【映像】グラーツ歌劇場/ヴァインベルク: 『パサジェルカ』

2022年06月10日 (金) 12:15 - HMV&BOOKS online - クラシック


グラーツ歌劇場 2021/ヴァインベルグ:歌劇『パサジェルカ』

第ニ次世界大戦中、アウシュヴィッツの強制収容所で働いていたリーザ。戦争が終わって彼女は外交官夫人となり、ブラジルへ赴く船上の人となります。そこで出会った女性「マルタ」の風貌は、強制収容所でガス室送りになった女性と瓜二つ。当時の悪夢のような生活を思い出したリーザは少しずつ精神に変調をきたし、過去の幻影に苛まれていきます。
 強制収容所からかろうじて生還したこの物語の原作者ゾフィア・ポスムイシの体験は、自らの家族全てを迫害で失ったヴァインベルグの体験とも重なるもので、彼にとっても切実な内容であったのでしょう。ショスタコーヴィチの助言を受けながら、彼は1年でこの歌劇を書き上げます。しかし結局この作品はソビエト時代に上演されることはなく、彼の死後10年を経てモスクワにて演奏会形式での上演が実現し、2010年にようやくブレゲンツ音楽祭で世界初の舞台上演がなされました。
 この映像は2021年にグラーツ歌劇場での上演を収録したもの。ナジャ・ロシュキーの演出は舞台全体を暗い灰色に設定し、ブラジルへと向かう定期船上で巻き起こる元アウシュビッツの看守リーザとポーランド人の囚人マルタの胸中にわきあがる激しい感情とその葛藤を丁寧に描いていきます。作品冒頭の激しいティンパニの連打が波乱の物語を予感させるとともに、ふとしたきっかけから狂気へと至るリーザを歌うカイザーの表現力豊かな歌唱が聴きどころです。
 2020年からグラーツ歌劇場の音楽監督を務めるローター・クルティヒは、1990年代にカンマーアンサンブル・ノイエ・ムジーク・ベルリンで現代音楽を専門に振ってきた指揮者。全体を隙なくまとめています。(輸入元情報)(写真© Werner Kmtitsch)


【収録情報】
● ヴァインベルグ:歌劇『パサジェルカ(女旅行者、女船客)』全曲


 リーザ…シャミリア・カイザー(メゾ・ソプラノ)
 ヴァルター…ヴィル・ハルトマン(テノール)
 マルタ…ナージャ・ステファノフ(ソプラノ)
 タデウス…マルクス・ブッター(バリトン)
 カーチャ…テティアーナ・ミユス(ソプラノ)
 クリスティーナ…アントニア=コスミナ・スタンク(メゾ・ソプラノ)
 ヴラスタ…アンナ・ブルー(メゾ・ソプラノ)
 ハンナ…マライケ・ヤンコフスキ(メゾ・ソプラノ)
 イヴェット…ジークリンデ・フェルトホーファー(ソプラノ)
 ブロンカ…ヨアンナ・モトゥレヴィチ(メゾ・ソプラノ)
 老女…スク・ジュ(ソプラノ)
 1番目のSS将校…イヴァン・オレシュチャニン(バリトン)
 2番目のSS将校…デイヴィッド・マクシェイン(バス)
 3番目のSS将校…マルタン・フルニエ(テノール)
 老旅客…コンスタンティン・スフィリス(バス)
 看守長…ウシ・プラウツ(俳優)
 リーザ(老女)…イザベラ・アルブレヒト(俳優)
 カポ…ヴィクトリア・リードル(俳優)
 給仕…アドリアン・ベルテリー(俳優)、他
 グラーツ歌劇場合唱団(合唱指揮:ベルンハルト・シュナイダー)
 グラーツ・フィルハーモニー管弦楽団
 ローラント・クルティヒ(指揮)

 演出:ナジャ・ロシュキー
 舞台美術:エティエンヌ・プリュス
 衣装:イリーナ・シュプレッケルマイヤー
 照明:セバスティアン・アルフォンス
 ドラマトゥルク:マレーネ・ハーン&イヴォンヌ・ゲバウアー
 ビデオ:クリスティアン・ヴァイセンベルガー

 収録時期:2021年2月11,12日
 収録場所:オーストリア、グラーツ歌劇場(ライヴ)
 映像監督:アクセル・シュトゥンマー

 収録時間:143分
 画面:カラー、16:9
 字幕:日本語・英語・ドイツ語・韓国語