HMV特集:Ge-ology インタビュー

2006年6月20日 (火)

Ge-ology。ブルックリンを代表するアーティスト。

「ヒップホップ史上における傑作ジャケット・ベスト3」と讃えられた「Body Rock」(右写真)を手がけたヴィジュアルアーティストとして、Mos Def & Talib Kweli=Black Starのアルバム『Black Star』Mos Defソロアルバム『Black On Both Sides』に楽曲提供し、最近ではPlatinum Pied Pipers シングル"Act Like You Know"のリミックスなどを手がけたビートプロデューサーとしても知られる才人。

彼がMos Defをフィーチャリングして制作した楽曲"Superstar"は発売前からGilles Petersonのラジオ「Worldwide」でプレイされ、「Worldwide」の年間ベストにもノミネートされ話題を集めました。

その"Superstar"も収録し話題の<Tri-eight> 5周年記念コンピレーショ『Facets』発売記念として来日したGe-ologyに話をうかがいました。


Interview with Ge-ology aka G-Young


いつからブルックリンにいるのですか?

Ge-ology(以下GEO):生まれはボルチモアなんだ。88年にNYに移ってきて、それからずっといる。最初はブルックリンではなくマンハッタンにいた。マンハッタンに8年いて、ブルックリンには9年いる。96年に半年間だけNYを離れる時があって、アトランタに行っていた。音楽を作ったりアートショウをやったりして。何人かで移動してペインティングをしたりというようなことが半年間続いて、NYにいる人にはもう俺がNYに帰ってこないと思われてた。でも俺は戻ってきて、NY生活の第2章が始まったんだ。そこから、前から知ってた人や新しく会った人、また色々な要素が入ってきて、皆で輪を作るように動いていっている。

ヒップホップとの出会いを教えてください。

GEO:そのなかで育ったんだ。子供の頃から触れてたよ。ボルチモアはNYから車で3時間くらいなんだ。ワシントンDCからNYに行くのと同じように、ボルチモアとNYも同じラインなんだ。カリフォルニアとか西海岸は違うけど、イーストコーストの街はそれぞれカラーは違うんだけど、一本のつながりはあるんだ。もちろんボルチモアにもヒップホップのコミュニティもあってDJもいるんだけど、ちょっと一歩出れば色んなところから音楽が入ってきてて、そういう影響を受けて育った。NY、DC、デトロイト、シカゴ…、色んな音楽が入り込んできてた。俺は両親がとても若くて、母親が17才の時に生まれた子供で、もしかしたら母親が妊娠した場所はクラブかもしれないし(笑)、お腹のなかにいる時からそういう音楽のバイブレーションを感じてたんだと思う。父親がすごい音楽好きのコレクターで、おじさんも、おばあちゃんもたくさんレコード持ってたよ。音楽好きの家族で育ったんだ。

Mos Defとの出逢いを教えてください。

GEO:ブルックリンの連中だよ。その輪のなかさ。何年もずっとそこらへんに一緒にいる仲間だ。ブルックリンに住むようになって、その後すぐってわけではないけど、皆同じようにクリエイティヴなことをやってたから、気がついたら自然と仲良くなってたよ。MosもKweliも。そんなに昔の話ではないと思ってるけど、96年からはもう10年も経ってるからね。今あるものは昔はなかったし、昔あったもので今ないものもあるし、物事はインタラクティヴに動いていると思う。



*Va/Facets
日本が誇る信頼のインディペンデントレーベル<Tri-eight>から『Feast』に続く5周年記念コンピレーションの第2弾。『Feast』では日本人クリエイターを主に、バレアリック〜ハウス系を編纂していましたが、今作ではまさに「<Tri-eight>の歩み」を着実にふり返ったブレイクビーツ〜ヒップホップ楽曲を収録。Ge-ology feat. Mos Def "Superstar"の他にはMos Def "Universal Magnetic"、Mos Def feat. Q-Tip, Tash "Body Rock"、Artifacts 『That's Them』などを手がけその良質なトラックメイクで信頼を集めていたプロデューサー、Shawn J Periodの帰還曲を収録。Q-Tipが信頼を置くギタリストKurt Rosenwinkel、Global Communicationの一員であり<Warp>からのリリースでも知られるMark PritchardのユニットHarmonic 33、Spacekのメンバーでありソロアルバムも好調なSteve SpacekによるSta Simonez、Opusのあの名曲、Hideo Sasaki、Scott Matelicらを収録。
*サンプル音源
Ge-ology feat. Mos Def "Superstar"
Shawn J Period "Dream Sequence (Fly On The Sun)"




Mos DefとはBlack Starのアルバム、Mos Defのソロ『Black On Both Sides』でも一緒にやっていますね。

GEO:もっとあるよ。リリースしてないけれどMosとやった曲はたくさんある。初めてMosとやった曲は未だにリリースされてないよ。他にもたくさんある。"Superstar"は2年前頃に作った曲だね。

"Superstar"のエピソードを教えてください。

GEO:Benji B(*)にいつも曲を聞かせてるんだけど、まだMos Defがラップを乗せる前からここ4-5年ずっとBenjiが"Superstar"のインストバージョンをプレイしてくれてて、彼がNYに来てた時、<Rude Movoments>のイベントでDJした時に俺がその曲をかけたら皆首をがんがん振り始めてさ、そのパーティが終わった後に「実はこの曲はMosのラップがのってこういう曲になってるんだ」ってBenjiに言って聞かせたら彼は盛り上がり過ぎて「なんだそれならこっちをかけたかったのになんで先にくれないんだよ!」って言って(笑)。イギリスに帰って彼はその週にラジオでプレイしてたよ。そうしたら色んなところから電話がかかってきたんだ。「俺にもコピーをくれ」「俺にもコピーをくれ」って。Gillesからは直接はこなかったんだけど、<Ubiquity>経由で「彼が欲しがってるんだけどCDRをあげてほしい」って連絡が来て、Gillesと話したことはないんだけど、その翌週彼はラジオでプレイしてたよ。どこで手に入れたんだろうね!(笑)でもそうしたら「ラジオ聞いたよ!」って電話がまたどんどんかかってきて。Gillesは「Worldwide」の年間ベストにもノミネートしてくれて。その時点でまだリリースもされてないし、俺はBenjiにしか渡してなかったんだけどね。

*Benji B…イギリスのBBC Radio1にて「Deviation」をうけもっているDJ。26歳という若さながら、ジャンルに固執しない良質なセレクトでGilles Petersonに並ぶ信頼を集めている。



*『Dave Chappelle's Block Party』
コメディアンDave Chappelleにより企画され、2004年9月ブルックリンにて行われたイベント。Fugeesの再結成ライヴの他、Mos Def、Talib Kweli、Common、Kanye West、Erykah Badu、Jill Scott、Roots、Kool G Rap、Dead Prezらが出演。まさに現代版「ブロック・パーティ」。ミシェル・ゴンドリー監督のもと映画化。当日披露されたMos Def "Universal Magnetic"、"Umi Says"、Talib KweliとのBlack Starでの"Definition"、"Born & Raised"、ErykahとBilalをフィーチャーしたCommonの"Light"などを収録したサントラが発売中。
*サンプル音源
Mos Def "Universal Megnetic [Live]"
Mos Def "Umi Says [Live]"
Common "Light [Live]"




ブルックリンで行われたDave Chappelle’s Block Partyには行きましたか?

GEO:行ったよ。『Body Rock』のジャケットを作ってた時住んでた場所がこの角のアパートだったんだ。

ブルックリン以外の人も参加してましたが、どうでしたか?

GEO:ブルックリンのことっていうよりはブルックリンのブロックパーティって感覚で、仲間=Neighborhoodたちが集ったかんじだったね。

かつてはこういうようなかたちでブロックパーティが行われていたと思います。今はこういうものはあまりなくて、そういうタイプの音楽も減ってきていると思いますがいかがですか?

GEO:今の若い世代にはおもちゃや機械、テクノロジーが溢れていて、彼らは情報を吸い過ぎてるんだ。新しい世代の一番違うところは頭を使う必要がなくて、クリエイトする気持ちを発揮しなくても大抵のことが出来てしまうというところだと思う。最初の頃のヒップホップがなんでドープだったかといえば、彼らは何もない場所から、ゼロから作らなければいけなかったし、なぜなら彼らは本当に貧乏だったし、その当時はブーンボックスとかで大きな音を出すのが文化だったんだけど、でもそれさえ買えない人たちは自分達でビートボックスするしかなかった。当時のブロックパーティには楽しい空気が満ちていたし、Kool Herc達はそうした状況のなかで良い音楽を聞いたことない周りの仲間たちに良い音楽を聞かせるってことをしたけど、今はそれは必要なくなってきてる。ヒップホップはビジネスになってしまったし、コマーシャリズムに囚われていて、それの奴隷と化してしまっている。だから、そういう経験をするのは社会的にも難しくなってると思う。

今こうしたことがブルックリンで行われたってことはすごく意義深いことだど思いますがいかがですか?

GEO:そうだね。加えて言えば、Daveはブロックにいる皆をファミリーだと思って、周りのコミュニティと一緒にやろうとしたんだ。それも彼の素晴らしかったとこだよね。



Ge-ology@HMV渋谷 2F インストアプレイ


今のヒップホップについて聞かせてください。

GEO:最近はもうヒップホップの最も重要な定義については誰も知らないし、気にしてもないと思う。若いやつに聞いてみればヒップホップはKool HercでもRakimでもないし、Marly MarlでもJazzy JayでもAfrika Bambaataaでもないし、それについて理解もないというか、まず知らないと思う。彼らはヒップホップが銃とか暴力、女たちに関するものだと思っているはずだ。彼らはT.I.やNellyを見てヒップホップだと思っている。もはや情報をコントロール出来る状態じゃないし、もともとあった姿はないし、ヒップホップは消えていっていると思う。どこにいったかわからないけど。もし俺にヒップホップの定義がなにかを聞くなら、あるいはもし本当のヒップホップがなにか知ってる人に聞くなら、俺らはこう言うだろうね。「ヒップホップはそれぞれの人が生み出したアートを広げ、運び、皆にそのヴァイブを伝えていくものだった」と。

ブルックリンにい続ける理由を教えてください。

GEO:ブルックリンを愛してるんだ。世界で一番良い場所だと思う。ブルックリンがNYで一番文化がある場所だと思う。スタイルがあって。色んなところでそれぞれスタイルがあると思うけど、ブルックリンのはオーガニックでナチュラル、アーティスティックなんだ。ブルックリン自体が俺にとって文化なんだ。

今後について教えてください。

GEO:やりたいことはたくさんあるよ。でも、口だけ立ってなにもやらないやつにはなりたくないんだ。音楽に関していえば、『Geology plays Geology』みたいなこともまたやりたいし、自分にはまだ世に出してない部分がたくさんある。自分で言わないから俺がなにやってるか知らない人も多いと思うけど、俺は静かにやっていく方が好きなんだ。皆に自分で俺のことを見つけてほしい。「お前がこれやってたのか、知らなかったよ」って言われることも多いよ。10年も友達なのにそういうことを突然言われたり、ヴィジュアルアートやっているのを知らなかったり、音楽作っているのも知らなかったり、知っていてもどういう曲をやっているか知らなかったり。ブルックリンビートだけでなくハウス、デトロイトサウンド、ソウル…、まだやったこと無いけどそういうのもやってみたいし、出来ると思う。音楽以外では本も作りたいし、ギャラリーショウもやりたいし、色々やりたいね。

ありがとうございました。今後とも注目しています。






*Ge-ology関連作品

Ge-ology Feat. Mos Def/Superstar
『Facets』からのアナログカット。Ge-ologyとMos Defのタッグということで否応なく「Body Rock」や<Rawkus>時代を思い起こさせる"Superstar"。Ge-ologyの浮遊感溢れるトラックにここ最近ラッパーとしても調子のよさを感じさせるMosの歯切れ良いラップが乗る佳曲。「ブルックリンのネイバーフッドの息遣い」が聞こえる、2006年版"Universal Magnetic"とでも言いたくなるような1曲。すでにGilles Petersonがラジオプレイし世界的に注目が集まっているなか待望のアナログカット。
カップリングにはフューチャリスティック・ソウル・トリオSpacekの元メンバー、Morgan SpacekがDj Spinnna『Intergalactic Soul』やRH Factor『Hard Groove』などに参加しているヴォーカリストStephanie Mckayを迎えた1曲を収録。こちらも極上のジャズソウル。世界同時進行の「流れ」を感じさせる1枚。キーワードは間違いなく「Back 2 Block」。




左から:未発表曲含めGe-ologyがこれまで手がけてきた楽曲をGe-ology自身がミックス形式でまとめた『Ge-ology Plays Ge-ology』/"B Boys Will B Boys"でプロデュース参加したBlack Starの 『Black Star』(98年)/"Brooklyn"でプロデュース参加したMos Defの1st 『Black On Both Sides』(99年)/Ge-ologyの手がけた"After the Show"を収録している『Lyricist Lounge Vol.1』/"No Rest (GE-OLOGY Remix)"を収録したGrand Agent 『Fish Outta Water Remixes』



左から:Ge-ologyプロデュースの"Reality Check"を収録したJigmastasの『Infectious』/同じくGe-ologyプロデュースのGauge "Break Through"を収録した『Superrappin The Album Vol.2』/Asheru & Blue Black Of The Unspoken Heardの『Soon Come』収録の"B-Boy (We Get Shit)"もGe-ologyプロデュース/Ge-ologyが<Up Above>から発表した"Communicate"、"Let Me"を収録したDj RhettmaticのMix CD『Exclusive Collection』/イギリス、ウェールズ出身のJem "They"はビッグヒットとなった(アルバム『Finally Woken』)

*Ge-ologyが手がけた楽曲を聴く
Black Star "B Boys Will B Boys" (『Black Star』)
Jigmastas "Reality Check" (『Infectious』)
"After the Show" (『Lyricist Lounge Vol.1』)
Asheru & Blue Black Of The Unspoken Heard "B-Boy (We Get Shit)" (『Soon Come』)
Jem "Tehy" (『Finally Woken』)



*HMVお薦めの関連作品


左から:Ge-ologyも親交のあったJ Dillaの遺作。Common、Madlib、Pharoahe Monchら参加、<BBE>から発売される『Shining』/シングル"Sct Like You Know"のリミックスをGe-ologyが手がけたPlatinum Pied Pipersのアルバム 『Triple P』。Jay Dee、Sa-Ra Creative Partnersも参加。/Ge-ologyもそのコンセプトに共感していたRich Medinaのアルバム 『Connecting The Dots』(99年)/"Body Rock"、"Universal Magnetic"などを収録した<Rawkus>のコンピレーション『Rawkus Records: Classics Cuts』/4 HeroのMarc Mac率いるVisoneersが"Runnin'"や"World Is Yours"など90年代初頭のヒップホップの名曲群をカバーした『Dirty Old Hip Hop』



HMV特集:<Tri-eight>コンピ周辺〜ヒップホップの旅




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