HMVインタビュー:Large Professor

2009年6月24日 (水)

interview

Large Professor

レーベル内での政治的な動きが沢山あってね。当時は音楽業界全体がもっとR&B寄りのヒップホップに移行してて、多くのラッパーがストリートというよりスムーズなものになろうとしてたんだ。

--- 本来リリースされるはずだった1996年から約13年もの歳月を経て、今回ようやくあなたの幻のソロ・デビュー・アルバム『The LP』が正式に日の目を見ることになったわけですが、いま『The LP』の収録曲を聴いていてあなたの胸をよぎるのはどんな思いですか?

今でもこのアルバムのエッジーでしっかりした音作りは大好きだよ。このアルバムを聴くと、頭に浮かぶのは一つだけ――それは「ヒップホップ」。

--- では、この『The LP』がお蔵入りになってしまった経緯について改めて詳しく教えていただけますか?

レーベル内での政治的な動きが沢山あってね。当時は音楽業界全体がもっとR&B寄りのヒップホップに移行してて、多くのラッパーがストリートというよりスムーズなものになろうとしてたんだ。

--- この『The LP』に収められている楽曲はいつごろレコーディングされたものなのでしょう?あなたはA Tribe Called Quest「Keep It Rollin'」の自分のヴァースの最後で“Queens represent, buy the album when I drop it”とラップしていますが、「Keep It Rollin'」の録音を行なっていた時点でソロ・アルバムの制作はだいぶ進行していたのでしょうか? 

ATCQの「Keep It Rollin'」であの発言をした時には既に数曲出来上がってたんだ。でもちょうどソロ・アルバムの契約を結んだとこで、もっともっとドープなビートやライムを作ろうと思ってたしね。

--- 当時の状況を思い出して答えていただきたいのですが、あなたがこのソロ・デビュー・アルバムを制作するにあたって心掛けていたこと、またテーマ/コンセプトに掲げていたのはどんなことですか?

もっとストリートに根ざしたソングライティングを目指してたね。『Breaking Atoms』では幅広いテーマを扱ったから、今度は焦点を絞って自分の人たちと真っ向から向き合いたかったんだ。

--- アルバムからの最初のリード・シングルとしてリリースされた“Mad Scientist”の未発表ヴァージョンでは、Galt MacDermotの「Space」がサンプリングされていますね。これは「Mad Scientist」とほぼ同時期にリリースされたBusta Rhymes「Woo Hah!! Got You All In Check」のネタでもあるわけですが、この一致は単なる偶然なのでしょうか?

ああ、あれはちょっとしたミックス・アップがあったんだ。「Woo Hah!! Got You All In Check」をやったRashad Smithがね、ループを聴かてくれて俺は完全にイカれちゃってさ。それで俺はあのループを使っていいかって聞いたらいいよって言ったんだ。まさかBusのためにやったなんて知らなかったからね。だからBustaが俺の曲を聴いたとき、自分もあのループ使うって知らせてくれて、それで俺のはボツにしたんだ。でも俺もあのネタを使ってたって人に聴かせるのもおもしろいかなと思ってさ(笑)。

--- あなたと師弟関係にあるNasとのコラボレーション「One Plus One」はアルバムのハイライトと言える楽曲になると思うのですが、この曲の制作秘話などありましたら教えてください。

あれは本当に突発的なセッションだったんだ。俺はスタジオであの曲の準備してて、そしたらなんと、Nasがやってきてさ。彼が立ち寄るなんて全然知らなかったんだ。だから、「Yo, これやるか」って言ったら完璧に仕上げてくれてさ。確かにアルバムのハイライトだと思うよ。

--- 「Spacey」のプロデュースを務めているToney Romeについて教えてください。また、その「Spacey」でNeek The Exoticと共に客演しているVandematorなるアーティストについても詳しく教えてもらえますか?

Toney RomeもVandematorも俺の出身フラッシング(クイーンズの地区)で一緒に育った仲間(ホームボーイ)なんだ。俺が『Breaking Atoms』や他のプロダクションのレコーディングやってたときもずっといたよ。彼らはドラム・マシーンをいじくって、俺が使いたくなるようなビートにまで仕上げていったんだ。すごく自然な流れだったよ。

profile

DJプレミア、ピート・ロックらと並び90年代のヒップホップ・シーンを代表するプロデューサー/ラッパー。ヒップホップ界の偉人ポール・Cに師事してプロダクション・スキルを学び、エリック・B・アンド・ラキムやクール・G・ラップ・アンドDJポロらの作品に関与。メイン・ソースの一員として91年に名盤『ブレイキング・アトムズ』をリリース。グループ脱退後はソロとして活動し、Nasのデビュー・シングル「Half Time」を始め、トライブ・コールド・クエスト、コモン・センス(現コモン)、ピート・ロック、バスタ・ライムスらの楽曲をプロデュース。今でも現役で活動し、その人気は衰えることがない。