HMVインタビュー: thirdiq ダンス&ソウル・インタビューへ戻る

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2007年12月17日 (月)

  インタビュー
  thirdiq
突如音楽シーンに現れ、今までのバンドサウンドともトラックメーカーとも違う感覚で新たなムーブメントを予感させるジャム集団 JAMNUTSのギター/プロデューサー渥美幸裕と、SOIL & HEMP SESSIONS(現SOIL & "PIMP" SESSIONS)のオリジナルメンバー、urbとして活動してきたキーボーディスト菱山正太。一見相容れないと思われる奇抜な鍵盤とメロウなギターサウンドが見事に融合。 ワールドワイドに活躍する2人の日本人プレイヤー/クリエイターによるスピリチュアル・ジャズ、ジャム、エレクトロニカ、ソウル、チルアウト・プロジェクト『thirdiq(サーディック)』が遂に始動!そんな彼らを代表して、リーダーの渥美氏にインタビューを敢行!

―― まずは自己紹介をお願いします。


渥美: 初めまして、thirdiqのリーダー渥美幸裕(ギター/プロデューサー)です。菱山正太(キーボーディスト/プロデューサー)とのユニットとして活動しています。




―― 今作は半数以上が打合せなしの即興レコーディングだったそうですね!?レコーディングの模様を教えて下さい。また何か全体を通したコンセプトはあるんですか?


渥美: 今回の作品は「静の音楽」、「2000年代東京の新しい音」、「矛盾したものを同時にやる」みたいなものを漠然とですがコンセプトにしていました。大枠のレコーディングはほぼ1日です。参加メンバーに集まってもらって、楽曲ベーシックの部分はほぼ全曲「せいのっ!」で即興(フリー)セッションでレコーディングしました。基本僕のループアイデアを軸に各々に好きに料理してもらう感じで進めていきました。今回収録された曲の中には伝説のサーファー、ジェリーロペス氏のドキュメンタリー映画「The Cleanest line」のサントラに使用されたものもあり、セッションによってはその映像をスタジオの壁に投影して『映像とセッション』するというテーマで録音しました。例えば「beyond the fields」なんかがそうですね。この曲では飲みかけの水のペットボトルも楽器にしたりしてました(笑)。全編に入っている水の音の正体はこれです。大体一つのセッションにつき20〜30分くらいの長さがあって、それをエディットしたり色々加えたりするプランが僕にはあったのですが、完成形のビジョンがレコーディング段階では参加メンバーに伝え切れない部分もあって、セッション終了後は「これ最終的にどうなるの?」てみんな不思議な顔をしてましたね。完成品を聴いてびっくり…みたいな(笑)。その日最後にプレイした「4A.M.」はまったくエディットなしのセッションです。みんな疲れもピークを超えていたのにすばらしい演奏を残してくれました。タイトルは録音した時間から名づけました。その後セッションテイクにオーバーダブしたり、またはエディットをしたりしてセッションを一つの曲に昇華させる作業をしていきました。中には僕にも完成形が見えてないものもあったのでエディットも即興セッションみたいに作っていった曲もあります。今回一番時間をかけたのはミックスなんですが、エンジニアの足立さんと何日のスタジオに篭ってミックスも即興セッションのようにその場で生まれた奇跡的なアイデアも活かしながら作りました。




―― 参加してるプロデューサーやアーティストを教えて下さい。


渥美: 今回のメンバーは昔からずっとセッションを続けてきたメンバーで、thirdiqで表現したかった音を作るのに欠かせないメンバーです。


菱山正太はSOIL & "PIMP" SESSIONS〜urbを経てきたキーボーディストで現在はKYOTO JAZZ MASSIVEなどにも関わってます。曲中のチョップしたようなピアノ音の切れ方はあとからの編集ではなく生で表現しています。その他のサウンドも全て僕のほしい音を持っている唯一のキーボーディストです。


ドラムの天倉正敬は、同じくKJMやROOTSOULで一緒にプレイしているドラマーで間違いなく次世代のドラムを叩ける唯一の人ですね。僕はとりわけドラムが好きで、彼のようなサンプリング感を生で再現できて、ノイズにも理解があって、かつ人間ならではの自由な発想を持った表現ができるドラマーは他に見たことがありません。彼は現在MONDAY満ちる、JAZZTRONIKなどのサポートもしています。


トランペットの類家心平は、正太と同じくurbのメンバーでしたが、現在は自己のグループLANDSCAPE JAZZ ORCHESTRAやラクダカルテットで活躍しています。彼のトランペットは誰よりも透き通った音色で、従来のトランペッターとはまったく違うセンスを持っていると思います。聴いてもらえばわかると思います。これトランペット...?みたいな。


パーカッションのよしうらけんじはタップダンサーのSUJIや、Hanah、MARUのアコースティックバンドでよく一緒にプレイしています。鼓醒という全て一人で表現するプロジェクトは是非一度見てください。叩いてる手の動きから音まで美しいです。彼もテクノやクラブシーンに深い造詣があり、生の極みであるパーカッションをよりサンプリングのように叩くことができます。


フルートのMIYAは若手ジャズ・フルート奏者のトップで、ベーシストの水谷さんのプロデュースの下現在2枚アルバムをリリースしていますが、共演に山下洋輔、今堀恒夫、外山明氏を迎えてすばらしい美しさを持ったフリージャズを表現しています。僕もしばしば彼女とプレイしますが、彼女の曲がまたすばらしい。


ボーカルのMARUはJAMNUTSの歌姫で日本人離れした太く、力強い声がたまらないです。僕は彼女のバンドに参加させてもらってますが、となりでもう一つの楽器がしゃべってる感じですごいです。彼女のライブは面白いですよ。日本のソウル、R&B、ジャズの次世代歌姫はこの人しかいないです。


ボーカルのHanahはもう何年の付き合いになるかな。あの透き通った声、癒しの力を持ってますね。歌唱力も抜群。彼女の書く曲もすばらしい。今回はヴォイスで少し参加してもらっただけですが次回はよりフィーチャーした曲を作りたいですね。


エンジニアは足立壮一郎氏。ホントこの人がいなかったらあの質感が出ませんでした。僕のビジョンを120%理解し形にしてくれる唯一のエンジニアですね。Yoshi Tsushima氏はプロデューサーであり、トラックメーカーであり、origami PRODUCTIONSの代表であり、僕のヒップホップの扉を開けてくれた人です。この人なしではこんな好き放題なアルバムな出来なかった(笑)。fragmentのトラックやばいでしょ?フリーセッションを彼の手で再構築するとああなります。是非聴いてみて。




―― 「こんな演奏聴いた事ない」というキャッチフレーズ通り、所謂クラブジャズとも違うメロウな質感が新鮮でした。この“ONE & ONLY”な音を作り出すアイデアはどこから来るのでしょうか?例えば影響を受けたアーティストなどはいますか?


渥美: 好きなアーティストは Miles Davis、Curtis Mayfield、D'Angelo、Raphael Saadiq、J.Dilla、Terry Riley、YMO、坪口昌恭、菊地成孔など…キリがないですね。また岡本太郎、クリムト、エゴンシーレなどのアート、絵画からも影響を受けています。僕は普段クラブシーンといわれるフィールドで活動することが多かったのですが、そこで関わる音楽は「踊れる音楽」=「動の音楽」が全てでした。僕は天邪鬼なところがあるので、「踊れる音楽」=「静の音楽」みたいな図式があってもいいんじゃないかなって思ったんです。でもただのラウンジミュージックと呼ばれるようなものは作りたくなかった。内側に秘められた炎のような熱い何かはきっちり表現したかったんです。僕は「質感フェチ」だと思うんです。聴いたことのない質感の音楽が作りたかった。現在では様々なスタイルの音楽が存在していていますが、ジャンルという形ではある種出尽くした感があるなと思うんです。僕自身新しい音を追求したいと常日頃考えていますが、とてもマニアックで誰にも理解できないものは確かに聴いたことなくても決して求めている方向ではないので、今できる「新しさ」を考えた結果、楽曲製作の方法論を新しくするのが面白いんじゃないかって思ったんです。それが一つアルバム通しての独特な質感を生み出すことに繋がったのかもしれません。その方法論の一つは先述したレコーディングの仕方です。聴いたことないもの、自分の想像を超える音楽を作りたかったので、即興を取り入れることにしました。あらかじめ自分の頭の中でアレンジメントされたものからは求める新しさは生まれないと思ったんです。なので即興レコーディングでその「新しい」素材を集めました。勿論最終的にはきちんと楽曲として成立するものにしたかったので、そのセッションが持つ激しさ、偶発性、情熱、感情みたいなものにエディット、オーヴァーダブ、MPCによる再構築を加えることで一つの曲というフレームに落とし込みました。それが現実と非現実を一つの空間に同居させたような世界観を生んだんだと思います。これが今回表現したかった「新しさ」だと思います。


もう一つは楽曲全体の方向です。例えば一般的なジャズの楽曲フォームはテーマ→アドリブソロ→テーマですよね。他のジャンルの音楽もほぼ近い作りです。なのであえてそのフォームに則らない作り方、言い換えればはっきりとテーマらしいものを提示しないことで、よい意味で誰が主役なのかわからない曲を作りたかった。その主役を聴き手に想像してもらえるようなある種の小説的な音楽、絵画的な音楽、聴き手の想像力によって完成する未完の音楽にしたかった。だからソロで聴かせるような従来のインスト曲のようなアプローチは出来るだけ減らして全体の質感が最初に飛び込んでくるような作り方にしました。




―― ジャケットの絵も渥美さんの作品と聞きましたが絵のコンセプトを教えて下さい。


渥美: あの絵のタイトルは「a terrestrial grobe, electric lady→naked 」です。僕は趣味でよく抽象画の作品を描くのですが人前に作品としてでる記念すべき第一号作品です。あの絵と僕の描くサウンドはとても共通しているのが聴いてもらえると分かってもらえると思います。一見抽象画ですが世界地図のようなイメージ、自然物のイメージが隠れています。あともう一つ隠れているものがあります。それは絵の中心に描かれています。何か分かりますか?探してみてください。




―― レーベル origami PRODUCTIONSについて教えて下さい。


渥美: 僕も在籍する渋谷のジャムシーンを担う30人のジャムバンドJAMNUTSのメンバーを軸に、東京ジャムシーンのプレーヤー、トラックメーカーが在籍しています。皆共通した部分があるとすれば、とても質感にこだわりを持ち、プレーヤーとプロデューサー/トラックメーカーの両側面を持っていることだと思います。来年2月にリリースする45やSHINGO SUZUKI、mabanuaなど素晴らしいトラックメーカー達のアルバムがリリースを控えてます。STEPH POCKETSやHOCUS POCUS、blu、Tasita D'Mourなど海外のアーティストも賛同するWorldwide Undergroundな作品です。




―― 渋谷近辺で起きているJAM SESSIONシーンについて教えて下さい。


渥美: 僕はJAMNUTSのアルバムで「Hey ya!」のプロデュースを担当したのですが、このJAMNUTSが毎月第二金曜にSHIBUYA PLUGで「TOKYO JAM」というジャム・セッション・イベントを行っています。ジャムシーンはプレーヤーと聴き手の距離が近いからこそ出来上がったものだと思うので、この「TOKYO JAM」がこのシーンの爆発のきっかけを作れたらと思ってます。是非第二金曜24:00〜SHIBUYA PLUGに来てください。音楽がその場で生まれる瞬間に立ち会える喜びはJAMの醍醐味ですね。




―― 今後の活動プランを教えて下さい。


渥美: なるべく早く二作目の制作とライブ活動を行っていこうと思っています。今現在、あのアルバムで表現できた質感をどうライブでも表現するかがテーマで、何か「新しさ」をライブでもその場で生み出し皆さんと共有できたらと思っていますので楽しみにしておいて下さい。




―― 最後にメッセージをお願いします。


渥美: 新しい音楽を求めている人、チルしたい人、そんな音楽あるのかって疑っている人(笑)、色々な方に聴いてもらえたらうれしいです。あと、アルバムアートワーク自体にもこだわりがあって、ある種洋書のデザイン本のようなスマートなパッケージになっています。そこも含め一つの作品として長く手に持っていてもらえたらいいな。




―― ありがとうございました!

(取材協力:BounDEE)
 
 
 
  Jamnutsクルーから飛び出した新ユニット!  
 
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生音でヒップホップ/クラブ・ミュージックを作る新しい手法が話題となりヒットを記録中の総勢30人を超えるヒップホップ・ジャムバンド、Jamnutsクルーから飛び出した新ユニット。Jamnutsのジャジー・メロウ・サウンドを生み出したプロデューサー/ギタリストの渥美幸裕とサンプリング/チョップ奏法が話題のキーボーディスト菱山翔太によるthirdiqが遂に始動!
 
 

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