビザに関して手配が遅くてね、キャンセルをせざるを得なかったんだ。日本に行く分には何の問題もなかったのだけど。今もアジア・ツアーをやろうと計画しているところだよ。なるべく早く日本に行きたいね。

川嶋: お気に入りのアルバムを3枚教えてもらえますか。

ルネ:結構変わるから難しいな。まずドリーム・シアターの「メトロポリス・パート2:シーンズ・フロム・ア・メモリ」。これは大好きなんだ。それからディム・ボガーの『エンスローン・ダークネス・トライアンファント』。あとはそうだな、現在好きという意味ではブリング・ミー・ザ・ホライズンの『センピターナル』だね。

川嶋: では最後に日本のファンへのメッセ―ジをお願いします。

ルネ:日本にもたくさんエクリブリウムのファンがいることは知っているよ。Facebookにも「日本に来てほしい」という書きこみがたくさんあるからね。さっき言ったように、日本に行く計画も立てている。日本に行って、日本のファンに会うのが待ちきれないよ。それまでぜひ俺たちのニュー・アルバムを楽しんでくれ。


 エクリブリウムというと、「ドイツの神話についてドイツ語で歌う、ドイツ民謡を取り入れたメタル・バンド」という解説の仕方をされることも多く、私も含め非常にドイツらしいバンドという印象を持つ方も少なくないだろう。しかし彼らの方向性はかなりシフトしてきており、今回リリースされる最新作『アルマゲドン』に至っては、ドイツの神話について歌ってないし、ドイツ民謡も取り入れておらず、また本人たちも「ドイツらしいバンドだとは思わない」と認識しているというのは面白い。

 エクリブリウムの音楽性というのは非常にわかりやすく、一度聴けばすぐに覚えられるほど明快なもの。一方で、映画のサウンドトラックやゲーム音楽、世界各地の民俗音楽を取り込むアレンジメントの幅広さは、「エクリブリウムは○○メタルである」という、単純なカテゴライズを拒否しているのが面白い。まさに「エクリブリウム」というバンド名が示す通り、ブラック・メタルからフォーク・メタル、パワー・メタル、そしてメタル以外の音楽が、バランスよく共存しているということなのだろう。この記事の書き出しでは、ルネに倣って「エピック・メタル・バンド」と表記したが、「エピック・メタル」というジャンルは、単にエピックなメタルという以外に、指輪物語などのファンタジックな小説を題材とした、Manilla RoadやCirith Ungol、Omen、Brochus Helm、Virgin Steeleといったもっと狭義のエピック・メタル・バンド群をイメージする人も少なからずいるはずなので、ややこしいところではある。

 今回は『アルマゲドン』というタイトルが示す通り、以前のアルバムよりも暗めの仕上がりとのことだが、まあこれはあくまでエクリブリウム基準で相対的に暗めということだろう。決して陰鬱な曲が並んでいる訳ではなく、十分にお祭り騒ぎの楽曲満載の、いつものエクリブリウムのアルバムと思って頂いて差し支えない。

 やはりエクリブリウムのような、徹底的に昂揚感を煽るスタイルのバンドが本領を発揮するのはライヴである。残念ながら15年の来日予定は流れてしまったが、是非『アルマゲドン』を引っ提げてのツアーでは、ここ日本にもやって来てもらいたいところだ。

取材・文:川嶋未来/SIGH


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