Individual Orchestra インタビュー

2006年7月13日 (木)

『Mind The Gap: Single 2000-2006』 発売記念 田中フミヤ インタビュー


Individual Orchestra
…1972年生まれの田中フミヤによるソロ・プロジェクト。日本テクノ界を代表する存在の、本名、Karafutoにつぐ名義。生楽器演奏者との融合など、テクノのみならずアブストラクト、ジャズなど幅広い層にアプローチするサウンドを表現するプロジェクト。


もともとは生楽器との融合プロジェクトとしてスタートした田中フミヤIndividual Orchestra名義での3枚目のアルバムが登場。

今作は、これまで2000年、2003年、そして2006年とリリースされてきた12インチシングル収録曲をまとめた内容。

アルバムとはまた少し異なり、海外のDJからも高く評価されているシングル群。ブレイクビーツからジャズ寄りの四つ打ち、レイドバックしたチルアウトサウンドまでいずれもオーガニックな質感を持った楽曲たち。

田中フミヤの音楽的センスをかつてないほど味わえる1枚に仕上がった『Mind The Gap: Single 2000-2006』について田中フミヤさんに話を伺いました。


Interview with Fumiya Tanaka


99年の『Karafuto Presents Individual Orchestra』では実際に楽器演奏者を迎えて制作され、2003年の『Music From A View』はそれを発展させ、そして音の鳴りそのものを意識させる作りでもあったと思っているのですが、まず、なぜ今このタイミングで過去のアナログ音源も含めたアルバムをリリースすることになったのか教えてください。

田中フミヤ(以下FT):もともと『Music From A View』のリリースの後に12inchを一枚だして、今回のようなシングル集のような形態で、2000年からの12inchアナログリリースのものを集めたアルバムをリリースすることが『Music From A View』のリリース時に決まってたんやけど、ちょうどその時期は、『Mix.Sound.Space』をリリースした直後で、ちょっと調子にのってた時期でもあったんかな、いつでもできるやろって思ってて、締め切りのこととかもいわれるまで何もやらず、他に仕事も増えたりして、単純に僕がダラダラやってたからリリースが延び延びになったんやと思います。

99年、2003年のアルバム、2000年、2003年、2006年のアナログとこのプロジェクトは徐々に変化してきていると思いますが、その都度ヴィジョンのようなものがどのように変わってきたか、説明していただいてもよろしいでしょうか?

FT:1999年のアルバムは本名名義の活動からこぼれ落ちてくるものを音化。自分が考えるジャズ、演奏すること、コラボレーション、生演奏とは何かなど。これは今でも基本的に変わってないです。2000年の12inchはKarafutoでのDJ活動、レギュラーパーティー「Mask」の影響もあって1999年のアルバムをよりダンスフロアー向きにシフト。アナログリリースということも含めて。2003年のアルバムは音楽のないところから音楽をつくる。素材として映像や風景から音楽を作る。2003年の12inchは2003年のアルバムの中から12inchアナログリリース向きな曲をセレクト。2006年の12inchは2000年リリースの12inchをよりダンスフロアー向きにシフト。ミニマルのフォーマットの中にテクノやDJでの手法を使って生演奏や生楽器を再構築。



*試聴出来ます


*Individual Orchestra/Mind The Gap: Single 2000-2006
1 Thank You For Coming
2 Own Beat
3 Individual Sessions#2 (Edit)
4 1,2,7,29,10,14, - Version Short
5 Drivers Wanted - And Much More...
6 Sunshining.Some Building.Blue Sky - You Don't Know,Kiss Me
7 Two Colors,Four Colors - Version Fx
8 Maquillage - Version Short
9 Karafuto Played Dj For Five Hours In A Day.
10 Up
11 Up And Down And





また、現在はこのIndividual Orchestraというのはフミヤさんのなかでどのような位置づけでしょうか?本名名義、Karafuto名義もありますが、これは簡単に言えばクラブミュージックからさらに広げたアプローチということになるのでしょうか?
FT:本名名義の活動からこぼれ落ちてくるものを音化するというのが基本にはあるのですが、今はそれと同時に作品を華やかにポップに色づけしていきたいというのがあって、質問のような名義の使い分けの部分や、音作りの違い、手法的な部分とか、差別化することによってできる個別性みたいなこととかのながれで、作品を作っていくことや解釈していくことも有意義なんやけど、それと同時に名義の使いわけで共通して表現できる何かも大事にしたいと考えていて、今はそういうバランスで音制作をやってます。作品を華やかにポップに色づけしていきたいというのは、名義の活動が何かに限らず、いつも持ってる気持ちで、その中のひとつの活動にIndividual Orchestraがあって、それ以外の名義もあって、それら全部で活動していて、全体でそれぞれが個別に響きあってるイメージです。

この名義では所謂「テクノ」という枠を超えて、生楽器、あるいはそれに準ずる、言うなれば「オーガニックな」サウンドが多くチョイスされていると思いますが、これは今現在はどういった意図でしょうか?

FT:以前は生楽器であることに多少のこだわりなどもあったことはあったけど、今は作品が華やかにポップな印象を与えられるのであれば、別に生楽器であることに以前ほどこだわりはないです。テクニック的にも生演奏の音をエフェクト加工などして全く生楽器のものとわからないような音制作も可能ですし。ただ音楽のフィジカル的な要素、生演奏のライブ感とか、独特の間とかグルーブみたいなものはやっぱり好きやし、それは僕の音制作にとって大切な要素のひとつですが。基本的には生楽器や生演奏といった要素がIndividual Orchestraの活動に関しての出発点の要素のひとつになってるので外せない要素のひとつではあります。



*Individual Orchestra Discography


左から:1998年作『Karafuto Presents Individual Orchestra』/2000年の12inch 「Individual Orchestra」/2003年の12inch 「Sunshining Some Building Blue Sky」/2003年のアルバム 『Music From A View』/映像版『Music From A View』/2006年のアナログ 「S.t.」
*アナログはいずれも完売のため現在取り扱いはありません




この、Individual Orchestraの制作の時に描く視点と、フミヤさん自身が共通するものがあるなと感じる他アーティストの作品がありましたら、数枚、コメントとともに教えてください。

FT:


共通するものがあると感じるようなものはとくにないですね、パッと考えても思いつかないので。例えば僕のいうポップス性みたいな要素を含んでるものとしては、古いのやとAphex Twin 『Selected Ambient Works 85-92』Yoshinori Sunahara 『Lovebeat』Opiate 『Objects For An Ideal Home』など、最近やとNightmares On Wax 『In A Space Outta Sound』Isolee 『Westernstore』などです。

普段、ジャズは聴かれますか?もし愛聴盤がありましたらこれも数枚、コメントとともに挙げていただけますか?

FT:


Lennie Tristano 『Lennie Tristano』
Duke Ellington 『Money Jungle』
Chico Hamilton 『feat. Buddy Collette』
どれも名盤です。素晴らしい演奏とアイデア。


Louis Armstrong & Duke Ellington "It Don't Mean a Thing (If It Ain't Got That Swing)" (アルバム『Great Summit』収録)
名曲。

今後の予定と、リスナーにメッセージがありましたらお願いします。

FT:
2006.8.19リリース予定 Karafuto 『Shift To The Other Time: Karafuto Live Mix At Unit 28.1.2006』 <disques corde>
2006. 9月リリース予定 「FC CHAOS ep」(12inch) <Torema>
2006.10月リリース予定 Fumiya Tanaka 「タイトル未定」 (Mix CD) <Torema / Soundscape>
2006.11月リリース予定 Fumiya Tanaka 「trm 028」 (12inch) <Torema>
2006.12月リリース予定 Fumiya&Radiq (12inch) <op.disc>

どうもありがとうございました。

協力:Cisco / Soundscape

オフィシャルサイト
⇒www.fumiyatanaka.com



Individual Orchestra/Mind The Gap: Single 2000-2006
もともとは生楽器との融合プロジェクトとしてスタートした田中フミヤのIndividual Orchestra名義での3枚目のアルバム。今作は、これまで2000年、2003年、そして2006年とリリースされてきた12インチシングル収録曲をまとめた内容。とりわけ2000年の「(RE005)」は海外のDJからも高く評価されている。アルバム『Music From A View』には音そのものに対する実験的な見解が収録されていましたが、これらシングルに収録された楽曲はそれともまた異なり、フロアにも対応出来る作風が表現されてきました。ブレイクビーツからジャズ寄りの四つ打ち、レイドバックしたチルアウトサウンドまでいずれもオーガニックな質感を持っており、田中フミヤの音楽的センスをかつてないほど味わえる1枚。


*Karafuto名義でのMix CDが発売決定

Karafuto/Shift To The Other Time: Karafuto Live Mix At Unit 28.1.2006
Karafuto名義でのライヴミックスCDが<Soup-disk>別動<corde>から。Karafutoとしては『Karafuto Dj Mix 1/2』以来6年ぶり。田中フミヤとしても『Mix Sound Space』以来4年ぶりとなるMixもの。今作は2006年1月28日代官山Unitにて行われたパーティでのDJ模様からハイライトとなる箇所をほぼ無編集で収録したライヴミックス。Ricardo Villalobosで幕を開け、テックハウス〜クリックハウス系を中心にミニマルかつじわじわと展開されていくKarafuto名義らしいDJプレイ。Karafutoならではのグルーヴを感じられる1枚。



*<Revirth>からは続いてNumbの久々のアルバムが

Numb/空
唯一無二、圧倒的なオリジナリティーを誇る日本最高のブレイクビーツテロリスト、Numb。間にライヴアルバム『東京』をはさみ、2002年の『Numb』以来実に4年ぶりとなるオリジナル2ndアルバムが遂に完成。全10曲。



*WIRE関連作続々登場

Va/Wire 06 Compilation
恒例。2006年は9月2日に開催される<Wire>の公式コンピレーション。石野卓球のオリジナルトラックなど出演者の楽曲を2枚組で収録予定。
*初回仕様:3面デジパック


Disco Twins (Dj Tasaka / Kagami)/未定
もともとはパーティ名からはじまったDj TasakaとKagamiによるユニット、Disco Twinsが遂にアルバムを完成。2003年のMix CD『Disco Twins Mega Mix』以来となる作品。初となるオジリナルトラック集。豪華ゲストヴォーカリスト多数参加予定。


Ryukyudisko/Peekan
日本テクノの一番人気、すでにFuji Rock Festival 06にも出演の決定している琉球ディスコから前作『Ryukyudisk O Tech』以来1年4ヶ月ぶりとなる待望の2ndアルバムが登場。前作同様石野卓球のレーベル<Platik>からのリリース。シングル「Churazima」でさらにポップな進化を見せた彼らによる、全曲「これぞ」なオキナワンテクノ。


Secret Cinema/Live At Sterne
日本でも人気の高い、オランダを代表するテクノアクト、Jeroen VerheijによるプロジェクトSecret Cinemaのライヴアルバム。2006年3月3日、石野卓球主催イベント<Sterne> 4周年記念パーティ@渋谷Wombでの模様を収録。"Voltl"や"Yakuza J"などをはじめ人気曲&新アルバム『Skunk & Espresso』収録曲を中心にプレイされたライヴを、70分に濃縮エディット。クラウドの歓声が臨場感を煽ります。<Wire06>にも出演。


Alexander Kowalski/Changes
1978年生まれ、ジャーマンテクノシーンの次代を担う逸材、Alexander Kowalski。これまでの<Kanzleramt>からレーベルを<Different>に移しての入魂の新作。より幅の広がった音世界を表現した1枚。「Wire06」へも出演決定。




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