田所光之マルセル/ヘンゼルト:エチュード全集
2025年04月18日 (金) 19:00 - HMV&BOOKS online - クラシック

田所光之マルセル、待望のデビューCD。
ロシア・ピアノ楽派の栄光の原点、ヘンゼルトのエチュード全集で颯爽登場!
英「Gramophone」誌で「心と指が完全に一致し、どんな音楽でも自在に操ることができる真の音楽家」と称賛されたピアニスト、田所光之マルセルのデビューCDが「NAXOS」レーベルより登場。リヒテル、ギレリス、キーシン等など、綺羅星のような名ピアニストを輩出する「ロシア・ピアノ楽派」の礎を築いたとされるヘンゼルトのエチュード全集です。
1814年にドイツに生まれたアドルフ・フォン・ヘンゼルトは幼少期から音楽の才能を示し、ウィーンでフンメルやゼヒターに師事。ウェーバーの音楽に深く傾倒し、14歳でその幻想曲を演奏してデビューを果たしました。1838年からは移住先のロシアで活動。ピアニストとして高度な技巧を持つ彼の演奏と教育はロシア・ピアノ楽派の発展にも寄与しました。ヘンゼルトは1曲ずつ異なる調性で書かれた練習曲を残しており、その中で技巧の伝授に加えて芸術作品としての価値を追求しています。各曲にフランス語で詩的なタイトルが付された『12の演奏会用性格的エチュード』作品2は、激しい嵐のような情熱を描く第1番、親密な情感が込められた第2番や第3番など、弾き手は内面的な情感を解釈して伝える力量が問われます。第6番の『もしも私が鳥だったら、お前の元へ飛んでゆくのに』はラフマニノフも愛奏した曲として有名。『12のサロン用エチュード』作品9では、第1曲『エロイカ』はベートーヴェン風の力強い音楽、第3曲『魔女のダンス』は悪魔的な情景を想起させるなど、タイトルも曲の性格もより直接的となっていますが、いくつかの曲はタイトルが空白のまま残され、弾き手の想像力に委ねられています。1876年出版の『練習曲イ短調』は複雑に交錯するリズムと個性的な旋律が融合、1841年出版の『ゴンドラ・練習曲』は水の描写を巧みに表現した短いながらも印象的な作品です。
【知られざるロマン派の作品に新たな光を】
「ドイツ出身でありながらロシアに渡り、のちに「ロシア・ピアノ楽派の礎を築いた存在」として知られるアドルフ・フォン・ヘンゼルト。その比類なき技巧はリストにさえ羨まれ、彼の孫弟子にあたるラフマニノフも「最も影響を受けたピアニスト」としてその名を挙げています。
私がヘンゼルトの存在を知ったのは、作品2の6(通称『鳥のエチュード』)のラフマニノフによる録音を聴いたときでした。そのあまりの魅力に、すぐに楽譜を探しに行ったことを今でもよく覚えています。
このエチュード集の最大の魅力は、まるで鍵盤の上を飛翔するような広いインターバルを要する超絶技巧と、ドイツ・ロマン派に特有の内省的かつ詩的な音楽性との融合にあります。作品の多くには詩のようなタイトルが添えられ、内面の感情を静かに語りかけるものから、鳥や海、嵐などの自然を描写する標題音楽的要素を感じさせるものまで、その表現は実に多彩です。そして何より、超絶技巧と詩的な音楽性が高次元で融合した本作は、彼の作品群の中でもひときわ異彩を放つ、唯一無二の存在であり、まさにヘンゼルトの最高傑作と呼ぶにふさわしいものだと確信しています。
このたびの録音を通して、ヘンゼルトの作品が持つ豊かな魅力を、より多くの方にお届けできることを心から願っています。」〜田所光之マルセル
【田所光之マルセル プロフィール】
日本人の父とフランス人の母の間に生まれ、多様な文化の中で幼少期を過ごす。8歳よりピアノをはじめ、名古屋市立菊里高等学校音楽科卒業後、パリ国立高等音楽院に満場一致の首席で入学。ジャン=フランソワ・エッセール、フローラン・ボファール両氏のもとで学んで同音楽院ピアノ科を卒業し、続いて同音楽院の修士課程を修了。その後、パリのエコール・ノルマル音楽院に奨学生として入学。レナ・シェレシェフスカヤ氏のもとでさらに自らの音楽に磨きをかけた。
ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールで審査員長特別賞、サンタンデール国際コンクールで第3位を受賞するなど、数多くのコンクールで受賞を果たした。
ほかにもオリヴィエ・ガルドン、マルク・ラフォレ、エフゲニー・ボジャノフ、海老彰子、長野量雄、田島三保子、鈴木彩香の各氏からも教えを受け、田所は自身の音楽をより一層厚みのあるものにしている。日本と欧米各国でソロ、室内楽、オーケストラとの共演を続けている。(輸入元情報)
【収録情報】
ヘンゼルト:
● 12の演奏会用性格的エチュード Op.2(1827/38年出版)
第1番ニ短調『嵐よ、汝は私を打ちのめすことは出来まい』
第2番変ニ長調『少しは私のことを思っておくれ、常にお前を思っている私を』
第3番ロ短調『私の望みを聞き入れて』
第4番変ロ長調『デュオ - 愛の安らぎ』
第5番嬰ハ短調『嵐の人生』
第6番嬰ヘ長調『もしも私が鳥だったら、お前の元へ飛んでゆくのに』
第7番ニ長調『青春の翼を備えしもの』
第8番変ホ短調『お前は私を惹きつけ、魅惑し、溺れさせる』
第9番ヘ長調『初恋、至上の喜び。お前は私の元を去ったが、想い出は二人のもの』
第10番ホ短調『小川が大海に流れ込んでゆくように、愛しい人よ、私の心はお前を待ち受けている』
第11番変ホ長調『愛しい人よ、もう眠ったかい』
第12番変ロ短調『愛の苦悩と思い出、ああ何と揺れる心! 私の心臓は高鳴る』
● 12のサロン用エチュード Op.5(1838年出版)
第1番ハ短調『エロイカ』
第2番ト長調
第3番イ短調『魔女のダンス』
第4番ホ長調『アヴェ・マリア』
第5番嬰へ短調『失われた祖国』
第6番変イ長調『嵐のあとの神への感謝』
第7番ハ長調『妖精の踊り』
第8番ト短調『ロマンス』
第9番イ長調
第10番ヘ短調『失われた幸福』
第11番ロ長調『恋の歌』
第12番嬰ト短調『夜の幽霊の行列』
● 練習曲 イ短調(1876年出版)
● ゴンドラ・練習曲 Op.13-2(1841年出版)
田所光之マルセル(ピアノ)
録音時期:2024年9月24-26日
録音場所:イギリス、ワイヤストーン・コンサート・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル)