櫻井哲夫Brasil Projectインタビュー
2006年7月14日 (金)
今年の2月、念願、そして会心だったフィロー・マシャードとの至高のライヴ・パフォーマンスを収録。櫻井のブラジルへの想いが凝縮された。単独インタビュー掲載中。2006年2月12日から2月27日まで行われた櫻井哲夫Brasil Connection Tour 2006は、ブラジルのシンガー・ソングライター/ギタリストであるフィロー・マシャード(vo、g)トニーニョ・オルタ・バンドなどで活躍するセルジオ・マシャード(ds)、そして小野塚晃(p)というメンバーで、ブラジリアン・サウンドの素晴らしさを我々に届けてくれた。
櫻井哲夫のプレイも、いつもとは一味異なるブラジリアン・グルーグを打ち出し、ブラジル音楽への憧れとリスペクトを見事に結実しつつ、新たなる一面と方向性を示唆、開拓した、ファン必聴のものだ。
インタビューでブラジルとの出会いと、ツアー・エピソードなど熱く語りまくる。

HMV(以下 H):ブラジル・プロジェクト・スタートの発端はいかなるタイミングだったのでしょう?あと、櫻井さんとブラジル音楽の出会いについてもお聞かせ下さい。
櫻井哲夫(以下 櫻):掘り下げて言えば17、18歳くらいに、ミルトン・ナシメントやジャヴァンの音楽で出会った時が始まりですね。それまでハード・ロックをずっと聴いていて、それからジャズ〜フュージョンを聴き始めて、あとEW&Fとかディスコでかかるようなダンスものを結構聴いていたました。ちょうどウェザー・リポートやハービー・ハンコックとかチック・コリアとかがエレクトリック楽器を使い始めたものを聞いてた時に、ネイティヴなブラジル・サウンドに出会って、これは参った!と思いました。
でも真似して自分達でやろうという気には成りえない。この曲やろうよって、仲間には言えなかったですね〜。その頃からカシオペアの母体となるメンバーとはやってましたけど、ちょっと提案できなかったですね。野呂君なんかもジャヴァンとか聴いていましたけどね。ハーモニーの解釈とかメロディーの発想とかリズムの組み立て方とか判らなかったですね。
それで滅茶苦茶好奇心が膨らんで、一人旅でブラジルに行ったのが23歳くらいの時です。当時レコード会社の社長が大判振る舞いしてくれて、海外で視野を広めて曲を作ってきなさい、という事でカシオペアのメンバーひとりひとりが好きな海外に旅が出来たんです。僕はもう迷わずブラジルでしたね。
36時間くらいかけて行きましたね。でも歯ぐきから血が止まらなくなるわ、お腹壊して3日間くらい脱水症状になるわ、もうかなりヤバイ珍道中でした。その中で、こういう国でこういう人間の社会で、こういう音楽が生まれるんだな、というのを実感しましたね。特に北部のサルバドールでは痛感しました。
楽器は持参しなかったんですけど、当時発売していた『Mint Jams』というアルバムのカセットも持っていきまして、まずは英語が話せる若者を見つけるんですね。それでまず「お前は音楽が好きか?」と聞いて、次に「チック・コリアは好きか?」と聞いて、「好きならこれを聞いてみろ」という感じで『Mint Jams』のテープを聴かせていました。そこで仲良しになるんです。
毎日昼間にそんなことをやって、夜は良いショーを聴きに出掛けていましたね。そのとき「カエターノ・ヴェローゾを聴かなければブラジルは判らない」と言われて初めて彼のショウを見る事ができました。マリア・ベターニャのショウも見ましたが、自分がやっていた日本の音楽の生活とは全然違うんですよね。それでいて凄く魅力がありました。
この地を訪れる事によって、ブラジルでライヴをやりたい、ブラジル人と一緒にアルバムを作りたい、ブラジルの好きなミュージシャンと一緒に活動をしたい。そういう事を願かけてきました。そうしたら、3〜4年後くらいにカシオペアでブラジル国内ツアーができたんです。願いは叶うもんだな〜ということです。
そしてふたつ目の願いが叶ったのがアルバム『Cartas Do Brasil』ですね。だからブラジル・プロジェクト・スタートの発端は『Cartas Do Brasil』をリリースした時というよりも、その前にこのような過程があったんです。
そして、次にステージをやりたいということで、『Cartas Do Brasil』をライヴでやる場合、イヴァン・リンスやジャヴァンを僕の曲で歌ってもらうのは頼みづらいですよね。彼らはシンガーだから。でもフィローはシンガーでもありアレンジャーでもあり、ギター・プレイヤーでもあり、凄く懐が深いんですよね。
僕の曲を頼んだ時も理想的なカタチで返してくれたので、一緒にライヴをやるのならフィーロだと思いました。それで、去年彼が単独で日本でライヴをやると聞き付け、会いに行って共演のオファーを申し入れました。それから半年後に実現というカタチです。
H:そして今回のアルバムは今年2/12〜3/5まで行われたBrasil Connection Tourを収めたものですが、Vol.1と言うことで前、後編で分かれているのでしょうか?
櫻:フィロー・マシャードをフィーチュアしたライヴを全曲収録して90分近くになりました。当初CD1枚サイズにまとめようかと思ったんですけど、実際やってみるともったいないというか、思い入れがあって、全曲生かしたいと思いまして、トラックダウンしたら、CDサイズには入らないので、2枚組みにしようと思ったんですけど、2枚組みライヴで通して聞くと、ちょっと内容が濃く、一息で聴くには重いと思いました。それで半分で分けたら、ちょうどいい感じだっので、時期をずらしてシリーズにしようと思いました。1曲も外す事ができないほど、非常に楽しかったライヴでしたね。
H:割と長期間のツアーですが、まずリハからスタートですよね。
櫻:2/8から3/8まで丁度まる1ヶ月一緒にいたんですけど、凄く面白かったですね。彼はほとんど英語が分からなくて、僕はほとんどポルトガル語分からなくて・・・(笑)。

来日した翌日から3日間のリハを行ないました。今回はフィローの曲を半分やろうと提案していて、ブラジルのカヴァーもやりたいという事で、その資料を早くからリクエストしていたんですが、来日してからインターネットでダウンロードしよう、という事で、自分の曲の譜面をダウンロードする事から始まりました(笑)。音源もなくて、「大丈夫。やればわかる。」という事でした。まあ、ブラジル人ですからね〜(笑)。
そう言えば、グレッグ・ハウの時もそうでした。彼の曲やる時も結局最後まで譜面持ってこなかったですから。もう、あんな難しい曲を耳コピしましたよ(笑)。今回に関しては、スタジオに入ってから、まさに1からスタートという感じでしたね。
スタジオに入って最初は本当に大変でした。でも自分が好きなミュージシャンと一緒にやるので、組み立てていく過程も楽しいんですよ。ヘッドアレンジが決まっていない状態なので、皆の音が出て初めて、どうしようか、というやり方ですからね。もうあっちこっちいろんな方向へ向かうんですよ。その場でアレンジしていく感じですね。
フィローはコードもその場でいろいろ変えていくんですね。それで遊びだすと収集がつかなくなってしまうんです。でもその遊びが面白いんですねー。そういう風にくるか〜とか。でもまとめないといけないんですよね(笑)。
H:ツアー・メンバーは、日本人とブラジル人2対2という編成ですね。
櫻:まず小野塚君の貢献度が非常に高かったと思います。デニス・チェンバースとグレッグ・ハウとやった時もそうだったんですけど、リハの時から打ち解けていましたね。プレイが良いと仲良しになれますから、今回も同様にフィローとセルジオと仲良くやっていましたね。デニチェンの時の音楽性も大丈夫だし、ブラジルものも大丈夫だったんですね。実は彼のブラジリアン・ミュージックに対するアプローチは未知数だったんですけど、実際ふたを開けてみればバッチリでした。
ドラムのセルジオですが、フィローが「うちの息子のセルジオなら結構いいよ!」という事で、僕の曲も好きで聞いているし、ブラジル音楽だけじゃなくて、ジャズ、フュージョンも地元でやっていると言うのですね。トニーニョ・オルタのバンドもやっているし、絶対いけると思いましたが、予想通り素晴らしいドラマーです。

H:Vol.1では、櫻井さんの曲が3曲収録されています。オリジナルはカシオペア、Jimsaku、ソロのナンバーですが、見事なブラジリアン・ナンバーとして蘇っています。
櫻:<Saudade De Voce>もブラジルをイメージして書いたし、<Real>もジャヴァンに歌ってもらおうとして作りましたが、<Navegando Sozinho>を書いたときはまだブラジルにはまだ行ってませんでしたね。
<Saudade〜>と<Real>はブラジルを体感した後の曲です。つまりブラジルを知っている人間の曲です。<Navegando〜>をフィローがアレンジしてくれまして、カシオペアでやってた時よりも相当ブラジルになりました。これが一番変わったと思いますよ。
<Real>は1枚目のソロ・アルバムでジャヴァンに歌ってもらうはずだったんですけど、ちょうど来日公演で喉を壊してマネ−ジャー・ストップがかかってしまいました。またいつか、という事だったんですが、次の年のカシオペアのブラジル・ツアーでジャヴァンに電話したら、「ちょうどいい。君の曲に詩を書いたので、今度の自分のアルバムに入れるレコーデイングをしている最中なんだ。」という事で彼のアルバムにいれてくれました。
H:ブラジル音楽をメインとしたライヴという事で、櫻井さんのベースのアプローチも変化があったんじゃないでしょうか?
櫻:ベーシストとしてブラジル音楽にはまっている点は、ブラジルのドラミングに合わせてベースを刻むのが面白い事ですね。だからドラマーは絶対ブラジル人じゃないとだめですです。フィローとセルジオが打ち出すリズムって本当に最高なんです。
基本はサンバなのでしょうけど、ブラジルの州都27州それぞれの27種類のリズムというのがあるみたいですね。その土地のリズムがあるようです。それぞれ完成しているもので、「それを研究するといろいろと見えてくるよ」、って彼らは言ってましたね。その中にはサルサみたいなものもあって。ブラジルはもともとアフリカからのルーツですから、いわゆるボサノヴァとかサンバだけではないリズムが一杯出てくるんですよね。
フィローの曲はその辺でベーシストとして面白いんです。サンバの曲はセルジオのドラムに合わせてベースを弾くのも楽しいですね。いわゆる教則どおりに弾いてはダメなんです。そういう解析されたパターンをやっていたとしても、彼の打ち出すグルーヴはネイティヴなんです。キックを含めてセルジオのドラムはパーカッションみたいなんですよ。
H:今回のライヴが櫻井さんにとって、本当に刺激になり、何より楽しまれた事が伝わってきますね。
櫻:ブラジルのアルバムを作るだけでなくて、ブラジル人と一緒に表現する、コラボレイトしていく、それを具現化していくという意味で、ブラジル・コネクションというシリーズは今回は2枚ですが、その後も機会があれば、好きなブラジル人と作品を作っていこうと思っています。ブラジル人とのコラボレーションはシリーズ化していきたいですね。と同時にデニスやグレッグとも続けていこうと思っていますよ。

H:最近のメイン・ベースはフォデラの6弦ですが、このライヴで何かサウンド的に変化はありますか?
櫻:今回のライブで気を遣ったことの一つに、ベースの音色があります。基本的に2フィンガーでビートを築き上げる曲が多いのと、ブラジリアン・ドラムとのコンビネーションが上手くはまるようなサウンドを作るために、ベースのチューニングを以前と変えてみました。
アクティブ回路は一切使用せず、パッシブのみにして、トーンも半分程度を中心に可変し、ピックアップもリアよりにしてみました。このチューニングは立ち上がりの音色と音程の輪郭をはっきりさせる効果があります。メロディーや、ソロで、歌心を表現する際、フィンガー・タッチのレスポンスやダイナミクスにも有効です。・・・ベーシストには興味深い情報かもしれませんね。

H:気になるVol.2の発売はいつ頃になりそうですか?
櫻:Vol.2は10月に発売を予定しています。ライヴの後半が収録されますが、Vol.2の方が音楽的な幅が拡がっていきます。コンサートの流れと同様に後半大きく盛り上がる曲が来ます。バラードもグッと聴かせます。前半は入りやすいようにしっかりした曲で集中して聴いていってもらいますが、後半はまさに山あり谷ありでレンジが拡がってきますね。相当長いソロも入っていますよ。
H:では最後に、このブラジル・コネクションの魅力をお願いします。
櫻:自分が一番ブラジル音楽に対し魅力を感じている部分は、サウダージという言葉の持つ意味だと思うんですよ。郷愁というか哀愁というか、胸がキュンとくるようなところだと思うんですよね。それを自分の音楽として表現したいと思って作ったライヴですので、そういう一面を味わっていただけたらと思います。
ですからそんなに派手なスラップのソロはないです(笑)。でも、ソロは随所に入っています。チョッパー・ソロもVol.2で結構やってはいますが、それまではほとんど2フィンガーで、ベースの一番良い音を出して、ブラジルのコンセプトにあったサウンドを作ろうと思ってやっています。そういうところを含めて、櫻井がブラジルを料理するとこうなる、という感じを楽しんでいただければ、嬉しいですね。
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櫻井哲夫Brasil Connection Live Report フィロー・マシャード、セルジオ・マシャード、小野塚晃とともに行ったツアーから、2005年2月27日六本木STB公演の模様をレポート。 |
◆櫻井哲夫直筆サインプレゼント(終了しました)
HMVオンライン(WEB/モバイルどちらでも)で櫻井哲夫『Brasil Connection Vol.1』(XQAZ1001)ご予約のお客様の中から先着で30名様に櫻井哲夫直筆サインを差し上げます。
注文が完了した時点で応募抽選の権利が発生します。別途応募の必要はございません。期間は7/25までの間にオーダーいただいた方が対象となります。なお当選の発表は賞品の発送をもって替えさせていただきます。
↓櫻井哲夫さんのご配慮で、こちらの写真にサインを入れていただけます。
●櫻井哲夫 / Brasil Connection: Vol.2
10月25日発売予定
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。
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初のブラジリアン・アルバム

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櫻井が影響を受けたブラジル作品 & 櫻井お薦めブラジル作品
櫻井哲夫 作品
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