DMM.comのPOWERCHORD STUDIOとはどんなスタジオなのか?――インタビュー全文掲載

2015年09月17日 (木) 19:55

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ファミ通 - ゲーム

●DMM.com会長直轄の部隊としてスタートしたPOWERCHORD STUDIOに迫る

 『艦隊これくしょん -艦これ-』(以下、『艦これ』)を中心に、『俺タワー 〜Over Legend Endless Tower〜』(以下、『俺タワー』)など、さまざまなブラウザゲームをDMM.comで提供しているスタジオ、POWERCHORD STUDIO。岡宮道生氏が室長を務め、DMM.comで提供されるゲームをプロデュースすることが、おもな役割となっている。同スタジオが、2015年9月17日〜同20日までの4日間(9月17日、18日はビジネスデイ)千葉県の幕張メッセで開催される“東京ゲームショウ2015”にブースを出展。同スタジオの新作タイトルが試遊できるブースとなっているということで、改めてPOWERCHORD STUDIOとはどんなスタジオで、どんな作品を手がけているのかを週刊ファミ通2015年9月17日発売号にて大特集。同号で掲載しきれなかったインタビューの全文を、ファミ通.comで掲載する。


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▲左から、吉原正訓氏(文中は吉原)、岡宮道生氏(文中は岡宮)、平田裕介氏(文中は平田)。

──POWERCHORD STUDIOは、どんな経緯で設立されたスタジオなんでしょう?
岡宮 現在、非常に多くのゲームがDMM.comのプラットフォーム上で提供されていますが、オンラインゲームを主導的に展開しているのは大きく分けてふたつの部署なんです。ひとつがDMMゲームズのブランドで出しているオンラインゲーム事業部で、もうひとつが『艦これ』がスタートしたときは僕ひとりしかいなかった会長直轄部隊、現在のPOWERCHORD STUDIOなんです。

──会長直轄部隊なんですか?
岡宮 ええ。DMM.comの会長・亀山(敬司氏)直下ということで、社内では通称“亀チョク”と呼ばれたりしていますが、亀山が新しい事業を始めるために幅広く外部の人間を募って集まった人たちが在籍していて、DMM英会話やDMM.makeなど、最近のテレビCMでよく見る事業もこのメンバーが立ち上げて運営しています。私はスクウェア(現・スクウェア・エニックス)やAQインタラクティブ(現・マーベラス)に在籍していたので、いちばん事情がわかっているゲーム事業についてプレゼンしたところ、オーケーとなったんです。それで、タイトルとして何を出そうか迷っていたときに、以前、いっしょに仕事をしていた『艦これ』運営鎮守府(C2)統括の田中(謙介氏)さんに相談して、『艦隊これくしょん -艦これ-』のプロジェクトが始まったんです。

──それがきっかけだったんですね。その後、『艦これ』が大ヒットしましたが、スタジオはどんな舵取りをしていくのでしょう?
岡宮 『艦これ』が大きくなればなるほど、事務的な業務が増えてきたのと、ほかにもおもしろいゲームを出したいけどひとりでは限界があるな、と思い始めたのですが、そんなときにAQインタラクティブでいっしょだった吉原が加わることになって。

──『艦これ』の田中さんといい、これまでの岡宮さんの仕事と人脈がどんどんつながっていきますね(笑)。
岡宮 そうなんですよ(笑)。僕がいままでやってきたことがどんどん結集していくというか。平田もじつはスクウェア時代の僕の先輩で、ゲームの宣伝を確立したと言っても過言ではないような人なんです。
平田 それは言い過ぎです(笑)。
岡宮 過言ではないです。
平田 でも、真実でもないと。
一同 (笑)。
岡宮 いまではスタッフも8人にまで増えまして。そのうちタイトルを持っているのが現状では4人ですね。

──スタジオは、どんな雰囲気ですか?
岡宮 けっこう、みんなバラバラでやっている感じですね。先の『艦これ』も基本的には開発・運営を田中さん率いるC2さん(『艦これ』運営鎮守府)にお任せしています。ポイントポイントや全面的な大きな案件は、僕と田中さんが直接相談して舵取りを共有していますね。そんな形でスタジオ内に開発・運営スタッフがいるわけではないので、だいたい外のパートナーさんとの打ち合わせにそれぞれが行っていたりするため、会社にいないことも多いんじゃないですかね。

──そういう状況下でスタジオの理念などを共有するのは難しいのでは?
岡宮 逆にそういうものをあまり決めないほうがおもしろいかな、と思うんです。もちろん、そのときどきで「これはやらないようにしよう」とか、「こういう方向のものをやろうよ」といった話はしますけど、基本は個々人の思いに任せています。

――ちなみに、スタジオ名のPOWERCHORD STUDIOというのはどういう意味なんでしょう?
岡宮 ギターでよくやる奏法で、1度と5度だけの音を鳴らす “パワーコード”というのがあるのですが、そこからきています。

――なるほど。岡宮さんらしく音楽からきている名前だったんですね。
岡宮 ええ。あまり悩んでもしょうがないので、「これでいいか!」と(笑)。
平田 いわゆる思いつきと(笑)。
岡宮 パワーコードの響きがシンプルで力強い、メジャーだろうがマイナーだろうが関係ない、というところがPOWERCHORD STUDIOとして提供していきたいゲームと共通するかなと。そんな感じで。

――POWERCHORD STUDIOでこれまでにあった忘れられないハプニングとかはありますか?
平田 あまり記事にできないようなことならいっぱいありそうですね(笑)。
広報A 毎日がハプニングですからね。どのレベルからハプニングなのかがわからなくて(笑)。
岡宮 それはゲームの話じゃなくて個人の話じゃないの?(笑)
平田 事故で止まった電車の中に閉じ込められたとか。
岡宮 それ昨日の俺の話ですから!
一同 (笑)。


■POWERCHORD STUDIOが今後提供するゲームの数々

――POWERCHORD STUDIOのタイトルは、擬人化キャラクターのタイトルが多い印象があるのですが、今後もそういう路線を続けていかれるのでしょうか?
岡宮 やはり『艦これ』がメインの提供タイトルになっているので、そういう印象はあるかもしれないのですが、『艦これ』以外のタイトルでも企画段階でゲーム部分をまず考えて、必要であれば擬人化を取り入れるようなものを提供できるように、とは考えていました。ただ、同じシステムの側替えで擬人化が使われていたりするゲームが社内外で増えてくると、ユーザーの皆さんも「もう擬人化はいいよ」とか、「ゲーム内容もまた同じ?」という気持ちになってしまうのではないかと思っていて。そういう意味で、僕らとしては擬人化キャラクターのゲームを出すのは、今後あまりよくないんじゃないかと……。
平田 最近は、擬人化ありきで企画しているようなタイトルも多いですしね。
岡宮 すでに『艦これ』がありますし、タイトルを増やしていくなら、それとは違う新しいものも提供していきたいので、擬人化に関してはしばらく前に企画がスタートしていた『レーシング娘。』を最後に、今後は慎重に考えようという話はしています。

――なるほど。いま話題に挙がりました『レーシング娘。』はかなり気合を入れて、細かい設定をつけていると伺っていますが。
吉原 世界観などについてはまだあまり言えないのですが、擬人化のゲームタイトルが増えている中で出すというところで、細かくいろいろと仕込んでいます。クルマを題材にしたのも、あえてベタな題材を選ぶという意味合いがあります。いまの若い人はあまりクルマに興味がないそうなので、最初はクルマ好きのオジサンがシンパシーを感じるクルマだけ出そうと思っていました。ですから、1970年代、1980年代のバブルのころのテイストだったり、オジサンたちがこだわりを感じるポイントを緻密に作っていこうということは現場でよく言っています。あとはユーザーの方のほうが“濃い”ということを前提として、どんどんツッコミを入れてくださいという隙を作っています。クルマ好きの皆さんの濃い知識を存分に発揮していただければ、と。

――もちろん、その中に「ここ、わかってるじゃん」と言われるようなポイントも含ませつつですよね(笑)。
吉原 そうですね。難しいところではあるのですが、レースゲーム好きな人にゲームのシステムを楽しんでもらえるように、というところはいちばん苦心しているところですね。ゲームの仕組み的にはレーシングシミュレーターを目指していて、ジャンルは“レーシング娘シミュレーター”と謳っています。ユーザーの皆さんが長時間集中してゲームをプレイされるわけではないので、ずっと画面の前にいることができない方や、なかなか操作する時間が作れない人にも、ゲームの肝を楽しんでもらえるためにはどうしたらいいか、ということを考えながら、“ブラウザゲーム”という環境の中でパッケージングする仕組みを取り入れています。とにかくサクサク遊んでもらいつつ、レーシング娘を愛でていただければと。

――なるほど。『レーシング娘。』以外には、どんなタイトルが控えているのでしょう?
岡宮 僕はいま、『勇者ヤマダくん』というタイトルの制作をOnion Gamesさんと進めています。ほかにもいくつか進行しているものはありますが、『KORG DS-10』のときみたいな、尖がったものを出したいんですよね。

――『KORG DS-10』のときは岡宮さんや佐野電磁さん、光田康典さんが、いろいろなイベントに参加したり、本当にいろいろ動き回っていたじゃないですか。ああいうことをまたやられるということですか?
岡宮 そうですね。いま『勇者ヤマダくん』でも、木村(祥朗氏)さんとか、倉島(一幸氏)さんとか、開発者であるOnion Gamesの面々と、ユーザーの方との距離が近い小規模な試遊イベントをやっていたりします。ガーッと大勢の人を集めてきて、実際にプレイする人以外はどんどん離れていってもいい、みたいなやりかたではなくて、“こういうゲームが好きだ”という人にしっかりと伝えていきたいんですよ。やっぱり個性があるタイトルですし。『KORG DS-10』のときもそういう感じで、食いついてきた方とまずコミュニケーションをして、どういう使いかたができるのかを伝えつつ、ユーザーさんから要望があったら吸い上げたりとか。ファンの方々に育てていただいたみたいなところがあったので、そういうのにちょっと立ち戻りたいと思っています。

――平田さんは、どんな作品を作られているのでしょうか?
平田 私は『フレンドラ 竜とつながりの島』(以下、『フレンドラ』)というタイトルを制作中です。『フレンドラ』は基本的にはファーム系のアプリなんですけど、ファンタジー世界のファーム系アプリってあまりないよね、というところが開発のきっかけでしたね。私は頭の中で、ふたつの異なるものをくっつけてゲームを創造するようにしていまして、『フレンドラ』は“ファンタジー”と“ファーム”を融合したものになります。そこに自分の中で、いま世に出ているファーム系アプリで物足りないと感じている要素などを盛り込んで企画しました。基本的には自分の街をどんどん拡張していく、シミュレーションゲームですね。
岡宮 そういえば、僕らのチームはシミュレーションゲーム好きが多いですね。

――皆さん、いろいろなメーカーを渡り歩いていらっしゃるようですが、POWERCHORD STUDIOのよさっていうのは、どんなところなんですか?
平田 さきほどは岡宮がチームとしての方針はないと言っていましたが、最初に「いわゆる課金ガチャはナシで考えてみませんか?」ということを言われたんですよ。それはすごくいい考えかただなと思っています。ガチャってプランニングのときに思考停止してしまいがちな要素なんですよね。ガチャをやめてそれに変わるものを盛り込んでいこうとするとゲームに膨らみができるんです。だから、それはすごくいいことを言ってくれたなと思っていて。もちろん、それに代わるシステムを考えることはかなりたいへんなんですけど。

――そうですよね。どうやってマネタイズするのか、という点も会社ですから運営を続けるうえでは重要なことですし。
平田 そうなんです。でも、そこですごく考えるので、新しいゲーム性やマネタイズの方法が出てくる可能性があると思っています。
岡宮 僕は、ガチャのシステム自体は悪いものではないと思っているんです。ガチャというシステムをもとに、人気のあるゲームを作られている方もいっぱいいらっしゃいますし。ただ、構造がガッチリはまりすぎていて、ガチャありきでスタートすると、どうしてもガチャをおもしろく回してもらうためにゲームを作るみたいな感じになっちゃうんですよね。だから、いっそ企画スタート時に、1度ガチャというシステムを捨ててみたらどうかなと。結果として、新しい形のフリー・トゥ・プレイみたいなものができ上がるとすごくいいんじゃないと思っています。もう、ものすごく難しいんですけども……。


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■『レーシング娘。』

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■『勇者ヤマダくん』

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■『フレンドラ 竜とつながりの島』

■POWERCHORD STUDIOが“東京ゲームショウ2015”に出展!

――控えているタイトルの中に、もう1本『きみとくりお』というタイトルがありますね。これは、どんなタイトルなのでしょう?
吉原 これは僕のほうで立ち上げたタイトルなんですが、心のトレーニングアプリですね。簡単に言うと、“脳トレ”みたいなことをして、うつ病にならないために心を鍛えようと。

――めちゃめちゃ尖ったのが出てきましたね。
吉原 心療内科の教授方といっしょに、実際に医療現場で使われているプログラムをもとに制作しています。不安障害になったり、うつ病の前兆が出てくる前に、自分で心がまえをしておこうよとか、自分の心の状態をチェックして、少しずつ改善できるようにしようということを、実用+エンタメという立てつけでやれないかなと思ったんですね。スタジオに入ったときに「なんでもいいよ」という感じだったので、じゃあ非ゲームっぽいものをやろうと思って企画を立てたんです。
岡宮 そういう方面のものにもチャレンジしてもいいんじゃないかと。
吉原 だから、一般向けというか、ヤングサラリーマンから団塊の世代まで嫌悪感を抱かずに触ってもらえるようなユーザーインターフェースだったり、仕組みだったりというものを、アニメーション作家さんやお医者さん、実用系のアプリを作っているチームと試行錯誤しながら作っています。現在、2015年年内公開に向けて進行中です。

――でも、そういう実用系のアプリも制作されていることは驚きました。
吉原 実用系のコンテンツをエンタメという枠の中にどう組み込むかというところで、まだ苦労しています。どういった評価をいただけるかはこれからになるんですけど、こういったものがあってもいいのかなというところから始めた企画ですね。そういう意味では、自分のキャラクターとは違うところでチャレンジしているところではあります。自由な環境でやらせていただいているという点では、いい職場だなと。ちょっと褒め系で締めてみました。
岡宮 それ褒めてるの?
吉原 なんでもやらせてくれるという意味では。
岡宮 なんでもやらせるわけではないですけどね!(笑)

──(笑)。POWERCHORD STUDIOの今後のラインアップが見えてきたところで、今後の展開として、まずは“東京ゲームショウ2015”への出展がありますね。
岡宮 皆さんに来ていただけるかどうか、ちょっとビビっています(笑)。ブース自体も非常に大きいので。

――ユーザーさんも期待している、『艦これ』のシアターでは何が観られるのですか?
岡宮 スミマセン! これは言えないです。ぜひ、会場に足を運んで、その目で確かめてほしいですね。『艦これ』はフィギュアの展示もあります。発売前のものも含めて、60体近く展示されるのですが、それだけの数が1ヵ所に集まるのはなかなかないので、僕も楽しみですね。あとは『勇者ヤマダくん』コーナーに設置した実況ブースから、ニコ生の番組を配信したりもします。各タイトルに関係していただいている植松伸夫さんや細江慎治さん、下村陽子さんにもゲストとして登場していただく予定ですので、そちらの配信も楽しみにしてほしいです。やっぱり会場に来られない方もいると思うので、ブースの雰囲気を少しでも味わってもらえればうれしいですね。もちろん、会場に来られるという方は、ぜひPOWERCHORD STUDIOのブースに立ち寄っていただければ!


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■『きみとくりお』

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