HMVインタビュー: ラスマス・フェイバー

2009年11月12日 (木)

interview

Rasmus Faber

今回のプロジェクトのようにジャズとアニメ音楽を結びつける架け橋の役として僕はたぶん適したプロデューサーだろうともね。


--- 今回のPlatina Jazzのプロジェクトが立ち上がった時に、ラスマスのモチベーションが予想以上に高くて驚いたのですが、日本のアニメ音楽があなたをそこまで魅了し、刺激するのは何故なのでしょうか?

Rasmus Faber: ティーンエイジャーになるといろんなものを吸収するよね。僕は音楽を作ろうと思った時、いろんなハーモニーや、違ったタイプのムードを必要としていたんだけど、アニメ音楽にはそういった要素が多く含まれていたんだ。実際、今も含まれていると思うよ。特にムードや感情を強調するための要素が強いところがいい。『マクロスプラス』のサントラを買ったのは18歳とか19歳くらいのことだったと思うんだけど、すごく気に入ってたんだ。

--- 菅野よう子さんが手掛けたサントラですね。

Rasmus Faber: そう。で、日本のアニメ音楽には、純真で無垢な要素が含まれている。むしろ一般的な日本の音楽に多く含まれる要素と言ってもいいかもしれないね。時々、この純潔無垢なものがある一線を超えてしまって、子供っぽくなったり、J-POPっぽいサウンドになってしまっているのを目撃することがあるんだけど、このバランスがパーフェクトなときは、もうすごく琴線に触れるというか、人の中の純粋さを守ろうと努力する美しさのようなものが表現できるんだ。カンノさんの『Voices』はまさにそういう曲だと思う。夢だったり、より高い目標だとか、ゴールに向かって進む目的のようなものが含まれているような気がするんだ。曲そのものがアニメ作品から影響やインスピレーションを得て作られたものだからなんだろうね。僕はそういった夢のある音楽に惹かれてきたんだ。

--- そこにジャズというテーマが加わることで、さらにあなたのモチベーションが上がったという訳ですね。

Rasmus Faber: そうなんだ。僕の音楽生活はジャズから大きな影響を受けてスタートしたからね。父親がジャズ・ミュージシャンだったから、僕は幼少の頃からジャズを聴いていて、結果ジャズ・ピアニストになったんだ。

--- そして今はDJ/プロデューサーとして活躍していると。実際に作り手の側から見て、ジャズとアニメ音楽の親和性は高いものだったりするんでしょうか?

Rasmus Faber: ふむ……これはテクニカルな話になるんだけど、日本の音楽やアニメ音楽と一般的な西洋音楽のコード進行ってちょっと違うんだ。日本のほうがコードがよく動く。一方、今の欧米でのポピュラー・ミュージックでは2つのコードを中心に進行していくことが多いんだ。でも、日本のポピュラー・ミュージックにはもっとたくさんのコードがあって、それがむしろ古い西洋音楽を彷彿とさせるんだよね。

--- ははぁ、昔の西洋音楽はもっとコードを多用していて、そこに通じる部分が日本のコード進行にはあると。

Rasmus Faber: そう。で、このムーヴィング・コードがジャズにアレンジするときに役立つんだ。だから『Platina Jazz』のコンセプトを聞いたときは、『いいな』と思ったよ。そしてこれまでに僕がやってきたこと、手がけた音楽など全てを考慮すると、今回のプロジェクトのようにジャズとアニメ音楽を結びつける架け橋の役として僕はたぶん適したプロデューサーだろうともね。

--- ちなみにアルバムを手掛ける時に意識していたことはありましたか?

Rasmus Faber: 企画がスタートしたときから、僕はこのアルバムをジャズ・ファンにもアニメ・ファンにも聴いてもらえるようなものにしたいと思っていたんだ。長い期間スタッフやミュージシャンたちといろいろ話し合ったし、今のような形に至るまでに時間もかかった。オリジナル・ヴァージョンに忠実でありながら、全楽曲をリアルなジャズにすることを試みたからね。そのために選曲やアレンジを詰めるのに数ヶ月かけたんだ。

--- 他に制作する上で気をつけていた点はありますか?

Rasmus Faber: 特に集中していたのはメロディー、ハーモニーだね。オリジナルのメロディーをキープしながら、僕のルールに沿って編曲していった。そのルールとは、ある曲があってそれをジャズにできない曲ならこのアルバムには入れられないということ。そして、ジャズにするならジャズ・ファンが唸るような本格的なジャズにするということだったんだ。

--- アニメにもジャズにも敬意を払うということですね。

Rasmus Faber: そう。でも、曲によって難易度は違ったけど、やればやるほど作業は簡単になっていったんだ。当初はジャズにできるのは全体の3分の1くらいだなと思っていたんだけど、やりはじめたらいくつも方法があることがわかってきて、最終的には『どんな曲でも持って来て、なんでもジャズにできるよ!』というところまでいった(笑)。

--- ここからはラスマスのアニメファンとしてのキャリアについて伺いたいんですが、元々日本のアニメを見始めたのはいつの頃からだったんですか?

Rasmus Faber: 僕が最初に見たのは『風の谷のナウシカ』だね。幼稚園のときだった。確か公開されて間もない頃で、スウェーデン語の吹き替えがついていた。子供向けのタイトルって感じで、VHSか何かで見たと思う。そのあとティーンエージャーになってから『AKIRA』『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』といった欧米でも人気の日本アニメを観たんだ。『パトレイバー劇場版』も観たし『王立宇宙軍 オネアミスの翼』も見た。サカモトさんのことを知る前のことだよ。

--- これは日本人としてとても興味があるんですけど、海外の人たちは日本のアニメのどんな点に魅力を感じているのでしょう?

Rasmus Faber: 面白い質問だね。自分の意見しか言えないけど……僕は、実は日本のアニメを見て“エキゾチック”だとは感じないんだ。

--- へえ、意外ですね。

Rasmus Faber: 例えば実写の映画で日本作品を見れば“エキゾチック”だと感じるものもあるけど、アニメからはそれを感じない。アニメであっても深い感情表現だったり、暗に隠してある表現や詳細な描写といった、大人が見ても面白いものができるんだっていうのがすごいとは思う。アニメをそういうレベルにまで持っていってもいいんだ、という点は驚きだ。日本は子供だけじゃなく多くの大人も漫画を読んでいるよね。考えてみたら、映画を作るには便利な方法だから、西洋社会にももっとこういう大人向けのアニメがあってもいいよね。え〜と……質問の内容はなんだったっけ?(笑)。

--- あ、海外の人から観たアニメの面白さってなんだろうってことです(笑)。

Rasmus Faber: ガイジンの視点と僕自身の視点の違いってところにとらわれて質問の答えを見失ってしまった……(苦笑)。“アニメの魅力”だよね? 僕は普通の映画よりもアニメの登場人物により感情移入しやすいと感じるんだ。

--- へえ! 普通だと生身の方が感情移入し易そうですけどね。

Rasmus Faber: 普通の映画だとどうしても演じている俳優たち、生身の人間を『見ている』ことになるけど、アニメの場合、登場人物はシンボルのようで象徴的だからね。それにアニメでは語らない部分が多い分、足りない部分を埋める作業を見ているこちら側がしなくちゃいけない。そこに自分自身の経験・体験や自分の性格とかを投影するので、より入りやすいというか、よりパーソナルな体験にできるんだと思う。

--- 自分なりに感情を補完する余白がアニメにはあると。

Rasmus Faber: うん。僕の友人の中にはアニメだというだけで、全く相手にしない人もけっこういる。けど自分とのつながりを登場人物やストーリーと重ねて見ることができるようになると、むしろ普通の映画やドラマより一層楽しめるものになり得ると思うな。アニメに出てくるキャラクターはどれも見た目はほとんど同じだ。違いを生むのは脚本で、空いてる欄、足りない部分、語られない部分は自分で埋めないといけない。例えば“この状況は昔経験したあのときと似てるな”とか“この登場人物はいとこの○○に似てるな”とかね。ああ、ちょっと分析しすぎだね!

--- いや、嬉しいですよ。そんながっちり分析していただいて。

Rasmus Faber: ハハハ。というのもこの前『ガンダムSEED』を観たんだけど、久しぶりに感動したからなんだ。我ながら“これはマンガじゃないか、なぜここまで心を動かされるんだ!?”と思った。それでなんとか答えを出そうと頑張ってしまったのかもしれないね。

--- それでは最後の質問なんですが、この作品を手に取ったリスナーにメッセージをお願いします。

Rasmus Faber: 純粋なジャズのリスナーであっても、アニメ音楽好きであっても、これをきっかけに他のジャンルに興味を持ってくれるといいね。どちらのジャンルもリスペクトしながら取り組んできたので、二つのジャンルを橋渡すような、溝を埋めるような作品になるといいな。どちらのファンでもある僕のような人間にとっては、アニメ音楽をジャズというジャンルの持つタイムレスな形式にうまく変換させられたと思うからね。僕自身この作品を誇りにも思ってるので、みんなにも存分に楽しんでほしいね!

インタビュー:サトウユズル
通訳及び対訳:長谷江利子

※ インタビュー完全版は商品ブックレットに収録されています!




新譜Platina Jazz - Anime Standards Vol.1 / Rasmus Faber
日本でも大人気!スウェーデン出身の美メロ・ハウス・プロデューサー、ラスマス・フェイバーがファンタジー、ロボット、新旧傑作アニメの名曲を最先端のヨーロピアン・ジャズに再構築というビックリ企画が実現!!実は日本アニメの大ファンだという彼が選りすぐりのジャズ・ミュージシャンを招集し、本気のアレンジで挑んだ ジャズ〜美メロ・ハウス〜アニメ・ファンまで注目の一枚!
profile

スウェーデン生まれのプロデューサー・ピアニスト・ソングライター。幼い頃からピアノを始め、10代の頃はジャズ・ピアニストとして活躍。本人曰く「19歳までは一日中ピアノの練習をしていたよ」という、他のハウス系アーチストとは違うバックグラウンドからスタートしている。パット・メセニー・グループが大好きだった、というのもその頃の活動のせいだろう。音楽家としてプロフェッショナルな活動をし始めたときはピアニスト兼アレンジャーとして、スウェーデンのポップスやジャズ・アーチストのプロデュースなどをしていたが、ハウス系アーティストであった友人のレコーディングに参加しことをきっかけにハウス・ミュージックを作り始め、最初に制作したハウス・トラックがデビュー・シングル「Never Felt So Fly」であり、いきなり大ヒットを記録。同年、現在ハウス・シーンのトップ・レーベルのひとつとして君臨する英Defected Recordsのオーナー兼A&Rであるサイモン・ダンモア氏から、アーティストDubtribe Sound Systemのリミックスを依頼され、完成したリミックスを聴いたサイモンは感動のあまりすぐさまストックホルムに飛び、彼のマネージメントそしてレーベル・ディールをオファーしたという逸話も。その後Defectedにマネージメントを任せた彼は、自身のレーベルFarplane Recordsを立ち上げ、レーベル第一弾であり現時点で彼の最高作品ともいえるビッグ・チューン「Ever After」をリリース。国内国外を問わず大ヒットを記録し、ヨーロッパにて何十というダンス・コンピに収録される。その後も自身のレーベルから「Divided/United」「Get Over Here」「Come With Me」等のヒットを連発し、リミックスのオファーも殺到。そして彼のシングルを収録した日本編集企画盤『So Far』が2004年日本で大ブレイク、現在のハウス・シーンのパイオニアの一人となる。そして2008年には待望のファースト・アーティスト・アルバム『WHERE WE BELONG』をリリース。

<オフィシャル・サイト プロフィールより>

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