【インタビュー】佐渡裕

2016年03月04日 (金) 09:30

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2015年秋、オーストリア、ウィーンの名門<トーンキュンストラー管弦楽団>音楽監督に就任した佐渡裕。音楽の殿堂として名高い、ウィーン楽友協会<黄金のホール>を拠点に108年の伝統を誇る欧州屈指のオーケストラを率いて音楽の都より早くも凱旋。話題必至の日本ツアーを目前にした佐渡氏に話を聞くことが出来た。

 2015年秋、108年の伝統を誇るウィーンの名門、トーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任した人気指揮者・佐渡裕。今年5月にはコンビ初の日本ツアーを行う。

 彼にとってウィーンは、様々な思いが去来する町でもある。

「1988年にバーンスタインのアシスタントとして最初の海外生活をおくった町です。師匠とウィーン・フィルの本番やツアー、録音に同行し、彼が不在の際はオペラハウスに通うなど、素晴らしい時間を過ごしました。でも自分が上がる指揮台はなかったのです。それゆえ悶々とした日々でもありました。1989年にブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し、フランスや日本で少しずつ仕事が始まっても、ウィーンでの仕事は始まらない。ボルドーのオーケストラから誘われて、飛び出すように出て行きました。その後ヨーロッパ各地でたびたび指揮しましたが、ウィーンでは放送響に2回呼ばれただけ。もはや縁のない町だと思っていました」

 そこに突然、トーンキュンストラー管から音楽監督の声がかかった。

「2013年の同楽団への客演が、ウィーンでの3回目の指揮でした。そのときは内容のある練習をスムーズにできましたし、機敏に対応してくれました。すると3回の演奏会の1回目が終わった後、音楽監督を要請されたのです。ただ、1回しか振っていないし、日本のポストやヨーロッパでの客演との兼ね合いもあります。でも毎回、由緒あるムジークフェラインをはじめ複数の公演があり、しかもウィーンでは日曜の午後という、地元の人たちにとって最も大事な時間の公演を任されている。州も力を入れてバックアップしている。これはやるべきだと思って受諾しました」

 監督就任後は、かつての悶々とした時代とは一変した。

「もう夢のようです。籠から自家用ジェットに変わったくらいの差がありますね(笑)。借りているアパートがまたすごく気持ちのいい空間。贅沢なオーディオ装置を大音量で鳴らしています」

 トーンキュンストラー管との演奏にも手応えを感じている。

「非常に柔軟性のあるオーケストラで、音作りにも前向きです。先日ブルックナーの交響曲第4番を演奏したのですが、集中度の高い濃密なコンサートで、このコンビでしか実現しない音を作れた感覚がありました。彼らは実力があり、個人的なレベルも高い。様々な楽器のソロがあるハイドンの交響曲第6〜8番(第6番『朝』は5月の日本ツアーでも披露される)をやったときには、名手揃いで見事な音色感をもっているのを実感しました。なので私にとって間違いなく新しい時代が始まった気がします」

 早速新たな試みも始めた。

「実は日本でやっている『1万人の第九』のオーストリア版を始めました。最初は『あなた方のオーケストラ、新しいシェフ・佐渡裕と一緒に『第九』を歌いませんか?』という投げかけをしたんです。すると500人が集まり、熱心に練習してくれています。だから始まりは『500人の第九』。でもこれはかなりの数字だと思っています」

 3月には「英雄の生涯」のCDもリリースされる。

「非常に満足のいく録音でした。求める音が出るまで録り直し、最終的には美しい光に包まれるような響きが生まれました。またこの曲で活躍するホルンにはとても温かみがあり、ヴァイオリン・ソロを弾く女性のコンサートマスターは、『英雄の生涯』はもちろん、ハイドンも抜群に上手い。彼女はもう宝物ですね」

『英雄の生涯』、『ばらの騎士』組曲 佐渡 裕&トーンキュンストラー管弦楽団

CD輸入盤

『英雄の生涯』、『ばらの騎士』組曲 佐渡 裕&トーンキュンストラー管弦楽団

シュトラウス、リヒャルト(1864-1949)

価格(税込) : ¥2,905

会員価格(税込) : ¥2,352

まとめ買い価格(税込) : ¥1,889

発売日: 2016年03月22日


 5月の日本ツアーでは、前記のハイドンとR.シュトラウスのほか、ベートーヴェンの協奏曲やブラームスの交響曲を演奏する。いずれもウィーンゆかりの作曲家の作品だ。

「108年の歴史があるこのオーケストラに、日本人の音楽監督を起用したのは、彼らにとって大きなチャレンジだと思うのです。私はそれにきちんと応えたい。日本で育った私が、ヨーロッパで28年間培った経験をその場しのぎに終わらせるのではなく、ハイドンやベートーヴェンから、ブラームスやリヒャルト・シュトラウスに至る“ウィーンライン”を確実に固めていく。それがチャレンジに対する私の答えだと思っています」

 初日の福井公演は、55歳の誕生日でもある。

「面白いことに、ベルリン・フィルを指揮した時も5の数字に囲まれていました。ベルリン・フィルのロゴは五角形で、当時50歳。メインがショスタコーヴィチの5番で、前半の武満さんの曲は、5人の打楽器奏者のソロがあり、5つの音からできている。しかもその時住んでいたベルリンのアパートが55号室(笑)。5は自分の運命数のような気がしますね」


 ベートーヴェンの協奏曲では、世界で華々しく活躍するレイ・チェン(ヴァイオリン)とアリス=紗良・オット(ピアノ)が共演する。

「レイ・チェンは、以前ベートーヴェンの協奏曲を共演した際、アプローチが見事に一致したので、今回即座に指名しました。彼は若手ながらも本格派で美しい演奏をします。アリスも容姿と実力を兼ね備えた魅力的なピアニスト。それに、中国系オーストラリア人のレイ・チェン、日本とドイツの血をもつアリスと、日本人の私が、ウィーンのオーケストラと共に、日本でベートーヴェンやブラームスやシュトラウスを演奏し、言葉や宗教を超えて共振し合う。それこそが音楽のもつ大きな力であり、今回のツアーで私が最も伝えたいことでもあります」

 佐渡の思いが凝縮された本公演が、実に楽しみだ。

公演情報


音楽監督就任記念 日本ツアー2016
佐渡裕指揮 トーンキュンストラー管弦楽団


音楽の都ウィーンより、早くも凱旋決定!
佐渡裕が欧州屈指のオーケストラと贈る豪華公演

【日程】
2016年
5/13[金] 19:00 福井県立音楽堂 ハーモニーホールふくい (福井県) 【プログラムA】
5/14[土] 16:00 オーバード・ホール(富山県) 【プログラムB】
5/15[日] 15:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 【プログラムB】
5/17[火] 19:00 長岡市立劇場(新潟県) 【プログラムA】
5/18[水] 19:00 足利市民会館 (栃木県) 【プログラムA】
5/19[木] 18:45 愛知県芸術劇場コンサートホール 【プログラムB】
5/21[土] 14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール 【プログラムB】
5/22[日] 14:00 NHKホール(東京)【プログラムA】
5/23[月] 19:00 サントリーホール(東京)【プログラムB】
5/25[水] 19:00 アクトシティ浜松 大ホール (静岡県) 【プログラムA】
5/26[木] 18:45 愛知県芸術劇場コンサートホール【プログラムA】
5/27[金] 19:00 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール 【プログラムA】
5/28[土] 14:00 フェスティバルホール (大阪府) 【プログラムB】
5/29[日] 14:00 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール 【プログラムA】

【出演】
指揮:佐渡 裕  演奏:トーンキュンストラー管弦楽団
ピアノ:アリス=紗良・オット(プログラムA)  ヴァイオリン:レイ・チェン(プログラムB)

<プログラムA>
ハイドン:交響曲第6番 ニ長調 「朝」
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15(ピアノ:アリス=紗良・オット)
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98

<プログラムB>
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61(ヴァイオリン:レイ・チェン)
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」 作品40
※出演者、曲目は都合により変更になる場合がございます

■公演情報・チケットはコチラ
※一部、ローソンチケットで取扱いの無い公演がございます。詳細はリンク先からご確認ください。


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