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2006年3月22日 (水)

許光俊の言いたい放題 第9回

『クラシックプレス』を悼む

 季刊『クラシックプレス』が今発売されている号をもって休刊になった。最初からいっさい初心者を射程に入れず、無謀なまでにマニア道を追求した雑誌だった。
 その最終号の付録CDがおもしろい。ロシアの指揮者ニコライ・ゴロワーノフ特集だ。『クラシックプレス』編集長平林直哉氏はSPを溺愛し、常々、復刻の音質については異常とも言えるほどうるさい。だから、この付録CDの音質もとても立派だ。SP原盤の場合、針音はするが、音楽自体がそれを乗り越えてたいへん明快に聞こえてくるので、邪魔にならない。『クラシックプレス』にはいろいろなおまけCDが付いていたが、正直言って、私にはこれと第8号の名指揮者集が圧倒的に価値を持つ。
 メンデルスゾーンの「結婚行進曲」は、まるで蛮族がどこからか女を略奪してきてむりやり結婚という雰囲気で笑える(不謹慎な比喩か)。普通、この曲は妙に気取って品よく演奏されるものだ。しかし、ゴロワーノフが指揮すると、本当ににぎにぎしい祝宴と化す。どうせならこれをトラック1に入れるべきだった。確か、私の弟の結婚式ではトスカニーニの演奏を使ったと記憶しているが(十分異常)、もしこれを持っていれば、間違いなくこちらを選んだだろう(完全に異常)。
 とはいえ、やはりゴロワーノフのロシア魂(なんてものがあるのかどうか知らないが)は、ロシア作品を演奏すると臆面もなく爆発する。
 序曲「1812年」は頭の重厚な弦楽器の響き(これは1952年録音だが、驚くほど音がよい)が魅力的。そのあと、ゴロワーノフとしては抑制された端正な音楽が続くが、だんだん火がついてくる。ヴァイオリンの歌は19世紀の香りが漂うような濃密さ。そして、最後近くになると、これぞロシア!といった圧倒的なパワーの放出に至る。まさにクレムリンの鐘が鳴り響き、民衆の歓呼が聞こえてきそうな、エクスタシーの表現だ。演奏者は血が騒いで仕方なかっただろうと推測される。
 「素ラヴ行進曲」、違った「スラヴ行進曲」は、頭からして宇野功芳大先生なら間違いなく「ムード満点」と言いそうな、志鳥栄八郎大先生なら「ロシア民衆の悲しみ」と言いそうな、鈴木淳史大先生なら、「サッカーにたとえれば、選手全員討ち死にの死体が云々」と言いそうな、暗い気味の悪さがいい。弦楽器のうにょうにょした軟体動物めいた動き、道ばたの豆腐売りのような哀しいトランペット。
 でも、長調の軽妙なところになると、突然おどけ出す。悲惨と滑稽と深刻と熱狂のごちゃまぜ。これこそ、ドストエフスキーが描いたロシアそのままだ。
 一転、リストの「前奏曲」は堂々たる緻密な演奏。オーケストラもよく統制され、これで聴くと、ゴロワーノフとモスクワ放送響は当時のヨーロッパ・オーケストラ界で5本の指に入るのではないかと思われるほどなのだ。音質も極上。


クラシックプレス第14号、最終号
☆付録CD/ニコライ・ゴロワノフ没後50周年
@リスト:交響詩「前奏曲」
Recording: 1952 [15:10]
Aチャイコフスキー:スラヴ行進曲
Recording: 1944 [10:50]
Bビゼー:歌劇「カルメン」第4幕前奏曲
Recording: 1947 [2:03]
Cベートーヴェン:「エグモント」序曲、作品84
Recording: 1951 [7:50]
D メンデルスゾーン:結婚行進曲〜「真夏の夜の夢」、作品61よ  り
Recording: 1952 [4:05]
E チャイコフスキー:序曲「1812年」、作品49
Recording: 1952 [15:24]
Fグリンカ:血は熱い想いに沸き立ち(詩:プーシキン)
Recording dates unknown [1:05]
G グラズノフ:東方のロマンス(詩:プーシキン)
Recording dates unknown [2:02]
ニコライ・ゴロワノ指揮(FGピアノ)
@ACDEモスクワ放送交響楽団 Moscow Radio Symphony Oechestra
Bボリショイ劇場管弦楽団 Bolshoi Theatre Orchestra
Eソビエト軍楽隊 Soviet Army Band
FGアントニーナ・ネジダーノワ(ソプラノ)
Antonina Nezhdanova, soprano
*C以外は初CD化!

特集:チャンネル・クラシックスのすべて
   (プロデューサー、サックス、チェロのウィスペルウェイのインタビュー、
    これから聴こう、この1枚、SACD試聴記など、14ページの大特集)
インタビュー:森悠子(長岡京室内アンサンブル音楽監督)
       ディーター・エームス(新レーベル、エームス・クラシックス社長)

●そのほか、クナッパーツブッシュの名盤の番外編としてブルーノ・ワルターの名盤が
登場、宇野功芳氏が問題の「大地の歌」(Andante)に言及!
●連載はすべて最終回=もっと知りたい、この作曲家(濱田滋郎)、聴振書教(金子建志)、
絶対邪悪(許光俊)、音楽家の食卓(横堀朱美)
●グィド・カンテッリ―トスカニーニと共に(短期集中連載、切れが良く、ちょうど最終回)
●大好評、復刻盤鑑定会=平林直哉、福島章恭
 トスカニーニ/レスピーギ:「ローマ」3部作
 ヌヴー/ブラームス:Vn協奏曲
●輸入CDベスト5
 片山杜秀、濱田滋郎、ほか
■充実のCD、DVDレビュー!!


⇒評論家エッセイ情報
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ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

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