--- お次は、こちらもレッズ時代のカヴァー曲「Casino Drive」。ブルージーにスローダウンした大胆なアレンジが施されていますが、このアイデアの出所というのは?
ユカイ この曲は、ずっとこんな感じでライヴで演ってたんだよね。今回、是非ともそれを演ってくれって、某レコード会社の人間が言ってきて(笑)。
--- このアレンジは、かなりかっこいいですね。
ユカイ そう? でも、こういう風にアレンジして、オリジナルを崩しちゃうのって賛否両論じゃない?勿論、そういう所も背負いながら、でもやっぱり、今俺はコレがいいんだっていうね。
--- 実際、ファンの方たちから、「このアレンジはどうなの?」みたいなクレームが来たりもするんですか?
ユカイ ライヴでは・・・まぁ、そういう意見も、ちょっと聞いたことはあるよ。「これはCasino Driveじゃない!」とかさぁ(笑)。でも、それはしょうがないよね(笑)。俺は、このテイクはよく出来たなぁって思ってるんだよね。一発採りなんだけどさ。
--- では、ラストの曲「I'm The Best」。レッズ時代の「Old Fashioned Avenue」などもそうでしたが、50年代の古き良きハリウッド映画音楽、あるいは、フランク・シナトラ、トニー・ベネットのような人たちの世界観などというのは、やはり、ユカイさんに多大な影響を与えているのでしょうか?
ユカイ そう思う?いや、俺大好きだよ。そう言ってもらえると嬉しいけどね。トニー・ベネットとビル・エヴァンスのアルバムとか大好きだからね。『Tony Bennett / Bill Evans Album』、『Together Again』、2枚ともね。シナトラもほとんど持ってるかもね。プレスリーも大好きだけどね(笑)。その時代の音は好きかも知れないねぇ。
でもね、この曲は、ウクレレで遊んでて、こういうアレンジになっちゃっただけなんだよね。
--- ウクレレで思い出したのですが、現在ライヴなどでもレッズ時代の「It's Alright」を演奏したりすることはあるのですか?
ユカイ あれは演ってないよ(笑)。あれは、ほら、バンドのテーマ曲みたいなもんだからさ。
--- さすがにそうでしたか(笑)。あの曲も聴いてみたいですけどね。シャケさんが参加したライヴのアンコールの時にでも・・・
ユカイ 「It's Alright」を?(笑)あぁ、でも面白いかもね。この曲は・・・忘れてたよ(笑)。
--- 例えば、レッズ楽曲で他に候補に挙がっていた楽曲というのはあったのでしょうか?録ってみてダメだったりとか・・・
ユカイ いや、それはないね。演るんだったら、これだっていう感じで、最初からここに入ってる曲に決めてたんだよね。まぁ、まだまだ名曲がたくさんあるんだけどね。
--- 核心に触れるような質問になってしまうかもしれませんが、レッド・ウォーリアーズは、90年代に2度の再結成、一昨年の再結成Zepp Tokyo公演、そして、今回のアルバムと3/15のライヴ公演。ユカイさんにとってシャケさんというのは、どのような存在になるのでしょうか?
ユカイ う〜ん・・・難しいけどね・・・
--- 今は、付かず離れずの距離感を保っている感じなのでしょうか?
ユカイ そうだね。あまりくっ付いてはないけどね。でも、10代から20代の前半にかけて、知り合って一緒に曲を作った仲間だし・・・何て言うんだろうなぁ・・・他のメンバーたちとは違う感覚はあるよね。ある意味で、兄弟みたいな感じかな。
--- 一般的に、ロック・ファン、音楽ファンからすると、メインのヴォーカリストとギタリストに対しては、わりと特別な関係性を透かして見るようなところがあるじゃないですか?例えば、ミック・ジャガーとキース・リチャーズみたいな。そういう意味でも、特別な2人だなと。
ユカイ あぁ、そう。まぁ、でも・・・そこは、よく分からないね、俺には。ただ、やっぱり何かの結び付きはあるんだろうね・・・少なからずともね。まぁ、“ソウル・ブラザー”とでも言っとこうか。
「悪魔を憐れむ歌」は
“デカダン”と呼ばれるものなのか・・・
ドストエフスキーとか太宰治的な
そういう匂いが当時の高校生にはゾクゾクくるっていうさぁ
--- ではここで、事前にお選び頂きました、ユカイさんのフェイヴァリット・ロック・アルバムについて、お話のテーマを移させていただきたいのですが、まずは、「ロックに夢中となるきっかけの3枚」をご紹介して頂けますでしょうか?
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4 Beatles 『Please Please Me』
ビートルズの記念すべきデビュー・アルバム。ファン気質丸出しの偉大なるアメリカン・ポップス、R&Rのカヴァーに初々しさを感じるが、すでに、ビートルズ流にアレンジして自分達のモノにしているから驚きだ。「Anna」の荒れた迫力あるジョンのヴォーカルもイイし、圧巻は何と言ってもたったの2テイクで録ってしまったという伝説の「Twist And Shout」。ヒット・シングル「Please Please Me」、「Love Me Do」も収録。
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4 Rolling Stones 『Beggars Banquet』
ブライアン・ジョーンズ在籍最期の作品としても有名な68年のアルバム。圧倒的なアフロ的グルーヴ感と、いきなりカン高い音で斬り込み暴れるギター・ソロがかっこいい「悪魔を憐れむ歌」、アーシーな雰囲気が堪らない名曲「No Expectations」、今もバンドの重要なレパートリーとなる「Street Fighting Man」などを収録。
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4 Beatles 『The Beatles (White Album)』
通称『ホワイト・アルバム』。67年、ヒッピー文化に多大な影響を与えたトータル・アルバム『サージェント・ペパーズ〜』発表後にリリースされ、彼らの音楽的野心を2枚組というヴォリュームで展開した作品。メンバーがバラバラに録音したりとバンドとしての求心力は失ったが、ヴァラエティに富んだ楽曲で楽しませる。ビーチ・ボーイズ風コーラスをパロった「Back in the U.S.S.R.」、アコギの響きが美しい「Blackbird」、当時珍しかったスカのリズムも陽気な「Ob-La-Di, Ob-La-Da」、クラプトン参加のジョージ名曲「While My Guitar Gently Weeps」、ジョン+ヨーコの実験作「Revolution No.9」などメンバー各々の嗜好が興味深く顕れている。
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--- こちらはいずれも、中学2年生の時に初めてお聴きになったということなのですが。
ユカイ そうそう。子供の頃、モンキーズなんかは好きだったんだけどね。でも本当にロックと呼べるものとして一番最初に聴いたアルバムは、『Please Please Me』かな。特に、「Twist And Shout」。あれで、ダイアモンド☆ユカイが生まれたと言ってもいいぐらいだね。
『Beggars Banquet』は、「悪魔を憐れむ歌」だよ、何と言ってもね。この曲だけアルバムの中で突出してるもん。これは、高校の時なんだよね、ちゃんと聴いたのは。バンドを組むときにさ、影響を受けて・・・「何だコレ!?」って感じかなぁ。何だか分からないけど、“デカダン”と呼ばれるものなのか・・・ドストエフスキーとか、太宰治的なさぁ、そういう匂いが、当時の高校生にとってはゾクゾクくるっていうさぁ(笑)。
--- ある種の背徳感のような・・・
ユカイ そうなんだよね。それが何とも言えなくて・・・かなり影響は受けたかな。「これがロックか!?」っていうさ(笑)。「悪魔を憐れむ歌」って、同じタイトルで、キース・リチャーズが主人公で、トニー・サンチェスっていう人が書いてる本が出たんだよ。それが、多分高校2年ぐらいだったんだよね。そのイメージともダブってさ。
当時のローリング・ストーンズのイメージっていうのは、今と違ってさ(笑)。周りでストーンズ好きだった人たちも、何かいかがわしいヤツばっかりだったんだよ(笑)。だから、本当の意味でロックの・・・“気持ち”っていうの?・・・何て表現していいか分からないんだけど・・・ちょっと違うんだよね。真っ直ぐな気持ちっていうよりは、斜め45度ぐらいから物を考えるみたいなさぁ(笑)。
--- 「悪魔を憐れむ歌」以降の収録曲は、「No Expectations 」や「Prodigal Son」など、わりとカントリー・ブルースに根差した曲調のものが多いのですが、そういった楽曲からの影響はいかがでしょうか?
ユカイ 他の楽曲も、世界観という部分では、「悪魔を憐れむ歌」と一緒だけどね。歌詞の内容とか。当時、ツェッペリンとかもこんなような楽曲を書いてたけど・・・結局、どう表現したらいいのかな?“背徳”という言葉でぴったりくるのか、よく分からないけど・・・文学でいうと、ドストエフスキーだよね。あとは、「悪魔を憐れむ歌」の元になったミハイル・ブルガーコフとか、日本だと太宰治だとか、その辺の感じだよね。
--- 高校生当時、「悪魔を憐れむ歌」を聴いて、音楽と文学がダイレクトに結び付いた感じだったのでしょうか?
ユカイ いやいや、そこまで高尚には考えてなかったけど(笑)、でも・・・三島由紀夫はそこまでじゃなかったかもしれないけど、太宰治とか・・・芥川もちょっと近いかもね。真っ直ぐな方向とは、またちょっと違った別の世界・・・まぁ、ブルースっていうのかな。上手く言えないんだけどね。江戸川乱歩とかも近いのかもしれないし。そういったものとロックは、少なからずとも結び付いていたかもしれないね。知らない間にね。
--- ビートルズ『White Album』。やはり、ユカイさんの中ではビートルズなのでしょうね。
ユカイ ビートルズは本当に好きだねぇ。『White Album』は本当によく聴いたんだよ。多分、ビートルズの中で一番聴いたアルバムだと思うよ。全部、曲調が違うじゃん。色々な音楽の要素が入ってて、実験みたいな感じだよね。「Blackbird」はあるわ、「Martha My Dear」はあるわ、「While My Guitar Gently Weeps」もあるし、何と言っても、ジョンの「Revolution No.9」まで入ってるんだから。わけ分かんないよね(笑)。でも、何かすごく好きだったね。あの突拍子のなさも含めて。マニアックなんだよね、ひとつひとつの楽曲が。
初めて買ったのはモンキーズだよ
シングルだったと思うけどね
「恋の終列車」
だって幼稚園の時に買ってるもん
--- お次は、「初めて購入されたロックのアルバム」になります。
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4 Monkees 『恋の終列車』
2006年、モンキーズのデビュー40周年を記念した『モンキーズ/恋の最終列車』の豪華2枚組デラックス・エディション。収録全曲のステレオ・ヴァージョンとモノラル・ヴァージョンを完全収録!さらに貴重な未発表音源も多数収録。「モンキーズのテーマ」、ギター・リフのかっこいい名曲「恋の終列車」、ボイス&ハート作「自由になりたい」など名曲多数。
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4 Eagles 『Hotel California』
一貫してアメリカの夢とその象徴的なイメージを具現化して見せてきたイーグルスが、アメリカン・ドリームやウェスト・コースト幻想に対する懐疑や愛情に裏打ちされた眼差しで、幻想の崩壊を眺めている・・・といった趣きの歌を哀愁たっぷりの曲調で歌い上げた表題曲は、76年当時のニューヨークやイギリスで勃興したパンク・ムーヴメントと”表裏一体”の関係にあったのかもしれない。
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4 Peter Frampton 『Comes Alive』
ザ・ハードの看板シンガーから、スティーヴ・マリオットらとのハンブル・パイを経てソロ活動に転身したピーター・フランプトン。彼の名を広く世界に知らしめた大ヒット・ライヴ盤(76年発表)。ヴォコーダーを使ったユニークなイントロが話題となった「Show Me The Way」ほか、本作からは3曲がシングル・ヒット。MORポップの原型ともいえるサウンドで全世界で1000万枚以上を売り上げた。
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ユカイ あんまり覚えてないんだけどね・・・でも、モンキーズだよ、間違いなく。ピーター・フランプトン『Comes Alive』は、あんまり出したくないんだけど、しょうがないよねぇ(笑)。たしか、そうだったかなぁって。
--- 実は、僕が中学生の頃(1988年頃)に「Pati Pati Rock’n’Roll」か「Arena 37℃」で、ユカイさんやシャケさんが、今回のように「影響を受けたアルバム」というのを挙げていた誌上企画があったんですよ。当時たしか、イーグルスの「Hotel Carifornia」は挙げられていたと思うのですが、ピーター・フランプトンを聴いていたというのは初めて知りました。
ユカイ あの時はかっこつけて、ジャズのアルバムとかをバーッて出してたんだよ(笑)、俺は。
--- ガイルズの『Monkey Island』なんかも挙げられていたと思いますよ。
ユカイ あぁ、J・ガイルズね。あれは好きだったねぇ。でも、初めて買ったのは、モンキーズだよ、間違いなく。洋楽の類では。シングルだったと思うけどね。「恋の終列車」。だって、幼稚園の時に買ってるもん。
--- 幼稚園の時にですか?なかなか早熟ですねぇ(笑)。
ユカイ 俺が幼稚園の時に流行ったんだよ。別にロックとか関係なしにね。「モンキーズ・ショー」っていうテレビ番組があってさ。吹き替え版が日本でもやってて。ずっとテレビでもやってたじゃない?知らない?
--- (制作のご担当者さん)年代が違うから、知らないですって(笑)。
ユカイ 本当!?
--- (制作のご担当者さん)僕らの時代に「モンキーズ・ショー」はやってないですって(笑)。
ユカイ そうかぁ・・・でもさ、そこでビートルズの話が出てきたりするんだよ。「僕らが尊敬するビートルズは・・・」みたいな感じで、吹き替えの人が言うわけだよ。ちゃんとした物語になってて、ビートルズの「Help」とかさ、ああいったもののテレビ版ね。一時期、そういうのが流行ったんだよ。その走り。それは子供の頃に好きだったんだよね。
曲がいいんだよね。キャロル・キングとかが作ってたからさ。作曲者は違うけど、「Daydream Believer」なんて、名曲だよね。
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4 J.Geils Band 『Monkey Island』
J・ガイルズ・バンドの77年作品で通算9枚目となるアルバム。根底にあるR&Bやブルースといった要素を、ハードさとその中に光るメロディの美しさという部分で彼ら流に解釈したかのような音楽性には聴き応えがある。ラスト・ナンバーではヘヴィ・メタル風ともいえるギターがフィーチャーされ聴き手を圧倒させる。
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