「コンヴィチュニーの謎解き」
2009年6月25日 (木)
転載 平林直哉の盤鬼のつぶやき 第22回「コンヴィチュニーの謎解き」

今回、オリジナルまでさかのぼってCD化を行った段階で、実は驚くべき事実が発覚したのである。それは、これまで流通していた同じくコンヴィチュニー指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団による同じ曲のブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」、これは世の中に存在しない、つまり中身はウィーン交響楽団のものと同一であることが確定されたのである。
では、どうしてこんなことが起こったのか。ごくおおまかに説明すると以下のようになる。ウィーン響の録音が終了後、安全のためにマスターからセイフティ・コピー(サブ・マスター)が作成され、以後、このコピーでさまざまな作業が行われていた。この原盤はオイロディスクによるものだったが、LP時代、このオイロディスクは旧東ドイツの国営レコード会社エテルナとライセンス契約を結んでいた。おそらく1960年代後半のことと思われるが、オイロディスクはエテルナからコンヴィチュニー指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管とのブルックナーの交響曲第5番、第7番の原盤を借り受けた。そして、自社にある第4番とエテルナからの第5番と第7番をLP3枚組セットで発売したのである。
この時に間違いが起きた。ウィーン響との第4番のテープが保管してあった箱にはオーケストラ名の表記がなかったため、オイロディスクの担当者が第4番もゲヴァントハウスだと勘違いし、“ゲヴァントハウス管による”ブルックナーの交響曲第4番、第5番、第7番の3枚組が市場に流布してしまったのである。国内ではウィーン響と表記されたLPは1971年10月に、ゲヴァントハウス管(中身はウィーン響)と表記されたLPは1973年12月にそれぞれ発売されており、つい最近までこの2種類のステレオ録音の存在が信じられていた。しかし、これは何も日本国内だけの問題ではなく、世界中のカタログやディスコグラフィでも同様の現象が起きていたのである。

同じベートーヴェンでは1959年のモノーラル録音の交響曲第6番「田園」というCD(コロムビア COCO-75405)も出ていた。TKCCの全集はステレオだが、このステレオの「田園」とモノーラルのそれを比較してみると、これらは違う演奏のようにも思える。最も大きな違いは、前者コロムビア盤では第1楽章の提示部の反復がないが、後者TKCC盤では楽譜通りに反復がなされていることだ。ただし、この2つは互いにピッチがかなり異なるため、ピッチを揃えて比較すると案外・・・・・。
そのほか、ワーグナーの「ジークフリート牧歌」というのもある。国内で出た実績のあるものはウィーン交響楽団のものだが、古いレコード総目録にははっきりと「ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団」と記されている。この曲のゲヴァントハウス盤というのは存在しないので(少なくとも正規の録音では)、これは目録の誤植ということも考えられる。ただ、あれこれとひっかっかってくると、どれもこれも疑いの目で見たくなってしまう。そうなると、落ち着いて聴けなくなるので、この問題はとりあえずこのあたりで終了。
(ひらばやし なおや 音楽評論家)


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