【連載】松室政哉の「ためらいシネマ」第四十二回:フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊

2022年02月19日 (土) 12:00

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HMV&BOOKS online - ジャパニーズポップス

HMV&BOOKS online がインディーデビュー当時からプッシュするシンガーソングライター 松室政哉の連載企画「ためらいシネマ」。公開中の映画に限らず、松室政哉を形成した映画を紹介して貰います。



シンガーソングライターの松室政哉です。この度、HMV&BOOKS online さんで大好きな映画について語る場を設けていただきました。実は僕は学生時代には年間約300本を観てきたほどの映画好きでございます。僕にとって映画鑑賞は趣味の域を越えて、曲作りにおいて大きな影響を与えてくれるインスピレーションの源でもあります。ある時は一観客として、ある時は同じ作り手として思ったことを書かせていただきたいと思います。映画の素晴らしさを少しでも皆様に届けられることを願って…。

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「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」

1975年フランスの架空の街、アンニュイ=シュール=ブラゼ。
そこには世界で50万人の読者を抱える雑誌「ザ・フレンチ・ディスパッチ」の編集部があった。
その雑誌の創刊者で編集長のアーサー・ハウイッツァー・Jrが急死した事で、彼の遺言通り雑誌は廃刊になり現在編集中の雑誌が最終号となることが決まった。
編集長の追悼の意を込めた最終号に載せられた記事はそれぞれ奇想天外な内容だった…。

独特な世界観で多くのファンを魅了するウェス・アンダーソン監督の長編10作目。
彼の作品には一癖も二癖もある人々が多数出てくるが、今回もすごい。
主に3人の記者が書いた三つの記事(その前に楽しい街紹介記事があるよ)で構成されているが、記者も含めて相変わらず全員ぶっ飛んでるのだ。
本作は特殊な構成になっているので、ネタバレしない程度に一つ一つの物語に触れていこうと思う。

一つ目は美術界の裏も表も知り尽くす美術評論家J・K・L・ベレンセンによる記事「確固たる(コンクリートの)名作」。
殺人で服役している天才画家は獄中で看守のシモーヌをモデルに作品を描き続けていた。
その価値を見出した画商によって彼はたちまち美術界のスターになるが…というお話(記事)。
天才画家とミューズの関係が切なくも美しい。
ベニチオ・デル・トロ演じる掴みようの無い孤独な画家が時折可愛らしくも見えてくる。
ここは彼の演技の底力を感じる。
ウェス・アンダーソン映画の醍醐味の一つとして豪華な俳優陣があるが、本作でもそれが思う存分堪能できる。

二つ目は謎多き高潔なジャーナリスト、ルシンダ・クレメンツ記者による学生運動についての記録記事「宣言書の改訂」。
学生運動のリーダー、ゼフィレッリと親しくなった彼女は彼が記した宣言書を校正することになるが…。
こちらもジャーナリストと学生運動のリーダーの絶妙な関係性がなんとも切ない。
ティモシー・シャラメの美しさと、フランシス・マクドーマンドの天才的な演技の化学反応は素晴らしい。
この配役を思いつくのはさすがだ。
途中描かれる学生達と大学当局との戦い方も非常に面白い。
そしてラストにはじんわりと漂う切なさもあるのだ。
なんてことだ。

三つ目は祖国を追われた美食家ローバック・ライト記者による「警察署長の食事室」。
警察署長のお抱えシェフ、ネスカフィエを取材するため署長の食事室に向かったローバック記者。
食事をしようとしたところ、所長の一人息子が誘拐されたことで事態は思わぬ方向へ…。
なんとも考えさせられるエンディングはこの映画は楽しいだけじゃなく深いテーマがあることを再確認させられる。
これだからウェス・アンダーソン映画はやめられない。
見たこともない料理の紹介や、途中から始まる衝撃の演出など楽しさはもちろん忘れられてはいない。

まさにこの映画自体がワクワクする楽しい雑誌になっている。
独特の世界観、テンポ感にウェス・アンダーソン映画慣れしてない人は物語について行くのに少し大変かもしれない。
しかし、あまり深く考えずにただ流れに身を任せるだけでいい。
まさに雑誌のようにめくっていけば、そこには人間の醜さや愛おしさがたっぷりと詰まっているのだ。


文:松室政哉




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2nd EP 『きっと愛は不公平』

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メジャー・デビューEP 『毎秒、君に恋してる』

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松室政哉 シングル

2ndシングル 『僕は僕で僕じゃない』

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1stシングル 『海月』

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松室政哉(まつむろせいや) プロフィール

-ポップスに選ばれた男-

1990年1月4日、大阪生まれ。
小学生の頃、カセットテープから流れたサザンオールスターズで身体中の全細胞が騒ぎ、独学で作曲を始める。

中学・高校時代にはバンド・シンガーソングライターとして、"TEEN'S MUSIC FESTIVAL"や"閃光ライオット"などのコンテストで全国大会に出場。

大阪で音楽活動を続け、22歳で上京。
現・所属事務所のオフィスオーガスタ"だけ"に送ったと言うデモテープで見出され、2017年11月1日に1st EP「毎秒、君に恋してる」でメジャーデビュー。
2nd EP「きっと愛は不公平」では全国50局以上の放送局でパワープレイを獲得し注目を集める。

2021年。
新たなステージへ向かう松室政哉は、楽曲世界を視覚的にも更に広げるため、Musicalize Project(読み:ムジカライズ) を始動。
触れ合うこと、繋がり合うこと、生き辛いこの時代における"アイ"を綴った全6曲を収録したConcept Mini Album「Touch」を3月31日にリリース。
アルバムを提げ、「Matsumuro Seiya Tour 2021 “Touch”」を開催する。

また、音楽活動と並行してコラムの連載や解説動画を公開するほどの映画フリークとしても知られ、映画人としてメディアに出演することも。

その圧倒的なメロディーセンスとまるで映画のワンシーンのような詞世界、そしてそれらを包み込む優しく儚い歌声は聴く者の心を掴んで離さない。


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