激ロック×HMV&BOOKS online vol.108

GENRE：LOUDROCK
coldrain、怒濤の約3年間の軌跡を刻んだニュー・アルバム
フル・アルバムは約3年ぶりだが、この間は本当に怒濤だった。“BLARE FEST.2020”の奇跡的な成功からコロナ禍に突入、それでも「PARADISE (Kill The Silence)」で不屈の精神を打ち出した彼ら。あえて盛り込まれた観客が歌えるフレーズは、“自分たちの表現には君の声が必要なんだ”というメッセージにも思えたし、それは今作を通しても伝わってくる。一方で、アニメやビールとのタイアップにも太刀打ちできる、芯をブレさせないままでポップ・クオリティを誇る楽曲を生み出しており、そこからはラウドロック、ロック・バンドの可能性が改めて感じられた。90年代にヒットしたNO DOUBT「Don't Speak」カバーも含め、シンガロングしながら前に進む力が湧いてくる全12曲。
高橋 美穂 【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK, POP ROCK
本領発揮。秘めたる才能、能力を爆発させる
待望のニュー・シングル『無自覚の天才』完成
2020年末にメジャー・デビューして以来、メジャーでは初となる待望のライヴを今年3月に開催したNon Stop Rabbit。今回発表されたのは、アニメ“転生賢者の異世界ライフ 〜第二の職業を得て、世界最強になりました〜”OPテーマに決定したシングル「無自覚の天才」だ。アニメの作品世界をベースにし、心では望みながらもネガティヴさで蓋をしていることや、やってみる前に諦めていること、そんな隠している思いを勢いあるロック・サウンドで露にしていく。キャッチーで癖になるメロディとスピーディで迫力あるアンサンブルが、熱く語り掛ける言葉をリズミカルに響かせる。そんなノンラビ節でも最も直球で強力なところを増幅した曲。カップリングの変化球とともに、バンドの持ち味を存分に生かしたシングルとなった。
吉羽 さおり 【ライター推薦】

GENRE：MELODIC PUNK, MIXTURE ROCK
フル・アルバムとしては約6年ぶりとなる『SOUTH』は
“どこを切り取ってもMINAMI NiNEでしかない作品”に
結成10周年を迎えたMINAMI NiNEによる2ndフル・アルバムはコロナ禍の中生まれた新曲に、ライヴでお馴染みの人気4曲の再録を加えた全12曲を収録。メロディック・パンクを軸にエモ、レゲエ、スカ、オールディーズ風のバラードと多彩な楽曲が揃っているが、どこを切り取ってもMINAMI NiNEらしい作品とメンバー自ら言うだけあって、ハートウォーミングな魅力と彼ら自身の日々の暮らしから滲み出てきたと思しき言葉は終始一貫している。それこそが彼らが掲げる“南九節”なのだと思うが、彼らにしか出せない味わい深さがじわりと染みる。ドラマチックなアレンジで聴かせる「This song」は、なぜ自分たちは音楽を演奏するのか、その理由を見つめ直したバンドの新たなテーマ・ソングなんて趣もあり。
山口 智男 【ライター推薦】

GENRE：MELODIC DEATH METAL
“BETRAYER＝裏切者”と掲げた約4年半ぶりのフル・アルバムをリリース
ドラマーとしてYU-TOが加入して初であり、前作から約4年半ぶりのアルバム。「Garden Of Thorns」を皮切りに、「Betrayer」、「Dogmatic Stigma」といったメロデス／デスラッシュ然とした凄まじい突進力、破壊力を誇るものもあれば「Everlasting Trail」、「Shadow Dancer」のようなツイン・ギターが美旋律を轟かせるものなど、もともと彼らの楽曲が持っていた叙情性がさらにアップ。1枚通して、よりドラマチックな仕上がりとなっている。さらには“踊れるメロディック・デス・メタル”を意識したという「Behind Blue Tears」や、ボーナス・ディスク（“Deluxe Edition”付属）収録のレア音源にアコースティック・アレンジなど、新たな表情を見せる楽曲も。
山口 哲生 【ライター推薦】

GENRE：SKA, POP PUNK
切れ味とタイトに引き締まったバンド感を存分にアピールする
ライヴ・アンセム盛りだくさんのパワフルな1st EP
HEY-SMITHの猪狩秀平（Gt/Vo）をプロデューサーに迎えた前作発表後、ツアーなどを行う過程の中で、バンドの基礎体力はさらに鍛え上げられたのではないか。この4曲入り1st EPは、ライヴ感が一段と増し、切れ味とタイトに引き締まったバンド感を存分にアピールする内容に仕上がっている。全曲フロアにベクトルを絞ったエネルギッシュなパワーに満ち溢れているのだ。シンガロングやダンシングを誘発する楽曲群は、初めて現場で聴いたとしてもパーティーに巻き込める求心力を誇っている。表題曲はまさに会場をひとつに束ねるアンセム曲と言えるだろう。そして、THE BRIAN SETZER ORCHESTRAのカバー「Gettin' in the Mood」も、MAYSON'sカラーに見事染め上げている。
荒金 良介 【ライター推薦】

GENRE：Djent
Djentの可能性を広げる、初の全国流通盤『Graffiti』完成
Little Lilith初の全国流通盤は、彼女たちが“ガールズジェントバンド”を掲げているだけあって、各曲にDjentの流儀を取り入れているが、それぞれに他ジャンルを融合することで、Djentの可能性と魅力を広げる実験的なEPだ。例えば、表題曲「Graffiti」ではポスト・ハードコアを思わせる壮大な音像を作り上げつつ、キャッチーなメロディをまっすぐに歌い上げたり、「fuse」ではR&BとDjentが交錯する意表を突く展開を見せたりする。思わず拳を突き上げそうになるスピード感のあるロック・チューン「Gun Bullet」や、情緒不安定に打ち込みサウンドとバンドの鳴らすDjentサウンドが融合する「Thanatophobia」もあり、多彩な魅力を持つ1枚だ。
宮�ｱ 大樹 【ライター推薦】

GENRE：SYMPHONIC ROCK
久遠の響きをたたえた幽玄の調べと風雅なる歌声
幽玄の調べと風雅なる歌声は、久遠を思わせる響きのごとし。2002年にソロ名義での初アルバムとして発表した『ROENTGEN』の、静謐にして寧静なる世界が、2021年に入ってからツアーというかたちで具現化されたことは未だ記憶に新しい。今作はオーケストラを帯同した“20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021”のパシフィコ横浜公演、そして京都 平安神宮を舞台に、オーケストラのみならず雅楽奏者を迎えた“20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU”という、貴重なライヴをBOX化したものとなる。滋味深い生楽器の音と慈悲深いHYDEのヴォーカリゼイションの数々と、永久保存版的な映像たちは耳福と眼福の極みなり。
杉江 由紀 【ライター推薦】

GENRE：MELODIC PUNK
新体制で作り上げた、バンドの第2章を告げる会心作
5月に横川慎太郎（Dr）が正式加入し新体制で作り上げたミニ・アルバム。OP曲「Motion」のイントロから新ドラマー加入を印象づける幕開けだ。疾走感がありながら、凝ったアレンジも大きな聴きどころ。続く「See You」はシンプルなメロディックを鳴らす、ライヴの絵が浮かぶ爽快な曲。直情的なリフで押しまくるハードコア風ナンバー「NOT DEAD」もカッコいい。そして「BRAND NEW WORLD」はアコギを用い、また違う魅力が際立った楽曲である。歌とメロディを前面に押し出し、“ここからまた始まるんだ！”という決意を込めた歌詞も要チェック。全体を通して、赤裸々に綴られた歌詞も必読で、楽曲の世界観により浸れる内容が多い。バンドの過去と現在、そして未来が詰まった第一歩に興奮は収まらない。
荒金 良介 【ライター推薦】

GENRE：ELECTRONICORE, LOUDROCK
メタル系スクリーミング・アイドル、Broken By The Scream
タフに、ドラマチックに進化する4人の姿が見える新体制初アルバムをドロップ
メイン・シンガーふたりとスクリーム・シンガーふたりで構成される、メタル系スクリーミング・アイドル BBTS。七々扇ツバキが加入した新体制でのアルバムが完成した。コロナ禍でツアーが中止になるなど、ライヴを基軸としてきたBBTSにとってはそのパワーを発揮できない時期もあったが、溜め込んだ力に加え表現の幅を広げる挑戦をアルバムにぶつけている。ハイとローのスクリーマーの攻撃性とポップな歌が生み出すギャップを爆裂なメタルコアに乗せる「感情クロスカウンター」に始まり、爽やかな「ココロ、晴レ晴レ」、ブラストビートとともにビートを生むスクリームが圧巻の「メラメラセニョリータ」、グループの軌跡を映した歌心ある「ボクらの未来」などタフに、ドラマチックに進化する4人の姿が見えるアルバムだ。
吉羽 さおり 【ライター推薦】

GENRE：MELODIC PUNK
メロディック・パンクを掲げた岐阜発3ピース、KUZIRA
バンドの現在地を刻み、ユーモア精神も盛り込んだ2ndフル・アルバム到着
メロディック・パンクを掲げた岐阜発のトリオによる2ndフル・アルバム。表題曲はイントロのベースが印象深く、疾走感はありながらも、スケールの大きな歌メロに包み込まれる曲調だ。“僕は覚悟を決めた／僕はあなたの側にいる”（和訳）と歌詞にある通り、聴き手に寄り添う真摯な内容に彼らの現在地が刻まれているよう。かと思えばFコードが弾けねぇと思う超ショート曲「F Is For Fuck」もあり、こうしたユーモア精神を決して忘れていない。また、ミドル・テンポで進む「Everywhere You Look」はクラップや壮大なコーラスも際立ったピースフルなナンバー。そしてラストを飾る「Get Along Just Fine」はアコギを用い、シンガロング・メロディを押し出した親密なサウンドに惹かれる。
荒金 良介 【ライター推薦】

GENRE：ALTERNATIVE ROCK
ピアノや弦楽器を迎えたアコースティック・ライヴ・シリーズの世界観を凝縮した
INORANのソロ活動25周年記念アルバム
2019年から行われてきたアコースティック・ライヴ・シリーズの世界観が、ソロ活動25周年を記念して1枚のアルバムに凝縮。ライヴ・メンバーの葉山拓亮（Pf）、Yui（Vn）、島津由美（Vc）に加え、全12曲中3曲でゲストにR&Bシンガー 傳田真央を迎え、これまで披露されてきた既存曲はもちろん、本作のために書き下ろされた新曲、さらにCyndi Lauperの「Time After Time」のカバーが、実際にBillboard Live YOKOHAMAにてライヴ本番と同じセッティングで収録された。ピアノ、弦楽器の音色の深みや、このアレンジだからこそのINORANの歌声の優しさなど、バンド編成とはひと味違う楽曲たちの魅力を、いつでもどこでも臨場感たっぷりに楽しむことができる作品だ。
内堀 文佳 【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK
臨戦体制のバンドの強い意思が色濃く反映された
声出しが楽しみになるようなニュー・シングル発表
毒をもって毒を制す。己龍は今作と連動していく夏巡業“蠱毒厭魅”で、各ライヴハウスと行政のガイドラインに沿ったうえではあるものの、声出し公演を解禁したいと宣言している。表題曲を作詞曲／編曲もしているギタリスト、酒井参輝は前回巡業の千秋楽にて“何も和を乱そうという話ではなく、みんなが奪われたものをできる範囲で取り返しにいこう、という話でございます”と発言していたが、それだけ腹が括れている彼らの強き意思は、今作の内容にも色濃く反映されていると言えよう。現在ライヴ活動の現場からは退いているものの、音源制作には全面参加している九条武政（Gt）が作／編曲を手掛けている「極悪浄土」（作詞は黒崎眞弥（Vo））も含めて、声出しが楽しみになるような臨戦体制の今作を全面支持したい。
杉江 由紀 【ライター推薦】

GENRE：LOUDROCK
多彩な音像をコドモドラゴン流にミックスアップし
現実の残酷さを描く、ニュー・マキシ・シングル発売
厭世の念が破壊力というかたちで具現化された表題曲「BAD!!」は、ザクザクズクズクの轟音でいて響くビートは豪快でもあり痛快。サビメロには爽快感さえもが漂い、良き意味で破綻しているところが実に素晴らしい。ミクスチャー・ロックやラウドロックの要素をコドモドラゴン流に踏襲しながら、そこにはっちゃけたメロディ・センスを持ち込み、世に蔓延る人間の愚かさを嘲笑ってみせる「ENEMY」も、ある種の悲喜劇としてかなり秀逸だ。グランジ・ロックの音像に、R&Bのリズムとソウルフルなメロディ・ラインをミックスアップさせ、やるせない諦念と葛藤の果てに“儚い幻想”にすがることになる、自らの様を描き出すミドル・チューン「僕ラ#」に込められたリアリティも、生々しいことこの上ない。現実とは至って残酷なり。
杉江 由紀 【ライター推薦】